過去の入選作

2016年11月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:気合い

天 曲がらないように気合を入れるエビ/霜月さん

吉崎先生 これは海老(えび)の天ぷらの調理法ではない。エビ自身が、これ以上曲がらないように背を伸ばしていることを詠んでいる。つまり、このエビは作者自身。油断していると背や腰が曲がってしまう老いの坂。ときどきは気合いを入れて、ラジオ体操や上体そらしを敢行しているのだ。擬人法の反対で擬物法と言えるだろう。

 

地 長生きの秘けつは気合い入れぬこと/よしじろうさん

吉崎先生 説得力のある川柳。長生きをされている方にその秘訣(ひけつ)を伺うと、早寝早起き、よく噛(か)んで食べる、お酒は適量に、くよくよしない、腹を立てない、などの答えが一般的。
 しかし、この方は「気合いを入れないこと」とおっしゃる。つまり、常に自然体であれとのご託宣。現に長生きをして人生を楽しんでいる方の作品だろう。

 

人 とりあえずハチマキだけは巻いて見せ/汐海岬さん

吉崎先生 ハチマキは気合いを入れるときに頭に巻くもの。作者は、配偶者か上司に「そろそろ本気になったら?」とネジを巻かれたのかも知れない。立場上逆らうわけにも行かず、やる気を見せておかねばならない。そこでハチマキを巻いて見せた。「とりあえず」で、まだ本気でないことが窺(うかが)われる。「とりあえず」に、とぼけた味があります。

 

<入選>

中学生八十路に気合負けしてる/E子さん

履歴書に気合いを入れた楷書体/草かんむりさん

気合い抑えて面接室をノックする/福笑いさん

店頭にならぶ新刊書の気合い/比呂ちゃんさん

缶ビール開けるときにもいる気合い/アラレさん

三重に降る初雪気合い入れてくる/スミレの花束さん

しっかりと気合いを入れて買う野菜/ゆきちさん

ポイントが5倍に妻の勇む足/スランプさん

児童より気合いの入る保護者席/加藤当白さん

大掃除気合いのタクト振り下ろす/麦乃さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 どんな時に気合いを入れるか? やはり、勝負、受験、仕事、化粧、見合いなどが多かったようです。それらが悪いわけではありませんが、もう一歩踏み込んだところを詠めば独自性が出てくるでしょう。相撲なら睨(にら)み合い、仕事ならレスキュー隊など、見合いなら頭のてっぺんから足のつま先まで、句材を探してみましょう。そこに何らかの発見があり、それをうまく575にできたら入選間違いなしです。

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2016年10月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:さわやか

天 いるだけであなたは空気清浄器/べつじんさんさん

宮村典子先生 誰のことを指しているのだろう…と想像させるところが魅力。作者は、「さわやか」から想(おも)いを広げていくとき『特別の人』の存在に思い至ったのである。どんな時も〈あなた〉がいるだけで和やかで爽やかな空気に包まれるシアワセ。その〈あなた〉に向かっての人間愛の告白のような句だと思う。空気清浄器とは上手(うま)い比喩である。

 

地 モネ色の風吹くコスモスの野原/水たまりさん

宮村典子先生 目を閉じると、その風景が浮かぶ。モネは「光の画家」とも言われているように、変化し続ける光と雰囲気の印象を求め続けた画家。「モネ色の風」の表現は、モネ作品を愛する作者から生まれたさわやかな印象である。一面のコスモスが秋の陽に映えモネの世界を作り、そこに佇(たたず)む作者の陶酔感が漂ってくる。文芸センスの匂う句。

 

人 まだ心汚れていない朝が好き/いさおくんさん

宮村典子先生 とても素直な句。「心汚れていない」とは、少し大げさな言い方かも知れないが、一日を一生と思う時、朝は命の誕生であり、魂が生まれる神聖な刻である。生き抜くためには、心に反する言葉も行動も止む無しとする人間世界にあって、その矛盾を感じる作者の想(おも)いこそさわやかで尊いと思う。

 

<入選>

さわやかが売りのキャスター裏がある/夏椿さん

さわやかな人だ尻尾が切ってある/アラレさん

ノーベル賞にさわやかな風ボブ・ディラン/風に吹かれてさん

イヤホンを外して秋の唄を聴く/颯爽さん

散る花の風を香らす爽やかさ/福村まことさん

ヒゲを剃りつくり笑顔の月曜日/落犀庵(らくせいあん)さん

 体重はどうあれ高い秋の空/半田山々坊(はんださんさんぼう)さん

熟年の離婚を決めたひとり旅/さだえばあちゃんさん

手も足もしっかり伸ばし出る欠伸/久実(くみ)さん

さわやかな晩年でしたデスマスク/沢田正司(さわだまさし)さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 「さわやか」は、作り易(やす)いようで、作りにくい課題だったかもしれませんね。~だからさわやか、さわやかな~と詠むとどうしても平凡な、説明句になってしまいます。どうしたら課題への想いを深めることが出来るかは誰もが悩むところですが、「さわやか」のような形容動詞の場合は読み込まないほうが、より伝達性のある句になると思います。
 入選句のうち五句は「さわやか」を上手(うま)く読み込んでいます。あとは、読み込まずに「さわやか」を上手に表現していますね。
 特に、天・地・人は、なるほど…と思わせる「さわやか」でした。また他に、下五が決まらなくて(着地失敗)の感がある作品がたくさんあり、勿体(もったい)ないナと思いました。やっぱり丁寧に推敲(すいこう)することが大事ですね。

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2016年09月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:月

天 あきらめて仰いだ月は丸かった/アンドブルーさん

吉崎先生 人生という航路は決して順風満帆には進めない。思うように事が運ばないことも多い。今回もあれだけ自信があったのに、結局うまくいかなかった。諦めきれないけど諦めようと決心して夜空を仰げば、思いもかけずまんまるな月。まんまるな月は笑って励ましてくれているようにも見える。心の推移を上手に表現した好句。

 

地 あなたもひとりわたしもひとりお月さま/たまきさん

吉崎先生 作者は寂しさにさいなまれていたのでしょう。ふと見上げると、お月さまもぽっかりと寂しそうに浮かんでいる。そうか、お月さまだって一人なんだ。お月さまが見守っていてくださる、元気を出そうと思い直したのでしょう。「あなたもひとりわたしもひとり」と、わざと回りくどく表現したのが良かった。

 

人 じれったいなあと見守るお月さま/半田山々坊さん

吉崎先生 このお月さまは朧月(おぼろづき)ではなく、満月かも知れませんね。せっかく告白のお膳立てをしてあげたのに、何をぐずぐずしているのかと、いらいらしているお月さま。お相手も今か今かと待っているのに…。「じれったい人だチャンスをあげたのに」という、女性の句を思い出しました。情景が見えるような川柳は良い川柳です。

 

<入選>

人妻になっただろうかかぐや姫/颯爽さん

花火の夜お休みしたいお月さま/福笑いさん

窓際の椅子で眺める昼の月/正司さん

悩み事聞くから月は欠けていく/彩古さん

三日月に腰かけ飲んでいるワイン/麦乃さん

聖域に見える月極駐車場/加藤当白さん

月明り頼りに探す鍵の穴/ひろりんさん

十五夜の月は化粧をして上る/アラレさん

デート中時々邪魔な月明かり/ゆずきちゃんさん

恋心まだあやふやなおぼろ月/汐海岬さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「名月をとってくれろと泣く子かな」と小林一茶が詠んだように、「月」は、俳句や川柳に昔からよく詠まれています。満月や三日月、昼の月、窓の月、お月見、月の兎(うさぎ)、かぐや姫など、詠まれていない月はないでしょう。それだけに類想句(誰もが思いつく句)が生まれやすいお題でした。当然ながら独創的、個性的な句を選別しました。

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2016年08月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:勝負

天 負けた日の夕陽なかなか沈まない/福村まことさん

宮村典子先生 作者は何かの勝負に負けたらしい。何に負けたのかは読者の想像に任せながら、とにかく今日みたいな不愉快な日は早く終わってほしいと思っているのである。ところが悔しいことに今日の夕陽はなかなか沈まない。そのことに苛立(いらだ)ちを感じながらも、なんとなく切ない、やるせない気持ちで、ずっと沈まない夕陽を眺め、感傷的になっている作者の姿が浮かんでくる。が、この夕陽は作者の心象風景だろう。心理描写が見事。

 

地 型くずれしたまま勝負するプリン/カミナリ雲さん

宮村典子先生 着想がとてもユニーク。味に自信があるから少々型崩れしていても大丈夫というプリンに、人間を重ねてみよう。困難に負けそうになり、よろよろになりながらも人生をあきらめないのは自分を信じることが出来る人。何よりも大事なのは、どんな時(とき)にもチャレンジ精神を持つということだろう。中身で勝負するというプリン(人間)の潔い姿勢に共感。

 

人 負け方も試されている名勝負/アラレさん

宮村典子先生 名勝負とはその時(とき)を輝く者同士の戦いであると思う。全力で戦い、悔いなく負けることこそ敗者の美学である。真剣な負け姿を生む戦いこそが「名勝負」として万人の心に残るのである。力を抜いた戦いから名勝負は生まれない。名勝負とは、実力者のみに課せられた負け方への挑戦かも。

 

<入選>

朝食時会話が弾む金メダル/さだえばあちゃんさん

母校勝ち長期休暇を願い出る/うさぎ物語さん

いざ勝負根性込めて緩い球/デコやんさん

まだ行けるまだ行けそうだ勝負する/E子さん

カツ丼を食べても勝てぬ力の差/磨育さん

誰よりも遠くへ飛ばす梅の種/比呂ちゃんさん

ブランドに負けるなポチは芸達者/西井茜雲さん

青竹を踏んで敬老会に行く/喜屋武白雨さん

言い勝ってみたがだんだん苦い酒/なごみさん

引出しの数が勝負を分けました/森野水車さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 今年の八月は、リオオリンピックで盛り上がりました。課題も「勝負」で、オリンピック関係の時事句が多いことを予想していたのですが、意外に少なくて残念でした。「勝負」からの発想は、勝負服が一番多く、囲碁、将棋、腕相撲と続きましたが、いずれも平凡に流れてしまいました。意外な勝負服もありましたが推敲(すいこう)不足の感があり惜しいところ。誰もが考えることだけど、案外誰もが書いていないような「勝負」を入選にしました。川柳を楽しむには、まず日常生活を楽しむことです。そして心を動かすことです。心(気持ち)が固まっていると想いが書けませんからね。いっぱい書いて、それらを一句に纏(まと)めるのも良いでしよう。

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2016年07月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:海

天 パラソルを畳んで海を終わらせる/雨の音さん

吉崎先生 「海を終わらせる」という表現は日本語として変に聞こえるが、川柳は省略の文芸とも言われている。この場合の「海」は「海辺で過ごした日々」を省略したものなのだ。上句の「パラソルを畳んで」の「畳んで」と結語の「終わらせる」で、そうした日々との名残惜しさを、目に見えるような表現にしている。

 

地 ふるさとの海が子供にしてくれる/E子さん

吉崎先生 幾つになってもふるさとは恋しい。「ふるさとの山は有り難きかな」と石川啄木も詠んでいるが、「我は海の子」で海で遊んで過ごした作者には海の方が恋しい。ふるさとの海に一歩足を踏み入れると、たちまち童心に帰ってしまう。「子供にしてくれる」の措辞が言い得て妙である。

 

人 懺悔(ざんげ)しに来たのに海が時化(しけ)ている/高崎白雨さん

吉崎先生 海というものは母に似て、全てを許してくれるイメージがある。「なんやそんなことかと海に笑われる」という先人の句もある。作者もそんな一言を期待して海に足が向いたのだろう。あにはからんや、今日の海は怒っている。お母さんどころか鬼神の様相である。叱られるだけでなく、海に引きずり込まれるかもしれないのだ。

 

<入選>

三重の海めざせがんばれ志摩の海/森和夫さん

海へ行く前に畳でリハーサル/汐海岬さん

水掻(か)きが両手に生える海開き/崖っぷちさん

太陽も海に潜って暑気払い/福村まことさん

寝不足の魚花火の上がる海/アンドブルーさん

海の上ときどき走る古いナビ/椋川野ほとりさん

ときどきは浮かんでみたい深海魚/磨育さん

遡上する鮭大会に暇(いとま)乞い/ユキっちゃんさん

ふるさとの海が恋しい冷凍魚/正司(まさし)さん

海に出る頃には角が取れる水/アラレさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「海」は日常的に馴染(なじ)んでいるものだけに、その気になれば発想が拡(ひろ)がる題だったと思います。その割には「海」を表面的に捉えたものが多く、もっと掘り下げた、例えば海の生き物や海で生活する人々、伊勢湾や太平洋、島々、ヨットや貨物船、灯台など、海に関する具体的なものを詠んだ句が少なかったように思います。川柳の作句の経験が少ない人でも、自分自身の生活や体験に照らし、より具体的に、そしてシンプルに、思いのこもった「こと」を詠まれれば、生き生きとした一句が生まれるでしょう。

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2016年06月24日 (金)【みえDE川柳】 お題:笑う

天 ライバルの笑う声だけよく響く/汐海岬さん

宮村典子先生 この笑うは気に障る、面白くない笑い声である。場面は、ライバルと同席した会議? 同窓会? 又(また)は趣味の会かも知れないし、これ以外の集まりかも知れないが、とにかくどんな場にもライバルと思える人って居るものだ。作者は、誰もが同じように笑っている中でライバルの笑い声だけが自分の耳には不愉快(挑戦的)なトーンで響くと言っている。正直な吐露である。しかしライバルがいてこそ奮起できるということもある。ライバルの存在は自分をさらに成長させるカギであると思えばいい。ライバルもきっとそう思っているはずだから。

 

地 至福だね柩(ひつぎ)笑って閉じられる/なごみさん

宮村典子先生 百歳を生きて天寿を全うされたのだろうか? それなら最高だし、もしそうでなかったら、寿命の長短に関係なくその一生が悔いの無いものであったことを周りの誰もが知っていたわけで、なお最高である。366句の中に類のないインパクトのある作品でハッとさせられた。着眼に感動し胸が熱くなった。人間が書いた川柳である。送られた人の至福が羨ましい。悲しみのなかの最高の笑い、私もこんな終わり方がしたいと思う。

 

人 お多福の面に涙は溜(た)まらない/水無月さん

宮村典子先生 お多福というのは、美人ではないけれど、福を呼ぶ愛嬌(あいきょう)のある女性の顔立ちを示す時に使う言葉であるとされている。
作者は、その言葉の意味を借りて自嘲気味に心情を詠んでいる。辛(つら)くて悲しくて泣く日もあるけれど、そんなこともすぐに忘れて笑って暮らしている、生来の明るい性格である自分が愛(いと)しいのである。ちょっと切ない気も受けるが、「溜(た)まらない」と言い切っているところに芯の強さが窺(うかが)えて安堵(あんど)する。

 

<入選>

ほっとして笑うサミット終えた海/九死に十生さん

にらめっこ笑わなければ終わらない/福村まことさん

電線で烏が笑う落し物/蕎麦用人さん

何を見た竹輪を覗(のぞ)き笑みの孫/カツジィーさん

失敗を笑い話にして諭す/加藤当白さん

無理やりに笑うと泣いた顔になる/アンドブルーさん

笑わせてやがて淋(さみ)しいピエロの背/正司さん

どう生きる笑うしかない暮らしぶり/金子鋭一さん

しかめっ面へ笑い薬を振りかける/E子さん

笑う度仮面すこうしずつずれる/さなだのよっちゃんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

「笑う」という課題は作句するのも楽しかったと思います。その分、安易な発想の作品が多かったですね。赤ちゃんの笑顔、母の笑顔、笑い皺(じわ)、膝が笑う等々(などなど)が続きました。もちろん、この発想で表現に工夫があればハッとさせられるのですが、推敲(すいこう)不足でしょうか?入選句には、正面からの笑い、斜めからの笑い、後ろ向きな笑い……などをいただきました。笑いは悲しみに通じるものがあるというところで、「至福だね柩笑って閉じられる」は、インパクトのある悲しい笑いでハッとさせられました。
地、天とも類想句がなく独自の発想です。オリジナルな川柳に惹(ひ)かれます。

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2016年05月20日 (金)【みえDE川柳】 お題:世界

天 雨の日はすこし違った世界観/比呂ちゃんさん

吉崎先生 私たち庶民は、思想家でも哲学者でもないが、それなりの世界観を持っている。世界観は人生観より大きく、いろいろなもの包含している。しかし、そこは庶民の悲しさ、その時々の気分でどうにでも変わる。その庶民の定まらない世界観を、たった17音でみごとに表現してみせた。「雨の日」もいいが「すこし違った」が絶妙。

 

地 神さまのくしゃみで出来たビッグバン/春爺さん

吉崎先生 ビッグバンと呼ばれる宇宙誕生の壮大なドラマの発端が、神さまのくしゃみだったとは知らなかった。万物創造の始まりは、神さまの鼻がむずむずして、それを我慢できなかったからだと、作者は教えてくれる。神さまも私たちと同じようにくしゃをなさることも初めて知らされた。くしゃみとビッグバンの取り合わせが見事。

 

人 水槽の中がわたしの世界です/五月雨さん

吉崎先生 擬人化といって、動物や物を人に擬して表現した川柳は多いが、この句はその反対を詠んだところがお手柄。鯛(たい)だろうか伊勢えびだろうか? はたまた水族館の鮟鱇(あんこう)だろうか? いずれにしても大海からこんな狭い世界に閉じ込められてしまった可哀相(かわいそう)な魚たち。いやいや、ひょっとしたら水槽の中の私は自分のことかも知れない。

 

<入選>

世界中わっと注目浴びる志摩/アンドブルーさん

日本人ヒトの好(よ)さでは世界一/西井茜雲さん

具沢山世界に誇るお味噌汁/あそかさん

羨ましい君の呑気(のんき)な世界観/麦乃さん

未完成世界平和というパズル/ガターマウスさん

バイトとは違う世界に4月から/半田山々坊さん

タラレバの世界でぼくを慰める/八面太郎さん

蟻(あり)だってきっと持ってる世界観/デコやんさん

世界地図一度国境消してみる/船岡五郎さん

胃カメラで知った私の別世界/加藤当白さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「世界」は比較的作りやすい題だったと思います。自分という存在は「ちっぽけなもの」、それに対して世界は、文字通り大きく広いもの。「世界」以外にも「世界一」や「世界新」「世界中」とか、語彙も豊富です。大きい物と小さい物との取り合わせは川柳になりやすい。入選句は、その取り合わせが他の句より優れていたと言えるでしょう。中でも天地人の各作品は、絶妙の取り合わせだったと言えるでしょう。

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2016年04月22日 (金)【みえDE川柳】 お題:光

天 新しい翼が光るまで仮眠/久実さん

宮村典子先生 新しい翼をつけて飛ぶ用意は十分できている。しかし、どんなこともすぐにはうまくいかないはず。この「仮眠」というのは、「ゆっくり着実に力を蓄える準備期間」ということだろう。慌てはしないが必ず翼を光らせる…という余裕の信念を感じる。

 

地 光るからちやほやされているホタル/アンドブルーさん

宮村典子先生 ホタルは人間(擬人化)。光らないホタル(人間)というか、光れないホタル(人間)のことを考えた。美人だから、仕事ができるからということで、ちやほやされている間はいいが、いつかはそれも終わる。でも、そのことを知っている人は、今を光るちやほやを喜んでもいいのではないだろうか…。光るホタル(人間)を斜めにみている様子もうかがえる。

 

人 遺伝子がピアノを前にして光る/七転び八転びさん

宮村典子先生 ピアノを弾くのが特別上手な家系を思い浮かべる。もしかしたら、親族のどなたかがピアニストかも。課題「光」をイメージした時の実感を、遺伝子が光ると表現してピタリと決まった。中七から下五へのつなぎ方がうまい。

 

<入選>

みえせんに出会って日々が光り出し/高年Aさん

褒めことば若い力を光らせる/しょうたろうさん

一言(ひとこと)が光って部下がついてくる/金子鋭一さん

核を抱き光育むアコヤ貝/丸子さん

上履きに書いた名前が光る春/汐海岬さん

光りますとても小さな石ですが/つくしんぼさん

ただひとり君の光であればいい/あーさままさん

光ってた過去は語らぬ紙オムツ/風間なごみさん

未来図を描く卒寿の輝く目/正司さん

追い越しは致しませんと言う光/デコやんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

4月にふさわしい課題であり、作りやすさもあったのか390句の投句をいただきました。選に当たっては「光」から「光り」「光る」まで幅広く採りました。ピカピカの一年生、ピカピカのランドセル、頭が光るなどの句が多くありましたが安易な発想では入選に遠くなってしまいます。また、作りすぎた句、難解すぎる句や、うまいけれどどこかで見たような聞いたような句も苦戦します。
いつも言っていますが、課題のイメージを広げてください。すると、自分だけが作れる、オリジナルな句が生まれます。
自分の言葉で深い思い(わかりやすくて意味のある句)を書きましょう。もっともっと、みえDE川柳を楽しんでくださいね。

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2016年03月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:たすき

天 たすき掛けすると出て来るドーパミン/あわわわ!さん

宮村典子先生 吉崎先生 昔は、あだ討ちなど、いざ決闘というときには動きやすいようにたすき掛けをした。現代では各分野に制服というものがある。野球には野球の、消防士には消防士の制服がある。「たすき掛けする」とは、闘いの準備を整えるということ。準備をきりりと整えれば、おのずとドーパミンが出てきて、気力も充実してくるのだ。

 

地 たすき掛けばかりで恋が実らない/汐海岬さん

宮村典子先生 吉崎先生 今年こそはと、手段を選ばず想(おも)う人にアプローチを仕掛けているのだが、なかなか振り向いてくれない。人生でも同じ事。さあこれからと張り切ってみても、思うようには事は運んでくれない。「たすき掛け」という言葉の意味を、実らない恋の実例を挙げて生き生きと解説してみせた好句。

 

人 準ミスの準は小さく書くたすき/颯爽さん

宮村典子先生 吉崎先生 母数にもよるが、準ミスでもたいしたものなのだ。正ミスとの違いは審査員の評価が紙一重だったにすぎない。それでも、たすきに書くとなると、正真正銘の「ミス」と「準ミス」の違いは大きい。「準」の字を小さく書きたいという気持ちは痛いほどわかる。ただし、虫眼鏡でないと読めないようではクレームが付くだろう。

 

<入選>

サミットへタスキきりりとおもてなし/しょうたろうさん

公約を破るたすきが泣いている/麦乃さん

名前だけ分かれば良いというたすき/かぐや姫さん

駅伝も果たし合いにもいるたすき/福笑いさん

沿道の景色楽しんでるたすき/アラレさん

夢で逢(あ)う母はいまでもタスキ掛け/弥生さん

老いるとはこれかとたすき締め直す/E子さん

骨壷(こつつぼ)にたすきをかけた忘れ物/福村まことさん

棚田百選子等(ら)にたすきを拒まれる/あそかさん

新茶摘む茜(あかね)だすきはコーヒー派/うさぎ物語さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生 吉崎先生 吉崎柳歩先生

卒業式など、年度の切り替えの時期にふさわしい「たすき」というお題だったが、駅伝のたすきや、作業をするに当たっての「たすき掛け」という直接的な意味に限定された句が多かったように思う。後輩やお嫁さんなど、後任に託すものもいろいろ出してほしかったが、それなら「バトン」のほうが良かったのかも知れない。しかし、入選の13句は、それぞれ吟味された力作がそろっていたと喜んでいる。

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2016年02月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:凍る

天 さよならの形で唇が凍る/相模秋茜さん

宮村典子先生 悲恋を詠みながら、愛がこぼれてきそうな情感がある。取り返しのつかない別れ方をして、凍りついた心を抱きしめながら震えている作者の姿が浮かぶ。ドラマ性のある一行詩として深い味わいがある。

 

地 初めての恋にとまどう雪女/如月さん

宮村典子先生 「凍る」という課題からの発想の意外性に驚かされた。良いイメージが無い雪女の純なところをすくい、初めての恋にとまどい凍ってしまった…と詠んだ感性が素敵。この雪女は作者自身かも知れない。純な人なのである。

 

人 解凍に時間がかかる物忘れ/福笑いさん

宮村典子先生 ある年齢になるとどうしても脳が固まって(凍って)きて、昨日まで覚えていたことさえなかなか思い出せなくなる。情けないが、思い出すまでに時間のかかること甚だしい。その様子を「解凍に時間がかかる」とは上手い表現。の共感句。

 

<入選>

伊勢志摩の握手が凍りつかぬよう/招き猫さん

冷凍をしておく褒められた記憶/アンドブルーさん

解凍のチンが威張った妻の留守/加藤当白さん

凍るまで落ちるしかない滝の水/福村まことさん

湯の山は風も凍れば木にも花/森いもりさん

寒波より孫10人に凍るばば/よしじろうさん

身も凍る妻の微笑の裏の裏/速水正仁さん

「分かりませんか」その一言に凍りつく/デコやんさん

悪口を本人宛に誤送信/二谷悟司さん

仲間呼ぶ鴉(からす)は声を凍らせて/E子さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 今月の「天」と「地」にはドラマ性のある句を選びました。五七五を解くと物語になるところに川柳の魅力を感じます。「人」は誰にでも思い当たることを上手く表現しています。それぞれ、読む人、聞く人の思いに届くでしょう。
 入選10句は、いろいろな視点からの「凍る」です。課題を、社会派・ユーモア派・抒情派・詩性派のどれに詠んでも、そこに人間の喜怒哀楽が息づいてこそ川柳は成立するのです。初入選の方が数人おられるのもうれしいことでした。

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