【みえDE川柳】 お題:師走
大鍋の底で師走が焦り出す/紫パールさん
1年を大鍋に例えれば、12月(師走)はその底。上手い比喩である。作者は、年頭に立てた計画を全クリアー出来ないまま師走に至ったのである。「ああ、今年のうちにあれもこれもやっておかなければ……」という焦りの心境を「大鍋の底」「師走が焦り出す」と表現して秀句になった。師走の実感がよく伝わってくる。
ポインセチアの赤も踊っている師走/山茶花さん
師走の花屋さんに、ポインセチアが赤い顔を並べると街はクリスマスムード。そのポインセチアを踊らせて、この句はとてもリズミカルでユニーク。まるでクリスマスソングが聴こえてくるようだ。「赤も」の「も」が効果的に「師走」を盛り上げる。
少しだけ良い年寄りになる師走/侘び介さん
この句もユニーク。いろんなことを想像させて思わずほほえんでしまう。作者は、自分中心のわがままな1年を過ごしたことを反省しているようにも見えるし、楽しんでいるようにも思える。とにかく忙しい師走ぐらいは少しだけ大人しくしよう。「良い年寄り」に皮肉を利かしているのである。
<入選>
飲み会を軸に師走のスケジュール/かぐや姫さん
通帳の出入り激しくなる師走/節っちゃんさん
新聞の切り抜き整理する師走/吉川勇さん
しくじって師走のゴミにしてしまう/B子さん
褒められたおせち今年も手をぬけず/ひろりんさん
少しだけ夢を齧って(かじって)年暮れる/相模秋茜(さがみしゅうせん)さん
百八つ聞いたことない除夜の鐘/祥太郎さん
宮村典子先生
吉崎柳歩先生
今月は「師走」という時節の題であったためか同想句が多かったようです。でも「師走」について感じること、思うことを575にまとめるという楽しさを味わっていただいている様子がうかがえ、257句を楽しく拝見しました。
助詞の使いかたを直せば佳句になる作品があったり、推こう不足で残念な作品もありました。誰もが思いつきそうな発想を捨て、視点を変えてみたり、自分の思いをどんな言葉で表現するか……を、よく考えながら来年も川柳を楽しんでくださいね。