文研ブログ

調査あれこれ 2019年07月19日 (金)

#197 「必ずしも結婚する必要はない」が7割近くに  ~第10回「日本人の意識」調査から~

世論調査部(社会調査) 吉澤 千和子


グローバル化や少子高齢化、情報化社会の到来など、私たちが生きる時代は、政治や経済・社会・技術など様々な面で常に変化しています。そんな時代の流れの中で私たち日本人の意識はどのように変化しているのでしょうか?
こうした疑問に、印象論ではなく、科学的な世論調査によって一つの答えを出そうとするのが「日本人の意識」調査ですこの調査は、NHKが1973年から5年ごとに実施しており、第10回は昨年6~7月に行いました。45年にわたる意識の変化を紐解く調査の中から、いくつかをご紹介します。


■生活満足度~45年間で「満足している」が大きく増加

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今の生活に、全体としてどの程度満足しているかを尋ねた結果、「満足している」という人が増えています。現在では「満足している」が39%で、「どちらかといえば、満足している」を含めると92%の人が満足していると回答しています。


■結婚観~「必ずしも結婚する必要はない」が7割近くに

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結婚することについて「必ずしも必要はない」と考える人、子どもをもつことについて「結婚しても、必ずしも子どもをもたなくてよい」と考える人が増えました。特にこの10年間は増えていて、今ではそれぞれ68%、60%と多数派になっています(この2問は第5回の1993年から開始)。


■天皇に対する感情~「尊敬」が4割超で過去最多

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この調査では、天皇(73年~88年 昭和天皇、93年~2018年 先の天皇)に対してどのように感じているかも聞いています。
調査開始からの変化をみると、88年までの昭和の時代は結果に大きな動きはありませんでした。しかし、平成になると「好感をもっている」が大幅に増え、その後は、調査のたびに最も多い回答が入れ替わりました。08年以降は「尊敬の念をもっている」という人が増加して今回は41%に。「好感をもっている」や「特に何とも感じていない」を上回り、45年間で最も多くなっています。


このほか、調査では男女関係、家庭像、夫婦・親子関係、政治、ナショナリズム、日常生活など幅広い領域で日本人の意識を調べています。詳しい分析結果は『放送研究と調査』5月号6月号で報告しているほか、文研のホームページでも全文お読みいただけます。ぜひご一読ください。


メディアの動き 2019年07月17日 (水)

#196 "ロボットの存在感"は、スポーツ観戦の体験を変えることができるか?

メディア研究部(メディア動向) 谷 卓生


ディスプレイを搭載した“走行ロボット”が、音楽に合わせて会場内を動き回り、次々と映像表現を生みだしていった。

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                      “走行ロボット”によるデモンストレーション
                                                                        (ステージ正面から)


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                                                                 (ステージ上部から)


このデモンストレーションが披露されたのは、NTTサービスエボリューション研究所が主催した「スポーツ観戦の再創造展」 1)(2019年7月4~6日:日本科学未来館)。ラグビーワールドカップや東京オリンピック・パラリンピックなど、スポーツのビッグイベントの開催を控えて、テレビ局を始め、各メディアは、スポーツの魅力を伝えるために工夫を積み重ねている。4K・8KやAR・VR、AIなどのさまざまな最先端テクノロジーを使うことが検討されていて、この「再創造展」でも、高精細大画面映像や立体映像などのデモが披露されていた。

しかし、そうした取り組みとは全く違う、異色の伝え方が、上記の“走行ロボット(グランドボット)によるデモ”だった。走行ロボットは、上部に六角形のディスプレイを載せていて、自走する。しかも、このときは39台だったが、群れ(Swarm)として、遠隔制御して動かすことができるようになっている。ざっくりと言うなら、39個の六角形のディスプレイを動かして、平面上に何かを描き出せる仕掛けということだ。約20分間のデモは、ミュージシャンのパフォーマンスも含めて、「メディアアート」好きの私としては、十分に堪能できるものだった 2)


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                             “走行ロボット(グランドボット)”


しか~し。
これって「スポーツ観戦の再創造」がテーマだったよなあ、って考えると、この仕掛けは、スポーツ大会の開会式などのイベントの演出には使えるかもしれないけれども、スポーツの新しい見せ方にどうつながるのかなあ???と、モヤモヤしたのも正直なところだった。そこで、この展示に協力したアルスエレクトロニカ・フューチャーラボ 3)の小川秀明さんに聞いてみた。いろんなアイデアを検討しているということだが、例えば、競泳のパブリックビューイングの会場で、大画面のスクリーンに競技の映像を流すだけでなく、“選手の姿をディスプレイに映した走行ロボット”を、レースの状況に合わせて動かすと、観客に、映像だけでは伝えきれない“何か”、リアリティやダイナミズムのようなものが伝わるのではないか。また、走行ロボットといっしょに走ったりすれば、レースを疑似体験できるのではないか・・・等々、これまでにはなかった新しい「体験」を生みだすことを考えているということだった。走行ロボットは、現在100台あり、その数でも、全部を連携して動かすことができるという。

VRなどで、バーチャルなスポーツ観戦の体験はさらに進化していくと思うが、その一方で、存在感(“気配”と言ってもいいかもしれない)を持った“リアルな何か”があれば、“リアルな何か”を動かせば、これまでと違った、“新たなスポーツ観戦の体験”をつくることできるのではないか、そんな可能性を感じた。
そして、さらには、"リアルとは何か“、"リアリティとは何か”ということまで深く考えさせてくれる体験となった。


1) https://re-imagined.jp/

2) 走行ロボットによるデモの動画
  https://www.youtube.com/watch?v=YZwEkm_zBf4

3)「アルスエレクトロニカ・フューチャーラボ」(Ars Electronica Futurelab)は、先端技術にフォーカスした実験的なプログラムで知られる、世界的なアート×テクノロジーの祭典「アルスエレクトロニカ」の研究開発部門。オーストリアのリンツ市にある。
  https://ars.electronica.art/about/jp/


調査あれこれ 2019年07月12日 (金)

#195 伝えておきたいこと

メディア研究部(番組研究)原 由美子

こんにちは。メディア研究部番組研究グループの原由美子です。この秋で、40年あまり勤めたこの研究所を卒業します。そろそろ机回りを片付け始めなければと、書棚や引き出しの中を久しぶりに眺めていると、しばらく手を付けていなかった報告書やファイル群が目に飛び込んできます。それらをパラパラとめくるうちに、このまま処分してしまうには惜しい、是非、放送研究に携わる方々や同僚後輩に知っておいてほしいと思うものがいくつか出てきました。そこで、私が携わってきた「番組研究」という仕事にかかわるテーマでお伝えしておきたいことを、『放送研究と調査』内の「放送研究リポート」で、3回にわたって書いてみることにしました。

<番組の内容分析>
1回目(6月号)でお伝えしたのは、番組の内容分析についてです。番組を研究する際の手法の一つで、かつてはさかんに行われ、また行われるべきだとされてきながら、最近は、少し影の薄い研究領域です。その手法を解説するとともに、私自身が手掛けてきた研究の事例を紹介しました。

<「ステーションイメージ調査」とその展開>
2回目(8月号)は、手法ではなく、研究テーマの展開の話です。ひとつの調査研究が、別の共同研究や新しいテーマの発見へとつながっていった事例を筆者の経験から紹介します。ここで紹介している研究は、ステーションイメージや番組分類、バラエティ―番組の研究など、現在にも通じるテーマだと思います。これからの研究のヒントになればと思います。

<番組の質的評価>
3回目(10月号)は、放送や番組・視聴者を研究する者にとって永遠のテーマともいえる、「番組の質的評価」を取り上げました。これまでにどのような取り組みが行われてきたかを概観するとともに、文研の大先輩の業績を紹介します。


そもそも、このような「覚書」を書こうと思い立ったのは、「番組の内容評価調査」に取り組んだ大先輩が、退職前に私たち後輩に向けて残してくれたメモを、ファイルの中から再発見したのがきっかけでした。
先輩から受け継いだものを、後輩に引き継いでおきたい。そんな思いで書いたシリーズです。みなさんにとって参考になることが少しでもあれば幸いです。

 

おススメの1本 2019年07月05日 (金)

#194 平成時代の「放送研究」あれこれ ~放送文化研究所・30年間の論文・リポートから~⑤ テレビ美術から見る「キャスターショー」の誕生と発展  ~『ニュースセンター9時』と『ニュースステーション』のスタジオセット分析を中心に~(平成21年)

メディア研究部(メディア動向)柳澤伊佐男


NHK放送文化研究所(文研)が手掛けた平成時代30年間の調査研究をご紹介するシリーズ、5回目は、平成21年(2009年)の「放送研究と調査」11月号に発表されたテレビ美術から見る「キャスターショー」の誕生と発展 ~『ニュースセンター9時』と『ニュースステーション』のスタジオセット分析を中心に~を取り上げます。

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この論文は、テレビ番組を制作する上で必要な「美術」に着目し、ニュース番組の考察を行ったものです。論者は、テレビ美術について、「スタジオセット(大道具、小道具)、衣装、タイトル、グラフィックス等の総称」と定義した上で「通常、テレビ視聴者の意識や関心の主たる対象にはなりにくいものの、番組の映像表現にリアリティや臨場感、説得力や信頼性を与え、番組が展開される『場』や『空間』のイメージ、距離感、親近感といった感覚の構成にとって不可欠な要素」だと述べています。そのテレビ美術によって、番組の印象や意味が大きく左右されているという視点に立って、NHKの『ニュースセンター9時』とテレビ朝日の『ニュースステーション』の2つの番組について、分析を行っています。

この2つの番組は、それぞれ1970年代、80年代に始まった「キャスターショー型」のニュース番組です。スタイルが異なるように思われますが、テレビ美術に注目すると、「多くの共通点を見出すことができる」としています。その共通点として、論者は▼スタジオセットが「テレビらしいニュース番組」というコンセプトを具体化しようとしていた、▼ニューススタジオを「作りもの」ではなく、より「本物らしい」空間にしようという設計思想、▼「キャスター」の「語り」や「パーソナリティ」を最大限に生かし、これを際立だせるという意図でセットが設計されていた、という3点をあげています。これらの共通点は、いまのニュース番組にも見られ、魅力ある番組作りに欠かせない要素になっているようです。

私は長年、ニュースの取材や制作に携わり、テレビ美術の重要性を実感してきました。地域の放送局にいた際、視聴者から「スタジオのセットが野暮ったい」とか、「字幕が見にくい」など“おしかり”を受けたこともあります。そうした声に耳を傾けたり、仲間と知恵を出し合ったりしながら、より多くの視聴者に信頼され、見てもらえるニュース番組にしようと努力を重ねました。

テレビ美術について、論者は、「各分野の先端技術との相互作用の中で進展してきた側面がある」と指摘しています。インターネットの発達、放送と通信との融合が進むいまの時代、テレビ美術がどのような形で進歩を遂げ、ニュース番組にどんな効果をもたらすのでしょうか、これからも注目したいと思います。


調査あれこれ 2019年06月21日 (金)

#193 10代がSNSを使う理由 1位は?

世論調査部(視聴者調査)渡辺洋子


皆さんが使っているSNSは何ですか?そして、それを使う理由は?

SNSは何を使っている?

私はプライベートでは、LINEとInstagramがメインでFacebookは主に閲覧だけ、Twitterはほとんど使っていません。と、ここまで書くと大体年齢がわかってしまいます。


こちらのグラフは、男女年層別にSNSのサービスごとの利用率を示したものです。

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LINE
TwitterInstagramFacebookと比べて別格に多く、全体では7割弱が利用しています。ただし年層差は大きく、50代以上になるとぐっと利用率が下がります。LINEを除くと、20代以下ではTwitterの利用率が高いことがわかります。30代以上の男性ではFacebook>Twitter>Instagram、30~40代女性ではInstagram≒Facebook>Twitterという傾向がみえますね。

ということで、“Instagram とFacebookは使うけれどTwitterは使わない”というと、30~40代女性の特徴となり、女40代の筆者は、調査結果の通りここに入るということになります。

このように、利用するSNSは男女や年齢によって異なりますが、さらにSNSを利用する理由も年齢で大きく違っていたんです。


SNSを使う理由は?

40代の私にとって、SNSは友達の投稿を見ることがメインです。なので、SNSって“つながり”とか“コミュニケーション”を目的に使うものだよね、と当然のように思い込んでいました。ところが、若い人たちにとってはそうではありませんでした。


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こちらのグラフは、Twitter、Instagram、Facebookのいずれかを使う人に、それらを使う理由を尋ねた結果です。

全体では、「個人的に知りたい情報が得られるから」「家族や友人、知人の近況を知りたいから」がどちらも50%程度ですが、16~19歳では「個人的に知りたい情報が得られるから」という情報収集を目的とする人が74%にものぼる一方、「家族や友人、知人の状況を知りたいから」というコミュニケーションを目的とする人は42%と大きな差があります。

若い人たちにとってのSNSは、“つながり”のためというより、情報収集のために使う道具だったんです。

『放送研究と調査』2019年5月号では、「SNSを情報ツールとして使う若者たち~「情報とメディア利用」世論調査の結果から②~」と題して、SNSから多くの情報を得ている今の若者にとって、SNSやテレビはどのような存在なのか、さらにニュースに対してはどう接しているのかについて、調査の結果をもとに分析しています。どうぞご覧ください。

調査あれこれ 2019年06月14日 (金)

#192 平成で日本人はどう変わったか?~博報堂生活総研と座談会を行いました

世論調査部(社会調査)荒牧 央


文研では1973年から5年ごとに「日本人の意識」調査を継続して行い、日本人のものの見方・考え方の変化について分析を続けています。

先日、同じように長期の時系列調査を実施している博報堂生活総合研究所(以下、生活総研)の研究員お二人と、文研の「日本人の意識」調査チームで「平成」の価値観の変化をテーマに座談会を行いました。

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博報堂生活総研 三矢さん・内濱さん      NHK文研 村田・荒牧・吉澤


生活総研では「生活定点」調査や「家族調査」などの時系列調査を、長いものでは30年にわたって実施し、それらの調査データからの知見を最近書籍にもまとめられています。

今回、お互いの知見を持ち寄ったことで、
・家庭に対する意識や家族のあり方は大きく変わったものの、家族の価値は決して低くなっていないこと
・人間関係などで「公」よりも「私」を重視する考えが強まっていること
などが共通の傾向としてみえてきました。

そのほか、一見似たような質問なのに食い違う結果が出ている質問や、私たちの調査では全く尋ねていないような質問などもあり、興味はつきませんでした。

そもそも別の研究機関の方と、それぞれの調査データについて時間をとって議論するという機会は、実は多くありません。そういう意味でも非常に有意義な時間になったと思います。

今回の座談会の様子は博報堂のウェブサイトに掲載され、文研のサイトにも掲載しています。ぜひご一読いただければと思います。

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         座談会を終えて

『放送研究と調査』5月号
6月号では、2018年に実施した「日本人の意識」調査の最新の結果について詳しく報告しています。こちらもぜひご覧ください。


おススメの1本 2019年06月11日 (火)

#191 平成時代の「放送研究」あれこれ ~放送文化研究所・30年間の論文・リポートから~④ テレビの災害情報はどう評価されたか  ~『雲仙・普賢岳災害と放送』調査から~(平成4年)

メディア研究部(メディア動向)柳澤伊佐男


NHK放送文化研究所(文研)が手掛けた平成時代30年間の調査研究を紹介するシリーズ、4回目は、平成4年(1992年)の「放送研究と調査」1月号に掲載された「テレビの災害情報はどう評価されたか~『雲仙・普賢岳災害と放送』調査から~」を取り上げます。


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この論文は、防災や報道のあり方に多くの教訓・課題を残した長崎県の雲仙・普賢岳の火山災害をテーマに、災害情報の伝達がどのように行われたかについて分析したものです。雲仙・普賢岳は、長崎県にある火山で、平成2年11月、198年ぶりに噴火しました。翌年(平成3年)6月3日の大火砕流で報道関係者や消防団員ら43人が犠牲になったほか、噴火活動が4年半続くなど、災害は大規模で長期間に及びました。この火山災害について、文研は、平成3年10月、ふもとの島原市・深江町(現在の南島原市深江町)の住民にアンケートを実施し、学識・防災関係者への聞き取り調査なども行った上で、災害情報はどう収集されてどう伝えられたか情報は人々にどう受け止められ理解されたか、▼災害放送はどう評価されたかという3点について、分析を行いました。

論文では、分析の結果をもとに▼災害情報の入手と放送、▼メディアへの評価と期待、▼災害情報の伝え方、▼テレビの取材、以上の4つの項目について考察しています。この中で私が特に注目したのは、「テレビの取材」に関する考察です。当時の報道各社の取材について、▽応援を含む多数の取材陣が現地に入ったことで、タクシーが各社にチャーターされ、市民の足が奪われた▽川沿いの狭い道路に各社の中継車が並び、土石流災害復旧の作業を妨げた▽避難した後の留守宅に入り込み無人カメラ用の電源を引き出して警察から事情聴取されたテレビ局もあったとした上で、「こうした無秩序で節度を欠いた取材が繰り返された結果、被災者からは厳しい報道批判、不信の声が上がるように」なったと指摘しています。本人か家族が取材を受けたり、取材を目撃したりした住民のうち、5人に1人がテレビ局の取材態度に批判的だったという調査結果なども紹介しています。

当時、私も現場で取材にあたった報道陣の一員でした。避難所で、合羽姿の記者がそのまま入ろうとして、市の職員から注意を受けた場面に遭遇したことがあります。火砕流で犠牲者が出た後、私たちに対する市民の接し方が厳しくなったと感じたこともありました。私も批判の対象になった1人だったのでしょうか。

雲仙・普賢岳の災害の後、災害取材・報道のあり方が大きく変わりました。災害現場に向かう際、上司から、▼現地の状況に動じることなく、正しい情報を冷静に伝えること、▼自らを含めたスタッフの安全確保に十分注意を払うことなどを、繰り返し言われました。今でもその心構えで臨んでいるつもりです。防災・減災の情報は、人の命に関わるだけに、的確かつ、迅速に伝えることが求められます。もちろん、取材態度を含めて、視聴者の信頼を損なうことがあってはなりません。いまのマスコミ報道をめぐる状況はどうでしょうか。28年前の雲仙・普賢岳の教訓を忘れてはならないと思います。


調査あれこれ 2019年06月07日 (金)

#190 世論調査の手法はいろいろ - より良い手法を探っています

世論調査部(研究開発)萩原潤治

「世論調査部の萩原です」と自己紹介すると・・・
「あー、内閣支持率のニュースをよく見ますよ」とか「電話で調査してるんですよね?」とか言われることが多いですね。

確かに、NHKは毎月、内閣を支持するか否かなどを聞く「政治意識調査」を電話で行い、結果をニュースにしていますので、世論調査=電話という印象が強いのかもしれません。ただ、世論調査には電話法のほかにもいくつか手法があるんです。

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「個人面接法」では調査員が調査相手のご自宅を訪問し、面談して回答していただきます。また、「郵送法」では質問紙を郵送し、回答を記入して返送していただきます(NHKでは、調査員が質問紙を届ける「配付回収法」という手法も行っています)。

冒頭の「政治意識調査」は、その時々の内閣支持率や時事問題などについて、人びとの意識を把握する調査ですので、調査期間はできるだけ短く、また結果もなるべく早くお伝えすることが望ましいでしょう。それで、最も機動性の高い「電話法」が選ばれているというわけなんです。

さて、この「電話法」に携わっている人たちにとって、2016年は大きな転機の年でした。
それまでの全国電話調査は固定電話だけが対象でしたが、これに加えて携帯電話にも発信する「固定・携帯RDD」を報道各社が導入し始めたのです。NHKも2016年12月からこの手法を採用しています。携帯電話しか持たない人にも調査できるようになったことで、若い人の回答数が増え、調査の精度がアップしました。

しかし、問題も残っています。全国ではなく、都道府県など地域を限定した電話調査では、携帯電話の番号からは地域が特定できないので、今も固定電話のみで調査をせざるを得ないのです。せっかく、「固定・携帯RDD」を始めたのに、地域調査は固定電話だけのまま・・・もどかしいですが、今のところ解決策は見つかっていません。

さらに、この固定電話調査は、若年層の回答数が少なく、高年層の回答数が多いという傾向があります。「世論調査=国民の縮図」として公表する以上、この状況が深刻化する前に手を打たなければ、世論調査への信頼は揺らぎかねません。

(前置きが長くなりましたが・・・)そこで!今回の神戸市などを対象にした地域限定の世論調査では、固定電話による調査の代わりに、「郵送法」を改良して行い、その効果を検証しました。

「郵送法」は、有効率の高さや多様な質問文・選択肢を作ることができるという特長がありますが、機動性では「電話法」にかないません。このため今回は、いつもの「郵送法」よりも、どの程度、調査の期間を短くできるのかを工夫して設計してみました。

この改良版・郵送法は、固定電話調査の代わりになりうるのでしょうか。手法の詳細と精度の検証結果について『放送研究と調査』5月号に書きました。ぜひご覧ください。

 

おススメの1本 2019年05月31日 (金)

#189 平成時代の「放送研究」あれこれ~放送文化研究所・30年間の論文・リポートから~③  調査研究ノート 韓国「論文ねつ造事件とメディア」(平成18年)

メディア研究部(メディア動向)柳澤伊佐男


NHK放送文化研究所(文研)が手掛けた平成時代30年の調査研究を紹介するシリーズ、3回目は、韓国のメディアに関するリポート、平成18年(2006年)の「放送研究と調査」5月号に掲載された「韓国『論文ねつ造事件とメディア』」を取り上げます。

この事件は、平成17年(2005年)に発覚しました。韓国の研究者が世界で初めて「クローン技術を使ってヒトの胚から“万能細胞”ともいわれるES細胞を作ることに成功した」と発表した論文が、ねつ造されたものだったというものです。ご記憶の方も多いかと思います。

この問題を最初に指摘したのが、韓国の民放の報道番組でした。研究者は、当時、クローン研究の“画期的な成果”を次々に発表し、「国民的英雄」などともてはやされていた人物でしたので、報道に対して、他のメディアや国民などから猛烈な反発があったそうです。

文研のリポートでは、▼番組の放送後、放送局に抗議が殺到し、デモが繰り返されて、スポンサーへの不買運動やCMの引き上げにまで発展したことや、▼他の放送・新聞メディアが、番組の取材チームに倫理的な違反があったと報じたり、疑惑が深まる中でも、番組の問題提起を「国益」を害すると批判したりしていたことなどが報告されています。そうした当時の韓国メディアをとりまく状況に対し、論者は「『真実』を明らかにするというジャーナリズムとしての役割を果敢に果たそうとした事実を不当に貶めることがあってはならない」と結んでいます。

私がなぜ、このリポートに関心を持ったかといいますと、かつて「ねつ造問題」を取材したことがあったからです。といっても、平成26年(2014年)に発覚した「STAP細胞」の問題ではありません。韓国の問題の5年前に世間を騒がせた「旧石器遺跡」のねつ造問題です。毎日新聞の報道で明らかになったこの問題ですが、噂のレベルで事前に話は聞いていました。しかし、本当に石器を埋めていたとは思いもしませんでした。他社のスクープでしたが、隠された不正を暴く「調査報道」の意義・必要性を強く感じた体験でした。

その一方、学術的な成果を正しく報道することの難しさも身をもって知りました。学術ネタを報道するには専門的な知識が求められ、目新しいものであればあるほど、事実かどうかを確かめる(ウラを取る)ことが難しくなっていきます。発表者に悪意があっても見抜けない可能性も否定できません。私もかつて、「石器を埋めた」ことに気づかず、「50万年前の遺跡発見」などと報道してしまったことがあります。先日もドイツ宗教学の研究者による論文のねつ造が明らかになりました。こうした不正を掘り起こす「調査報道」は、国の内外を問わず、いまも、ジャーナリズムに求められている大切な役割だと思います。

調査あれこれ 2019年05月24日 (金)

#188 日本人で宗教を信仰している人は何%? 増えてるの減ってるの?

世論調査部(社会調査)小林利行


「ふだん信仰している宗教がありますか」
みなさんがこんな質問をされたらどう答えますか?

NHKが去年10月から11月にかけて行った「宗教」に関する世論調査(全国の18歳以上対象)の結果によると、「仏教」と答えた人が31%、「神道」が3%などと、何らかの宗教を信仰していると答えた人は合わせて36%になりました。

この調査は2008年にも実施しているのですが、何らかの宗教を信仰していると答えた人の割合は、この10年でほとんど変化していません。

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宗教に関する意識や行動は、10年ぐらいではあまり変わらないのかなと思って他の質問をみてみると、むしろこの結果が例外で、他の多くの数字は増加したり減少したりしているのです。

例えば、信仰心があるかどうかを尋ねた質問では、信仰心が「ある」という人が2008年は33%でしたが、去年は26%に減っています。

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では、仏教や神道など、何らかの宗教を信仰している人に限ってみるとどうなるでしょうか。
(①のグラフで、緑や赤などのカラフルな部分の人を100%として考えるということです)

「何らかの宗教を信仰している」と答えた人の中で、信仰心「あり」と答えた人は2008年は65%でした。しかし、去年は53%に減っているのです。

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つまり、「何らかの宗教を信仰している」と答えた人の中でも、信仰心を持つ人が少なくなっていて、最近では約半数になっているということです。

私は宗教学の専門家ではないので詳しく解説できないのですが、日本人にとって宗教を信仰するということは何を意味するのかということを考えさせられる結果ではないでしょうか。

実は、この調査は20年前にも行っていて、多くの質問で過去20年間(3回分)の比較が可能です。
ここで紹介した以外にも、「へえ~」と思える結果がたくさんあります。

例えば、「人に知られなくても悪いことをすれば必ずむくいがあると思うか」という質問があります。
20年前には74%の人が「そう思う」と答えていましたが、去年は何%だったと思いますか?
多くなったのか少なくなったのか? その変化はどの程度なのか?

気になる方は『放送研究と調査』4月号をご覧ください。

※ブログ内では、選択肢をある程度まとめて示しているグラフもあります。