文研ブログ

2016年8月

調査あれこれ 2016年08月26日 (金)

#41 「シン・ゴジラ」を見て考えた「テレビ」の今

世論調査部(視聴者調査) 保髙隆之

いきなり私事で恐縮ですが、いま話題の映画「シン・ゴジラ」を仕事帰りに見ました。
公開初日でしたが、客の入りは半分ほど。ただ、上映終了後に出口へ向かう観客たちが熱く感想を語り合っていて、他の映画とは何かが違うぞ、と感じました。その後、週末の観客動員が公開後2週連続でトップ、累計興行収入が45億円を超える大ヒットとなっています(8月21日現在)。客層も私のようにゴジラ映画に親しんでいた中年男性だけではなく、子どもの頃に見た記憶はあっても離れてしまった若年層や女性にも広がりを見せているそうです。公開前には「ゴジラは若い観客にとって既に過去のものでは」という冷めた声もあったようですが、それを覆したのが、封切直後にSNSで爆発的に拡散した観客の評価だったとネットニュース上で話題になっています(もちろん、作品の力があればこそですが)。

知名度抜群の「怪物」ゴジラでさえ、SNSという現代の口コミネットワークなしでは、映画を見るという行動の導火線に簡単に火をつけられない。しかし、いったん点火すれば、関係者の予想を超えるような勢いで爆発の連鎖が起こる。そんな往年の大怪獣が新しい形で暴れまわる姿に私が重ね合わせたのは現在の「テレビ」でした。

文研では今年、20代を対象にグループインタビューを行いました。目的は、若年層のテレビの「リアルタイム視聴」と「録画再生」、「(ネット)動画利用」の使い分けの実態を知り、巷で言われている「テレビ離れ」の背景に迫ることでした。調査を通じて強く私の印象に残ったのはテレビとの接点の変化です。調査に協力して下さった20代の皆さんにとって、テレビを見るきっかけは、コンテンツとしての魅力よりも、それが世間でどう受け止められたか、というツイッターやYahoo! ニュースなどでの反響でした。そのため、話題になった番組のポイントだけを後から確認できれば十分で、YouTubeなどで番組の一部が切り出された動画を「つまみぐい」している様子が浮かび上がりました。また、一人暮らしをするタイミングでテレビを買わなかった、という人も少なくありません。若年層で想像以上にテレビとの接点がなくなっている現状は、「テレビっ子」だった40代の私にとって衝撃でした。

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   テレビの代わりにタブレットで動画を見る若者

一方で、話を掘り下げていくと、彼(彼女)らはテレビ番組を潜在的に好きなことも伝わってきました。送り手であるテレビ局と、受け手である若い視聴者の求めるものが今はズレていても、「シン・ゴジラ」のように新たな経路を通じて合致させることができれば、再び爆発的な広がりを実現できるかも知れない。そんな希望も(放送に携わる者として)感じました。今回のグループインタビューの詳しい報告は、
「放送研究と調査」8月号に掲載されています。是非、ご一読ください!

おススメの1本 2016年08月19日 (金)

#40 鬼怒川決壊から1年。大水害から何を学ぶか? ~茨城県常総市における住民調査から~

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか

逆巻く濁流の中、電信柱に身を寄せていた男性がヘリコプターで救出される様子を中継したこの場面。記憶されている方も多いのではないでしょうか。

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昨年9月10日、茨城県常総市で鬼怒川が決壊。常総市では市の面積の3分の1が浸水し、4,000人以上が浸水した地域に取り残され、いわゆる「孤立」が問題になりました。NHK放送文化研究所では、避難指示・勧告の対象となっていた地域の住民1,000人を対象に、当時の情報入手や避難行動について面接による世論調査を実施しました。


「指定避難場所」で孤立。せっかく「避難」したのになぜ?
今回の調査に回答した686人のうち、30%に当たる203人が「孤立」状態になりました。孤立した場所は「自宅」が73%で最多。ところが、次に多かったのが、「指定避難場所」で、13%を占めました。調査のデータを読みこんでいくと、「指定避難場所」で孤立したのは、かなり早い段階で避難行動を起こした人たちでした。

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せっかく早い段階で避難したのに、「孤立」してしまったのはなぜか?実は、常総市の「指定避難場所」が浸水想定区域内にあったのです。
常総市は平成21年に「洪水ハザードマップ」を全戸に配布していました。鬼怒川が決壊した場合に浸水が想定される地域が一目でわかります。「マップ」を見れば、避難場所が浸水区域内にあるのは明らか。これを知っていれば、早めに浸水区域の外に避難し、孤立を避けられたかもしれません。
自治体が避難場所を浸水区域内に設置していたことも問題ですが、回答した住民の53%がこの「ハザードマップ」を「見たことがない」と答え、すぐに見られる場所に保管している人はわずか8%でした。災害が起きる前にハザードマップを確認しておくことの有効性・重要性を改めて痛感するデータです。

さてここで、ブログを読んでくださっているあなた。お住まいの地域のハザードマップはお手元にありますか?「どこかにしまってあるはずだけど…」「新聞と一緒に捨てた…」大丈夫です。このサイトに住所を入力すれば、全国のハザードマップが見られます。
「国土交通省ハザードマップポータルサイト」


「孤立」を避ける。「孤立」に備える。
孤立したとき、すぐにヘリコプターやボートで助けてもらえるとは限りません。今回の水害は朝から日中にかけての時間帯に発生し、救出時には風雨も峠を越えていました。これが夜間や暴風雨などの悪条件下であったら、迅速な救出は困難でした。
今回の調査では、孤立した期間は最も長い人で5日間でした。まだ残暑の厳しい9月、もし孤立が長期化していれば、健康面での問題も深刻化したことでしょう。国の中央防災会議が利根川や荒川などの決壊を想定した「首都圏大規模水害」の報告書では、最大で110万人が孤立、浸水は2週間以上も続くといいます。
水害のおそれがあるときには、早い段階で浸水しない地域に「避難」をするのがベストです。その一方で、浸水のおそれのある家庭や職場では、孤立する事態も想定して連絡手段の確保や物資の備蓄をしておくことも重要です。鬼怒川の水害から学ぶべき教訓は数多くあります。

今回ご紹介した常総市住民調査の結果の詳細は、「放送研究と調査」2016年8月号に掲載されています。
また、9月3日に東京大学で開催される日本災害情報学会シンポジウム「鬼怒川水害から1年~情報と避難を考える~」では、水害の当事者のみなさんの証言と併せて、このデータも報告する予定です。詳細は「日本災害情報学会」ホームページをご覧ください。

放送博物館 2016年08月05日 (金)

#39 リオ五輪の熱闘観戦は、NHK放送博物館「愛宕山8Kシアター」でどうぞ!

計画管理部(計画) 渡辺誓司

いよいよ、あす6日(日本時間)に開幕するリオデジャネイロオリンピック。4年に1度のスポーツの祭典が、南米・ブラジルで17日間にわたって開催されます。NHKでは、連日の熱戦をテレビ・ラジオのすべての放送波やインターネット中継でお伝えしますが、国内の6つの会場では、次世代・高画質テレビ「8Kスーパーハイビジョン」による、パブリックビューイングを実施します。その会場のひとつ、NHK放送博物館「愛宕山8Kシアター」の大画面映像で、あなたも、世界最高峰のアスリートたちが繰り広げる感動の瞬間に立ち会ってみませんか。

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「8Kスーパーハイビジョン」の特徴は、何よりも、きめ細かな美しい映像です。現行のハイビジョンの16倍も多い画素によって、超高精細な映像を映し出すことができます。スーパーハイビジョンは、今月1日からBSで試験放送を開始していますが、「愛宕山8Kシアター」では、200インチの大型スクリーンの迫力ある画像に、22.2マルチチャンネルの立体的な音響が加わり、まるでオリンピックスタジアムで観戦しているかのような、圧倒的な臨場感を味わうことができます。

今回、開会式、閉会式をはじめ、日本時間で午前中に行われる競泳、陸上競技の一部を生中継でご覧いただけます。また、柔道、バスケットボール、サッカーは、録画映像でお楽しみいただけます。開会式と閉会式の観覧は、事前にインターネットでお申し込みいただく必要がありますが(開会式の申し込みは終了、閉会式の申し込みは8月7日まで 終了しました)、
そのほかの競技は、下の番組表のように、休館日の8日と15日を除いて、入場無料で自由にご覧いただけます。

「愛宕山8Kシアター」パブリックビューイング 番組表
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※放送スケジュールは変更する場合があります。詳しくはこちら

また、「愛宕山8Kシアター」のリオデジャネイロオリンピックの感動の後にお寄りいただきたいのが、放送博物館3階で開催中の企画展「NHKアナウンサーヒストリー~ことばへの飽くなき挑戦~」(12月18日まで)です。日本で放送が始まって91年、言葉を通じて情報を届けるスペシャリストであるアナウンサーの歩みを、報道、スポーツ、芸能などの番組とともに振り返ります。
1964年の東京五輪の聖火入場の実況などオリンピックイヤーにちなんだ貴重な音源をはじめ、高橋圭三、宮田輝ほか往年のアナウンサーの名調子にも触れることができます。夏休みの自由研究の宿題にお役立ていただけること、請け合いです!

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放送博物館のある愛宕山は、都心にありますが、8月に入って蝉時雨が真っ盛りです。スーパーハイビジョンは、東京オリンピック・パラリンピックが開催される2020年には、本格的な普及が期待されています。その未来に先んじて、真夏の暑さにも増して熱いリオデジャネイロオリンピックの感動を、ぜひ「愛宕山8Kシアター」で体感なさってみてください。

                                                                     

NHK放送博物館
「愛宕山8Kシアター」で、リオデジャネイロオリンピックのパブリックビューイングが開催される期間(8月6日~22日)のご案内です。
休館日:8月8日(月)・15日(月)
    ※8月22日(月)は開館しますが、4階は休場となります。
開館 :午前9時30分~午後5時(「愛宕山8Kシアター」は午前10時から)
    ※ただし、開会式が行われる8月6日(土)と閉会式の8月22日(月)は、開館は午前7時30分、「愛宕山8Kシアター」は午前8時~午後5時(開会式と閉会式の観覧は要申し込み。なお、開会式の申し込みは終了、閉会式の申し込みは8月7日まで 終了しました。)
所在地:東京都港区愛宕2-1-1  

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(ホームページはこちら)