【放送のオーラル・ヒストリー】

「テレビ美術」の成立と変容

(最終回)テレビ美術の60年、現在、そして未来へ

公開:2016年3月1日

テレビとともに生まれた「テレビ美術」がどのように成り立ち、変遷してきたかを、関係者の証言をもとに読み解くシリーズの最終回。テレビ美術のこれまでと、現在、未来についての考察を深める。関係者35名の証言を元に、主にNHKのドラマ制作現場を中心に、次の3つの観点からその歴史を振り返った。(1)テレビ美術業務は「時間」との闘いだったのではないか。(2)リアリティーを求めて試行錯誤したが、目指すものは「本物」ではなく、「本物らしさ」ではなかったか。(3)テレビ美術は一定の役割を終え、次のステップへ向かっているのではないか。

「オーラル・ヒストリー」の手法を用いたことによる成果も大きかった。文書資料からは得ることが難しかった具体的な業務内容や成り立ち、当時の担当者の心境にも近づけることができ、座談会形式、番組を視聴しながらのインタビューといった方法論にも利点が認められた。今後、映画に限りなく近づくようにみえるテレビの美術だが、その2つをわけるものとして「時間」はキーワードとなりそうだ。そしてテレビ美術が今後どこへ向かうかは、制作者が、テレビ文化をどれだけ愛せるかにかかっているように思われる。

メディア研究部 廣谷鏡子

※NHKサイトを離れます

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