【みえDE川柳】 お題:月
あきらめて仰いだ月は丸かった/アンドブルーさん
人生という航路は決して順風満帆には進めない。思うように事が運ばないことも多い。今回もあれだけ自信があったのに、結局うまくいかなかった。諦めきれないけど諦めようと決心して夜空を仰げば、思いもかけずまんまるな月。まんまるな月は笑って励ましてくれているようにも見える。心の推移を上手に表現した好句。
あなたもひとりわたしもひとりお月さま/たまきさん
作者は寂しさにさいなまれていたのでしょう。ふと見上げると、お月さまもぽっかりと寂しそうに浮かんでいる。そうか、お月さまだって一人なんだ。お月さまが見守っていてくださる、元気を出そうと思い直したのでしょう。「あなたもひとりわたしもひとり」と、わざと回りくどく表現したのが良かった。
じれったいなあと見守るお月さま/半田山々坊さん
このお月さまは朧月(おぼろづき)ではなく、満月かも知れませんね。せっかく告白のお膳立てをしてあげたのに、何をぐずぐずしているのかと、いらいらしているお月さま。お相手も今か今かと待っているのに…。「じれったい人だチャンスをあげたのに」という、女性の句を思い出しました。情景が見えるような川柳は良い川柳です。
<入選>
人妻になっただろうかかぐや姫/颯爽さん
花火の夜お休みしたいお月さま/福笑いさん
窓際の椅子で眺める昼の月/正司さん
悩み事聞くから月は欠けていく/彩古さん
三日月に腰かけ飲んでいるワイン/麦乃さん
聖域に見える月極駐車場/加藤当白さん
月明り頼りに探す鍵の穴/ひろりんさん
十五夜の月は化粧をして上る/アラレさん
デート中時々邪魔な月明かり/ゆずきちゃんさん
恋心まだあやふやなおぼろ月/汐海岬さん
吉崎柳歩先生
「名月をとってくれろと泣く子かな」と小林一茶が詠んだように、「月」は、俳句や川柳に昔からよく詠まれています。満月や三日月、昼の月、窓の月、お月見、月の兎(うさぎ)、かぐや姫など、詠まれていない月はないでしょう。それだけに類想句(誰もが思いつく句)が生まれやすいお題でした。当然ながら独創的、個性的な句を選別しました。