過去の入選作

2017年09月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:祭

天 呱々の声長い祭りの幕が開く/かぐや姫さん

吉崎先生 人生を祭りに喩(たと)えた句。祭りの内容や長さには個人差があるが、それなりに序章やクライマックス、終焉(しゅうえん)がある。上句の「呱々の声」は産声のこと。「おぎゃあ」と、第一声を上げたときに、長い祭りの幕が開いたのだ。いつかは柩(ひつぎ)に入るときが訪れるけど、願わくは一生を通じて平和で楽しい祭りであってほしいと、作者は詠んでいるのだろう。格調の高さで「天の句」とさせていただきました。

 

地 村祭り実行委員みんな古希/うさぎ物語さん

吉崎先生 読んだ人を、思わず苦笑させる力を持った句。上句、中句、下句とも名詞を並べて、その間に助詞は一つもないが、うまく575のリズムに乗せている。中7に「実行委員」と、ちょっと固い言葉を入れ、結語の下5に「みんな古希」と砕けた表現にしたところが巧(うま)い。伝統の村祭りも担い手がいないと維持できない。なんとか若い人をかき集めても、実行委員の面々はみんな古希。これが現実なのだ。

 

人 試着室おんなの祭り繰り返す/夏羽さん

吉崎先生 これ、もちろん女性の作品でしょう? 試着室が祭りの会場だなんて、男性では思いつかない。でも言われてみればよく解(わか)ります。とっかえひっかえ、好きな服を選んで自分に似合うかどうか確かめる。その様子は、本人にとってはもちろん、端から見ても(見られないが)お祭りそのもの。「お祭り」をヒントにおんなの本性を詠んだ好句。見付(みつ)けの良さが光ります。

 

<入選>

御神輿に触れた時からもう仲間/小出順子さん

神さまの目尻が下がるギャル神輿/あそかさん

ストレスをさらりと捨ててきた祭り/あんころ餅さん

ちっぽけな男を揺する秋祭り/比呂ちゃんさん

お祭りを途絶えさせないUターン/金子鋭一さん

母と見た祭りを今は孫連れて/やんちゃんさん

ユニークを競うかかしの村祭り/よもやま話さん

信仰心一日だけの地鎮祭/デコやんさん

お祭りも恋も終わっていわし雲/汐海岬さん

お祭りが苦手な猫の朝帰り/福村まことさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「祭り」という一見作りやすそうな題だったが、やや応募数が少なかったようです。
 日常の生活から離れたテーマだけにインパクトはあるのだが、逆に発想が拡(ひろ)がらなかったのかも知れない。「課題吟」といえども川柳は創作だから、オリジナリティが必要です。
 祭りに対する一般的な見方から抜け出し、いかに自分独自の「祭り」を詠むかがポイントでした。単にお祭りの様子や風景を詠むのではなく、祭りの中にある人生や感慨、発見、見解を17音で表明するのが良いでしょう。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年08月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:汗

天 神輿ゆく汗とピアスを輝かせ/茶唄鼓(ちゃかどん)さん

宮村典子先生 若者が神輿(みこし)を担ぐ躍動感を、「汗とピアスを輝かせ」で見事に表現している。若者に期待を寄せる作者の弾むような想(おも)い、彼らに託す未来への喜びが溢(あふ)れていて、思わず胸が熱くなった。感動の一句である。神輿を担ぐピアスの若者たちが「日本の祭り」の伝統を繋(つな)いでいってくれますように、この平和が続きますように……と祈らずにはおられない。

 

地 何ごともなかったように汗をふく/ゆずきちゃんさん

宮村典子先生 さらりと言いながら意味の深い句。共同作業で大汗をかいて立ち動いたあとか、または何か大きな失敗をした場面でのことだろうか?
 前者なら謙虚な姿が浮かぶし、後者なら精神力の強さを思う。いずれにしても、わたしが頑張りました! とか、わたしが失敗しました!とか、自己PRの強い人が多い中、「何ごともなかったように……」は、なかなか出来ることではない。見習いたい。

 

人 人知れず夜中に汗をかくピエロ/もとピエロさん

宮村典子先生 ピエロには、自分が辛(つら)く悲しい時にあっても、周りの人を笑わせて陽気な気分にさせるという任務がある。この汗は、どうすれば、みんなをよりハッピーにできるだろう? という苦心の汗かも知れないし、どうしようもない自己憐憫(じこれんびん)の汗かも知れない。どちらにしても、冷たい汗だろう。ピエロは作者。哀愁の漂う句である。

 

<入選>

光る汗白球ドラマ俺が書く/安田蝸牛さん

炎天下ペットボトルも汗をかく/加藤当白さん

青空の下嘘のない汗をかく/入道雲さん

洗濯機汗のパジャマが踊り出す/E子さん

頑張った汗は真珠になっていく/まゆゆさん

初デートフロントガラス汗をかく/夏椿さん

掛けたヤマ全部外れてどっと汗/颯爽さん

 汗かいた人は渡らぬ渡り初め/沢田正司さん

方便の嘘と知っている苦い汗/福村まことさん

温暖化地球汚れた汗をかき/やんちゃんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 「汗」は八月にピッタリの課題でした。青春(甲子園)の汗、ボランティアの汗、ユニホームの汗、冷や汗、など実感句がたくさんありましたが、もうひと捻(ひね)りというか、表現の工夫に欠けている作品が多かったように思います。入選には、見付(みつ)けや、気付きのユニークさ、実感、共感の強い作品をいただきました。暮らしの中で気付いたことや思ったこと(自分の気持ち)を普段(ふだん)から書きとめておくと、課題に重ねて五七五に生かされますし、川柳がもっともっと楽しくなるでしょう。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年07月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:星

天 仲直り星がきれいに見える夜/にゃごしさん

吉崎先生 夜空の星は客観的には美しいものである。しかし、それは星を見る人の、そのときの気分にも大きく左右される。作者も、たとえ満天の星が煌(きら)めいていようと、それを美しいとも感じられない事情があったのだろう。作者は今夜、ようやく親しい人との誤解が解けて仲直りできたのだろう。ひときわ奇麗に見える今夜の星たちである。
かっこいい言葉も技巧も用いず、ただ事実を素直に詠んだだけで成功した秀句。

 

地 星空へキリンは首を持て余す/てんじょうさん

吉崎先生 一読「はてな?」と思わせる句。しかし言いたいことは解(わか)る。人間であれば星空は近くから観(み)るほど美しい。少しでも高い所から眺めるほうが良いに決まっている。その点、キリンは首が長い、つまり顔が高い位置にあるので星空を満喫するには有利である。しかし、当事者であるキリンにとっては、満点の星にさしたる意味はなく、ただ煩わしいだけだろう、とキリンの身になって詠んだ句。「持て余す」が巧(うま)い。

 

人 火星から新婚さんが越してきた/山路橙葉さん

吉崎先生 最近の若い人の言動の不可解さ故に、「宇宙人」と形容することがあるが、この句は「火星人」と表現している。それも、ただの火星人ではなく、新婚さんである。隣に引っ越してきた火星人に、地球の先輩としていろいろ教えてあげたいが、なかなか話の噛()み合わないじれったさがある。そんな新婚さんを指して「火星から越してきた」と皮肉を言っているが、「新婚さん」が効いていて悪気は感じられない好句。

 

<入選>

この星で生きよう旨いもの食べて/比呂ちゃんさん

新星が現れゲームから将棋/わらび餅さん

万華鏡覗くひとりの星祭り/スターダストさん

白内障癒えて楽しむ空の星/よもやま話さん

座布団が舞う金星のインタビュー/颯爽さん

給料のわりに希望の星とされ/福村まことさん

流れ星一緒に落ちる願い事/あーさままさん

まな板にオクラ空には天の川/水たまりさん

星ばかり見て気づかない水たまり/汐海岬さん

ひっそりと星を孕んだ真珠貝/アラレさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「星」という身近なものがお題だったので、400句を超える句が投句されて来た。
意欲は嬉しいのだが、佳い句と良くない句の差が顕著であった。上手な人は視点を変えた句を、それぞれよく推敲(すいこう)されて投句されている。一方、同じような句を、あまり推敲されず、一部の言葉だけ変えて出されている人が多かった。たった17音だが、決して「数打てば当たる」というものではない。どんな「お題」であっても、「自分にしか作れない句」を目指して作句してほしい。それが「創作」というものであろう。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年06月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:誓い

天 反戦を誓って歌う子守唄/ロッカマイベイビーさん

宮村典子先生 戦後72年の平和の先に、きな臭い空気が漂ってきているような気がして仕方(しかた)がない。しかし、国民の不安はなかなか国政に届かない。「子守唄」は、たまらない気持で平和を念じる祈りの歌なのである。国を先導する偉い方々に、この祈りの歌が届きますように。

 

地 軽石とシーソーしてる俺の意志/銅男さん

宮村典子先生 自己主張が出来なくて、他人の意見にすぐに同調してしまう自分は、まるで軽石ぐらいの存在だと自嘲しているのである。それを「軽石とシーソーしてる」とした表現の意外さに注目。「石」と「意志」が、発音的には「いし」になり、ごろ合わせのようでもあるが人間臭のある内容を優先した。

 

人 げんまんの針千本がまずは嘘/夜半亭あぶらー虫さん

宮村典子先生 この世は全て嘘(うそ)で成り立っていると思った方が身の為(ため)であるということだろうか。何事もまずは疑ってかかれ…と冷めた眼(め)で世の中を見ている作者を感じるし、「まずは嘘」に実際、そうかも知れないナ…と思わされる。
 しかし、突き放し、諦め、悟ったようなその想(おも)いの底に、それでも果たされない約束(誓い)を信じたいという人間的な感情が流れている気がする。

 

<入選>

選手宣誓千人分の声でする/デコやんさん

誓約に便利な消せるボールペン/颯爽さん

禁煙を患者にだけは誓わせる/さだえばあちゃんさん

花束の真っ赤な薔薇にある誓い/夏羽さん

千年の先にも君を愛します/いさおくんさん

若き日の誓いアイロンかけ直す/汐海岬さん

誓いなど何一つない軽い靴/てんじょうさん

誓っても誓わなくてもこの結果/にったみささん

いつまでも心に咲いている誓い/まゆゆさん

初心などとうに忘れた草の丈/比呂ちゃんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 「誓い」という課題は作り易(やす)い分、簡単な、第一発想的な句が多かった気がします。基本的に第一発想は捨ててくださいね。
 「上手(うま)いこと表現しているな」「この句からは人間の臭いがするな」と思いながら選をしています。特に、天の句は、私の心に強く響きました。人間を生きる人が詠んだ不滅の社会吟だと思います。地の句、人の句は「誓い」を詠み込まずに誓いを表現して印象の深い句です。課題を頭に入れておくと、日常生活の中でふと思ったこと感じたことに結びつくことがあります。川柳は暮らしの中にあるということを信じてください。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年05月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:休み

天 足踏みをやめたら空が落ちてくる/水たまりさん

吉崎先生 いわゆる「自転車操業」を想起してしまうが、そうではないだろう。杞憂(きゆう)という言葉があるように、たとえ大地震が起きたりミサイルが飛んできても、「空が落ちてくる」ことはない。この句は、作者の心情を詠んでいるのでしょう。今、作者が取り組んでいること、頑張っていることを、ここで諦めたら元も子もない。その切羽詰まった気持ちを「空が落ちてくる」と表現されたのだろう。

 

人 午後三時夫婦喧嘩も中休み/いさおくんさん

吉崎先生 よく稼ぐ夫婦にもあるひと休み(椙本紋太)という、ほのぼのとした句もありますが、この句も仲の良い夫婦なのでしょう。いつも午後三時には一緒にお茶を飲んでいる。しかし今日はたまたま喧嘩(けんか)の最中だった。でも奥さんは、ちゃんとお茶を入れてくれたのです。たぶんそれで喧嘩も終わりなのでしょう。そこまで読みとれる好句。

 

<入選>

休日の菓子博疲れだけ残り/ゆうこさん

母の日のフリータイムを持て余す/かぐや姫さん

スケジュール混んでとれない休肝日/あそかさん

 食べ過ぎをお休みさせてくれた恋/汐海岬さん

カレンダーへ休みを滑り込ませます/久実さん

ラムネ瓶透かせば遠い夏休み/山路橙葉さん

雨の日は休みにしてほしい案山子/アラレさん

シャッターを降ろし人間休みます/まゆゆさん

平均点あたりでちょっとだけ休み/おおしまとしこさん

休んでもいいと言われて喜べず/アカエタカさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 今回の「休み」ほどよい句が集まった題はこれまでなかった。捨てがたい句がたくさんあり、入選を13句に絞り込むのに苦労しました。五月の大型連休を挟み、実感されたことを17音で素直に表現された結果でしょう。これからも、お題によって作りやすかったり難しかったりするでしょうが、自分の生活や実体験に照らして、じっくり観察、考察すれば必ず「この一句」を物に出来るでしょう。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年04月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:あまい

天 入り口はたっぷりの蜜蟻地獄/チェリーブロッサムさん

宮村典子先生 甘い話には必ず落とし穴があるということを知っていなければならない。でも、入り口にたっぷりの蜜を盛られると凡人は大喜びで近寄り頂いてしまう。この甘い「入口」の誘惑に負けて身を破滅させてしまう(蟻地獄)のである。昨今の詐欺事件や政界にも通じる恐い話である。リズムが少し気になるが、「入口」「たっぷり」「蟻地獄」の構成力を評価した。

 

地 ウエストがゴムの甘さに慣らされる/久実さん

宮村典子先生 まったく言い得ている。中七から下五への作りが上手(うま)い。中年を過ぎる頃からの体型には、ウエストがゴムの衣類が有難いのだが、油断していると伸びるゴムに合わせて自分のウエストが自由に伸びてしまうのである。気がついた時にはメタボ体型……という怖いことになる。いやいやゴムの所為(せい)にしてはいけない、自分の気の緩みに注意しよう。

 

人 干し葡萄ほどの甘さで年金日/福村まことさん

宮村典子先生 老人破産が言われるほど厳しい年金生活の現実。支給される年金の額を「干し葡萄ほどの甘さ」という表現で突いているのが妙。「年金日」を頼りにささやかに暮らす庶民(老人)を裏切らない温かい国政を願うばかりである。

 

<入選>

角砂糖5個詰め込んでプロポーズ/汐海岬さん

腐らせて甘み引き出すタイミング/ゆきちさん

美人の湯美人になると思ってた/あけみちゃんさん

考えの甘い男を塩で揉む/やんちゃんさん

それぞれの甘さで癒やす伊勢の餅/アラレさん

うっかりと食べてしまった甘いわな/よっちゃんさん

履歴書にピントの甘い写真貼る/ゆずきちゃんさん

追い詰めて逃走許すへぼ将棋/蕎麦酔人さん

甘えるという幸せが待つ米寿/E子さん

うちの子はどうしてこんなに可愛いの/かぐや姫さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 「甘い」は作り易(やす)い分、同想句が多かったですね。入選句には、甘さを甘さと詠んで成功した句、捻った甘さが利いている句をいただきました。選にあたっては、まず発想のユニークさ、発想が同じ場合は表現方法を気にしています。当たり前のことをどんな言葉で表現するか……というところですね。自分の思いにピッタリの言葉探しも作句の楽しみだと思います。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年03月31日 (金)【みえDE川柳】 お題:わくわく

天 行き先はこれから決める自由席/颯爽さん

吉崎先生 ミステリーツアーというのもわくわくするだろうが、この旅はまったくの一人旅。何ものにも束縛されず、まるっきり自由なのだ。わくわくしない筈(はず)がない。「自由席」は必ずしも「指定席」に対するものに限らない。行き先も交通機関も宿泊地も、すべて自由という意味での「自由席」なのだ。作者は、おそらく旅慣れた人でしょう。

 

地 お互いに早く来すぎる初デート/福村まことさん

吉崎先生 う~ん、統計は取られてないだろうけど、おそらくこの句の通りでしょう。初デートから遅刻すると心象を悪くするのは必定。遅刻の常習者だって早めに来るに違いない。この句は作者の若い頃を思い出して詠まれた句かも。しかし、双方が早く来すぎても時間差はあるはず。たぶん、作者の方がずっと早く来られたのでしょう。

 

人 わくわくとだけはしました宝くじ/お~寒さん

吉崎先生 橋本征一路という人の句に「運のない人で成り立つ宝くじ」という句があります。宝くじの句はたくさん詠まれています。宝くじには人々の期待や思いが凝縮されているからでしょう。しかし、ほとんどの人は「運のない人」で終わっています。
 この句の頭の部分、「わくわくとだけは」が全てを言い表して秀逸です。

 

<入選>

何を詰めようカラフルなランドセル/水たまりさん

キッチンに小さな椅子が増える春/やんちゃんさん

ハートマークもしやと思うメール来る/草かんむりさん

菜の花色のブラウスで行く初デート/あそかさん

いい月だ今日は告白されそうだ/沢田まさしさん

合格の知らせ一足飛びに春/さくら餅さん

わくわくはせぬ初めての内視鏡/アラレさん

わくわく感あるうちは行くクラス会/にったみささん

錆びついた頭を磨く孫が来る/よもやま話さん

わくわくして見落としていた落とし穴/鶏冠さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「わくわく」という擬態語の珍しいお題でした。「どきどき」に似ていますが、より「期待感や喜び」のイメージが強いですね。前句付けの要領で「楽しみなこと楽しみなこと」と前句を仮定すると詠みやすかったかも。だが、「作りすぎ」はいけません。実生活や実体験から探してくると、リアリティのある楽しい作品が生まれたでしょう。そんな作品を入選句に頂きました。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年02月24日 (金)【みえDE川柳】 お題:あたたまる

天 あたたまる話でペンが蝶になる/やんちゃんさん

宮村典子先生 他に、ペンがあたたまる、ペン先があたたまるという句があったが、この作品はペンが蝶(ちょう)になると表現して意表をついた。
 いい話を書きとめようとペンが弾む様子、嬉(うれ)しい話を聞いたペン(わたし)の幸せを蝶に喩えてあたたかい句になった。

 

地 書き添える朱墨厳しくあったかい/よもやま話さん

宮村典子先生 朱墨(しゅずみ)と書いて朱墨(しゅぼく)とも読む。採点や注意書きや訂正などに用いる朱色の墨のことであるが、簡単に言えば赤ペンというところだろう。句の添削場面を思い浮かべた。「全然ダメだなぁ…」と思う作品の添削ほど難しいことはない。
 何故(なぜ)なら厳しい添削愛が要るから。でも、その愛で両者があたたまるのである。

 

人 雪掘って掘って見つけたふきのとう/雪ちゃんさん

宮村典子先生 春に期待する特別の何かがあるのだろう。「掘って」の繰り返しが効果的で、春を待ち焦がれている様子がよく伝わってくる。
  気持ちが溢(あふ)れていていじらしくなるぐらい、その想いにあたたまる。

 

<入選>

あたたまるみえDE川柳きく時間/トガクシさん

鍋のふた取ったら湯気のフラダンス/いさおくんさん

あたたまる頃に彼女の降りる駅/加藤当白さん

焚き火から焚き火に走る通学路/福村まことさん

手作りの座布団並ぶ無人駅/だじゃれまんさん

感動のページで栞あたたまる/海峡ちどりさん

二世帯の理想はスープさめる距離/よしじろうさん

孫書いた「平和」の二字にあたたまる/E子さん

あたたかい便座日本は平和だな/うぐいす餅さん

どっぷりと肩までつかる天下り/さだえばあちゃんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 402句を1句ずつ読ませていただく選句の時間が嬉しい。言い得て妙な句、深く頷(うなず)く時事句、感情の籠った句に注目しました。母の愛にあたたまる、孫の可愛(かわい)さにあたたまる、仕舞(しま)い風呂にあたたまる……という句が多くありましたが、それで、どう思ったか、どう感じたか、もう一歩、気持ちの深いところを詠むという苦労が足りなかったかな…という気がしました。苦労は実る……は川柳にも言えると思います。どんどん挑戦してください。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2017年01月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:好き

天 道草が好きで夕陽を困らせる/山路橙葉さん

吉崎先生 擬人法と言って、人でないものを人に見立てて表現する技法があります。動物や石ころ、お月様などが一般的ですが、この句は「夕陽」を擬人化しています。地球の自転と公転によって、もう沈まなければならない夕陽。その夕陽を困らせている子供の道草。ユニークな視点でメルヘンチックな句になりました。

 

地 切り札にしておく「好き」というセリフ/加藤当白さん

吉崎先生 う~む、持てる男(女かも)はこういう風にして相手の心を掴(つか)んで来たのか? やたら「好き、好き」と口走っても駄目なのだ。タイミングを見計らって一言(ひとこと)「好き」とささやけば、女(男かも)はイチコロなのだ。勉強になったが、もう私には遅い。説得力のある川柳です。

 

人 好きですと言えずあなたを見てました/よっちゃんさん

吉崎先生 平抜きに「スマホと睨(にら)めっこ」という句がありましたが、この人は近くに居るのではなく、ただ遠くから「あなた」の一挙手一投足を眺めているだけなのですね。同病相憐(あわ)れむで、私はこういう「切ない恋」に弱いのです。現代ではこういうシャイな若者は絶滅危惧種なのかも知れませんね。でも私はエールを送ります。

 

<入選>

うまいもんいっぱいあって三重が好き/松ぽっくりさん

焼き芋が好きで始まるお付き合い/福村まことさん

酒好きな人で土産に迷わない/アラレさん

あほやなあ何度も言って好きになる/金子鋭一さん

好きですと言えずスマホと睨めっこ/あそかさん

先生が素敵で物理好きになる/あけみちゃんさん

学校を出ると勉強好きになる/正司さん

僻地まで名残惜しみにゆく電車/鶏冠さん

好きな方の手を挙げている招き猫/ジョーカーさん

ほどほどの好きであなたと住んでいる/アンドブルーさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「好き」には当然「愛する」も含まれます。「人を愛する」歌や詩は、古今東西数えきれないほど作られています。川柳も然り。しかし、「好き」にはもっと広い意味の愛や対象が含まれます。私たちの身の回りに「好き」は溢(あふ)れています。それだけに応募句の中には捨てがたい作品も多かったのですが、選者の独断で「一歩抜き出た句」を選ばせていただきました。選句というのも、けっこう辛(つら)い作業です。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


2016年12月16日 (金)【みえDE川柳】 お題:ドラマ

天 顔の皺だけでドラマが出来上がる/加藤当白さん

宮村典子先生 老齢になるとほとんどの人の顔に皺(しわ)が出来てくる(まれに、皺のない人もいるが)。額の皺、眉間の皺、顔を掘る深い皺、顔面に広がるクチャクチヤの皺は、それぞれ厳しい人生を越えてきた印のように思えるし、生き方の重さを感じる。皺が人生を語っているのである。発想的にはよくある句かも知れないが、「だけで」「出来上がる」と決めているところに、人間を探り、人間を生きる作者の強い思いがある。

 

地 追伸で恋のドラマを終わらせる/汐海岬さん

宮村典子先生 「追伸」とは手紙などで本文の後にさらに書き加える文で、書き忘れたことや付け加えたいことをいわゆる書き足すこと。書き忘れた気持ちを、そうそう…と緩く書き伝えるものだと思う。この句、別れたいと思いながら何となく行きつ戻りつの想(おも)いを綴(つづ)った挙句に〈追伸、お別れします。〉としたのなら、あまりにもキツイではないか、と言いたいところだが、「追伸」に恋のドラマを絡ませた着想の凄(すご)さを評価する。

 

人 真っすぐに行くのも曲がるのもドラマ/きゅうりさん

宮村典子先生 ひたすら自分に正直に、真(ま)っ直(す)ぐに生きる人生って潔いと思うが、なかなかそういうわけにはいかないのが現世で、その場、その時(とき)の空気を読んで、意思とは別に流れに身を任せる方が良い場合もある。その両方を生き分けていくことこそが上手な生き方かも知れない。どのように生きてもそこには人生のドラマがある。

 

<入選>

朝ドラで毎朝焦がす目玉焼き/西井茜雲さん

お父さん掴みましたよ遅い春/わんすモアさん

想定外オリンピックに見るドラマ/麦乃さん

トランプのドラマの筋が読めません/福笑いさん

空き家にもドラマがあった散歩道/夏椿さん

同居して筋書きのないサスペンス/あそかさん

迫真の演技で妻は涙ぐむ/やんちゃんさん

深夜便十色のドラマ乗せて発つ/喜屋武白雨さん

ふとん蹴って始まる一日のドラマ/あんころ餅さん

老老介護ふたり芝居の幕が開く/草かんむりさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 一番多かったのが履歴書、続いて家計簿に纏(まつ)わるドラマでした。日記帳、朝ドラも多かったですね。とんでもないドラマを期待していましたが届きませんでした。五七五で意外なドラマを創作(フィクション)するのも川柳の楽しさ。聞く人読む人を驚かせたり、感動させたいものです。生きることは筋書のない真実の(ノンフィクション)ドラマです。そのドラマを五七五(川柳)で綴っていけばそれは自分物語になるはずです。命の物語になるはずです。続けよう川柳ですね。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


ページの一番上へ▲