2020年07月31日 (金)【みえDE川柳】 お題:流す

天 私だけ水に流していた話/かぐや姫さん

丹川修先生 本来なら許しがたい話だが、そこは寛大な心で水に流すことにした作者。ところが、その話に立ち会っていた他の人から電話でもあったのか、次に会った時なのか「この間のあの人の話は一体どういうことなの。とても許せないわ」などと未(いま)だにプリプリ怒っている。水に流したのは自分だけだったのかと悩む。或(ある)いはその話の相手から、少し言い過ぎたかなと反省をするどころか、まだ言い足りぬとばかりに、追い打ちをかけられたのか。実生活に良くある一コマを巧(うま)く捉えた、このような「独り言」や「つぶやき」のなかに立派な川柳がある。

 

地 平等に天は流しているチャンス/加藤当白さん

丹川修先生 この句の「流す」は、他の作品とは違う「与える」という意味合いがある。天(神)だからこそ高いところから流し与えているのだろう。しかも平等に。ところが、チャンスをチャンスと捉えられないのが我々、凡人である。知らぬ間に来て、知らぬ間に去っていくのがチャンス。後で気付くのはまだ、ましと言える。大きな視野で捉えたところがこの句を面白くしている。

 

人 不都合は流してしまう自己都合/ポンタロウさん

丹川修先生 最近の、どこかの国のリーダーのことかと思わずニヤリとさせられた。或いは、どこの会社でも、家庭でも、友達同士でもよくあることですね。ただ、句の形として、同じ単語(都合)を繰り返し使っている。時として、ダジャレや言葉遊び川柳に陥ったりすることが多いが、この句の場合は、面白さが勝り、いやみのないリズム感あふれる句と評価させて戴(いただ)いた。

 

<入選>

武勇伝聴きつつ祖父の背を流す/アカエタカさん

校風を流し続けて来た校歌/ワン吉さん

しまい風呂今日の私を流しきる/花キャベツさん

聞き流す大きな耳を持っている/まゆゆさん

流されること無く母は一世紀/淺川八重子さん

妻のグチ受けて流して半世紀/桑名の川子さん

詰まらせることなく流す過去の恋/汐海 岬さん

流したい過去もいつかは澄んだ色/糖質無制限さん

笹舟を流すちっちゃな祈り乗せ/素人さん

流しても流しきれない「うそ」の数/伊藤啓成(ひろなり)さん

 

丹川修先生 丹川修先生

 題として、「流す」はやや難しく、作句に、ご苦労されたかも知れません。
 その表れでしょうか「聞き流す」「涙or汗を流す」などが数多くあり、広がりがありませんでした。また「流れにのる」「…の流れ」など「流れ」を扱った句もかなり多くみられました。その中には非常に良い句もたくさんあり、没にするには、心苦しく思われましたが、やはりここは「題に忠実に」という観点から残念ながら入選にはさせて戴けませんでした。また、「流れ星、流行、流暢(りゅうちょう)など」のいわゆる字結び的なものを扱った句も同様に戴くことはできませんでした。今後の作句の参考に是非なさって下(くだ)さい。毎回、多数のご投句を戴き、感謝しております。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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