【みえDE川柳】 お題:祭
呱々の声長い祭りの幕が開く/かぐや姫さん
人生を祭りに喩(たと)えた句。祭りの内容や長さには個人差があるが、それなりに序章やクライマックス、終焉(しゅうえん)がある。上句の「呱々の声」は産声のこと。「おぎゃあ」と、第一声を上げたときに、長い祭りの幕が開いたのだ。いつかは柩(ひつぎ)に入るときが訪れるけど、願わくは一生を通じて平和で楽しい祭りであってほしいと、作者は詠んでいるのだろう。格調の高さで「天の句」とさせていただきました。
村祭り実行委員みんな古希/うさぎ物語さん
読んだ人を、思わず苦笑させる力を持った句。上句、中句、下句とも名詞を並べて、その間に助詞は一つもないが、うまく575のリズムに乗せている。中7に「実行委員」と、ちょっと固い言葉を入れ、結語の下5に「みんな古希」と砕けた表現にしたところが巧(うま)い。伝統の村祭りも担い手がいないと維持できない。なんとか若い人をかき集めても、実行委員の面々はみんな古希。これが現実なのだ。
試着室おんなの祭り繰り返す/夏羽さん
これ、もちろん女性の作品でしょう? 試着室が祭りの会場だなんて、男性では思いつかない。でも言われてみればよく解(わか)ります。とっかえひっかえ、好きな服を選んで自分に似合うかどうか確かめる。その様子は、本人にとってはもちろん、端から見ても(見られないが)お祭りそのもの。「お祭り」をヒントにおんなの本性を詠んだ好句。見付(みつ)けの良さが光ります。
<入選>
御神輿に触れた時からもう仲間/小出順子さん
神さまの目尻が下がるギャル神輿/あそかさん
ストレスをさらりと捨ててきた祭り/あんころ餅さん
ちっぽけな男を揺する秋祭り/比呂ちゃんさん
お祭りを途絶えさせないUターン/金子鋭一さん
母と見た祭りを今は孫連れて/やんちゃんさん
ユニークを競うかかしの村祭り/よもやま話さん
信仰心一日だけの地鎮祭/デコやんさん
お祭りも恋も終わっていわし雲/汐海岬さん
お祭りが苦手な猫の朝帰り/福村まことさん
吉崎柳歩先生
「祭り」という一見作りやすそうな題だったが、やや応募数が少なかったようです。
日常の生活から離れたテーマだけにインパクトはあるのだが、逆に発想が拡(ひろ)がらなかったのかも知れない。「課題吟」といえども川柳は創作だから、オリジナリティが必要です。
祭りに対する一般的な見方から抜け出し、いかに自分独自の「祭り」を詠むかがポイントでした。単にお祭りの様子や風景を詠むのではなく、祭りの中にある人生や感慨、発見、見解を17音で表明するのが良いでしょう。