過去の入選作

2016年04月22日 (金)【みえDE川柳】 お題:光

天 新しい翼が光るまで仮眠/久実さん

宮村典子先生 新しい翼をつけて飛ぶ用意は十分できている。しかし、どんなこともすぐにはうまくいかないはず。この「仮眠」というのは、「ゆっくり着実に力を蓄える準備期間」ということだろう。慌てはしないが必ず翼を光らせる…という余裕の信念を感じる。

 

地 光るからちやほやされているホタル/アンドブルーさん

宮村典子先生 ホタルは人間(擬人化)。光らないホタル(人間)というか、光れないホタル(人間)のことを考えた。美人だから、仕事ができるからということで、ちやほやされている間はいいが、いつかはそれも終わる。でも、そのことを知っている人は、今を光るちやほやを喜んでもいいのではないだろうか…。光るホタル(人間)を斜めにみている様子もうかがえる。

 

人 遺伝子がピアノを前にして光る/七転び八転びさん

宮村典子先生 ピアノを弾くのが特別上手な家系を思い浮かべる。もしかしたら、親族のどなたかがピアニストかも。課題「光」をイメージした時の実感を、遺伝子が光ると表現してピタリと決まった。中七から下五へのつなぎ方がうまい。

 

<入選>

みえせんに出会って日々が光り出し/高年Aさん

褒めことば若い力を光らせる/しょうたろうさん

一言(ひとこと)が光って部下がついてくる/金子鋭一さん

核を抱き光育むアコヤ貝/丸子さん

上履きに書いた名前が光る春/汐海岬さん

光りますとても小さな石ですが/つくしんぼさん

ただひとり君の光であればいい/あーさままさん

光ってた過去は語らぬ紙オムツ/風間なごみさん

未来図を描く卒寿の輝く目/正司さん

追い越しは致しませんと言う光/デコやんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

4月にふさわしい課題であり、作りやすさもあったのか390句の投句をいただきました。選に当たっては「光」から「光り」「光る」まで幅広く採りました。ピカピカの一年生、ピカピカのランドセル、頭が光るなどの句が多くありましたが安易な発想では入選に遠くなってしまいます。また、作りすぎた句、難解すぎる句や、うまいけれどどこかで見たような聞いたような句も苦戦します。
いつも言っていますが、課題のイメージを広げてください。すると、自分だけが作れる、オリジナルな句が生まれます。
自分の言葉で深い思い(わかりやすくて意味のある句)を書きましょう。もっともっと、みえDE川柳を楽しんでくださいね。

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2016年03月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:たすき

天 たすき掛けすると出て来るドーパミン/あわわわ!さん

宮村典子先生 吉崎先生 昔は、あだ討ちなど、いざ決闘というときには動きやすいようにたすき掛けをした。現代では各分野に制服というものがある。野球には野球の、消防士には消防士の制服がある。「たすき掛けする」とは、闘いの準備を整えるということ。準備をきりりと整えれば、おのずとドーパミンが出てきて、気力も充実してくるのだ。

 

地 たすき掛けばかりで恋が実らない/汐海岬さん

宮村典子先生 吉崎先生 今年こそはと、手段を選ばず想(おも)う人にアプローチを仕掛けているのだが、なかなか振り向いてくれない。人生でも同じ事。さあこれからと張り切ってみても、思うようには事は運んでくれない。「たすき掛け」という言葉の意味を、実らない恋の実例を挙げて生き生きと解説してみせた好句。

 

人 準ミスの準は小さく書くたすき/颯爽さん

宮村典子先生 吉崎先生 母数にもよるが、準ミスでもたいしたものなのだ。正ミスとの違いは審査員の評価が紙一重だったにすぎない。それでも、たすきに書くとなると、正真正銘の「ミス」と「準ミス」の違いは大きい。「準」の字を小さく書きたいという気持ちは痛いほどわかる。ただし、虫眼鏡でないと読めないようではクレームが付くだろう。

 

<入選>

サミットへタスキきりりとおもてなし/しょうたろうさん

公約を破るたすきが泣いている/麦乃さん

名前だけ分かれば良いというたすき/かぐや姫さん

駅伝も果たし合いにもいるたすき/福笑いさん

沿道の景色楽しんでるたすき/アラレさん

夢で逢(あ)う母はいまでもタスキ掛け/弥生さん

老いるとはこれかとたすき締め直す/E子さん

骨壷(こつつぼ)にたすきをかけた忘れ物/福村まことさん

棚田百選子等(ら)にたすきを拒まれる/あそかさん

新茶摘む茜(あかね)だすきはコーヒー派/うさぎ物語さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生 吉崎先生 吉崎柳歩先生

卒業式など、年度の切り替えの時期にふさわしい「たすき」というお題だったが、駅伝のたすきや、作業をするに当たっての「たすき掛け」という直接的な意味に限定された句が多かったように思う。後輩やお嫁さんなど、後任に託すものもいろいろ出してほしかったが、それなら「バトン」のほうが良かったのかも知れない。しかし、入選の13句は、それぞれ吟味された力作がそろっていたと喜んでいる。

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2016年02月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:凍る

天 さよならの形で唇が凍る/相模秋茜さん

宮村典子先生 悲恋を詠みながら、愛がこぼれてきそうな情感がある。取り返しのつかない別れ方をして、凍りついた心を抱きしめながら震えている作者の姿が浮かぶ。ドラマ性のある一行詩として深い味わいがある。

 

地 初めての恋にとまどう雪女/如月さん

宮村典子先生 「凍る」という課題からの発想の意外性に驚かされた。良いイメージが無い雪女の純なところをすくい、初めての恋にとまどい凍ってしまった…と詠んだ感性が素敵。この雪女は作者自身かも知れない。純な人なのである。

 

人 解凍に時間がかかる物忘れ/福笑いさん

宮村典子先生 ある年齢になるとどうしても脳が固まって(凍って)きて、昨日まで覚えていたことさえなかなか思い出せなくなる。情けないが、思い出すまでに時間のかかること甚だしい。その様子を「解凍に時間がかかる」とは上手い表現。の共感句。

 

<入選>

伊勢志摩の握手が凍りつかぬよう/招き猫さん

冷凍をしておく褒められた記憶/アンドブルーさん

解凍のチンが威張った妻の留守/加藤当白さん

凍るまで落ちるしかない滝の水/福村まことさん

湯の山は風も凍れば木にも花/森いもりさん

寒波より孫10人に凍るばば/よしじろうさん

身も凍る妻の微笑の裏の裏/速水正仁さん

「分かりませんか」その一言に凍りつく/デコやんさん

悪口を本人宛に誤送信/二谷悟司さん

仲間呼ぶ鴉(からす)は声を凍らせて/E子さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 今月の「天」と「地」にはドラマ性のある句を選びました。五七五を解くと物語になるところに川柳の魅力を感じます。「人」は誰にでも思い当たることを上手く表現しています。それぞれ、読む人、聞く人の思いに届くでしょう。
 入選10句は、いろいろな視点からの「凍る」です。課題を、社会派・ユーモア派・抒情派・詩性派のどれに詠んでも、そこに人間の喜怒哀楽が息づいてこそ川柳は成立するのです。初入選の方が数人おられるのもうれしいことでした。

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2016年01月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:招く

天 招かざる客と語っている背中/みぢんこさん

吉崎先生 招かざる客とは、あまり来て欲しくなかった客ということ。たぶん、一家言のある人で、下手に扱うと面倒なことになる人なのかも知れない。相づちを打ちながら当人と語っている主催者側の一人の背中に、その苦慮がうかがいとれるのだ。主催者の微妙な心理を描写した好句。

 

地 招く側にも最前列にする理由/流星さん

吉崎先生 「招く側にも」と「にも」が付いているのは、招かれた側も最前列のほうが居心地がいいということ。招かれた人は招かれた立場上、主催者以外の人々と軽々に話をしないほうがいい。また主催者側も、招いた人を紹介するにも、壇上に上がっていただくにも、最前列のほうが都合がいい。川柳の大会でも言えることだ。

 

人 招かれて今日一日をフイにする/比呂ちゃんさん

吉崎先生 「フイにする」とは無駄になること。作者はきっと毎日を有意義に過ごそうと思っているのだろう。しかし、せっかく招かれたのだからと、義理もあって出席したのだが、あまり楽しいものでもなかった。こんなことなら断ればよかった、と後悔している気持ちを、無駄のない17音でうまく表現している。

 

<入選>

サミットに両手を上げる招き猫/志摩ちゃんさん

お伊勢様世界平和も頼みます/ゆめかさん

福相のばあちゃんうちの招き猫/よっこりんさん

招いても昼寝ばかりの福の神/しょうたろうさん

千手観音の手招きだけは断れぬ/木村行吉さん

受付はロボットがするおもてなし/颯爽さん

善い人になれよと招く募金箱/デコやんさん

招かれざる客にならぬか自問する/春爺さん

招かれて座った椅子が固すぎる/アラレさん

ええとこやに招待状は伊勢弁で/しだれ梅さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「招く」のように、生活に密着した動詞の題は作りやすいかも知れません。しかし、入選に及ばなかった句には、頭の中で組み立てたような安易な句が多かったように思います。
 選者や読者の共感を得るには、「招く」「招かれる」をテーマに、ご自分の体験を総ざらいしてみて、何らかの感動や発見、疑問など強い思いを抱いた「こと」を探して、その「こと」を575で表現されるといいでしょう。それが実感句となり、力を持つのです。

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2015年12月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:プレゼント

天 イメージに合うとサボテン贈られる/アラレさん

宮村典子先生 外形は多様だが、表面に葉の変形したとげを持つサボテン。花はただの美しさではなく個性的だと思う。イメージに合うと言われた作者は「分かってるね、ありがとう」と応えているのだ。自嘲的なため息からは「とげで守られたサボテンの花は、ナイーブな私にピッタリのプレゼント」と、自己主張の強ささえもうかがえる。シャープな視点が利いて「天」にふさわしい「プレゼント」。

 

地 九条へ風邪をひくなとウオーマー/あそかさん

宮村典子先生 「九条」は、日本の平和を守るお守りだと思っている。戦後七十年の日本の平和を思う時、改めて九条の存在意義をかみしめるのである。私たちが人間らしく生きるため、生き続けることができるために、九条は風邪を引いては(病んでは)いけない。
ウォーマーは、国民の祈りのプレゼントである。「安全と平和」を提唱する総理を信じたい。

 

人 激安の店で仕入れているサンタ/水たまりさん

宮村典子先生 サンタが激安の店(ディスカウントショップ)で、プレゼントを仕入れるという着想がユニークで面白い。汗を流しながら店の中を走り回っているサンタの姿を想像して、思わずごくろうさま、ありがとう……と言いたくなる。1人でも多くの子どもたちにプレゼントを届けたいと思っているサンタの優しい存在がうれしい。誰かを喜ばすために人知れず心を配ることの尊さを思う。

 

<入選>

プレゼント君の優しさだけでいい/E子さん

マフラーの約束果たすプレゼント/samuさん

誕生日嫁から届く赤い杖(つえ)/のぶこさん

落とし穴も隠されているプレゼント/流星さん

誉(ほ)め言葉たっぷり盛ってプレゼント/壮湖さん

プレゼント二つはいらぬテレショップ/あーさままさん

頭撫(な)でるだけですプアなおじいちゃん/半田山々坊さん

お手伝い券も入っていた遺品/颯爽さん

チャンスだと気づいた人に来るチャンス/翔のんまなさん

諺(ことわざ)は先人からのプレゼント/福笑いさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

「プレゼント」で五音を使う出題を懸念しましたが、天・地・人とも題を詠み込まずに上手くプレゼントを表現しています。作りやすい課題の宿命ですが、やはり同想句が多くありました。中でもサンタの句が多くありましたが同想から抜け切れない感じでした。「プレゼント」から思いを飛ばしながら作句すると、意外なプレゼントにたどりつきますよ。選者としては328句(個)のプレゼントをいただいた気分で、楽しい選句でした。川柳を楽しむことは暮らし(生きること)を楽しむことだと思います。これからも、みえDE川柳が皆さんとの川柳絆の場になりますように……。

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2015年11月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:サミット

天 サミットを迎え伊勢エビジャンプする/流星さん

吉崎先生 来年の5月、いよいよサミットを迎える行政と三重県民の思いを「伊勢エビ」に託したように思える一句。サミットを迎える喜び、サミットの準備を進める責任感、安全をつかさどる警察、海上保安庁の緊張感、そしてお客様ををもてなす地元の人たちの歓迎の気持ちを、「伊勢エビがジャンプする」と、見事に表現して見せた川柳。

 

地 秋刀魚(さんま)焼く路地でサミット開く猫/福村まことさん

吉崎先生 港町には猫がよく似合う。賢島では先進7カ国のサミットが開かれるが、その港町の路地裏ではさんまを焼く匂いの中で猫たちのサミットが開かれている。お互いの平和と安全、交流などについて話し合いがなされているのかもしれない。主要7カ国の本物のサミットに猫のサミットを絡ませたところがお手柄。

 

人 頂上の椅子に背もたれ見当たらず/かぐや姫さん

吉崎先生 サミットとは本来「頂上」の意味だが、いまの三重県では第42回主要7カ国首脳会議のことを指す。各国首脳の座る椅子には、もちろん背もたれは付いているだろうが、この句の言う「背もたれ」はそういう意味ではない。緊急かつ重要な課題が山積みなので、ゆったりと構えてはいられない、ということを言っているのだろう。

 

<入選>

サミットが志摩半島を引き締める/金子鋭一さん

サミットでそわそわなさるお伊勢さん/E子さん

サミットに備えた英語伊勢訛(なま)り/木村行吉(ゆきち)さん

サミットに備え海女さんメーキャップ/祥太郎さん

サミットへ平和の願い抱く真珠/颯爽さん

サミットへ海の青さ欠かせない/比呂ちゃんさん

伊勢志摩へ旅行するのはサミット後/夢見る夢子さん

サミットに習近平の出るクシャミ/せいじさん

水漏れはないかサミット警備隊/正司(まさし)さん

難しい話の後は伊勢の幸/橋さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

作るのも選ぶのも難しい題だったと思います。「サミット」だけで4音。助詞を一つ付けて上5に持ってきた句が圧倒的に多かったのも、やむを得ないところだと思います。
また、このような固有名詞の題の場合、題の言葉「サミット」を句の中に読み込まずに表現することも、なかなか難しいのです。サミットには、単に「頂上会談」の意味もあり、家族の首脳会談など、G7に関係のない句も少し見られましたが、本物のサミットに埋没してしまいました。「人」に輝いた「頂上の椅子~」も、素直に「サミットの椅子」としたほうが、句意がより生きたと思います。

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2015年10月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:味

天 イタダキマス世界遺産は母の味/かぐや姫さん

宮村典子先生 誰にとっても母の味こそが最高の味、永遠の味と言えましょう。それを「世界遺産」と表現した作者に脱帽です。「イタダキマス」と上五を片仮名にしたのも意外性を醸し出しています。表記の方法も句を成功させる大事なところですからね。

 

地 賞味期限捨てる決まりは書いてない/samuさん

宮村典子先生 なるほど、うまいこと言いますネ。消費期限と違って、賞味期限は、記載の日付を過ぎると味は落ちますが(食べられます……)ということでしょうが、確かにその先いつ頃には腐敗しますとは書いてありません。作者は「そこが書いてないじゃないか」「書かなくていいの?」と問題提起をしています。消費者問題ですね。

 

人 失敗もおんなじ味の目玉焼き/アンドブルーさん

宮村典子先生 目玉焼きって一番簡単な料理のように思われていますが、これがなかなかうまくいかない場合が多いのです。簡単だからというので卵の扱いが雑になり「ああ、しまった…」ということに。形が崩れても味に変わりはないという発想から、人間は中身が大事…、ちょっとした失敗なんか気にしない方がよい…との思いがくみ取れます。

 

<入選>

御在所の味をむすびで食べつくす/デコやんさん

おにぎりの隠し味です青空は/美実さん

口コミが列を作らす隠し味/正司(まさし)さん

便利さを食べて忘れる母の味/ほろ酔いさん

サバイバル料理に子から星三つ/ゆきよしさん

大家族の味忘れないおでん鍋/神無月さん

人間味加え頼れる介護ロボ/颯爽さん

味付けはしない小さな正義感/比呂ちゃんさん

ウン十年漬け込みやっと夫婦味/内須みどるさん

辛酸を舐(な)めた湯飲みは燻(いぶ)し銀/C子さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

366句の投句をいただきありがとうございました。1句ずつ大切に拝見させていただきましたが、「母の味」が圧倒的に多かったですね。秋の味としては、まつたけ、くり、さんま等の句がありましたが、いずれも推敲不足の感があり残念でした。また、気になったのは「夏季過ぎて柿とカキの味くらべ」「アジフライ今日は金曜フライディ」と、語呂合わせの句があったことです。川柳は語呂合わせではありません。「人間を詠む五七五の文芸」としての川柳を大切にしたいと思います。課題から連想する自分の思い(気持ち)を五七五に込めて詠んでください……。それが川柳です。

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2015年09月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:島

天 風船を付けると島が持ち上がる/比呂ちゃんさん

吉崎先生 「本当のようなうそ」もまた川柳の真骨頂です。ちっぽけな島でも風船ぐらいで浮き上がるわけがない。そんなことは誰が考えても分かる。そうするとこの島は「架空の島」だということが分かる。「ひょっこりひょうたん島」かも知れないし、作者だけの思い入れのある島かも知れない。いずれにしても、誰も思いつかない「風船で持ち上がる島」に作者独自の着想があって感心しました。

 

地 人情にほだされ島の人となる/つれづれさん

吉崎先生 左遷か島流しか、はたまた気楽な一人旅かは分からないが、しばらく島の生活をすることになったのだろう。都会とは違って人を疑うことを知らない島の人々。その人情にほだされて、この島に永住することになった。一編の小説でも書けそうな一句。「人情にほだされ」が、ほのぼのしていいですね。

 

人 夫とは行きたくはない無人島/あーさままさん

吉崎先生 川柳らしいとっても愉快な句。もしこれが女性の句なら、おそらく本音だろう。と言っても本音のすべてではない。こういう気持ちもちょっぴりある、ということ。川柳は、こういう形で本音の一端を披露できる文芸です。もしこれが男性の句なら、「妻はこう思っているんだろうな」という、とても謙虚な句です。

 

<入選>

無人島自足自給の夢を見る/翔のんまなさん

冗舌(じょうぜつ)家の僕には住めぬ無人島/ポストさん

日焼け止め不用私は島育ち/C子さん

信号は学習用にある離島/福笑いさん

地球儀に有るか無しかの島に住み/samuさん

領海がもれなくついてくる小島/アラレさん

断捨離をしすぎ孤島にいるようだ/夏実さん

忠敬もてこずったろう島の数/加藤当白さん

婚活もありと聞かされ島巡り/崖っぷちさん

サミットに離れ小島も美しい/半田山々坊さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

来年5月には伊勢志摩サミットが開かれます。主会場、賢島はじめ、英虞湾は無数の島々が浮かぶ風光明美な場所。その「サミット」を読み込んだ句が多かったのは当然ですが、ただサミットと島々を並べただけの句が多かったように思います。入選句のように、あなた独自の思いなり見解を詠んで欲しかった。また、「取り付く島がない」という慣用句を使った句も多かった。「慣用句の力」に頼らず、あなたのこれまでの人生と生活から見つけた島を詠まれると、入選の可能性が広がったでしょう。

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2015年08月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:花火

天 自分史に仕掛け花火をセットする/海ほおずきさん

宮村典子先生 仕掛け花火は作者の野心でしょうか。自分の一生、こんなものじゃない、まだまだやり残したことがあるし、やりたいこともある。そんな自分を奮起させる起爆剤に「仕掛け花火」をもってきたところがうまいですね。
自分が納得出来る一生にしたいという、前向きな強い意志を感じます。

 

地 ああ平和花火がとても美しい/まゆゆさん

宮村典子先生 さらりとした表現の奥に平和の尊さを訴えている作者がいます。戦後70年の今年の花火だからこそ、作者は特別の感慨を持って「ああ平和」とつぶやいたのでしょう。その想いに深く共感します。願わくは、花火は永遠に咲く平和であって欲しいですね。

 

人 花火ショー見せぬとビルの仁王立ち/せいじさん

宮村典子先生 乱立したビルの谷間からは花火が見えません。邪魔をするビルを、仁王が立ちふさがっているかのようだとは面白い発想です。花火が見えなくなるほどビルが多くなった街は立派でもつまらないですよね。

 

<入選>

甲子園に津商ナインの大花火/水たまりさん

儚(はかな)さを抱いて夜空に咲くティアラ/火花さん

美しい花火を上げて過去を消す/久実さん

「生き過ぎた」「でも死ねないね」花火見る/B子さん

夏祭り花火に届けかたぐるま/ゆめこさん

町の灯を消して花火が盛り上がる/中村恵さん

一発で憂さを晴らした大花火/正司(まさし)さん

大花火果てて心の闇を増す/相模秋茜さん

大花火スマホに入れて持ち帰る/たまきさん

好きだからネズミ花火で狙い撃ち/金平糖さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

時期的にピッタリの課題で、どんな花火が出現するだろうと楽しみでしたが、遠花火・線香花火・大花火の句が圧倒的に多く、同想句が並びました。そんな中で、意外性のある句、また、当たり前のことをうまく表現しているな…という句を入選にしました。毎月の課題から、時事、人情、ユーモアへと発想を広げて、鋭く、優しく、楽しい川柳に挑戦してくださいね。もちろん、どんな句にも作者の気持ちが込められていることが大事です。「川柳は人間」ですから。

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2015年07月31日 (金)【みえDE川柳】 お題:さけぶ

天 七十年叫び続けているドーム/井田ろくろうさん

吉崎先生 最初に「七十年」とあることで、このドームはヒロシマの原爆ドームだと分かります。8月6日、あの日から七十年がたとうとしています。そして9日、長崎にも原爆投下、十五日終戦。今年の8月はことさら大きく叫び声がこだましているように思われます。ノーモアヒロシマ、ノーモア戦争!ずっと平和でありますように。

 

地 F1のマシンは叫びつつ走る/アラレさん

吉崎先生 これは鈴鹿サーキットを句材にした川柳ですね。オートバイの8耐レースは先日26日に終わりましたが、四輪のF1グランプリは9月に開催されます。地元の方か、F1好きの方が詠まれたのでしょうか?爆音のことを、F1のマシンが叫んでいる、と表現されただけですが、無機質なマシンを擬人化してみせたことは見事です。

 

人 爺(じい)ちゃんが叫ぶと婆(ばあ)ちゃんも叫ぶ/拓チャンさん

吉崎先生 思わず笑ってしまう。夫唱婦随で、じいちゃんの叫んでいることに共鳴してばあちゃんが叫んでるのか、お互い耳が遠くなって大きな声で罵りあっているのか、はたまた、ただの会話なのかは分からない。いろいろ想像できるところも面白いが、じいちゃんが叫ぶと、すぐさまばあちゃんも叫んでいる様子が目に見えて、楽しい。

 

<入選>

絶叫マシンあなたにしがみつくチャンス/水たまりさん

絶叫へお化け屋敷はかせぎ時/アンドブルーさん

着ぐるみが叫ぶ真夏のアルバイト/颯爽さん

ヤッホーの返事は期待していない/ひろりんさん

叫んだらやっと顔出すおばあさん/磯の香りさん

初舞台一言さけぶだけの役/正司(まさし)さん

さけび声聞いてびっくりしてる蛇/福笑いさん

叫んでも耳はスマホが使用中/大声母さん

叫ぶよりささやく方が効果的/金平糖さん

叫びたい線香花火だってある/相模秋茜さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

「ムンクの叫び」を利用(?)した句が12句もありました。誰もが思いつきそうな句材で詠む場合は、それを踏み台にした独自の着想がないと入選は叶いません。また、叫べばよい、とばかり下5を「バカヤロー」とした句が散見されました。川柳は大衆文芸で、上品である必要はありませんが、句品を落としてもいけません。今回は佳句がたくさんあり、13句に絞るのに苦労しました。うれしいことです。

投稿者:みえ~るくん | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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