過去の入選作

2018年08月31日 (金)【みえDE川柳】 お題:遊び

天 遊ぼうか棒が一本ありますよ/かぐや姫さん

宮村典子先生 一本の棒で何して遊ぼうか? と誘われた気分になった。何をして遊べるかな? と考えさせられた。一本の棒を使う遊びが頭の中を駆け巡る。ずっと昔、同じことを考えたことを思い出した。今の子供たちは欲しいと言えばどんな高価な玩具(特に最近ではゲーム)でも買い与えられ、飽きれば又(また)別の玩具も。この句はそんな現状に「ちょっと違うんじゃない?」と、工夫がなくなった遊びを憂いながら、「一緒に遊ぶ心の使い方」をも提言している。遊びの原点を伝えてメッセージ性のある一句。

 

地 遊んでる時は忘れるかすり傷/十六夜さん

宮村典子先生 夢中になって遊んでいる時に転んで膝小僧を擦りむいたりしても平気平気!全然痛くない。でも帰る頃になると「遊びの薬」が切れてヒリヒリしてくる。子供だと急に泣き出したり。転んだのが心の場合は、かすり傷の痛みはなかなか治らないが、それでも親しい人と食事をしたりお喋(しゃべ)りをしたり、旅に出たりして楽しく遊んでいる間は傷の痛みを忘れている。「遊び」は誰にとっても良く効く「薬」なのである。

 

人 パソコンを開けば僕の遊園地/あそかさん

宮村典子先生 パソコンの世界を遊園地とした着想が現時代を反映させる。確かに、パソコン機能を熟知している人にとっては、ここはパラダイスだろう。いろんなゲームが続々と更新されるし、知りたいこともほとんど教えてくれる、飽きることのない遊園地なのである。が、パソコンの遊園地には人の息の気配がない。情報の遊園地は楽しくも寂しい気がする。それでも作者にとっては心身を癒す自分だけの遊園地なのだ。

 

<入選>

遊びすぎ入道雲に叱られる/汐海 岬さん

大仏さんもきっとやりたい水遊び/デコやんさん

お月様鬼ごっこなら負けません/ムギさん

ガラケイと別れスマホに遊ばれる/草かんむりさん

思い出も涙も詰まるおもちゃ箱/西井茜雲さん

かるた取りご先祖様に座布団を/あゆかさん

あやとりをしながら昭和語る母/やんちゃんさん

にらめっこ妻には勝てる訳が無い/安田蝸牛さん

血統書付きで夜遊びできぬネコ/ホッと射てさん

どの顔で遊ぶか今日は誕生日/福村まことさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 何々でどのように遊ぶというような説明句や、砂場、ブランコ、かくれんぼなどの同想句も多い中からの選句でした。てにをはの使い方ミスで選外にした着想の良い句もあり残念に思います。推敲(すいこう)が大事ですね。奇想天外な遊びを期待していたのですが、見当たらず、そんな中で今回は「遊び」の心理的な効用を詠んだ句が上位に浮かびあがりました。入選10句は共感度の高い句です。遊び心を大事に、より楽しい日々を過ごせますように。

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2018年07月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:声

天 声援を沢山受けている背中/やんちゃんさん

吉崎先生 一見、なんということもない川柳だが、「沢山」が効いている。欲を言えば、「受けている」が漢字だから、「たくさん」と平仮名で書いてほしかった。この句を読むと、いろいろな場面が浮かんでくる。家中(いえじゅう)の声援を受ける1年生の背中、グラウンドの球児の背中、仕事場に向かう背中、台所の背中、はたまた、手術室に向かう大切な家族の背中、読む人ごとに思い浮かべる背中があるだろう。
 この「たくさん」には、応援する沢山の人たちの気持ち、人生の局面で励ましてくれた多くの言葉を想像することができる。それらに感謝する背中まで読みとれる。

 

地 デシベルで声測られる保育園/颯爽さん

吉崎先生 デシベルで測るということは、園児の遊ぶ声や歌う声も、工事や飛行機の音と同じ騒音として扱われるということ。昔はこんなことはなかった。子どもは国や社会の宝と言われてきた。子どもが元気で遊ぶ声は、むしろ耳に心地よい音だったと思う。図書館や待合室などで騒ぐ子をたしなめるのは必要だが、園児の声が騒音に聞こえるということは、大人に包容力がなくなってきたということかも知れない。
 この句は、「だからどうだ」とは一言(ひとこと)も言っていない。ただ「デシベルで測られる」と言っているだけ。思いを述べなくても作者の思いは伝わってくる。

 

人 補聴器が孫の悩みを聞いている/よしじろうさん

吉崎先生 「補聴器をつけて」ではなく、「補聴器が」としたところが良かった。補聴器はもちろん、お爺(じい)さんかお婆(ばあ)さんのことだが、「補聴器が~聞いている」としたことで、耳は遠くなったが、孫の悩みを真剣に聞きとろうとしている、お爺さんかお婆さんの姿と愛情が伝わってくる。作者がお婆さんなら、補聴器を付けて悩みを聞いてやっているのはお爺さんということになる。もちろん逆でもいい。
 川柳はたった17音字の文芸だから、省略できるところは上手に省略しなければいけない。省略することによって、この句のように句意が強調されることもある。

 

<入選>

炎天下しんどいなあとアリの声/デコやんさん

ニンゲンに地球の声が届かない/加藤当白さん

カーナビの声に洗脳されている/比呂ちゃんさん

大声で吠えても出ない探し物/ほのぼのさん

歌ってもエコーかからぬ露天風呂/アラレさん

俺だ俺だと三千グラムの声/橙葉さん

遠い日の妻は鈴振るような声/汐海 岬さん

お隣へつつぬけ妻の笑い声/すずっぽちゃんさん

守秘義務を忘れてしまう甘い声/草かんむりさん

溜め息も声にならない声である/春爺さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「声」というお題では、これまで多くの川柳が詠まれてきました。声には、直接、耳で聞きとる「声」と、意見とか発言という意味の「声」があります。入選句の中では、たまたま前者の声が多かったようですが、もちろん、後者の声でもけっこうです。
 大切なことは、言葉を飾ることではなく、声というテーマでどんどん掘り下げてみることです。何かを見つけたら、その「こと」をなるべくシンプルに表現することです。

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2018年06月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:傘

天 古い傘ひらけば遠い恋が降る/汐海 岬さん

宮村典子先生 昔々の恋の思い出を手繰る心持ちが感性豊かに表現されていて素敵(すてき)で素晴(すば)らしい。単に意味を伝えるのではなく、読み手、聞き手に想(おも)いを感じさせるような作り方がこの作品の力。古い傘をひらくと遠い恋が降る……、発想に詩心が溢(あふ)れる。

 

地 忘れられた傘のしずくは乾かない/アンドブルーさん

宮村典子先生 百均の傘が出回り始めてから、特に置き忘れの傘が増えたような気がする。大袈裟(おおげさ)な言い方かも知れないが存在する全ての「もの」に「命」があると考える時、忘れられたままの「もの」には耐えがたい寂しさがある気がする。この「傘」を人間として鑑賞すると特にその感が強くなる。対するものへの思いやりに欠ける自分勝手な振る舞いに、「喝」のような一句。

 

人 ずぶ濡れの子猫を抱いた赤い傘/あそかさん

宮村典子先生 雨の中に置かれた子猫を見て、思わず抱き上げた女の子の姿が目に浮かぶ。この句のポイント「赤い傘」はもちろん女の子。「ずぶ濡れの子猫」への何とも言えない可愛(かわい)い優しさに癒される。子猫の幸せを祈りたい。

 

<入選>

水色の傘で青空できあがり/たかあきさん

あの頃は傘で飛べると信じてた/久ちゃんさん

黒板の相合傘で仲裂かれ/はなぶささん

一年生傘から足が生えている/花キャベツさん

傘立てに今も忘れぬ恋ひとつ/よっちゃんさん

合格に空を持ち上げ開く傘/福村まことさん

青い空破れた傘の隙間から/麦乃さん

僕は右君は左の肩濡らす/十六夜さん

未練捨てきっぱり傘の雫切る/ホッと射てさん

差さぬよりマシと福祉の破れ傘/橙葉さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 梅雨の季節に「傘」という課題はピッタリでした。が、「相合傘」の同想句が多く、「傘の中」「ビニール傘」など具体的すぎる使い方も多かったですね。そんな中から、「傘」に繋(つな)がる自分の気持ちを上手(うま)く表現していると思う句を入選としました。
 句の中にウンと思わせるところがあり「なるほどなァ」「言い得ている」となると成功です。言い過ぎてもダメ、言い足りなくてもダメ、入選13句の壁はキツイかも知れませんが、挑戦の楽しみを続けてくださいね。

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2018年05月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:萌える

天 春の芽を食べて私も春になる/アラレさん

吉崎先生 「私も春になる」が良い。春の芽といえば、タラの芽、フキノトウ、ウド、ワラビ、いろいろあろうが、定番はやはり天ぷらか? 「春の芽を食べて」のオープニング(出だし)も季節感いっぱいで良いが、「私も春になる」の結語の意外性が秀逸。「春」のリフレイン(繰り返し)も効果的。「私も春になる」とは、春を満喫してハッピーになるということだろう。文句の付け所(どころ)のない川柳。ハッピーな川柳。

 

地 雑草も萌えるアスファルトの隙間/颯爽さん

吉崎先生 人間が張り切っているときには、「燃える」と書く。春が来て草木が新芽を伸ばそうと張り切っているときには「萌える」という漢字でかく。草冠に明るいと書く。中でも、名もない(あるのだけれど)雑草は逞(たくま)しい。石垣の隙間はもちろん、アスファルトで完全に覆われていても、いつの間にか生えてくる。隙間を見つけて生えてくるのではなく、弱いところを見つけて生えてくるのだろう。この句は、雑草の不撓不屈(ふとうふくつ)の精神を見習おうと言っているのか、そのパワーに呆(あき)れているのか?

 

人 草萌えてやさしい牛の眼に出会う/あそかさん

吉崎先生 牧場の風景だろうか? シンプルで解(わか)りやすい句。気負ったところもなく、有ったことをそのまま川柳にしているように思える。それでいて風景が見える。作者が出会った風景が読者にもストレートに伝わる。風景が見える川柳は良い川柳である。長閑(のどやか)な春の牧場、牛だって牛舎で食べる牧草より牧場に生えている草を食べるほうが美味(おい)しいに違いない。近寄っていくと牛と目が合った。やさしい目をしていた。牛だって人だって、美味しいものを食べているときは、目が笑っているものだ。

 

<入選>

つくしんぼオマエも萌えているんだね/素人さん

萌えかけた芽に突然の五月病/ワン吉さん

萌えるのを許してくれぬ除草剤/十六夜さん

虫が付く若葉の頃もあったのに/安田 蝸牛さん

息づかいまで聞こえそう木の芽時/かぐや姫さん

若草に萌えてランチも新メニュー/スイッチさん

スポットを当ててよ発芽しています/橙葉(とうよう)さん

萌えるまで綺麗な水をやっている/まゆゆさん

人知れず萌える日もある水中花/福村まことさん

千年の森衰えぬ芽が萌える/金子鋭一さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 みえDE川柳の放送が始まってから5年目に入りますが、今回のお題「萌える」は、これまでで最もむずかしい題だったかも知れません。人間味よりも、自然や季節感といった俳味の強い題でしたから、作りにくかったと思われます。その中で、今回の入選13句は、どれも上手に「にんげんの思い」が詠み込んであります。擬人法(物を人に見立てる)や擬物法(人間を物に見立てる)が有効でした。

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2018年04月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:出会い

天 行きずりの本に一生拉致される/ほのぼのさん

宮村典子先生 何気なく入った書店。時間潰しだったかも知れない。しかし、ここで作者は生涯の一冊に出会ったのである。なんという素晴(すば)らしい出会いだろう! その出会いを「一生の拉致」と捉え、表現した感性が素晴らしい! 大袈裟(おおげさ)かも知れないが「良書」は人生の血となり肉となる……と思っている。生き方を変えることだってある。もちろん、人それぞれ「良書」は異なるだろうが。
 最高の「出会い」に乾杯。

 

地 画用紙になって繰り出す大都会/みちゃこさん

宮村典子先生 「画用紙」に自身を喩(たと)えているのだろう。「繰り出す」と言っているところから、意志の強さが窺(うかが)われる。考えがあってのことなのだ。真っ白な画用紙に作者はどんな絵(自分の未来)を描きたいのだろう? 大都会との出会いを思う時のワクワク、ドキドキ感を「画用紙」「繰り出す」に込めている。読者の関心を引く作品。

 

人 指切りのチャンスをくれたにわか雨/あそかさん

宮村典子先生 雨宿りとは言っていないし、出会いとも言っていないが正にその所。ここから生まれたお付き合いのやがてがどうなったのかな?と思わせる。「チャンス」と言っているから、きっと、出会いを実らせたのだろう。想像にロマンがある。

 

<入選>

初恋が破れ心はレモネード/ゆずきちゃんさん

花の種飛ばす出会いの芽生えまで/アンドブルーさん

右向いて目が合ったのが運のつき/イルカさん

いろいろな出会い見てきた駅の椅子/とこなめっ子さん

生涯の友と出会った春が好き/乙女ちゃんさん

光年の宙に出会いを追うロマン/颯爽さん

曲折の果てに中也の詩と出会う/橙葉さん

いい出会いだったのだろう共白髪/汐海 岬さん

嘘でした残りものには福がある/うさぎ物語さん

4Bに出会い度胸がつきました/ムギさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 天・地・人ともに課題「出会い」を詠み込んでいませんが、出会いが伝わってきますよね。句全体で課題の意味を表現していると思います。課題を詠み込まない場合は、句意が課題から離れすぎないように注意が必要ですが、深みのある作品になります。
 題に凭(もた)れていないか?の判断が難しいところですが、敢(あ)えていただきました。「出会い」という課題から皆さんが心のページを捲(めく)ってくださいました。そこに川柳があるのです。嬉(うれ)しいですね。

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2018年03月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:卒業

天 成績に触れず卒業ほめてやる/まさしさん

吉崎先生 一見、なんでもないような川柳。気負いがなくて自然体で詠んでいるからだろう。
 「卒業おめでとう」などと、卒業そのものを称(たた)えたり、主席で卒業したとか、逆にギリギリの成績で卒業したという川柳は見かけるが、「成績に触れず」と、さりげなく詠まれた句は記憶にない。この句の良いところは正(まさ)にその「成績に触れず」の導入部である。それだけで、成績は芳しくはなかったけど頑張った子供、その親、もしくは教師の表情が浮かんできそうな川柳になった。

 

地 卒業をさせて教師もほっとする/アラレさん

吉崎先生 ほとんどの句は、卒業する本人か、本人の親の立場で詠んだ句であった。この句は卒業まで勉強以外にも根気よく面倒を見てきた教師の立場で詠んでいる。自分のことであれば、「ほっとする」といった心の状態などは直接的には言わず、句の言外でにおわせて読者に共感してもらうものなのだが、ここでは教師の気持ちを思いやって敢(あ)えて「ほっとする」と言い切っている。最後まで気を抜けなかった卒業式も無事に済んだ。その教師の達成感と虚脱感の入り交じった「ほっとする」なのだ。

 

人 答辞より送辞がちょっとだけ上手い/水たまりさん

吉崎先生 在校生が読むのが送辞、卒業生が読むのが答辞である。さて、どうして答辞より送辞のほうが上手だと言えるのか? 察するに、答辞はもう卒業生に敬意を表して、文章も読み方も生徒に任せる。しかし、答辞は在校生が読むもの。落ち度がないよう先生がチェックすることも十分考えられる。作者も、たぶんそれに気づかれたのだろう。
 この句の作者が卒業生の保護者なのか教師なのか分からない。どちらにしても、「ちょっとだけ上手い」と、比較してみせたところが、この句のお手柄である。

 

<入選>

分校の卒業式は猫も来る/福村まことさん

卒業式初めて校歌噛みしめる/あーさままさん

卒業ができず留年続く恋/汐海岬さん

婚活をやっと卒業出来ました/よっちゃんさん

通学の電車今日までありがとう/祥一郎さん

卒業を待って打ち切る手内職/あそかさん

春なのに卒業できぬ花粉症/やんちゃんさん

善人を卒業すれば跳べるはず/デコやんさん

長いドラマの幕開けだった卒業日/ワン吉さん

戒名を貰い卒業する浮き世/ゆきちさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「卒業」は時節に沿ったいい題だったと思います。婚活や人生の卒業など、発想の幅を広げると、楽しい、あるいは面白い句も浮かんでくるでしょう。それでいいのですが、やはり「卒業の本家本元」は学校の卒業です。一人で何句でも投句できるのですから、こういう場合は、先(ま)ず本物の卒業を詠んでください。それから、それ以外の卒業に挑戦したらいいでしょう。三才に選ばれた句がすべて「本物の卒業」の句であったのも、偶然ではないと思います。

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2018年01月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:夢

天 夢のない人と牛丼食べに行く/心はパールさん

吉崎先生 この句だけで二人の関係を特定することは難しいが、ある程度の推察はできよう。作者はお相手に、恋人になってもいい、結婚してもいい人だと思っていたのかも知れない。しかし、うち解けて話をしてみると意外につまらない。昼食だって、せめて海の見えるレストランでランチ、とか言ってほしいのに、牛丼屋なんて夢のない人!と、がっかりした様子が目に見えるようだ。牛丼屋に悪いけど、牛丼屋が効果的だった。

 

地 よれよれの襷に父の夢がある/比呂ちゃんさん

吉崎先生 「よれよれの襷(たすき)」とあるから、これは代々受け継がれてきた家業なのでしょう。となると、「父の夢」とは何のことだろう? 父の、とあるから息子(娘かも)の立場で詠まれた句だと分かる。つまり、先代から受け継いできた家業を自分に託して発展させてほしい、ということが「父の夢」だと分かる。たった17音字で、これだけの経過を想起させる句だ。出(で)だしの「よれよれの襷」が良かった。

 

人 始発駅大きな夢を乗せて出る/久実さん

吉崎先生 始発駅は故郷の駅なのでしょう。この句は具象(具体的な事象)を詠んでいるが拡(ひろ)がりがある。始発駅は駅に限らず、進学や就職、結婚など、人生の節目節目の出発点も指している。留学や転勤、再就職でもいい。さらに、一人一人の心の中に「心機一転」という駅が有るとすれば、それも始発駅と言えよう。何があっても始発駅にいるような大きな夢を持ちたい。世代を超えて共感できる仕立てになっている。

 

<入選>

初夢は夢でよかった夢をみた/海坊主さん

叶わない夢も混じった絵馬の群れ/ワン吉さん

膝枕二人で夢を語ろうか/いさおくんさん

初恋の夢に夫は現れず/E子さん

二度寝したばかりに又も恐い夢/なごみさん

句読点ばかりの夢に生きている/こまっちょさん

1ピースなくし完成しない夢/アラレさん

老人も幼稚な夢を見ています/よしじろうさん

夢の中では白髪などない私/汐海岬さん

ピンコロの夢に向かって万歩計/きなこ餅さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「夢」には大別して二通りあって、一つは、初夢など眠っているときに見る夢。もう一つは、オリンピックに出たいなど、希望とか大志を抱く「夢」ですね。どちらで作句しても構いません。どちらかというと前者はユーモア句、後者は格調の高い句に向いていると思います。どちらにしても、オリジナルな視点、表現が大切です。いくら面白くても、また格調が高くても、誰もが詠みそうな句は共感を呼ばないので避けましょう。天の句は、「大志」という意味の夢でしたが、ユーモアたっぷりの川柳らしい川柳でした。

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2017年12月22日 (金)【みえDE川柳】 お題:ボーナス

天 ボーナスの語源はきっとシャボン玉/ムギさん

宮村典子先生 お日さまに当るとしゃぼん玉は、とても美しい色彩を見せて喜ばせてくれるのだけど、あれ、あれってすぐに消えてしまう。で、はかないものの喩(たと)えに使われるが、この句はボーナスに重ねて妙。ちなみにボーナスの語源はラテン語の「ボヌス」で「良い」という意味らしいが、開き直りのように「語源」「きっと」を持ってきて明るく愚痴ってみせる。発想の勝利。

 

地 留守電に寒くないかと母の声/比呂ちゃんさん

宮村典子先生 母の声には多額のボーナスの魅力に負けない力がある。温かい「母性愛」という力である。仕事を終え、冷え切(き)って帰宅した作者にとって「寒くないか」の母の声は最高のボーナスだったに違いない。そして、それをボーナスだと捉えた作者の心の温かさ。心の通じ合える親子関係に、胸がジンと熱くなった。素敵(すてき)なボーナスをありがとう。

 

人 デパートがこんなに広いボーナス日/福村まことさん

宮村典子先生 普段(ふだん)は、目指す商品の売り場へ一直線。そして一直線に帰宅という、ちょっぴり寂(さみ)しいデパートなのだが、ボーナスが出た今日は違う。ゆっくり歩いてみる。広い、広い、デパートってこんなにも広かった? そんなことに気付くだけでも嬉(うれ)しいのである。
 「こんなに広い」という着想に庶民の哀愁が漂う。

 

<入選>

 本物のビールが2本ボーナス日/ゆずきちゃんさん

賞与でて百円ショップで大人買い/茶唄鼓(チャカドン)さん

人生のボーナスだろう孫五人/おでんさん

和ませるこの一粒の飴玉が/E子さん

ボーナス日家族の笑顔買いに行く/やんちゃんさん

初めての賞与母さんありがとう/かぐや姫さん

回らない寿司食べられるボーナス日/フーマーさん

暗算が冴えるボーナス支給前/汐海岬さん

通帳に痕跡だけはある賞与/金子鋭一さん

ボーナスで決まるサンタのスケジュール/あそかさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 今年もいよいよ終りに近づきました。今月は、12月にピッタリの課題「ボーナス」で、379句の投句をいただきましたが、予想通り、ボーナスからの発想は皆さん同じでしたね。そんな中で、いわゆるマネー(お金)でないところにボーナスを見つけたり、ボーナスをユニークに使ったりした意外な発想の作品を入選としました。庶民にとってのボーナスは嬉しくて切ないものだと改めて思いました。みえDE川柳が皆さんの心のボーナスになりますように……。

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2017年11月24日 (金)【みえDE川柳】 お題:温泉

天 美人の湯美人になった顔で出る/久実さん

吉崎先生 「美人の湯一度入ったぐらいでは」、これは15年くらい前、私が詠んだ句。温泉と言えば「美人の湯」、美人の湯を読み込んだ句が、この句を含めて25句もあった。川柳を作る人なら飛び付(つ)きそうな「美人の湯」。美人の湯を詠むなら、他人とはひと味違う「美人の句」を詠まないと入選は覚束(おぼつか)ないだろう。
 この句は、客観的に「美人になった顔で出る」わけではない。あくまで主観的に「美人になった顔」なのだ。いいじゃないですか、本人がそう思っているのなら。

 

地 宿題を間欠泉に急かされる/福村まことさん

吉崎先生 一読すると「はてな?」と思わせる句。理屈では、なぜ間欠泉に急(せ)かされるのか解(わか)らない。しかし、もう一度じっくり味わって読むと何となく解る。作者は、まだ仕上げていない宿題のことが頭の中にあったのですね。間欠泉を眺めていたら、ふとそのことが顕在化した。「こんなことしてていいのか!」と、噴き出たお湯に叱られた。う~ん、と思案していたら、間欠泉だからいっとき置いてまた噴き上がる。その様子を「急かされているように」感じたのだ。理屈より感性で味わう川柳。

 

人 温泉のある支店だと慰める/西井茜雲さん

吉崎先生 これは左遷に遭った同僚を慰めている図。たった17音字で句の背景まで読めてしまう。支社や支店にもいろいろあって、必ずしも左遷とは限らないけど、この句の場合、「温泉のある支店」と言っている。秘湯ではないかも知れないが、温泉はたいてい鄙(ひな)びた過疎地などにある。紛れもなく左遷なのだ。せめて温泉好きの人なら良いのだが…。シンプルで無駄のない技巧が光る。

 

<入選>

寒い日につかりにおいで榊原/かれんだーさん

混浴に水着を着ろと書いてある/あそかさん

温泉に行きたい父と行かぬ母/麦乃さん

効能を読めば効き目が2倍増/ペースかめさん

温泉の効きめにほしい顔のシミ/松ぽっくりさん

万能のお湯も効かない物忘れ/デコやんさん

妙案がひょいと浮かんでくる湯船/よもやま話さん

露天風呂猿と眺めている銀河/ベネガさん

温泉場試食のようにある足場/スランプさん

温泉と違ってすぐに冷めた恋/汐海岬さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「温泉」は、私たちの生活に密着し、心身ともに癒してくれる存在ですから、川柳のお題にしばしば採用されます。また、日本は温泉大国ですから、各地の温泉地や自治体が主催して「温泉川柳」を公募することも多いです。どのお題でもそうですが、人はみな同じようなことを考えるもの。「温泉」なら尚更(なおさら)です。温泉についての体験や考察から、少しでも他人と違う見方をすること、オリジナリティ(独自性)のある作品を詠むことを心掛けてください。それが「川柳の目」というものです。

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2017年10月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:スポーツ

天 駆け引きが恋に似ているカーリング/鶏冠さん

宮村典子先生 カーリングは、石(ストーン)の進路をデッキブラシのような道具で掃いてスピードや方向を調整しながら円(ハウス)の中心に近づけるのだが、相手の戦略を探りながらの競技で、「氷上のチェス」とも言われているらしい。この性格を以(もっ)て「恋の駆け引きに似ている」と表現した作者のセンスに脱帽。

 

地 天国と地獄を分けた甘い球/西井茜雲さん

宮村典子先生 野球だとしたら勝ち進んでいた9回裏での出来事だろう。今日の試合は貰(もら)った…と思ったのが気の緩みだったか、最後の一球が甘かった。逆転の憂き目にあってしまったのだ。野球解説者の言葉のようでもあるが、川柳として読むと「甘い球」は人生街道での油断にも通じる。どんなに順風満帆の人生を歩んでいても、ちょっとした気の緩み(油断)が身を破滅させることがある。

 

人 じいちゃんのスポーツ今日も一万歩/菊人形さん

宮村典子先生 健康維持のために一日に一万歩が提唱されている。日々の散歩での一万歩はなかなか難しいが、これを実行されているとしたら、それはまさにスポーツに値するだろう。素晴(すば)らしい!この句、「じいちゃん」だからスポーツになり「川柳」になった。

 

<入選>

ランニング小さな秋を拾う道/やんちゃんさん

秋の空いわしも速度あげ泳ぐ/汐海岬さん

徒競走しているような秋の雲/比呂ちゃんさん

スポーツの番組つけてごろ寝する/E子さん

三日坊主運動靴のせいにする/ペースかめさん

逆転に一喜一憂してビール/あそかさん

ランナーのようにコースを回る寿司/スランプさん

TOKYOの五輪見るまで死ねません/いさおくんさん

ジグソーパズル脳にスポーツさせてやる/アラレさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 秋=食欲・スポーツが連想されるが、スポーツは万人には向かないようで、実体験の句が少なかったですね。天・地・人の他にも、雲を擬人化して走らせたり泳がせたり、スポーツはごろ寝してテレビで見るに限るとの本音や、勝負を引き分けにしたい行司の気持ちを代弁したり、回る寿司(すし)をランナーに見立てたり、東京オリンピックに想(おも)いを馳(は)せたり、ジグソーパズルで脳の運動をしたり……と意外な発想があり楽しい選句でした。「スポーツ」の魅力は、運動が得意な人にはもちろん苦手な人にも〈元気〉をメッセージすることだと改めて思いました。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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