【みえDE川柳】 お題:残る
褒められた小さな記憶だけ残る/比呂ちゃんさん
人生、いいことも悪いことも半々だと聞いたことがあります。だからこそ人は生きていけるのでしょうね。
嫌なこともいっぱいあるし、むしろその方が多いと思います。そんな中で、「褒められた」記憶は確かに心の中にうれしく残ります。特に信頼している人からもらった「褒め言葉」は、それがどんな小さなことでも、一生涯自分を励ます宝物になるのです。
人は人によって生かされる。褒められた小さな記憶は、作者にとって生きてゆくための大きなエネルギーになっているのです。
ときどきは揺すって残り確かめる/青色パールさん
何を揺するのかな?と思わせます。そう言われれば自分も揺すって残りを確かめるものがあるよな…と、誰でも身に覚えがありそうで共感を呼ぶ作品です。甘いものが好きな人ならお菓子の残り、お酒が好きな人なら酒瓶の残りかも。
詩人は、詩のうを揺するかも知れませんし、命を揺すって余生を確かめたり……なんて。読みが広がりますね。
かば焼きの香り消すため回り道/茜雲さん
かば焼きを食べた作者は、まっすぐ家に帰ると妻(夫?)や子どもたちに「自分だけズルーイ」と言われそうで、わざわざ遠回りをして家路に着いたのでしょう。その様子が愉快に伝わってきます。
普通は、「かば焼きの匂い」とするところですが、あえて「香り」としたのは「香ばしい匂い」であるということを強調しているのでしょうね。
<入選>
温もりの残る布団が離さない/デコやんさん
剃り残しの髭が一本威張ってる/エミリーさん
絞り切るのは不可能なマヨネーズ/アラレさん
冷蔵庫に得体の知れぬ残り物/リサパパさん
廃校のブランコ風を乗せるだけ/ゆめかさん
フィクションも加え歴史として残る/流星さん
大丈夫心の中に父がいる/かぐや姫さん
宮村典子先生
今月の課題は「残る」でした。いろんな「残る」があり楽しい選でしたが、298句中、入選は10句で厳しい選になりますことをお許しくださいね。下五の「残ってる」という表現が気になる句がありました。着想が優れている場合は「~てる」も生きるのですが、どうしても句意が軽くなりますので気を付けてください。「~残っている」の句もありましたが、これは下六になり句のリズムが悪くなります。簡単そうでなかなか難しい川柳です。どうぞチャレンジを楽しんでいただきますように……。