文研ブログ

2016年3月

放送博物館 2016年03月29日 (火)

#19 愛宕山の桜がそろそろ見頃です。

計画管理部(計画)東山一郎

NHK放送博物館が1月30日にリニューアルオープンしてから、早いものでもう2か月です。すでに2万人を超える多くの方々にご来館いただいています。

放送博物館がある愛宕山は、東京23区内にある自然の山として最も高く(標高25.7m)、1925年にラジオ本放送が始まった“放送のふるさと”ですが、実は桜の名所としても知られています。
ですから愛宕山に、そして放送博物館にお越しになるには、いま絶好の季節を迎えているのです。

そこで今回は「愛宕山の桜」にちなんで、放送博物館の所蔵資料から2点ご紹介しますね。
(残念ながら2点とも展示はしておりません。ごめんなさい。)  
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左の浮世絵は、三代目歌川広重による「
東京開華名所図絵之内 芝あたご下」で、明治初期の作品です。桜の名所としての歴史が意外に古いことがわかります。(山頂にある愛宕神社に登るこの階段は「出世の石段」と呼ばれ有名です。)
右は、昭和初期のJOAK
(東京中央放送局)の資料(絵葉書セットの表紙部分)です。ラジオ放送用の鉄塔が立つ愛宕山に、桜のデザインがほどこされています。

そんな愛宕山の桜の、最新情報はこちら。今日のお昼に撮影した写真です。
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左が放送博物館入口前の桜
五分咲きくらいですかね。
右側は愛宕神社側の桜です。こちらはまだまだこれからという感じです。

放送博物館入口前の桜は満開になるとこんな感じです。(写真は、「NHK放送博物館60年特別展」で展示中のもの)
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今週末、来週くらいが、桜の見頃かと思いますので、ぜひこの機会に愛宕山に足を運んでみてください。そして、愛宕山と放送の歴史が盛りだくさんの放送博物館をあわせてぜひご覧ください。入場無料です。(「NHK放送博物館60年特別展」は3階企画展示室で開催中! )

なお、文研が刊行している「放送研究と調査」4月号(今月号から表紙のデザインが変わりました!)では「リニューアル!NHK放送博物館」の特集記事を掲載しています。元NHKディレクターの相田洋さんが展示を観覧しながら語る放送史エピソードも興味深いので、こちらもお読みいただけると嬉しいです。

放送博物館の所在地や開館時間は下記のとおりです。
                                                                                                                                                            

NHK放送博物館
休館日    :原則として月曜日、年末年始
入場料    :無料
開館時間:9:30 - 16:30
所在地    :東京都港区愛宕2-1-1 

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(ホームページはこちら)  
                                                                                                        

おススメの1本 2016年03月25日 (金)

#18 『NHKデータブック 世界の放送2016』発刊!

メディア研究部(海外メディア研究) 松本裕美

今回のブログで紹介するのは、文研
毎年刊行している『NHKデータブック 世界の放送』です。
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この本は、世界の国々にどんなテレビ局やラジオ局があって、どういう放送がされているのか知りたいときに便利な一冊です。

実は、この本の歴史は古くて、日本でテレビ放送が始まった1953年に遡ります。当時は「世界のラジオとテレビジョン」という書名で、毎年刊行ではありませんでした。そして対象は「アメリカ州」「ヨーロッパ」「オセアニア」「アジア及中東」「アフリカ」の5つのグループ、55の国や自治領、地域などでした。

今は「アジア・オセアニア」「ヨーロッパ」「中東・アフリカ」「北中米・南米」の4つの大きな地域グループに分けて世界の66の国と地域を取り上げています。
0325-2.JPG「文研の図書室」

創刊時から重点的に掲載されているアメリカ、イギリス、フランス、カナダを見てみると、概況、最近の動向、放送制度…という構成で、“ちょっと知りたい”方から“放送の専門家”まで、分かりやすく知りたい情報がぎゅっとつまった感じになっています。
少しマニアックな項目もあって、本の後ろ、資料編です。「世界のデジタル放送の実施状況」や「世界の衛星デジタル放送」などで、海外のチャンネルが使っている衛星から、主要な放送関係の組織のウェブサイトも掲載されているので、自画自賛ですが、便利かなと思っています。
ちなみに創刊時には付録として「世界テレビ正式放送国一覧表」というのが掲載されていましたが、いまこれを見ると驚きます。この1953年当時にテレビ放送を始めていた国は、アメリカ、カナダ、メキシコ、キューバ、ブラジル、アルゼンチン、イギリス、フランス、ソヴィエト、西ドイツ、オランダ、そして日本のわずか12か国しかありません!
時代の流れを感じてしまいますね。

世界の放送メディアの最新事情や歴史に興味をお持ちの方は、ぜひこのデータブッ
クを一度読んでみてください。
NHKデータブック 世界の放送2016』

 

おススメの1本 2016年03月18日 (金)

#17 『文研年報2016』紹介 ラジオの歴史と未来を大特集!

メディア研究部 中尾益巳

文研の研究員が調査研究の成果を発表するのは、主に月刊誌の
『放送研究と調査』です。私たちはこれを「月報」と呼んでいますが、「年報」もあります。こちらは正式タイトルもNHK放送文化研究所年報』。もちろん年に1回の発行で、月報に載せきれない長期間の研究成果や、月報で発表したものの拡大版など、長編の論文を掲載しています。

さて、今年1月に発行した『文研年報2016』は、ラジオ大特集号です。去年2015年はラジオ第一声が放送された1925年から数えて90年にあたるため、「放送90年=ラジオ90年」としてラジオの歴史、そして未来への可能性を重点的に研究しました。その論文をまとめたのがこの年報なのです。前置きが長くなりましたが、今回はその内容をちょっとご紹介します。

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ラジオを取り囲む家族

1)   ニュースリードが消えた?~ラジオニュース草創期におけるリード文の成立と戦時下におけるその変貌過程~
「ニュースリード(リード文)」とは、ニュースの冒頭で要点を述べる文のことです。第二次大戦時のニュース原稿や録音音声を分析した結果、日華事変や太平洋戦争開戦時など日本軍が進撃している時期のニュースにはリード文がありますが、後半で敗色が強くなってくるとリード文がなくなってきた、ということがきたということが新たにわかりました。放送の開始と同時に始まったラジオニュースでは、どのようにリード文が作成され、それが戦時下にどのように変わっていったのか、放送90年、そして戦後70年にして掘り起こされた知られざる歴史を伝えます。
なお、この研究成果の一部は、放送記念日の特番でも取り上げられることになりました。3月22日(火)夜10時放送の放送記念日特集 激動の時代を越えて ~戦前から戦後へ 放送の歩み~」です。番組の中で、論文を執筆した井上裕之研究員が、当時のニュース原稿についてインタビューに答えます。

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1943年のニュース原稿(NHK放送博物館所蔵)


2)   「録音構成」の発生 ~NHKドキュメンタリーの源流として~
終戦後、占領下にあった日本ではCIE(民間情報教育局)指導の下「民衆へのマイクの開放」として『街頭録音』という番組が作られました。ドキュメンタリーの歴史を研究している宮田章研究員は、このラジオ番組の中で「録音構成」という制作形式が生まれ、それが後のテレビドキュメンタリーにつながる源流であると論じています。
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渋谷駅頭での『街頭録音』収録風景(1947年)

3)   放送90年シンポジウム「ラジオは未来の夢を見る」~文研フォーラム2015採録~
文研フォーラム2016は先週終わりましたが、こちらは昨年のフォーラムで行われたシンポジウムを採録したもの。ラジオ90年の歴史を振り返ると共に、アメリカやイギリスの現状リポートも聞きながら、ピーター・バラカンさん、メディア・プロデューサーの入江たのしさん、東海大学教授の谷岡理香さんらが今後の展望を語り合いました。最も盛り上がったのは「もしラジオを聴いていない人に1週間ラジオを聴いてもらったら」という調査(通称“もしラジ”)の報告。ラジオにはまだまだ可能性があるのです。

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NHK文研フォーラム2015
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4) デジタル時代のラジオの未来 ~BBCラジオ戦略に見るオールドメディアからの脱却~
上記のシンポジウムの中でも報告したイギリスの現状を詳しく論じたのがこちら。日本では37%というラジオの週間接触率が90%に達しているイギリス。公共放送BBCのラジオは多チャンネル化、完全デジタル化、全世界で聴ける「iPlayerラジオ」サービスなどで新しいメディアとして確立しているのです。
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BBC放送センター(左) / BBC iPlayerラジオの画面(右)

テレビ以前に全盛期を築いていたラジオと、ネット時代に可能性を広げているラジオ。
この『文研年報2016は、そんな古くて新しいメディア、ラジオの奥深さを味わえます。ぜひご一読を。

放送ヒストリー 2016年03月15日 (火)

#16 月報3月号紹介②「テレビ美術」を知っていますか?

メディア研究部(メディア史研究) 廣谷鏡子

テレビがスタートしたのは63年前。そのとき同時に生まれたものがあります。さて何でしょう。ヒントはそれまでのラジオ(音だけの世界)になかったもの。そう、「ビジュアル」(目に見えるもの)ですね。理屈っぽく言えば、テレビによって「情報」は「視覚化」された。その視覚化によって生まれたのが、
「テレビ美術」です。
では、いちばん最初のテレビ美術は何だと思いますか。もう一度ラジオを思い出してください。ラジオになかったのは番組の“表紙”、つまり「タイトル(文字)」でした。

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これは“裏表紙”、ですね(手書きのテロップカード、1961~3年頃)

こうして「文字」に始まったテレビ美術は、63年をかけて成長、変貌を遂げていきました。

ドラマを見るとき、あなたの視線はまずどこに行きますか。主人公がイケメンかどうかが重要だったりもするわけですが、ちょっと目をずらしてみてください。彼が着ている服、演技をする部屋、置いてあるテーブル、その上の料理、壁の絵画、時代劇なら侍のかつらにその時代のメイク。そればかりか、窓の外を吹く風、雨に打たれる樹木、降り積もる雪にいたるまで、ぜーんぶ「テレビ美術」なんですね。言ってみれば、目に見える(素っ裸の)人間以外のものすべて。

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こちらは大河ドラマ第1作『花の生涯』(1963年)のオープンセット

実はいままで、この職種についてあまり詳しくは語られて来ませんでした。演出家やプロデューサーのように、番組の意図や内容をカッコ良く語ろうとした人がいなかったみたいです。だってテレビである限り、美術は当然ついてくる。当然のことをしていたまでさ…。
と思っていたかどうかは知りませんが、きっと職人気質の無口で謙虚な人が多かったのだろうと、筆者は2年前から美術の担当者に聞き取りをし、5回に渡って掲載してきました。月報3月号はその総集編です。「証言」によって放送の歴史に別の角度から光を当てる、「オーラル・ヒストリー」研究の新たな試みでもあります。
テレビ美術を際立たせるキーワードは「時間」と「本物らしさ」。それって何?と思った方はぜひご一読を。そしてこれからテレビを見るとき、少しだけ、「人以外」にも注目してみてください。

放送のオーラル・ヒストリー
シリーズ「テレビ美術」の成立と変容
3月号の総集編をお読みになって興味をもたれた方は、バックナンバーもご覧ください。
(こちらの5回はPDFで全文掲載しています)
(1)  文字のデザイン
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2014_01/20140103.pdf
(2)  ドラマのセットデザイン
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2014_04/20140402.pdf
(3)  メイク・かつら・衣装
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2015_01/20150103.pdf
(4)  時代劇スタジオをつくる人たち
 前編http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/report/2015_12/20151204.pdf
 後編http://www.nhk.or.jp/bunken/research/history/pdf/20160101_5.pdf

 

文研フォーラム 2016年03月11日 (金)

#15 文研フォーラム報告② 「放送100年史」「新・アクセント辞典」「震災アーカイブ」

メディア研究部 中尾益巳

前回に続き、先週開催された「NHK文研フォーラム2016」の報告です。2日目、3日目から3つのプログラムについて簡単にお伝えします。

2日目
C ワークショップ まだ先?既に準備期間?「放送100年史を構想する」
フォーラムの7つのプログラムの中で唯一、ホールではなく会議室で行われた少人数のワークショップでした。ラジオ第一声の放送開始から100年経つ2025年にどのような手法で歴史をまとめ発表するのか、9年前の今から考えようという、先の長いプロジェクトの第一歩です。
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まず問題提起として、東京大学大学院情報学環の松山秀明特任助教がNHKや民放各社がこれまで発行してきた放送史を振り返り、100年史のいくつかの選択肢を示しました。それに対しコメンテーターの丹羽美之准教授はコンテンツ重視の「文化史、社会史としての放送史」を提案。社史研究家の村橋勝子さんの「社史はその会社が関わる領域のディープな資料集」という専門家ならではの言葉も奥深いものでした。さて9年先、放送はどうなっているのでしょうか?
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 新・NHKアクセント辞典 ポイント解説! ~改訂から見える“放送のことば”~
今年、アナウンサーやナレーター必携の「NHK日本語発音アクセント辞典」が18年ぶりに大改訂されます。どこがどう変わるのかを、改訂の中心となったメディア研究部 放送用語・表現グループの塩田雄大が解説すると、 “ことばおじさん”こと元NHKアナウンサーの梅津正樹さんが、新しく採用されるアクセントに疑問や反論をぶつけ、予想外の熱い論争が繰り広げられました。ラジオやナレーションの場で辞典(アプリ)を欠かせないユーザー代表・秀島史香さんは両者の間に入りながらも、日本語の面白さを改めて感じていたようです。なお、このプログラムは後日、動画で公開する予定です。お楽しみに!

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3日目
G 東日本大震災から5年 “伝えて活かす”震災アーカイブのこれから
3日間のフォーラムの最後は、震災から5年を迎えた今だからこそ語り合うシンポジウム。大学や自治体、国会図書館そしてNHKなどで写真や映像のデジタルアーカイブを担当している専門家が集まり、「持続性」と「利活用」をテーマとして語り合いました。
登壇者は全部で7人もいましたが、話が分散することはなく、記憶を未来につないで再びの災害を防ぐためにアーカイブを使っていこうという目的は一致。熱のこもった発言が続きました。特に首都大学東京の渡邉英徳准教授はアーカイブをグラフィカルなデータコンテンツとして見せる手法を紹介。観客の関心を集めていました。このシンポジウムは後日、文研の月刊誌「放送研究と調査」でもお伝えする予定です。
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3日間の参加者数はのべ1,312人となりました。これは近年ではかなり多い数字です。会場でのアンケートでも非常に好評でした。ご参加いただいた皆様、改めて御礼申し上げます。上述したように、いくつかのテーマはこれから「放送研究と調査」や動画でご紹介していきますので、ご来場されていない方もぜひご覧ください。

文研フォーラム 2016年03月08日 (火)

#14 文研フォーラム報告① 「OTT」&「これからのテレビ」

メディア研究部 中尾益巳

3月1日から3日まで、東京・千代田区の千代田放送会館で
「NHK文研フォーラム2016が開かれました。会場にお越しいただいたみなさま。本当にどうもありがとうございました。全部を紹介するのは無理ですが、いくつかのプログラムについて内容を簡単に報告したいと思います。
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1日目
A OTTはメディア産業をどう変えるか~欧米最新事情、そして「グローバル戦略」について考える~
このプログラムは、文研メディア研究部海外研究グループの3人の報告と、海外事業者のパネリスト2人のプレゼンテーション、そして内外のコンテンツ配信事情に詳しいITジャーナリスト、西田宗千佳さんのコメントで進行しました。ほんのエッセンス、印象的な一言を綴ります。
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【文研・柴田厚(アメリカ担当)】
アメリカでは3大OTT(Netflix、Hulu、Amazon)の他にCBS、HBOなど既存の放送事業者が運営するOTTも増え、今後「協力と競合」が進んでいくだろう。(詳しくは『放送研究と調査』3月号に掲載されています)

【文研・田中孝宜(イギリス担当)】
NetflixとAmazonが進出したが、その前から公共放送BBCのiPlayerをはじめ商業放送ITV、衛星放送SKYなど放送事業者独自のOTTが普及しているため、それほど影響はない。

【Amazon Japan ジェームズ・ファレル氏】
映像コンテンツ配信だけでなく、DVD、本やマンガなどの書籍、番組関連グッズ販売などを合わせたサービスをできるのがamazonの強み。妖怪ウォッチの配達用BOXも人気。

【BBC Worldwide デビッド・ウィーランド氏】
iPlayerは定着。16~24歳でテレビ放送の視聴者は16%減少している。若い視聴者のためにBBC3(若者向けチャンネル)はオンライン配信のみでtwitterやInstagramとリンク。

【文研・山田賢一(中国担当)】
ネット動画サイトの誕生は早く2004年から。現在大手3社と放送事業者の配信サービスなどが競合しながら自主制作、課金化、モバイル化が進行。

【西田宗千佳氏(ITジャーナリスト)】
2020年に注目。災害の多い日本で放送はなくならない。しかし今の10代20代が大人になったらテレビはドミナントな存在ではなくなる。

B 「文研調査で探る動画利用者像」
  「これからのテレビ」はどこに向かうのか?~2030年を見据えて~

まず世論調査部の塚本恭子が、「10代から50代までの男女がネットの動画サービスをどのように見ているか」の最新調査結果を報告しました。中にはこんな興味深い発見も。

20代は「通勤通学中」「昼休みなど」「食事中」「寝る前」などの場面ごとに動画を使い分けている。通勤通学中に見るのは、細切れや音声だけでもOKな「音楽動画」や「数秒の投稿動画」など。
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続いて月刊誌「放送研究と調査」で「『これからのテレビ』を巡る動向を整理する」を不定期に連載しているメディア研究部の村上圭子が発表。昨年大きく動いたVODサービスのまとめや、今年の展開が予想される同時配信サービスや4K・8Kに関する最新状況を報告しました。そのいくつかの項目については、2月号に掲載した「Vol.7」がPDFとして全文公開されているので
こちらをご覧ください。
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後半は放送行政を担当している総務省大臣官房審議官の吉田眞人氏を迎え、今後の展開について聞きました。参加者からの質問を含め、なかなかはっきりと答えにくい内容もありましたが、次の世代の人たちに役に立つことを進めて行きたいというスタンスで話していました。詳しくは後日、村上のブログでお伝えします。
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次回は2日目、3日目のプログラムからご紹介します。

調査あれこれ 2016年03月01日 (火)

#13 月報3月号紹介① 「朝ドラ」研究、はじめました!

メディア研究部(番組研究)関口 聰

今日は、文研の刊行物である
「放送研究と調査(通称・月報)」3月号の発行日です。今日から開催中の文研の年に一度のビッグイベント「文研フォーラム」の会場では、実際にお手に取ってお買い求めいただくこともできますよ!

今回は、出来たての3月号から、誌面をかなり割いている調査報告“【「朝ドラ」研究】最近好調な「朝ドラ」を、視聴者はどのように見ているか?”についてご紹介したいと思います。


【ここで問題】
いきなり脱線しますが、「朝ドラ」というのはあくまで俗称です。正式には「連続テレビ小説」。「大河ドラマ」も実は俗称だったのですが、ある作品から番組冒頭に表記されるようになり、正式名に昇格(?)しました。その作品とは何だったでしょう?答えは文末に…



“最近好調な「朝ドラ」”と聞いて、皆さんが思い浮かべたのはこちら↓でしょうか?
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うーん、残念!
いくら半年間と放送期間の長い朝ドラとはいえ、調査を実施し、分析して論文にまとめて発行するまでを放送中に間に合わせるのはなかなか難しいのです…
でも、安心してください、『あさが来た』の調査もやってますよ!

さて、思わせぶりなタイトルをつけておきながらネタバレしちゃいますが、“最近好調な朝ドラ”とは、放送時刻が8時になり、視聴率が好転したとされている『ゲゲゲの女房』以降を想定しています。社会現象とまで言われた『あまちゃん』の時のフィーバーぶりは、まだ皆さんの記憶に新しいのではないでしょうか?大晦日にダイジェストをまとめ再放送し、『紅白歌合戦』で特別コーナーを組むのがすっかり定着しましたよね。
ただ、実のところ『あまちゃん』の世評と視聴率等のデータとは必ずしも一致せず、そのギャップについて調査したのが以下の過去論文です。

▼『あまちゃん』に関する4つの調査
  http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/bangumi/077.html
▼その英訳版(ものすごく手間がかかりましたが、自信作です!)
  http://www.nhk.or.jp/bunken/english/reports/pdf/report_16012201.pdf
▼『あまちゃん』調査をもとに、2014年3月に開催した「特別セッション」の採録
  
http://www.nhk.or.jp/bunken/summary/research/bangumi/079.html

しかし我々『あまちゃん』調査チームは、その後もモヤモヤとした気持ちを持ち続けました。思えば朝ドラは、今となっては古臭い、とても変わった放送形態をとっています。朝の忙しい時間に毎日15分を週6日、これを半年間も見続けなくてはなりません。
視聴者はいったい、どんな気持ちで朝ドラを見続けてくれているのでしょう?
それを知るべく、インターネット上にモニターを集め、数週間にわたって朝ドラについて語ってもらう調査を昨年実施しました。MROCエムロック(Marketing Research Online Community)といいます。英文を見るとどんな調査かイメージできるかと思います。
集まった人々は、そこそこ朝ドラを見てくれている人でした。忙しい出勤前にリアルタイムに見る人、録画して家族と夕食を食べながら見る人、色々な朝ドラの楽しみ方をうかがうことができました。ただ、過去の作品について語ってもらおうとすると、あまり発言は盛り上がりませんでした。『あまちゃん』が好きだと言う人も多かったのに、たった2年前の『あまちゃん』でさえ個々のシーンの思い出は薄れていたのです。どうやら、ほぼ毎日、毎週続く朝ドラ視聴においては、どんどん記憶が上書きされてしまうのではないか、と我々は考えました。「朝ドラ」のことを調べるには、その時点で放送しているものについて訊くべきではないのか、と。

そこで、今回の調査対象は主にこちら↓
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WEB調査とグループインタビューで、放送中であった『まれ』について様々な角度から質問しました。それを分析することで、視聴者が朝ドラ全般に対して何を求めどう評価しているか、と同時に、『まれ』というドラマはどんな特徴を持っていたかを知ろうとしたのです。詳しい内容は是非本文を読んでいただきたいのですが、チラッとデータだけ置いておきましょう。ピンクが女性キャスト、ブルーが男性です。

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いったい誰が何位なのか?気になる答えはどうぞ本文でご確認ください!

こんなふうにヒット番組の良いところを調べて形に残し、現場に還元することもまた
文研の役目なのです。これから何年かかけて「朝ドラの継続的研究」を進めていきます。繰り返しになりますが、『あさが来た』の調査も現在進行中。安心してくださいね!


【冒頭の問題の答え】
2004年の『新選組!』が最初でした。意外に最近であることと、当時「大河っぽくない」と言われた作品から表示されているのがちょっと興味深いですね。