過去の入選作

2017年12月22日 (金)【みえDE川柳】 お題:ボーナス

天 ボーナスの語源はきっとシャボン玉/ムギさん

宮村典子先生 お日さまに当るとしゃぼん玉は、とても美しい色彩を見せて喜ばせてくれるのだけど、あれ、あれってすぐに消えてしまう。で、はかないものの喩(たと)えに使われるが、この句はボーナスに重ねて妙。ちなみにボーナスの語源はラテン語の「ボヌス」で「良い」という意味らしいが、開き直りのように「語源」「きっと」を持ってきて明るく愚痴ってみせる。発想の勝利。

 

地 留守電に寒くないかと母の声/比呂ちゃんさん

宮村典子先生 母の声には多額のボーナスの魅力に負けない力がある。温かい「母性愛」という力である。仕事を終え、冷え切(き)って帰宅した作者にとって「寒くないか」の母の声は最高のボーナスだったに違いない。そして、それをボーナスだと捉えた作者の心の温かさ。心の通じ合える親子関係に、胸がジンと熱くなった。素敵(すてき)なボーナスをありがとう。

 

人 デパートがこんなに広いボーナス日/福村まことさん

宮村典子先生 普段(ふだん)は、目指す商品の売り場へ一直線。そして一直線に帰宅という、ちょっぴり寂(さみ)しいデパートなのだが、ボーナスが出た今日は違う。ゆっくり歩いてみる。広い、広い、デパートってこんなにも広かった? そんなことに気付くだけでも嬉(うれ)しいのである。
 「こんなに広い」という着想に庶民の哀愁が漂う。

 

<入選>

 本物のビールが2本ボーナス日/ゆずきちゃんさん

賞与でて百円ショップで大人買い/茶唄鼓(チャカドン)さん

人生のボーナスだろう孫五人/おでんさん

和ませるこの一粒の飴玉が/E子さん

ボーナス日家族の笑顔買いに行く/やんちゃんさん

初めての賞与母さんありがとう/かぐや姫さん

回らない寿司食べられるボーナス日/フーマーさん

暗算が冴えるボーナス支給前/汐海岬さん

通帳に痕跡だけはある賞与/金子鋭一さん

ボーナスで決まるサンタのスケジュール/あそかさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 今年もいよいよ終りに近づきました。今月は、12月にピッタリの課題「ボーナス」で、379句の投句をいただきましたが、予想通り、ボーナスからの発想は皆さん同じでしたね。そんな中で、いわゆるマネー(お金)でないところにボーナスを見つけたり、ボーナスをユニークに使ったりした意外な発想の作品を入選としました。庶民にとってのボーナスは嬉しくて切ないものだと改めて思いました。みえDE川柳が皆さんの心のボーナスになりますように……。

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2017年11月24日 (金)【みえDE川柳】 お題:温泉

天 美人の湯美人になった顔で出る/久実さん

吉崎先生 「美人の湯一度入ったぐらいでは」、これは15年くらい前、私が詠んだ句。温泉と言えば「美人の湯」、美人の湯を読み込んだ句が、この句を含めて25句もあった。川柳を作る人なら飛び付(つ)きそうな「美人の湯」。美人の湯を詠むなら、他人とはひと味違う「美人の句」を詠まないと入選は覚束(おぼつか)ないだろう。
 この句は、客観的に「美人になった顔で出る」わけではない。あくまで主観的に「美人になった顔」なのだ。いいじゃないですか、本人がそう思っているのなら。

 

地 宿題を間欠泉に急かされる/福村まことさん

吉崎先生 一読すると「はてな?」と思わせる句。理屈では、なぜ間欠泉に急(せ)かされるのか解(わか)らない。しかし、もう一度じっくり味わって読むと何となく解る。作者は、まだ仕上げていない宿題のことが頭の中にあったのですね。間欠泉を眺めていたら、ふとそのことが顕在化した。「こんなことしてていいのか!」と、噴き出たお湯に叱られた。う~ん、と思案していたら、間欠泉だからいっとき置いてまた噴き上がる。その様子を「急かされているように」感じたのだ。理屈より感性で味わう川柳。

 

人 温泉のある支店だと慰める/西井茜雲さん

吉崎先生 これは左遷に遭った同僚を慰めている図。たった17音字で句の背景まで読めてしまう。支社や支店にもいろいろあって、必ずしも左遷とは限らないけど、この句の場合、「温泉のある支店」と言っている。秘湯ではないかも知れないが、温泉はたいてい鄙(ひな)びた過疎地などにある。紛れもなく左遷なのだ。せめて温泉好きの人なら良いのだが…。シンプルで無駄のない技巧が光る。

 

<入選>

寒い日につかりにおいで榊原/かれんだーさん

混浴に水着を着ろと書いてある/あそかさん

温泉に行きたい父と行かぬ母/麦乃さん

効能を読めば効き目が2倍増/ペースかめさん

温泉の効きめにほしい顔のシミ/松ぽっくりさん

万能のお湯も効かない物忘れ/デコやんさん

妙案がひょいと浮かんでくる湯船/よもやま話さん

露天風呂猿と眺めている銀河/ベネガさん

温泉場試食のようにある足場/スランプさん

温泉と違ってすぐに冷めた恋/汐海岬さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「温泉」は、私たちの生活に密着し、心身ともに癒してくれる存在ですから、川柳のお題にしばしば採用されます。また、日本は温泉大国ですから、各地の温泉地や自治体が主催して「温泉川柳」を公募することも多いです。どのお題でもそうですが、人はみな同じようなことを考えるもの。「温泉」なら尚更(なおさら)です。温泉についての体験や考察から、少しでも他人と違う見方をすること、オリジナリティ(独自性)のある作品を詠むことを心掛けてください。それが「川柳の目」というものです。

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2017年10月27日 (金)【みえDE川柳】 お題:スポーツ

天 駆け引きが恋に似ているカーリング/鶏冠さん

宮村典子先生 カーリングは、石(ストーン)の進路をデッキブラシのような道具で掃いてスピードや方向を調整しながら円(ハウス)の中心に近づけるのだが、相手の戦略を探りながらの競技で、「氷上のチェス」とも言われているらしい。この性格を以(もっ)て「恋の駆け引きに似ている」と表現した作者のセンスに脱帽。

 

地 天国と地獄を分けた甘い球/西井茜雲さん

宮村典子先生 野球だとしたら勝ち進んでいた9回裏での出来事だろう。今日の試合は貰(もら)った…と思ったのが気の緩みだったか、最後の一球が甘かった。逆転の憂き目にあってしまったのだ。野球解説者の言葉のようでもあるが、川柳として読むと「甘い球」は人生街道での油断にも通じる。どんなに順風満帆の人生を歩んでいても、ちょっとした気の緩み(油断)が身を破滅させることがある。

 

人 じいちゃんのスポーツ今日も一万歩/菊人形さん

宮村典子先生 健康維持のために一日に一万歩が提唱されている。日々の散歩での一万歩はなかなか難しいが、これを実行されているとしたら、それはまさにスポーツに値するだろう。素晴(すば)らしい!この句、「じいちゃん」だからスポーツになり「川柳」になった。

 

<入選>

ランニング小さな秋を拾う道/やんちゃんさん

秋の空いわしも速度あげ泳ぐ/汐海岬さん

徒競走しているような秋の雲/比呂ちゃんさん

スポーツの番組つけてごろ寝する/E子さん

三日坊主運動靴のせいにする/ペースかめさん

逆転に一喜一憂してビール/あそかさん

ランナーのようにコースを回る寿司/スランプさん

TOKYOの五輪見るまで死ねません/いさおくんさん

ジグソーパズル脳にスポーツさせてやる/アラレさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 秋=食欲・スポーツが連想されるが、スポーツは万人には向かないようで、実体験の句が少なかったですね。天・地・人の他にも、雲を擬人化して走らせたり泳がせたり、スポーツはごろ寝してテレビで見るに限るとの本音や、勝負を引き分けにしたい行司の気持ちを代弁したり、回る寿司(すし)をランナーに見立てたり、東京オリンピックに想(おも)いを馳(は)せたり、ジグソーパズルで脳の運動をしたり……と意外な発想があり楽しい選句でした。「スポーツ」の魅力は、運動が得意な人にはもちろん苦手な人にも〈元気〉をメッセージすることだと改めて思いました。

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2017年09月29日 (金)【みえDE川柳】 お題:祭

天 呱々の声長い祭りの幕が開く/かぐや姫さん

吉崎先生 人生を祭りに喩(たと)えた句。祭りの内容や長さには個人差があるが、それなりに序章やクライマックス、終焉(しゅうえん)がある。上句の「呱々の声」は産声のこと。「おぎゃあ」と、第一声を上げたときに、長い祭りの幕が開いたのだ。いつかは柩(ひつぎ)に入るときが訪れるけど、願わくは一生を通じて平和で楽しい祭りであってほしいと、作者は詠んでいるのだろう。格調の高さで「天の句」とさせていただきました。

 

地 村祭り実行委員みんな古希/うさぎ物語さん

吉崎先生 読んだ人を、思わず苦笑させる力を持った句。上句、中句、下句とも名詞を並べて、その間に助詞は一つもないが、うまく575のリズムに乗せている。中7に「実行委員」と、ちょっと固い言葉を入れ、結語の下5に「みんな古希」と砕けた表現にしたところが巧(うま)い。伝統の村祭りも担い手がいないと維持できない。なんとか若い人をかき集めても、実行委員の面々はみんな古希。これが現実なのだ。

 

人 試着室おんなの祭り繰り返す/夏羽さん

吉崎先生 これ、もちろん女性の作品でしょう? 試着室が祭りの会場だなんて、男性では思いつかない。でも言われてみればよく解(わか)ります。とっかえひっかえ、好きな服を選んで自分に似合うかどうか確かめる。その様子は、本人にとってはもちろん、端から見ても(見られないが)お祭りそのもの。「お祭り」をヒントにおんなの本性を詠んだ好句。見付(みつ)けの良さが光ります。

 

<入選>

御神輿に触れた時からもう仲間/小出順子さん

神さまの目尻が下がるギャル神輿/あそかさん

ストレスをさらりと捨ててきた祭り/あんころ餅さん

ちっぽけな男を揺する秋祭り/比呂ちゃんさん

お祭りを途絶えさせないUターン/金子鋭一さん

母と見た祭りを今は孫連れて/やんちゃんさん

ユニークを競うかかしの村祭り/よもやま話さん

信仰心一日だけの地鎮祭/デコやんさん

お祭りも恋も終わっていわし雲/汐海岬さん

お祭りが苦手な猫の朝帰り/福村まことさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「祭り」という一見作りやすそうな題だったが、やや応募数が少なかったようです。
 日常の生活から離れたテーマだけにインパクトはあるのだが、逆に発想が拡(ひろ)がらなかったのかも知れない。「課題吟」といえども川柳は創作だから、オリジナリティが必要です。
 祭りに対する一般的な見方から抜け出し、いかに自分独自の「祭り」を詠むかがポイントでした。単にお祭りの様子や風景を詠むのではなく、祭りの中にある人生や感慨、発見、見解を17音で表明するのが良いでしょう。

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2017年08月25日 (金)【みえDE川柳】 お題:汗

天 神輿ゆく汗とピアスを輝かせ/茶唄鼓(ちゃかどん)さん

宮村典子先生 若者が神輿(みこし)を担ぐ躍動感を、「汗とピアスを輝かせ」で見事に表現している。若者に期待を寄せる作者の弾むような想(おも)い、彼らに託す未来への喜びが溢(あふ)れていて、思わず胸が熱くなった。感動の一句である。神輿を担ぐピアスの若者たちが「日本の祭り」の伝統を繋(つな)いでいってくれますように、この平和が続きますように……と祈らずにはおられない。

 

地 何ごともなかったように汗をふく/ゆずきちゃんさん

宮村典子先生 さらりと言いながら意味の深い句。共同作業で大汗をかいて立ち動いたあとか、または何か大きな失敗をした場面でのことだろうか?
 前者なら謙虚な姿が浮かぶし、後者なら精神力の強さを思う。いずれにしても、わたしが頑張りました! とか、わたしが失敗しました!とか、自己PRの強い人が多い中、「何ごともなかったように……」は、なかなか出来ることではない。見習いたい。

 

人 人知れず夜中に汗をかくピエロ/もとピエロさん

宮村典子先生 ピエロには、自分が辛(つら)く悲しい時にあっても、周りの人を笑わせて陽気な気分にさせるという任務がある。この汗は、どうすれば、みんなをよりハッピーにできるだろう? という苦心の汗かも知れないし、どうしようもない自己憐憫(じこれんびん)の汗かも知れない。どちらにしても、冷たい汗だろう。ピエロは作者。哀愁の漂う句である。

 

<入選>

光る汗白球ドラマ俺が書く/安田蝸牛さん

炎天下ペットボトルも汗をかく/加藤当白さん

青空の下嘘のない汗をかく/入道雲さん

洗濯機汗のパジャマが踊り出す/E子さん

頑張った汗は真珠になっていく/まゆゆさん

初デートフロントガラス汗をかく/夏椿さん

掛けたヤマ全部外れてどっと汗/颯爽さん

 汗かいた人は渡らぬ渡り初め/沢田正司さん

方便の嘘と知っている苦い汗/福村まことさん

温暖化地球汚れた汗をかき/やんちゃんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 「汗」は八月にピッタリの課題でした。青春(甲子園)の汗、ボランティアの汗、ユニホームの汗、冷や汗、など実感句がたくさんありましたが、もうひと捻(ひね)りというか、表現の工夫に欠けている作品が多かったように思います。入選には、見付(みつ)けや、気付きのユニークさ、実感、共感の強い作品をいただきました。暮らしの中で気付いたことや思ったこと(自分の気持ち)を普段(ふだん)から書きとめておくと、課題に重ねて五七五に生かされますし、川柳がもっともっと楽しくなるでしょう。

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2017年07月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:星

天 仲直り星がきれいに見える夜/にゃごしさん

吉崎先生 夜空の星は客観的には美しいものである。しかし、それは星を見る人の、そのときの気分にも大きく左右される。作者も、たとえ満天の星が煌(きら)めいていようと、それを美しいとも感じられない事情があったのだろう。作者は今夜、ようやく親しい人との誤解が解けて仲直りできたのだろう。ひときわ奇麗に見える今夜の星たちである。
かっこいい言葉も技巧も用いず、ただ事実を素直に詠んだだけで成功した秀句。

 

地 星空へキリンは首を持て余す/てんじょうさん

吉崎先生 一読「はてな?」と思わせる句。しかし言いたいことは解(わか)る。人間であれば星空は近くから観(み)るほど美しい。少しでも高い所から眺めるほうが良いに決まっている。その点、キリンは首が長い、つまり顔が高い位置にあるので星空を満喫するには有利である。しかし、当事者であるキリンにとっては、満点の星にさしたる意味はなく、ただ煩わしいだけだろう、とキリンの身になって詠んだ句。「持て余す」が巧(うま)い。

 

人 火星から新婚さんが越してきた/山路橙葉さん

吉崎先生 最近の若い人の言動の不可解さ故に、「宇宙人」と形容することがあるが、この句は「火星人」と表現している。それも、ただの火星人ではなく、新婚さんである。隣に引っ越してきた火星人に、地球の先輩としていろいろ教えてあげたいが、なかなか話の噛()み合わないじれったさがある。そんな新婚さんを指して「火星から越してきた」と皮肉を言っているが、「新婚さん」が効いていて悪気は感じられない好句。

 

<入選>

この星で生きよう旨いもの食べて/比呂ちゃんさん

新星が現れゲームから将棋/わらび餅さん

万華鏡覗くひとりの星祭り/スターダストさん

白内障癒えて楽しむ空の星/よもやま話さん

座布団が舞う金星のインタビュー/颯爽さん

給料のわりに希望の星とされ/福村まことさん

流れ星一緒に落ちる願い事/あーさままさん

まな板にオクラ空には天の川/水たまりさん

星ばかり見て気づかない水たまり/汐海岬さん

ひっそりと星を孕んだ真珠貝/アラレさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「星」という身近なものがお題だったので、400句を超える句が投句されて来た。
意欲は嬉しいのだが、佳い句と良くない句の差が顕著であった。上手な人は視点を変えた句を、それぞれよく推敲(すいこう)されて投句されている。一方、同じような句を、あまり推敲されず、一部の言葉だけ変えて出されている人が多かった。たった17音だが、決して「数打てば当たる」というものではない。どんな「お題」であっても、「自分にしか作れない句」を目指して作句してほしい。それが「創作」というものであろう。

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2017年06月30日 (金)【みえDE川柳】 お題:誓い

天 反戦を誓って歌う子守唄/ロッカマイベイビーさん

宮村典子先生 戦後72年の平和の先に、きな臭い空気が漂ってきているような気がして仕方(しかた)がない。しかし、国民の不安はなかなか国政に届かない。「子守唄」は、たまらない気持で平和を念じる祈りの歌なのである。国を先導する偉い方々に、この祈りの歌が届きますように。

 

地 軽石とシーソーしてる俺の意志/銅男さん

宮村典子先生 自己主張が出来なくて、他人の意見にすぐに同調してしまう自分は、まるで軽石ぐらいの存在だと自嘲しているのである。それを「軽石とシーソーしてる」とした表現の意外さに注目。「石」と「意志」が、発音的には「いし」になり、ごろ合わせのようでもあるが人間臭のある内容を優先した。

 

人 げんまんの針千本がまずは嘘/夜半亭あぶらー虫さん

宮村典子先生 この世は全て嘘(うそ)で成り立っていると思った方が身の為(ため)であるということだろうか。何事もまずは疑ってかかれ…と冷めた眼(め)で世の中を見ている作者を感じるし、「まずは嘘」に実際、そうかも知れないナ…と思わされる。
 しかし、突き放し、諦め、悟ったようなその想(おも)いの底に、それでも果たされない約束(誓い)を信じたいという人間的な感情が流れている気がする。

 

<入選>

選手宣誓千人分の声でする/デコやんさん

誓約に便利な消せるボールペン/颯爽さん

禁煙を患者にだけは誓わせる/さだえばあちゃんさん

花束の真っ赤な薔薇にある誓い/夏羽さん

千年の先にも君を愛します/いさおくんさん

若き日の誓いアイロンかけ直す/汐海岬さん

誓いなど何一つない軽い靴/てんじょうさん

誓っても誓わなくてもこの結果/にったみささん

いつまでも心に咲いている誓い/まゆゆさん

初心などとうに忘れた草の丈/比呂ちゃんさん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 「誓い」という課題は作り易(やす)い分、簡単な、第一発想的な句が多かった気がします。基本的に第一発想は捨ててくださいね。
 「上手(うま)いこと表現しているな」「この句からは人間の臭いがするな」と思いながら選をしています。特に、天の句は、私の心に強く響きました。人間を生きる人が詠んだ不滅の社会吟だと思います。地の句、人の句は「誓い」を詠み込まずに誓いを表現して印象の深い句です。課題を頭に入れておくと、日常生活の中でふと思ったこと感じたことに結びつくことがあります。川柳は暮らしの中にあるということを信じてください。

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2017年05月26日 (金)【みえDE川柳】 お題:休み

天 足踏みをやめたら空が落ちてくる/水たまりさん

吉崎先生 いわゆる「自転車操業」を想起してしまうが、そうではないだろう。杞憂(きゆう)という言葉があるように、たとえ大地震が起きたりミサイルが飛んできても、「空が落ちてくる」ことはない。この句は、作者の心情を詠んでいるのでしょう。今、作者が取り組んでいること、頑張っていることを、ここで諦めたら元も子もない。その切羽詰まった気持ちを「空が落ちてくる」と表現されたのだろう。

 

人 午後三時夫婦喧嘩も中休み/いさおくんさん

吉崎先生 よく稼ぐ夫婦にもあるひと休み(椙本紋太)という、ほのぼのとした句もありますが、この句も仲の良い夫婦なのでしょう。いつも午後三時には一緒にお茶を飲んでいる。しかし今日はたまたま喧嘩(けんか)の最中だった。でも奥さんは、ちゃんとお茶を入れてくれたのです。たぶんそれで喧嘩も終わりなのでしょう。そこまで読みとれる好句。

 

<入選>

休日の菓子博疲れだけ残り/ゆうこさん

母の日のフリータイムを持て余す/かぐや姫さん

スケジュール混んでとれない休肝日/あそかさん

 食べ過ぎをお休みさせてくれた恋/汐海岬さん

カレンダーへ休みを滑り込ませます/久実さん

ラムネ瓶透かせば遠い夏休み/山路橙葉さん

雨の日は休みにしてほしい案山子/アラレさん

シャッターを降ろし人間休みます/まゆゆさん

平均点あたりでちょっとだけ休み/おおしまとしこさん

休んでもいいと言われて喜べず/アカエタカさん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 今回の「休み」ほどよい句が集まった題はこれまでなかった。捨てがたい句がたくさんあり、入選を13句に絞り込むのに苦労しました。五月の大型連休を挟み、実感されたことを17音で素直に表現された結果でしょう。これからも、お題によって作りやすかったり難しかったりするでしょうが、自分の生活や実体験に照らして、じっくり観察、考察すれば必ず「この一句」を物に出来るでしょう。

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2017年04月28日 (金)【みえDE川柳】 お題:あまい

天 入り口はたっぷりの蜜蟻地獄/チェリーブロッサムさん

宮村典子先生 甘い話には必ず落とし穴があるということを知っていなければならない。でも、入り口にたっぷりの蜜を盛られると凡人は大喜びで近寄り頂いてしまう。この甘い「入口」の誘惑に負けて身を破滅させてしまう(蟻地獄)のである。昨今の詐欺事件や政界にも通じる恐い話である。リズムが少し気になるが、「入口」「たっぷり」「蟻地獄」の構成力を評価した。

 

地 ウエストがゴムの甘さに慣らされる/久実さん

宮村典子先生 まったく言い得ている。中七から下五への作りが上手(うま)い。中年を過ぎる頃からの体型には、ウエストがゴムの衣類が有難いのだが、油断していると伸びるゴムに合わせて自分のウエストが自由に伸びてしまうのである。気がついた時にはメタボ体型……という怖いことになる。いやいやゴムの所為(せい)にしてはいけない、自分の気の緩みに注意しよう。

 

人 干し葡萄ほどの甘さで年金日/福村まことさん

宮村典子先生 老人破産が言われるほど厳しい年金生活の現実。支給される年金の額を「干し葡萄ほどの甘さ」という表現で突いているのが妙。「年金日」を頼りにささやかに暮らす庶民(老人)を裏切らない温かい国政を願うばかりである。

 

<入選>

角砂糖5個詰め込んでプロポーズ/汐海岬さん

腐らせて甘み引き出すタイミング/ゆきちさん

美人の湯美人になると思ってた/あけみちゃんさん

考えの甘い男を塩で揉む/やんちゃんさん

それぞれの甘さで癒やす伊勢の餅/アラレさん

うっかりと食べてしまった甘いわな/よっちゃんさん

履歴書にピントの甘い写真貼る/ゆずきちゃんさん

追い詰めて逃走許すへぼ将棋/蕎麦酔人さん

甘えるという幸せが待つ米寿/E子さん

うちの子はどうしてこんなに可愛いの/かぐや姫さん

 

宮村典子先生 宮村典子先生

 「甘い」は作り易(やす)い分、同想句が多かったですね。入選句には、甘さを甘さと詠んで成功した句、捻った甘さが利いている句をいただきました。選にあたっては、まず発想のユニークさ、発想が同じ場合は表現方法を気にしています。当たり前のことをどんな言葉で表現するか……というところですね。自分の思いにピッタリの言葉探しも作句の楽しみだと思います。

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2017年03月31日 (金)【みえDE川柳】 お題:わくわく

天 行き先はこれから決める自由席/颯爽さん

吉崎先生 ミステリーツアーというのもわくわくするだろうが、この旅はまったくの一人旅。何ものにも束縛されず、まるっきり自由なのだ。わくわくしない筈(はず)がない。「自由席」は必ずしも「指定席」に対するものに限らない。行き先も交通機関も宿泊地も、すべて自由という意味での「自由席」なのだ。作者は、おそらく旅慣れた人でしょう。

 

地 お互いに早く来すぎる初デート/福村まことさん

吉崎先生 う~ん、統計は取られてないだろうけど、おそらくこの句の通りでしょう。初デートから遅刻すると心象を悪くするのは必定。遅刻の常習者だって早めに来るに違いない。この句は作者の若い頃を思い出して詠まれた句かも。しかし、双方が早く来すぎても時間差はあるはず。たぶん、作者の方がずっと早く来られたのでしょう。

 

人 わくわくとだけはしました宝くじ/お~寒さん

吉崎先生 橋本征一路という人の句に「運のない人で成り立つ宝くじ」という句があります。宝くじの句はたくさん詠まれています。宝くじには人々の期待や思いが凝縮されているからでしょう。しかし、ほとんどの人は「運のない人」で終わっています。
 この句の頭の部分、「わくわくとだけは」が全てを言い表して秀逸です。

 

<入選>

何を詰めようカラフルなランドセル/水たまりさん

キッチンに小さな椅子が増える春/やんちゃんさん

ハートマークもしやと思うメール来る/草かんむりさん

菜の花色のブラウスで行く初デート/あそかさん

いい月だ今日は告白されそうだ/沢田まさしさん

合格の知らせ一足飛びに春/さくら餅さん

わくわくはせぬ初めての内視鏡/アラレさん

わくわく感あるうちは行くクラス会/にったみささん

錆びついた頭を磨く孫が来る/よもやま話さん

わくわくして見落としていた落とし穴/鶏冠さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「わくわく」という擬態語の珍しいお題でした。「どきどき」に似ていますが、より「期待感や喜び」のイメージが強いですね。前句付けの要領で「楽しみなこと楽しみなこと」と前句を仮定すると詠みやすかったかも。だが、「作りすぎ」はいけません。実生活や実体験から探してくると、リアリティのある楽しい作品が生まれたでしょう。そんな作品を入選句に頂きました。

投稿者:みえ~るくん | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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