【みえDE川柳】 お題:隠れる
隠れてはいないが忘れられている/相模秋茜さん
自嘲の中にちょっとした皮肉が込められていて「もしかして、私を忘れてない?」という開き直り的な気持ち、あるいは素直に「忘れられて切ない」という感情、または、存在感が薄らいできた人の様子をうがっている、等々が思われます。いずれにしても、さらりと詠んで句の後ろの意味を考えさせるところに作句力を感じます。
全盛の頃が隠れるピアス穴/井川ゴローさん
ピアスをしたくなるのは思春期から二十代の前半でしょうか。怖いもの知らずのように若さをかっ歩できたこの時期は、主人公にとってまさに全盛期で、ピアスはその活力を象徴していたのです。残ったピアス穴には自分だけの宝のような思い出が隠れているのでしょうね。ピアス穴の発見でユニークな句になりました。
額縁の裏に諭吉の隠れ宿/颯爽さん
額縁の裏にへそくりを隠す、という発想はよくありますが、額縁の裏を、隠れ宿と表現したのが面白くていいですね。隠れ宿に、あまりいっぱい諭吉さんを休ませると重たくなって額縁が落ちたりしますから、くれぐれもご用心。
<入選>
いつだって私の恋はかくれんぼ/金平糖さん
雨の日は羽を畳んでかくれんぼ/ひらりさん
隠れるといつもクシャミをしてしまう/拓郎さん
雲隠れしてもケータイ追ってくる/正司(まさし)さん
隠れ家を公開している伊賀の町/でこやんさん
株高の中に隠れた空き店舗/せいじさん
困るなあ隠れることの好きな鍵/アラレさん
鬼と蛇が妻のエクボに隠れてる/極楽トンボさん
どれほどを演じてきたか舞台裏/比呂ちゃんさん
掌(てのひら)をいつも結んで秘密主義/samuさん
宮村典子先生
「隠れる」という課題に対して「隠す」という句が多く出されました。どちらも「動詞」ですが「隠れる」は自動詞で「隠す」は他動詞になります。違いを簡単に言えば、自分が動くのが自動詞(~が隠れる)他のものを動かすのが他動詞(~を隠す)です。従って、入選句は課題「隠れる」に沿っていただきました。