【みえDE川柳】 お題:星
仲直り星がきれいに見える夜/にゃごしさん
夜空の星は客観的には美しいものである。しかし、それは星を見る人の、そのときの気分にも大きく左右される。作者も、たとえ満天の星が煌(きら)めいていようと、それを美しいとも感じられない事情があったのだろう。作者は今夜、ようやく親しい人との誤解が解けて仲直りできたのだろう。ひときわ奇麗に見える今夜の星たちである。
かっこいい言葉も技巧も用いず、ただ事実を素直に詠んだだけで成功した秀句。
星空へキリンは首を持て余す/てんじょうさん
一読「はてな?」と思わせる句。しかし言いたいことは解(わか)る。人間であれば星空は近くから観(み)るほど美しい。少しでも高い所から眺めるほうが良いに決まっている。その点、キリンは首が長い、つまり顔が高い位置にあるので星空を満喫するには有利である。しかし、当事者であるキリンにとっては、満点の星にさしたる意味はなく、ただ煩わしいだけだろう、とキリンの身になって詠んだ句。「持て余す」が巧(うま)い。
火星から新婚さんが越してきた/山路橙葉さん
最近の若い人の言動の不可解さ故に、「宇宙人」と形容することがあるが、この句は「火星人」と表現している。それも、ただの火星人ではなく、新婚さんである。隣に引っ越してきた火星人に、地球の先輩としていろいろ教えてあげたいが、なかなか話の噛(か)み合わないじれったさがある。そんな新婚さんを指して「火星から越してきた」と皮肉を言っているが、「新婚さん」が効いていて悪気は感じられない好句。
<入選>
この星で生きよう旨いもの食べて/比呂ちゃんさん
新星が現れゲームから将棋/わらび餅さん
万華鏡覗くひとりの星祭り/スターダストさん
白内障癒えて楽しむ空の星/よもやま話さん
座布団が舞う金星のインタビュー/颯爽さん
給料のわりに希望の星とされ/福村まことさん
流れ星一緒に落ちる願い事/あーさままさん
まな板にオクラ空には天の川/水たまりさん
星ばかり見て気づかない水たまり/汐海岬さん
ひっそりと星を孕んだ真珠貝/アラレさん
吉崎柳歩先生
「星」という身近なものがお題だったので、400句を超える句が投句されて来た。
意欲は嬉しいのだが、佳い句と良くない句の差が顕著であった。上手な人は視点を変えた句を、それぞれよく推敲(すいこう)されて投句されている。一方、同じような句を、あまり推敲されず、一部の言葉だけ変えて出されている人が多かった。たった17音だが、決して「数打てば当たる」というものではない。どんな「お題」であっても、「自分にしか作れない句」を目指して作句してほしい。それが「創作」というものであろう。