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2016年01月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:招く

天 招かざる客と語っている背中/みぢんこさん

吉崎先生 招かざる客とは、あまり来て欲しくなかった客ということ。たぶん、一家言のある人で、下手に扱うと面倒なことになる人なのかも知れない。相づちを打ちながら当人と語っている主催者側の一人の背中に、その苦慮がうかがいとれるのだ。主催者の微妙な心理を描写した好句。

 

地 招く側にも最前列にする理由/流星さん

吉崎先生 「招く側にも」と「にも」が付いているのは、招かれた側も最前列のほうが居心地がいいということ。招かれた人は招かれた立場上、主催者以外の人々と軽々に話をしないほうがいい。また主催者側も、招いた人を紹介するにも、壇上に上がっていただくにも、最前列のほうが都合がいい。川柳の大会でも言えることだ。

 

人 招かれて今日一日をフイにする/比呂ちゃんさん

吉崎先生 「フイにする」とは無駄になること。作者はきっと毎日を有意義に過ごそうと思っているのだろう。しかし、せっかく招かれたのだからと、義理もあって出席したのだが、あまり楽しいものでもなかった。こんなことなら断ればよかった、と後悔している気持ちを、無駄のない17音でうまく表現している。

 

<入選>

サミットに両手を上げる招き猫/志摩ちゃんさん

お伊勢様世界平和も頼みます/ゆめかさん

福相のばあちゃんうちの招き猫/よっこりんさん

招いても昼寝ばかりの福の神/しょうたろうさん

千手観音の手招きだけは断れぬ/木村行吉さん

受付はロボットがするおもてなし/颯爽さん

善い人になれよと招く募金箱/デコやんさん

招かれざる客にならぬか自問する/春爺さん

招かれて座った椅子が固すぎる/アラレさん

ええとこやに招待状は伊勢弁で/しだれ梅さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「招く」のように、生活に密着した動詞の題は作りやすいかも知れません。しかし、入選に及ばなかった句には、頭の中で組み立てたような安易な句が多かったように思います。
 選者や読者の共感を得るには、「招く」「招かれる」をテーマに、ご自分の体験を総ざらいしてみて、何らかの感動や発見、疑問など強い思いを抱いた「こと」を探して、その「こと」を575で表現されるといいでしょう。それが実感句となり、力を持つのです。

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2015年12月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:プレゼント

天 イメージに合うとサボテン贈られる/アラレさん

宮村典子先生 外形は多様だが、表面に葉の変形したとげを持つサボテン。花はただの美しさではなく個性的だと思う。イメージに合うと言われた作者は「分かってるね、ありがとう」と応えているのだ。自嘲的なため息からは「とげで守られたサボテンの花は、ナイーブな私にピッタリのプレゼント」と、自己主張の強ささえもうかがえる。シャープな視点が利いて「天」にふさわしい「プレゼント」。

 

地 九条へ風邪をひくなとウオーマー/あそかさん

宮村典子先生 「九条」は、日本の平和を守るお守りだと思っている。戦後七十年の日本の平和を思う時、改めて九条の存在意義をかみしめるのである。私たちが人間らしく生きるため、生き続けることができるために、九条は風邪を引いては(病んでは)いけない。
ウォーマーは、国民の祈りのプレゼントである。「安全と平和」を提唱する総理を信じたい。

 

人 激安の店で仕入れているサンタ/水たまりさん

宮村典子先生 サンタが激安の店(ディスカウントショップ)で、プレゼントを仕入れるという着想がユニークで面白い。汗を流しながら店の中を走り回っているサンタの姿を想像して、思わずごくろうさま、ありがとう……と言いたくなる。1人でも多くの子どもたちにプレゼントを届けたいと思っているサンタの優しい存在がうれしい。誰かを喜ばすために人知れず心を配ることの尊さを思う。

 

<入選>

プレゼント君の優しさだけでいい/E子さん

マフラーの約束果たすプレゼント/samuさん

誕生日嫁から届く赤い杖(つえ)/のぶこさん

落とし穴も隠されているプレゼント/流星さん

誉(ほ)め言葉たっぷり盛ってプレゼント/壮湖さん

プレゼント二つはいらぬテレショップ/あーさままさん

頭撫(な)でるだけですプアなおじいちゃん/半田山々坊さん

お手伝い券も入っていた遺品/颯爽さん

チャンスだと気づいた人に来るチャンス/翔のんまなさん

諺(ことわざ)は先人からのプレゼント/福笑いさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

「プレゼント」で五音を使う出題を懸念しましたが、天・地・人とも題を詠み込まずに上手くプレゼントを表現しています。作りやすい課題の宿命ですが、やはり同想句が多くありました。中でもサンタの句が多くありましたが同想から抜け切れない感じでした。「プレゼント」から思いを飛ばしながら作句すると、意外なプレゼントにたどりつきますよ。選者としては328句(個)のプレゼントをいただいた気分で、楽しい選句でした。川柳を楽しむことは暮らし(生きること)を楽しむことだと思います。これからも、みえDE川柳が皆さんとの川柳絆の場になりますように……。

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2015年11月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:サミット

天 サミットを迎え伊勢エビジャンプする/流星さん

吉崎先生 来年の5月、いよいよサミットを迎える行政と三重県民の思いを「伊勢エビ」に託したように思える一句。サミットを迎える喜び、サミットの準備を進める責任感、安全をつかさどる警察、海上保安庁の緊張感、そしてお客様ををもてなす地元の人たちの歓迎の気持ちを、「伊勢エビがジャンプする」と、見事に表現して見せた川柳。

 

地 秋刀魚(さんま)焼く路地でサミット開く猫/福村まことさん

吉崎先生 港町には猫がよく似合う。賢島では先進7カ国のサミットが開かれるが、その港町の路地裏ではさんまを焼く匂いの中で猫たちのサミットが開かれている。お互いの平和と安全、交流などについて話し合いがなされているのかもしれない。主要7カ国の本物のサミットに猫のサミットを絡ませたところがお手柄。

 

人 頂上の椅子に背もたれ見当たらず/かぐや姫さん

吉崎先生 サミットとは本来「頂上」の意味だが、いまの三重県では第42回主要7カ国首脳会議のことを指す。各国首脳の座る椅子には、もちろん背もたれは付いているだろうが、この句の言う「背もたれ」はそういう意味ではない。緊急かつ重要な課題が山積みなので、ゆったりと構えてはいられない、ということを言っているのだろう。

 

<入選>

サミットが志摩半島を引き締める/金子鋭一さん

サミットでそわそわなさるお伊勢さん/E子さん

サミットに備えた英語伊勢訛(なま)り/木村行吉(ゆきち)さん

サミットに備え海女さんメーキャップ/祥太郎さん

サミットへ平和の願い抱く真珠/颯爽さん

サミットへ海の青さ欠かせない/比呂ちゃんさん

伊勢志摩へ旅行するのはサミット後/夢見る夢子さん

サミットに習近平の出るクシャミ/せいじさん

水漏れはないかサミット警備隊/正司(まさし)さん

難しい話の後は伊勢の幸/橋さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

作るのも選ぶのも難しい題だったと思います。「サミット」だけで4音。助詞を一つ付けて上5に持ってきた句が圧倒的に多かったのも、やむを得ないところだと思います。
また、このような固有名詞の題の場合、題の言葉「サミット」を句の中に読み込まずに表現することも、なかなか難しいのです。サミットには、単に「頂上会談」の意味もあり、家族の首脳会談など、G7に関係のない句も少し見られましたが、本物のサミットに埋没してしまいました。「人」に輝いた「頂上の椅子~」も、素直に「サミットの椅子」としたほうが、句意がより生きたと思います。

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2015年10月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:味

天 イタダキマス世界遺産は母の味/かぐや姫さん

宮村典子先生 誰にとっても母の味こそが最高の味、永遠の味と言えましょう。それを「世界遺産」と表現した作者に脱帽です。「イタダキマス」と上五を片仮名にしたのも意外性を醸し出しています。表記の方法も句を成功させる大事なところですからね。

 

地 賞味期限捨てる決まりは書いてない/samuさん

宮村典子先生 なるほど、うまいこと言いますネ。消費期限と違って、賞味期限は、記載の日付を過ぎると味は落ちますが(食べられます……)ということでしょうが、確かにその先いつ頃には腐敗しますとは書いてありません。作者は「そこが書いてないじゃないか」「書かなくていいの?」と問題提起をしています。消費者問題ですね。

 

人 失敗もおんなじ味の目玉焼き/アンドブルーさん

宮村典子先生 目玉焼きって一番簡単な料理のように思われていますが、これがなかなかうまくいかない場合が多いのです。簡単だからというので卵の扱いが雑になり「ああ、しまった…」ということに。形が崩れても味に変わりはないという発想から、人間は中身が大事…、ちょっとした失敗なんか気にしない方がよい…との思いがくみ取れます。

 

<入選>

御在所の味をむすびで食べつくす/デコやんさん

おにぎりの隠し味です青空は/美実さん

口コミが列を作らす隠し味/正司(まさし)さん

便利さを食べて忘れる母の味/ほろ酔いさん

サバイバル料理に子から星三つ/ゆきよしさん

大家族の味忘れないおでん鍋/神無月さん

人間味加え頼れる介護ロボ/颯爽さん

味付けはしない小さな正義感/比呂ちゃんさん

ウン十年漬け込みやっと夫婦味/内須みどるさん

辛酸を舐(な)めた湯飲みは燻(いぶ)し銀/C子さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

366句の投句をいただきありがとうございました。1句ずつ大切に拝見させていただきましたが、「母の味」が圧倒的に多かったですね。秋の味としては、まつたけ、くり、さんま等の句がありましたが、いずれも推敲不足の感があり残念でした。また、気になったのは「夏季過ぎて柿とカキの味くらべ」「アジフライ今日は金曜フライディ」と、語呂合わせの句があったことです。川柳は語呂合わせではありません。「人間を詠む五七五の文芸」としての川柳を大切にしたいと思います。課題から連想する自分の思い(気持ち)を五七五に込めて詠んでください……。それが川柳です。

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2015年09月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:島

天 風船を付けると島が持ち上がる/比呂ちゃんさん

吉崎先生 「本当のようなうそ」もまた川柳の真骨頂です。ちっぽけな島でも風船ぐらいで浮き上がるわけがない。そんなことは誰が考えても分かる。そうするとこの島は「架空の島」だということが分かる。「ひょっこりひょうたん島」かも知れないし、作者だけの思い入れのある島かも知れない。いずれにしても、誰も思いつかない「風船で持ち上がる島」に作者独自の着想があって感心しました。

 

地 人情にほだされ島の人となる/つれづれさん

吉崎先生 左遷か島流しか、はたまた気楽な一人旅かは分からないが、しばらく島の生活をすることになったのだろう。都会とは違って人を疑うことを知らない島の人々。その人情にほだされて、この島に永住することになった。一編の小説でも書けそうな一句。「人情にほだされ」が、ほのぼのしていいですね。

 

人 夫とは行きたくはない無人島/あーさままさん

吉崎先生 川柳らしいとっても愉快な句。もしこれが女性の句なら、おそらく本音だろう。と言っても本音のすべてではない。こういう気持ちもちょっぴりある、ということ。川柳は、こういう形で本音の一端を披露できる文芸です。もしこれが男性の句なら、「妻はこう思っているんだろうな」という、とても謙虚な句です。

 

<入選>

無人島自足自給の夢を見る/翔のんまなさん

冗舌(じょうぜつ)家の僕には住めぬ無人島/ポストさん

日焼け止め不用私は島育ち/C子さん

信号は学習用にある離島/福笑いさん

地球儀に有るか無しかの島に住み/samuさん

領海がもれなくついてくる小島/アラレさん

断捨離をしすぎ孤島にいるようだ/夏実さん

忠敬もてこずったろう島の数/加藤当白さん

婚活もありと聞かされ島巡り/崖っぷちさん

サミットに離れ小島も美しい/半田山々坊さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

来年5月には伊勢志摩サミットが開かれます。主会場、賢島はじめ、英虞湾は無数の島々が浮かぶ風光明美な場所。その「サミット」を読み込んだ句が多かったのは当然ですが、ただサミットと島々を並べただけの句が多かったように思います。入選句のように、あなた独自の思いなり見解を詠んで欲しかった。また、「取り付く島がない」という慣用句を使った句も多かった。「慣用句の力」に頼らず、あなたのこれまでの人生と生活から見つけた島を詠まれると、入選の可能性が広がったでしょう。

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2015年08月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:花火

天 自分史に仕掛け花火をセットする/海ほおずきさん

宮村典子先生 仕掛け花火は作者の野心でしょうか。自分の一生、こんなものじゃない、まだまだやり残したことがあるし、やりたいこともある。そんな自分を奮起させる起爆剤に「仕掛け花火」をもってきたところがうまいですね。
自分が納得出来る一生にしたいという、前向きな強い意志を感じます。

 

地 ああ平和花火がとても美しい/まゆゆさん

宮村典子先生 さらりとした表現の奥に平和の尊さを訴えている作者がいます。戦後70年の今年の花火だからこそ、作者は特別の感慨を持って「ああ平和」とつぶやいたのでしょう。その想いに深く共感します。願わくは、花火は永遠に咲く平和であって欲しいですね。

 

人 花火ショー見せぬとビルの仁王立ち/せいじさん

宮村典子先生 乱立したビルの谷間からは花火が見えません。邪魔をするビルを、仁王が立ちふさがっているかのようだとは面白い発想です。花火が見えなくなるほどビルが多くなった街は立派でもつまらないですよね。

 

<入選>

甲子園に津商ナインの大花火/水たまりさん

儚(はかな)さを抱いて夜空に咲くティアラ/火花さん

美しい花火を上げて過去を消す/久実さん

「生き過ぎた」「でも死ねないね」花火見る/B子さん

夏祭り花火に届けかたぐるま/ゆめこさん

町の灯を消して花火が盛り上がる/中村恵さん

一発で憂さを晴らした大花火/正司(まさし)さん

大花火果てて心の闇を増す/相模秋茜さん

大花火スマホに入れて持ち帰る/たまきさん

好きだからネズミ花火で狙い撃ち/金平糖さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

時期的にピッタリの課題で、どんな花火が出現するだろうと楽しみでしたが、遠花火・線香花火・大花火の句が圧倒的に多く、同想句が並びました。そんな中で、意外性のある句、また、当たり前のことをうまく表現しているな…という句を入選にしました。毎月の課題から、時事、人情、ユーモアへと発想を広げて、鋭く、優しく、楽しい川柳に挑戦してくださいね。もちろん、どんな句にも作者の気持ちが込められていることが大事です。「川柳は人間」ですから。

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2015年07月31日 (金)【みえDE川柳】 お題:さけぶ

天 七十年叫び続けているドーム/井田ろくろうさん

吉崎先生 最初に「七十年」とあることで、このドームはヒロシマの原爆ドームだと分かります。8月6日、あの日から七十年がたとうとしています。そして9日、長崎にも原爆投下、十五日終戦。今年の8月はことさら大きく叫び声がこだましているように思われます。ノーモアヒロシマ、ノーモア戦争!ずっと平和でありますように。

 

地 F1のマシンは叫びつつ走る/アラレさん

吉崎先生 これは鈴鹿サーキットを句材にした川柳ですね。オートバイの8耐レースは先日26日に終わりましたが、四輪のF1グランプリは9月に開催されます。地元の方か、F1好きの方が詠まれたのでしょうか?爆音のことを、F1のマシンが叫んでいる、と表現されただけですが、無機質なマシンを擬人化してみせたことは見事です。

 

人 爺(じい)ちゃんが叫ぶと婆(ばあ)ちゃんも叫ぶ/拓チャンさん

吉崎先生 思わず笑ってしまう。夫唱婦随で、じいちゃんの叫んでいることに共鳴してばあちゃんが叫んでるのか、お互い耳が遠くなって大きな声で罵りあっているのか、はたまた、ただの会話なのかは分からない。いろいろ想像できるところも面白いが、じいちゃんが叫ぶと、すぐさまばあちゃんも叫んでいる様子が目に見えて、楽しい。

 

<入選>

絶叫マシンあなたにしがみつくチャンス/水たまりさん

絶叫へお化け屋敷はかせぎ時/アンドブルーさん

着ぐるみが叫ぶ真夏のアルバイト/颯爽さん

ヤッホーの返事は期待していない/ひろりんさん

叫んだらやっと顔出すおばあさん/磯の香りさん

初舞台一言さけぶだけの役/正司(まさし)さん

さけび声聞いてびっくりしてる蛇/福笑いさん

叫んでも耳はスマホが使用中/大声母さん

叫ぶよりささやく方が効果的/金平糖さん

叫びたい線香花火だってある/相模秋茜さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

「ムンクの叫び」を利用(?)した句が12句もありました。誰もが思いつきそうな句材で詠む場合は、それを踏み台にした独自の着想がないと入選は叶いません。また、叫べばよい、とばかり下5を「バカヤロー」とした句が散見されました。川柳は大衆文芸で、上品である必要はありませんが、句品を落としてもいけません。今回は佳句がたくさんあり、13句に絞るのに苦労しました。うれしいことです。

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2015年06月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:隠れる

天 隠れてはいないが忘れられている/相模秋茜さん

宮村典子先生 自嘲の中にちょっとした皮肉が込められていて「もしかして、私を忘れてない?」という開き直り的な気持ち、あるいは素直に「忘れられて切ない」という感情、または、存在感が薄らいできた人の様子をうがっている、等々が思われます。いずれにしても、さらりと詠んで句の後ろの意味を考えさせるところに作句力を感じます。

 

地 全盛の頃が隠れるピアス穴/井川ゴローさん

宮村典子先生 ピアスをしたくなるのは思春期から二十代の前半でしょうか。怖いもの知らずのように若さをかっ歩できたこの時期は、主人公にとってまさに全盛期で、ピアスはその活力を象徴していたのです。残ったピアス穴には自分だけの宝のような思い出が隠れているのでしょうね。ピアス穴の発見でユニークな句になりました。

 

人 額縁の裏に諭吉の隠れ宿/颯爽さん

宮村典子先生 額縁の裏にへそくりを隠す、という発想はよくありますが、額縁の裏を、隠れ宿と表現したのが面白くていいですね。隠れ宿に、あまりいっぱい諭吉さんを休ませると重たくなって額縁が落ちたりしますから、くれぐれもご用心。

 

<入選>

いつだって私の恋はかくれんぼ/金平糖さん

雨の日は羽を畳んでかくれんぼ/ひらりさん

隠れるといつもクシャミをしてしまう/拓郎さん

雲隠れしてもケータイ追ってくる/正司(まさし)さん

隠れ家を公開している伊賀の町/でこやんさん

株高の中に隠れた空き店舗/せいじさん

困るなあ隠れることの好きな鍵/アラレさん

鬼と蛇が妻のエクボに隠れてる/極楽トンボさん

どれほどを演じてきたか舞台裏/比呂ちゃんさん

掌(てのひら)をいつも結んで秘密主義/samuさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

「隠れる」という課題に対して「隠す」という句が多く出されました。どちらも「動詞」ですが「隠れる」は自動詞で「隠す」は他動詞になります。違いを簡単に言えば、自分が動くのが自動詞(~が隠れる)他のものを動かすのが他動詞(~を隠す)です。従って、入選句は課題「隠れる」に沿っていただきました。

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2015年05月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:山

天 故郷の山が校歌を熱くする/流星さん

吉崎先生 「美しい川が校歌にまだ残り」という川柳もあるが、川より山の方が多く校歌に取り入れられている。川より山の方が変わらない。中腹まで家が建っていても、姿形はずっと変わらない。故郷の山はいつでも貴方を応援してくれている。みんなで肩を組んで校歌を歌えば、いくつになっても熱いものがこみ上げてくるだろう。

 

地 山登りいつの間にやらゴミ拾い/クレヨンしんちゃんさん

吉崎先生 山の会などで山登りを楽しんでいる人たちは、定期的に地元の山の清掃などもする。登らせてくれる山に感謝をしているからだ。この人は、一人で山に登っているときでも、目に付いたゴミはついつい拾ってしまうのだ。「いつの間にやら」に、その人柄がしのばれる。皆さん、山で出した自分のゴミはすべて持って帰りましょう。

 

人 山盛りの飯の割にはないおかず/すずっぽちゃんさん

吉崎先生 オリンピック選手の強化合宿なら、飯だけでなく、おかずもたっぷりあるだろう。このケースは、あまり予算のない高校運動部の合宿かも知れない。関取がいなくて台台所事情の苦しい相撲部屋? それとも食べ盛りに達した子だくさんの家庭かも知れない。ユーモアの中にペーソス(悲哀)もちょっぴりあって、楽しい句。

 

<入選>

背比べしているセブンマウンテン/アラレさん

どちらから見てもイケメン富士の山/まさしさん

衰えた足を励まし登る山/E子さん

登山する古希のわたしも山ガール/せいじさん

遠目には肌荒れ見えぬ富士の山/samuさん

校歌には常連だった経が峰/アンドブルーさん

積み上げて読んだ気でいる本の山/相模秋茜さん

積ん読の山に雪崩の注意報/颯爽さん

山勘が当たってからの怠け癖/福笑いさん

洗濯の山を土産に子の帰省/せんたくかあちゃんさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

一見やさしい題は難しい題でもあります。誰でも考え付きそうな句は浮かんでくるけど、誰も考えつきそうもない句はなかなか浮かんできません。「山」といえば山登り、本物の山が浮かんできますね。「本の山」以外にも「宝の山」「魔の山」「針の山」「宿題の山」など、いろいろ探してみるのもいいでしょう。自分の人生経験を振り返って、それらの「山々」と重ね合わせると、独創的な句が生まれる可能性が広がるでしょう。

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2015年04月24日 (金)【みえDE川柳】 お題:新しい

天 落書きがしたくなるほど新しい/アラレさん

宮村典子先生 完璧なものに対すると壊したくなる、美し過ぎるものに対すると汚したくなる……誰にでも、このような少しゆがんだ、反逆の感情というものが心理の根底にあるような気がする。挑戦の視点でもあろうか。この句はさらりと言いながら、まさに人間の本質を突いている。秀逸の天である。

 

地 ていねいに書きます新しいノート/田川士郎さん

宮村典子先生 当たり前のことを言っているようだがそうではない。この句の「ていねい」「新しいノート」は、普段の生活態度の全てに当てはまる気がする。何でも、どんなことをするのも、最初はとてもていねいに使ったり取り組んだりするのだが、そのうちに、慣れたり飽きたりするとどちらも乱雑になってしまう。作者は、今から始める新しいことを前にして改めて、「ていねい」な気持ちで取り組むことを自分に言い聞かせているようだ。意識して生活することの大切さを思う。

 

人 新しい眼鏡が曇る消費税/一人静さん

宮村典子先生 消費税が2014年4月から8%になった。いくら必要税だと説明されても、増税により我々の暮し向きは苦しくなった。どんなに気分を一新しても、この先の生活に不安を感じるばかり……。2017年には10%に引き上げられるらしい消費税を思うと新しい眼鏡も曇るというものだ。庶民の憂いを吐いた時事句として妙。

 

<入選>

真っ新(まっさら)なこころを背負うランドセル/こはくさん

新人類初出勤は親連れて/あさか舞さん

新社員鈍感力はすでにある/samuさん

左遷でも地酒が美味(うま)い新天地/極楽トンボさん

新年度わたしも脱皮しなくては/相模秋茜さん

水たまりまたいで走りたい新車/お~寒さん

新しい道で無口な中古ナビ/春うららさん

新品にするため光るまで磨く/B子さん

新しいうわさは直ぐに売り切れる/桜草さん

新しい地名になった過疎の村/零れ種さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

今月(新年度)から、入選が13句になりました。ちょっとうれしいですね。毎月のように言っていますが、課題に対してどんな視点から詠むかという姿勢がとても大事です。今月も、「ピカピカのランドセル」「1年生」など安易な発想の句が多く、又、技巧に走り過ぎて意味不明な句もありました。分かりすぎてもダメで、分からない句もダメなら、どんな句を書けばよいのでしょう?読む人(聞く人)に大きな(深い)共鳴を得られる句を目指していただけたら……と思います。簡単そうで難しい川柳ですがどんどんチャレンジしてくださいね。

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