【みえDE川柳】 お題:気合い
曲がらないように気合を入れるエビ/霜月さん
これは海老(えび)の天ぷらの調理法ではない。エビ自身が、これ以上曲がらないように背を伸ばしていることを詠んでいる。つまり、このエビは作者自身。油断していると背や腰が曲がってしまう老いの坂。ときどきは気合いを入れて、ラジオ体操や上体そらしを敢行しているのだ。擬人法の反対で擬物法と言えるだろう。
長生きの秘けつは気合い入れぬこと/よしじろうさん
説得力のある川柳。長生きをされている方にその秘訣(ひけつ)を伺うと、早寝早起き、よく噛(か)んで食べる、お酒は適量に、くよくよしない、腹を立てない、などの答えが一般的。
しかし、この方は「気合いを入れないこと」とおっしゃる。つまり、常に自然体であれとのご託宣。現に長生きをして人生を楽しんでいる方の作品だろう。
とりあえずハチマキだけは巻いて見せ/汐海岬さん
ハチマキは気合いを入れるときに頭に巻くもの。作者は、配偶者か上司に「そろそろ本気になったら?」とネジを巻かれたのかも知れない。立場上逆らうわけにも行かず、やる気を見せておかねばならない。そこでハチマキを巻いて見せた。「とりあえず」で、まだ本気でないことが窺(うかが)われる。「とりあえず」に、とぼけた味があります。
<入選>
中学生八十路に気合負けしてる/E子さん
履歴書に気合いを入れた楷書体/草かんむりさん
気合い抑えて面接室をノックする/福笑いさん
店頭にならぶ新刊書の気合い/比呂ちゃんさん
缶ビール開けるときにもいる気合い/アラレさん
三重に降る初雪気合い入れてくる/スミレの花束さん
しっかりと気合いを入れて買う野菜/ゆきちさん
ポイントが5倍に妻の勇む足/スランプさん
児童より気合いの入る保護者席/加藤当白さん
大掃除気合いのタクト振り下ろす/麦乃さん
吉崎柳歩先生
どんな時に気合いを入れるか? やはり、勝負、受験、仕事、化粧、見合いなどが多かったようです。それらが悪いわけではありませんが、もう一歩踏み込んだところを詠めば独自性が出てくるでしょう。相撲なら睨(にら)み合い、仕事ならレスキュー隊など、見合いなら頭のてっぺんから足のつま先まで、句材を探してみましょう。そこに何らかの発見があり、それをうまく575にできたら入選間違いなしです。