【みえDE川柳】 お題:風
飛んだ日の風に恋する竹トンボ/福村まことさん
裏山から切り出した竹を割り、自分で作った竹トンボ。より高く飛ぶようにと子供なりに必死にナイフで削ったり、角度を変えたりといろいろ工夫したものだ。
そして、うまく飛んだ時のあの感動は今でも忘れない。真っ青な空に向かい、吹き渡る爽やかな風にのり、宙を舞う竹トンボの姿が、今でも目に鮮明に焼き付いている。久しぶりに童心に戻してくれたこの句に感謝。そして竹トンボが「風に恋する」と表現したのがお見事。
風にのって飛ぶ竹トンボが、まるで心があるような生き生きとしたものに感じられた。
残り火を煽るいたずら好きな風/あそかさん
何十年ぶりかで、同窓会にでも、参加されたのだろうか。そして思いがけず、はかなく消えた初恋の相手とでも再会したのだろう。一気に時計の針は巻き戻され、消えたはずの淡い想(おも)いが風に煽(あお)られ再び燃え上がる。「いたずら好きな」と風に人格を持たせたところがこの句を成功にと導いている。また、「いたずら好きな風」に対してまんざらでもない作者の顔も同時に垣間(かいま)見ることができる。
アルバムを開くと風が動き出す/久実さん
アルバムに込められた数々の想い出を風の動きと捉えた作者に拍手。爽やかな風、明るい風、おしゃれな風、少し悲しい風、おませな風、そして背中を押してくれた風も、アルバムのページと共に色々な風が作者の心の中で動き出す。辛い自粛ムードの中、とてもすばらしいステイホームですね。
<入選>
昭和から甘くレトロな風が吹く/薫子さん
気まぐれな風に吹かれて決めた道/御堂美知子さん
飛び越える勇気がほしい風を待つ/ルーのバアさん
いつからか風上にいるお嫁さん/にった みささん
正直に生きて老後の寒い風/花キャベツさん
一枚の絵葉書で来た海の風/スイッチさん
県境をまたぐと風の色変わる/石楠花さん
決断の若きリーダー起こす風/南武線の旅人さん
風の音も半音上がる春うらら/汐海 岬さん
後悔を風の便りに乗せてみる/ぷいこるとさん
丹川修先生
投句期間が緊急事態宣言の真っ最中でもあり、歴史的な地球規模での事態だけに当然のごとく、コロナ禍を捉えた句が、かなりの割合でありました。しかし、そのほとんどが、同想の域を出ないものでした。また、時事句の弱点でもありますが、その時が過ぎれば、句の意味合いが判(わか)らないものになってしまいます。したがって入選にはさせて頂けませんでした。
しかしながら、コロナ禍から着想をされても、句としてきっちりと独立性が保たれているものもあり一部、入選とさせていただきました。また、お若い方(?)からのご投句でしょうか、リズムのやや悪い句もありました。リズムの大切さは、川柳にとって欠かせない要素です。私はリズムを整えるために、実際に何度もその句を口に出してみることにしています。そうすると、自分でも、「ここはどうもなあ」と気の付くものです。多数の投句を戴きありがとうございました。