2013年3月 | 記事一覧 | 2013年5月
2013年4月
"駅弁"の知られざるこだわり
今回“駅弁”を担当したディレクターの菅井祐介です。
ゴールデンウィークには電車旅で駅弁を、なんて思っていただけたなら嬉しいです。
ここで番組ではどうしても取り上げられなかったこぼれ話を1つ。
新鮮さにこだわりぬいた伊豆修善寺駅の「あじ寿司」。こだわっているのはアジだけではないんです。「あじ寿司」では仕上げにワサビをひとつまみのせるのですが、そんなワサビにも秘密が…
生産しているのは修善寺でワサビを作りつづけて50年以上の安藤善夫さん。取材で連れっていっていただいたワサビ田に仰天。\車で修善寺から国道を行くこと30分。そして山道に入りそこからさらに30分。修善寺から1時間もかかる場所にワサビ田はありました。
(写真:作業する安藤さん)
そのワサビ田は他のワサビ田よりもはるかに標高が高い位置にあり、狭くて急な谷間をそのまま生かして作られているため、ものすごい不便。安藤さんは自家製のモノレールを巧みに駆使して、たった一人でワサビを作っているのです!そうやってできたワサビは他のワサビよりも水分が少なく、身が引き締まっているそう。
たった1つのワサビにもこだわりぬいた「アジ寿司」。まさかその駅弁にのせられたワサビがどのように作られているかなんて想像も及びませんでした。
(写真:イチから手作業で作り上げた安藤さんのワサビ田)
今回番組で取り上げた駅弁は「アジ寿司」に限らず、どこも細かいところにこだわりぬいた駅弁ばかりです。その分コストも高い。儲けもあまりない。にもかかわらず、お客さんに「おいしい」と言ってもらいたい、駅弁によって少しでもお客さんの旅を彩りたい、その思いで駅弁を作り続けている人ばかり。
旅のお供に、車窓を眺めながら駅弁をつまみ、そんなことに思いを馳せるのも悪くないのではないでしょうか?
投稿時間:11:13 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
都の春の風物詩
祇園を担当したクボチです。
憧れるばかりで、遠い世界だった「祇園」。
「祇園」のことを、そこに生きる人々は「祇園町(ぎおんまち)」と呼びます。「祇園町」は、すごく敷居が高くて厳しくて、でもいったん見知った人間に対しては、情けが深く、やさしさもあって……。夏の終わりに、緊張に身体を強ばらせ、芸舞妓さんたちの稽古場にうかがってから7カ月。たくさんの方に情けをいただき、多くのことを教えていただきました。お世話になった皆さま、本当にありがとうございました。
祇園町で、今の季節、見ていただきたいのは、なんといっても「都をどり」。4月いっぱい、毎日4回、祇園の中心にある祇園甲部歌舞錬場で行われています。この木造の歌舞練場は、大正2年に建てられ、有形文化財に指定されている建物。格調高い破風の屋根に赤提灯が並ぶ入口をくぐるだけで、胸がワクワク。
「都をどり」、私のおすすめは「お茶席付」です。舞台が始まる前に2階のお茶席に通され、黒紋付で正装した芸舞妓さんのお点前を見ながら、薄茶とお菓子をいただきます。お茶席への行き帰りには、桜の古木が植えられた素敵な広い中庭も眺められます。90人近い、現役の芸舞妓さんが出演する華やかな舞台。毎年、衣装もすべて、京都の職人さんの手により、作られています。都の春の風物詩、ぜひお楽しみください。
都をどりを楽しんだ後は、花見小路や、花見小路と交わる小さな路地を散策して、紅柄格子のお茶屋の町並みを味わってはいかが。高級懐石料理店から、おいしいコーヒーのいただける喫茶店や甘味屋さんまで、花より団子の向きにもぴったりのお店が、随所にあります。
青柳小路、弥生小路、南園小路、西花見小路……一つ一つの小路には、不思議の世界にいざなわれるような、かわいらしい名前がついています。足もとを注意深く見ながら歩いていると、小路の名前も発見できますよ。ただ、ひとつご注意。細い行き止まりの路地の場合、奥は、お店ではなく、普通の「住まい」であることもしばしばありますので、ズンズン入っていくのは不躾の危険大です。住んでいる方のプライバシーに気をつけながら、路地歩きを楽しみましょう。
最後は、あまりに有名な短歌から。
「かにかくに 祇園は恋し 寝る時も 枕の下を水の流るる」
歌人吉井勇が歌った祇園白川は、今も、変わらぬ流れをたたえています。
花見小路から、大通りの四条通りを渡って、西(八坂神社とは逆の鴨川の方向)に折れ、「切り通し」とよばれる細い通りを右におれ、左側に喫茶店(舞妓さんや、祇園の関係者がしばしば立ち寄るので有名です)を見て、さらに先に進んでいくと、白川にかかる、石造りの「巽橋(たつみばし)」に出ます。
その先には、京舞井上流家元・井上八千代さん初め、祇園の芸妓さん、お茶屋の女将さん達の名前が記された、名高い辰己神社が。
この辰己神社を起点として、北西にのびるのが、白川ぞいの白川南通り。南西にのびるのが、古くからのお茶屋の街並みが残る新橋通り。春になると、白川ぞいの桜が美しく咲き誇り、えもいわれぬ美しさです。紅葉の時期も、もちろんすてきです。
四季折々の祇園の魅力、どうぞ味わってください。
投稿時間:18:39 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
桜前線を追いかけて
「桜前線の旅」を担当した棟方です。
みなさんは、今年のお花見いかがでしたでしょうか?東北や北海道の方は、まだこれからの方もいらっしゃいますよね。東京では2002年と並んで観測史上最も早い花開き。お花見の予定がずれてしまって慌てた方も多いのではないでしょうか?隅田川の名物、屋形船も、毎年恒例のお花見ツアーの時期を繰り上げ、予約のお客さんたちの中には一週間以上も前倒しして来た方たちもいました。早咲きの桜並木と東京スカイツリーの共演を見ながら「間に合ってよかった~」と喜ぶ笑顔。
この日、人手で大変混雑した隅田川でしたが、歩いている人たちの顔がほころんでいるのがとても印象的でした。テレビカメラを向けても、ほぼ全員が笑顔で手を振ってくれるんです(普段、街中で撮影していてそんなことは有り得ませんが)。桜って本当に不思議な花です。
さて、全国47都道府県の桜を紹介するこの特集で、今回、とても珍しい桜を沖縄で撮影しました。そこを担当したもうひとりのディレクターを紹介します。
久米島で「クメノサクラ」を撮影した吉峯です。
全国でもこの島と沖縄本島の一部でしか見られないクメノサクラ、色が純白から淡いピンクに変わっていくのが特徴で、一週間以上かけてその変化の様子をとらえました。
ソメイヨシノに似たはかなげな風情のあるクメノサクラですが、もともと島にあった野生種なのか?それともどこからか渡ってきたのか?だとすればいつなのか?まだ分からないことだらけのミステリアスな桜です。DNA鑑定によれば、日本と朝鮮半島には同じ種類の桜がないとのことで、中国大陸から渡ってきた可能性が高く、これから調査が始まるそうです。
クメノサクラは非常に弱い桜で、肥料をやったり下草を刈ったり枝を剪定したり、人間が手をかけて世話をしないと元気がなくなり、枯れてしまうこともあります。しかも去年の台風による塩害を受けて、今年はチラホラとしか花をつけない木が多かったです。
久米島町では今後、育てているクメノサクラの苗木を植樹して、公園を造る計画があるそうです。また、沖縄本島の本部町でも5年ほど前から有志の方々がクメノサクラを殖やしていて、すでに1000本以上が植えられています。来年以降はきっと、クメノサクラのお花見でにぎわうのではないでしょうか。
投稿時間:09:38 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
お伊勢さんへの「おかげ参り」
「伊勢」を担当した岩崎です。
ことしは伊勢神宮の御遷宮イヤーということで
10月2日の内宮、5日の外宮の「遷御の儀(せんぎょのぎ)」をクライマックスに、いま伊勢地域全体が熱く盛り上がっています。全国各地から参拝のかたが多く、神宮周辺の駐車場はどこも数十分待ち。周辺道路は、土日祝日を中心に渋滞必至です。時間に余裕のあるスケジュールをご予定ください。
<御白石持ち行事>
さて8年前に始まり、全部で33あるご遷宮関連の神事や行事のうち、今年はその半数近くが集中。秋の「遷御」に先立って、この4月から伊勢・二見地区では「浜参宮(はまさんぐう)」が始まりました。
これは夏に予定する「御白石持ち行事(おしらいしもちぎょうじ)」のために身を清め、奉納する石のお祓いをしてもらうもので、夫婦岩(めおといわ)で有名な「二見興玉(ふたみおきたま)神社」で行われるのがならわしです。
これから6月にかけて、おもに毎週日曜日、地区ごとのハッピでいなせに決めた伊勢衆が大勢集結しお祓いします。そのあとには、神様に「木遣り」唄を奉納、海鳴りと響き合って、実に勇壮な唄声が聞こえてきます。
7月になるといよいよ御白石の奉納。正宮御敷地内(番組冒頭で、大勢の神職のかたが地面に正座して拝礼していた場所です)に敷き詰める白い石を、旧神領民とよばれる伊勢の人々が銘々に一つずつ手に持って奉納します。奉納完了は2ヶ月がかり、前回はのべ3万人の参加者とか。普段近づくこともできない神殿を実際の目で間近にできるありがたい機会なのです。
<125社>
にぎやかで楽しいお伊勢さんへの「おかげ参り」。一方で、心静かにお祈りの時間をすごしたい方たちを中心に最近注目をあつめるのが「125社めぐり」です。
内宮正宮(天照大神)や外宮正宮(豊受大神)のほかにも風や土や水など様々な自然に関する神々や、天照大神のご両親にあたるイザナギノミコト・イザナミノミコトなど神話の神々がこの地方の随所に祀られています。格が高い「正宮・別宮」に続き、「摂社(せっしゃ)、末社(まっしゃ)」とよばれます。伊勢神宮はそうした125社の総体なのだそうです。
摂社・末社の建物は、屋根が板葺きである以外は伊勢神宮特有の「唯一神明造」とほとんど同じ。神宮内宮の広い神域内にもいくつかあります。なかには建物をもたず、ただポツンと目印があるだけの神様も。こんな場所なら、どこか人なつこい神様とご一緒できる気配を感じながら、ゆったりとした時をすごすことができます。
いずれの場所においても私が感激するのは、いつも清浄さが保たれていること。きれいに掃き清め、常にどなたかが神様の居場所をお世話している。さわやかな風や水の音に耳をすますと、朝に夕に、雨の日も晴れの日も、神域の尊さを身を以て教えてくださっているように感じます。
<伊勢うどん>
田んぼや住宅地にぽっかりうかぶ緑の島のように、伊勢の各地にある鎮守の森。神宮の125社以外にも地元に伝わる古くからの神様がいたり。伊勢のお宮めぐりはけっこう体力を使います。
そんな疲れた体にやさしいのが、名物「伊勢うどん」。昨今のうどんブームで食傷気味のかたには、ガツンとショックな食感です(わたしも初めのときは当惑しました)。ええと、ひとことでいうと「やさしい」。
スタンダードは、アツアツの太麺(鉛筆ほども)に、濃甘口のタレに青ネギをかけただけのいわゆる「ぶっかけ」スタイル。一口食べようと、麺をもちあげると、なんと。「切れる」んですねえ、箸でつまんだだけで。異常に柔らかいのです。まったくコシがない。かなり消化よさそう。
聞くところによると、お店によってはわざわざ1時間(!)ゆでておき、注文がきたら再度ゆでて供するとか。かつてお伊勢参りで繁忙をきわめた江戸時代、客の待ち時間を少なくするための工夫だったとも、旅疲れの胃に負担をかけないための思いやりだったとも、耳にします。
かくいう私も、今ではすっかり「伊勢うどん」ファンです。かぜをひいたとき、小腹がすいたとき、伊勢うどんなら体に負担がありません。見た目ほどに塩辛くない、ダシの効いた甘塩っぱいタレも不思議でおいしい。離乳食に応用が効くかも。伊勢っ子はパックになったゆで麺を常備して、お好みでトッピングを楽しむのだそうです。忘れた頃に恋しくなる、心ひかれるうどんです。
長い歴史と、神様との暮らしがしっくりと息づく伊勢。鳥羽や志摩の島々、山々、とにかく親身で働き者の人々。かけがえのないこの地の明るい魅力を、ぜひご自身でも体験していただけたらありがたいです。
投稿時間:11:12 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
知られざる尾瀬の贅沢タイム
尾瀬を担当しましたディレクターの神です。かれこれ一年以上取材に通いました。お世話になった皆さま有難うございました。そんな中で、自分なりに見つけた、尾瀬の楽しみ方、コレは、是非という事をいくつか、ご紹介します。
まず尾瀬に行ったことがない方には…
とにかく〝尾瀬で一泊コース〟をおススメします。日帰りではなく、泊って下さい。
泊るのは、やはり湿原の小屋が良いです。写真集で見る景色や、実際感動的な風景は、6~7割は、朝か夕方に多いからです。でも美しい風景だけではないんです… 実は、湿原や木道には“誰もいない時間”が、結構あります。それがとても印象的なんです。私はその時間が、特に好きでした。午後三時過ぎ~日没、朝は、7~8時頃がねらい目です。(※朝夕はクマに出会う可能性もあります注意して下さい)
〝誰も居ない自分だけの空間となる一瞬〟は、何とも言えない、得した気分を味わうことができ、そしてまた現実なのか?幻なのか?という不思議な感覚にもなります。尾瀬の雄大な風景を、独り占めしてしまう贅沢なひと時を、是非体感して頂きたいです。気温差の激しい時間帯ですから、雨具防寒着は、必須です。大きな荷物は山小屋に置いて、カメラだけなど身軽にして。運が良ければ、数分でも、数十秒でも、忘れられないあなただけの尾瀬を味わえるかもしれません。
もう一つポイントとして、尾瀬では、少し天候が悪くても、ガッカリしないで下さい。そんな時は、時間の許す限りですが、ジッと待ってみたり。視点を変えると、とても楽しめます。カメラマンから伝授されたその術をひとつ。
例えば、霧に包まれたら、風に漂う霧の行く末、消えてく様を観察。雨なら、雨粒が池塘に跳ね返る様に注目。尾瀬は、基本広々としているので、意外と細かな小さなものを見てなかったりします。そして感動の風景は、悪天の後に出ることも…しばしば。
みなさん、尾瀬にお出かけください。(明日の朝の再放送もどうぞご覧下さい!)
投稿時間:11:12 | カテゴリ: | 固定リンク