【みえDE川柳】 お題:楽
散り終えて桜並木は楽になる/十六夜さん
着想的にシーズンオフにも思えるが、作者の内にずっとある想(おも)いなのだろう。「桜並木」の使命に人生を重ねてみるとき、課せられた任務を果たし終えた後の、なんとも言えない安堵(あんど)感がひしひしと伝わってくる。比喩の的確さが見事で頷(うなず)くばかりである。
気を楽にするため今日も窓を拭く/デコやんさん
言われてみればなるほどである。気持ちが落ち着かずにイライラする時は、何をしても治まらない。確かに、そんな時は何も考えずに窓を拭くといいかも。不思議に無心になる感じを私も味わったことがある。気付きの発見をさらりと書いて〈なるほど〉と思わせる川柳になった。
生命線楽な方へと伸びてゆく/久実さん
掌(てのひら)には、運命線、感情線、頭脳線、そして生命線がある。どれも当てはまるような気もする句のようだが、「生命線」としたのは、生かされて生きる命の道を、出来れば「楽」に長生きしたいという作者の願望だろう。誰もの願いに通じる。
<入選>
酒二合飲めば今夜も楽天地/ゆきちさん
もういいかい楽になりたい鬼の声/ワン吉さん
楽になる域へ脱皮がまだ足りぬ/橙葉さん
冬眠に備えて楽なゴムパンツ/スイッチさん
三年目気楽な顔になってくる/汐海 岬さん
楽な方へ楽な方へと傾ぐ首/恵美さん
楽をしてより楽なこと考える/花キャベツさん
重病と言われてやっと楽になる/小松崎有美さん
透明になって気楽に翔んでいる/まゆゆさん
楽々と母を背負っている涙/神無月さん
宮村典子先生
「楽」というお題に対して「楽しい~」という表現や、音楽家、神楽、管楽器、田楽等々、字結び(漢字一字が課題の場合、その意味に関係なくその字で熟語を作り、句中に詠み込むこと) が多くありました。字結び不可と添えてなかったのでやむをえないのですが、今回は「楽(らく)」の意味からの発想で、自分自身にとっての実際的な楽、又(また)、心理的な楽を表現した作品をいただきました。
今後、お題に留意したいと思います。