【みえDE川柳】 お題:夢
夢のない人と牛丼食べに行く/心はパールさん
この句だけで二人の関係を特定することは難しいが、ある程度の推察はできよう。作者はお相手に、恋人になってもいい、結婚してもいい人だと思っていたのかも知れない。しかし、うち解けて話をしてみると意外につまらない。昼食だって、せめて海の見えるレストランでランチ、とか言ってほしいのに、牛丼屋なんて夢のない人!と、がっかりした様子が目に見えるようだ。牛丼屋に悪いけど、牛丼屋が効果的だった。
よれよれの襷に父の夢がある/比呂ちゃんさん
「よれよれの襷(たすき)」とあるから、これは代々受け継がれてきた家業なのでしょう。となると、「父の夢」とは何のことだろう? 父の、とあるから息子(娘かも)の立場で詠まれた句だと分かる。つまり、先代から受け継いできた家業を自分に託して発展させてほしい、ということが「父の夢」だと分かる。たった17音字で、これだけの経過を想起させる句だ。出(で)だしの「よれよれの襷」が良かった。
始発駅大きな夢を乗せて出る/久実さん
始発駅は故郷の駅なのでしょう。この句は具象(具体的な事象)を詠んでいるが拡(ひろ)がりがある。始発駅は駅に限らず、進学や就職、結婚など、人生の節目節目の出発点も指している。留学や転勤、再就職でもいい。さらに、一人一人の心の中に「心機一転」という駅が有るとすれば、それも始発駅と言えよう。何があっても始発駅にいるような大きな夢を持ちたい。世代を超えて共感できる仕立てになっている。
<入選>
初夢は夢でよかった夢をみた/海坊主さん
叶わない夢も混じった絵馬の群れ/ワン吉さん
膝枕二人で夢を語ろうか/いさおくんさん
初恋の夢に夫は現れず/E子さん
二度寝したばかりに又も恐い夢/なごみさん
句読点ばかりの夢に生きている/こまっちょさん
1ピースなくし完成しない夢/アラレさん
老人も幼稚な夢を見ています/よしじろうさん
夢の中では白髪などない私/汐海岬さん
ピンコロの夢に向かって万歩計/きなこ餅さん
吉崎柳歩先生
「夢」には大別して二通りあって、一つは、初夢など眠っているときに見る夢。もう一つは、オリンピックに出たいなど、希望とか大志を抱く「夢」ですね。どちらで作句しても構いません。どちらかというと前者はユーモア句、後者は格調の高い句に向いていると思います。どちらにしても、オリジナルな視点、表現が大切です。いくら面白くても、また格調が高くても、誰もが詠みそうな句は共感を呼ばないので避けましょう。天の句は、「大志」という意味の夢でしたが、ユーモアたっぷりの川柳らしい川柳でした。