「録音構成」の発生

―NHKドキュメンタリーの源流として―

公開:2016年1月30日

日本の放送ドキュメンタリーの源流部には,「録音構成」と呼ばれたラジオ・ドキュメンタリーの系譜が存在している。本稿は,戦後すぐから50年代末ごろにかけて隆盛したこの「録音構成」のはじめの一歩を記述するものである。

日本では敗戦直後,占領軍の指導下に「民主主義の良き市民をつくり育ててゆく」ことを目標とする社会番組という番組領域が,NHKのラジオ放送の中に創設された。その中で「民衆へのマイクの開放」をうたって戦後間もない時期に大きな成功を収めたのが『街頭録音』(1946~58)という番組であった。この番組は毎回,特定の社会問題をテーマにして,それに対する市井の人々の率直な声を録音して放送したものであったが,最初の「録音構成」は,この『街頭録音』の特別版として1947年4月22日に誕生した。『街頭録音 ガード下の娘たち』と題された回である。「青少年の不良化をどうして防ぐか」というテーマで企画されたこの番組は,そのテーマについて皆で議論するというそれまでのスタイルをとらず,ガード下の暗闇に制作者がマイクだけを持って潜入し,自在なインタビューで「パンパン娘」と呼ばれた女性たちの飾らない声を伝えたものであった。

本稿では,この最初の「録音構成」を生み出した『街頭録音』という番組の草創期から47年秋ごろまでの歴史的展開を記述し,その番組内容をいくつかの指標を設けて分析していく。日本の放送ドキュメンタリーの源流部において,どんな特徴を持つ番組がどんな経緯で形成されていったのか,番組内容と,それが題材とした当時の現実と,番組制作者の三者を一体的に記述しながら明らかにしていく。

メディア研究部 宮田 章

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