川の街・広島の楽しみ方
すっかり葉桜が目に鮮やかな季節になりました。皆さまいかがお過ごしでしょうか。
「広島 七川 春模様」担当ディレクターの柚木(ゆのき)です。
葉桜から時間をちょっと戻して、満開の桜に彩られた広島の川の物語。川にたゆたいながら、のんびりゆったり、もう一度お花見をしている気分になって頂けたら幸いです。そして、今まで知らなかった「広島」を見つけて頂けたなら、なお幸いです。

百万都市の真ん中に幾筋もの川を抱く広島。
暮らしていると、一日に必ず一回は川を渡り、無意識のうちに川と生活している、そんな街です。皆ことさら声高に「うちらは川と暮らしとるんじゃ!」と言うわけではないのですが、それでもやはり川と人との距離が近い街です。陸から川の中へ降りる雁木(がんぎ)が400もあって、柵もない。市街地に未だに河童伝説が残っている。極めつけは、やっぱり鯉(カープ)!

そんな「川の街・広島」を楽しめる過ごし方をご紹介します。
普段なかなか目を向けられない“川”を感じてみませんか。気づけばあなたも、河童になっているかも・・・
①川べりにたたずんでみる
江戸時代以降、干拓で出来あがっていった広島の街。「都市づくりは水辺づくり」と言われてきたほど、広島の川べりには、憩いの場がたくさんあります。
川で何をすれば良いの…と戸惑うかもわかりませんが、ご心配なく。広島の川べりには、いつだって、実にたくさんの人々がそれぞれの時間を過ごしています。
ギターをかきならし、川に向かって叫ぶように歌う青年。
その青年の歌に誘われ、ギターを借りて歌う旅人たち。
広島の川に故郷インドのガンジス川を重ねて太鼓をたたく夫婦。
――――川に向かえば、「はじめまして」も国も飛び越えられるかも・・・


何もなしでたたずむのが難しい…そんな方でも楽しめるのが広島の川。こんな楽しみ方だって出来ます。

【“ここはセーヌか、はたまたベニスか”】

【“海水がのぼってくる広島の川では、街中でもスズキやクロダイが釣れるとか!”】
②お腹がすいたらやっぱり、お好み焼き!
川で、誰かと仲良くなった人も、そうでない人も…
川土手を上がればそこにも、「はじめまして」を飛び越えられる場所があります。
それは、お好み焼き屋さん。被爆後、主に女性たちが家族を養うために開いていったお好み焼き屋さんは、今や広島人皆の“おふくろの味”。その数は、コンビニの数よりも多いとか。川筋を歩けばお好み焼き屋さん、角を曲がればやっぱり、お好み焼き屋さん。広島の人にとって、生まれ育った近所に一つはあるお好み焼き屋さんはいわば“第二の家”。皆それぞれ、行きつけのお店があります。
旅人でも、ご心配なく。鉄板を囲めば、「はじめまして」のあなたもいつの間にやら広島人。
川べりにたたずんで、鉄板を囲んで、“広島時間”を過ごす旅は、いかがですか?

【“京橋川近くのお店。原爆孤児となったご夫婦で切り盛りして約50年。”】

【“常連さん曰く「うちの子はここのお好みで育った子」”】
【番外編】川をさかのぼって、時代もさかのぼって…
いつもとちょっと違う時間を過ごせる、川のまち・広島。
その川をさかのぼれば、江戸時代にだって行けるかも…
広島を流れる川のおおもと、太田川を市街地からさかのぼること60キロ。
加計(かけ)という地域は、江戸時代、たたら製鉄の日本有数の産地。この鉄は川を下って広島のまちへ送られ、様々な鉄産業が発展しました。
かつて広島のまちを支えた江戸時代の人々の息吹。それを現代に語りかけてくれるのは“川”だと、地元住民の陶芸家・林さんは言います。林さんは、川べりで、たたら場から流されてきて丸くなった“かなくそ”(鉄のくず)を見つけ、江戸時代の人々の息吹を感じたんだとか。
川をよく見つめてみれば、不思議な時間に出会えるかもしれません。

【かなくそを探す林さん】

【かなくそ】
投稿時間:11:12 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
春らんまん
「新日本風土記」事務局スタッフです。
4月も、はや後半。皆さま、お花見はできましたでしょうか? 東北や北海道では、これから桜がほころぶのを愛でられることと思います。好天に恵まれると良いですね。
春は色が楽しめる季節。桜の淡いピンク、ハナミズキの白、チューリップの赤・白・黄色・・・。眠っていた色たちが、ワーッと踊りだすように出てきて、目を楽しませてくれます。なんとなく、心もウキウキしてきますね。四季のはっきりした国に住んでいる幸せを感じます。寒いのは苦手ですが、その分、春のぬくもりがありがたく。
とはいうものの、4月のこの時期は、疲れもたまってくる時期。新社会人の方などは、環境もガラッと変わりますし。ぜひ、「新日本風土記」や「もういちど、日本」を見て、心をいやすひと時を過ごして下さい!今週金曜日の舞台は、広島です。ポスターのなかで泳ぐ鯉を見て、何か浮かんできませんか?
投稿時間:12:10 | カテゴリ:事務局便り | 固定リンク
源氏物語、見つけた!
「京都すぐそばに源氏物語」担当した坂本です。
今回は、源氏物語の世界を取り上げるということで、本編では紹介しきれなかった部分をご紹介します。
まずは「お食い初め」。男の子は低いお膳で器は赤、女の子は高いお膳で外が黒、内側が赤の器を使うそうです。(常識・・・?)また、赤ちゃんが始めてその家の味を食べるということで、家庭の味をお嫁さんに引き継いでもらうという意味もあり、お姑さんからお嫁さんへの味の継承の機会でもありました。こういう風習で家の味を継いでいくんですね。
今回お世話になった河内家では、息子さんのお食い初めの時に桃の柄の入った着物を作っておられ、このたびのお食い初めで2度目の袖通しがありました。すくすく元気に良縁に恵まれるようにとの願いが込められていて、家族みんなで新しい命を慈しむ姿がとても印象的でした。


それと十三夜のお月見。もともとお月見は平安時代に大陸から伝わった風習で、十三夜のお月見は平安人が生み出しました。確かに100%フルな状態よりも、これから満月になろうとする姿を愛でるのはその後の侘びの文化につながります。
今回お世話になった茶道の家元速水家のお道具立ても、やはり月をいかに隠すか、直接見ることは野暮というもの。ちょっとしたところに月をしのばせ、床の花もこれからまさに開こうとする姿です。そうすることであらためて月を感じたり、これから未来へ向かう時を表します。日本人の美意識を再認識する機会となりました。


ある特定の年代の方はご存知かもしれませんが、昭和天皇の大喪の礼の時、籠を担ぐ人々が住む八瀬の人たちが話題になりました。驚いたのは後醍醐天皇はじめ明治、大正、昭和天皇の位牌を祀ってあり今も月に一度の法要を欠かされないこと。集落の人々は800年に渡り親から子へ、大人たちから若者たちへと集落の歴史を受け継いでおられ、若者たちもそれを素直に受け入れておられました。生まれた土地から若者離れが多い昨今、八瀬には学ぶべきことが多かったです。

源氏物語最後の舞台となった宇治。川の上流では家財道具を目いっぱい詰め込んだ釣り人たちとたくさん出会いました。朝から日が暮れるまで一日川のほとりで過ごしています。みなさん、子どもの頃川で遊んだ思い出が忘れられないのだとか。物語では浮舟が身を投げた暴れ川も今では癒しのスポットです。


源氏物語とは縁遠い方もいらっしゃるかもしれませんが、京都の松栄堂畑さんが見せてくださった浮世絵はとても美しく楽しいものでした。浮世絵の題名は「源氏後集余情」。「源氏五十四帖」のパロディーです。物語を直接読まなくてはならないという先入観を軽々と越えて楽しんだ江戸時代の人々の息吹が伝わってくるようでした。無理に頑張って読もうなど思わなくてよいのです。手の届くところから少しだけ扉を開いてみては。

明日、再放送がありますので、どうぞご覧下さい。
投稿時間:11:44 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
金沢に来ませんか?
「金沢」を担当した山田です。
金沢にやってきて四年目になります。金沢の街の一番の魅力は、何と言っても「食」にあります。住まいが“百万石の台所”とも呼ばれる近江町市場のすぐ裏手にあることもあり、四季を通じて新鮮で豊かな山海の幸を堪能しております。今回の番組で取り上げた「かに面」というこの地ならではのおでんや、老舗料亭の見目麗しい料理の数々で、その魅力の一端を何とかお伝えしたいと考えました。来年は北陸新幹線も完成し、今まで電車で4時間ほど掛っていた東京・金沢間が、2時間半に短縮されます。是非一度、「食」の魅力にあふれた金沢を旅してみては如何でしょうか。
★私のおすすめポイント①早朝の兼六園
「兼六園」は金沢のランドマークとも言うべき庭園で、寒い冬でも観光客がひっきりなしに訪れます。通常、3月から10月中旬までは朝7時から夕方6時までが開園時間ですが、私のお薦めは、早朝に行われる無料開放です。冬のまっただ中でも朝6時から8時までの2時間、兼六園は無料で開放されています。この時間帯は、観光客が少なく、前田家の藩主たちが贅を尽くして造った大庭園を独り占めしたかのような気分に浸れます。また早朝の時間帯を狙ってくるアマチュア・カメラマンも多く、実は兼六園にはカワセミが生息しているという情報も、自分はそうしたカメラマンたちから教えて貰いました。彼らの邪魔をしないようにして傍で池を見つめていると、水中の獲物を捕らようとする美しいカワセミの姿を目撃できるかも知れません。
早朝無料開放の時間は4月1日~8月31日の期間は朝4:00から、9月1日~11月31日の期間は朝5:00から、11月1日から翌年の2月末日までは朝6:00からです。ただし、開門されているのは「蓮池門口」と「随身坂口」という二つの入口のみであることと、有料開園時間の15分前までに退園しなくてはならないことにご注意下さい。

★私のおすすめポイント②茶屋街
兼六園と並んで最近、観光客の人気を集めているのが、市内に三つある茶屋街です。とりわけ東山地区にある「ひがし茶屋街」は、京都の祇園と並んで重要伝統的建造物群保存地区に指定されていて、藩政時代を偲ばせる古い町並みが魅力です。しかし最近は、以前お茶屋だった建物の外観をそのまま残しながら、内部をお洒落な店にリノベーションするケースが多くなり、若い女性たちに大人気です。番組で紹介した「黄金ぜんざい」「黄金くずきり」という金箔を贅沢に使ったスイーツを振る舞う甘味処(店名は「懐華楼」)や、「黄金の蔵」が中庭に建つ土産物店(=店名は「箔座ひかり蔵」)も、こうしたお茶屋だった建物を改装したお店の一つです。他にも、伝統的な家屋に一歩足を踏み入れると、日本海の新鮮な魚で寿司を握る名店であったり、モダンなフレンチのレストランだったり、古いものを大切にしつつ、新しいものにも目がない金沢人らしさあふれるお店が路地のそこかしこに点在します。
ちなみに、今もお茶屋として営業する店は市内に18軒あり、こちらは「一見さんお断り」。つまり、紹介者が居なければ店にはいることは出来ません。しかし、こうしたしきたりも変わりつつあります。最近は、春や夏のシーズンに「桜まつり」や「夏まつり」と銘打ち、普段、芸妓たちの稽古場である検番を開放し、通常のお座敷遊びに比べるとはるかに安価(\7000~13000程度)に芸妓の踊りなどを見て楽しむイベントが期間限定で企画されています。金沢には「お座敷太鼓」という、芸妓が披露するだけでなく、客も参加して太鼓を打つ遊びがあるのですが、これも体験が可能です。今年も、にし茶屋街では8月前半に「西茶屋夏まつり」、ひがし茶屋街、主計町茶屋街では7月下旬から8月初旬にかけて「白糸川床」という名称で、それぞれイベントが予定されています。

投稿時間:10:27 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
桜前線を追いかけて
「さくら 十二の物語」担当した坂本です。
日本全国、桜と人々の物語いかがだったでしょうか。
見ている方々にも自分だけの桜を思い起こして欲しいという思いで制作しました。
2013年の春は、桜前線に追いつき追い抜き、まさに風土に翻弄される日々でした。
この番組をご覧いただいている頃は、昨年の開花がいつもより早かった(北は遅かった)ことや爆弾低気圧が来て一夜にして桜が吹き飛んだことなどお忘れのことだと思いますが、私たちスタッフにとっては連日必死な桜旅、桜を満喫する余裕もなく次の地、次の地へと転戦しておりました。取材をさせていただいた方々にも「咲いてますか?」「どうですか?」としょっちゅう電話して迷惑のかけっ放しでした。この場を借りてお詫びします。
今回の旅で初めて知ったことがいくつかあります。
九州出身の私が思っていた桜と、冬が長い地域の人たちにとっての桜とは、桜の見え方や感じ方が違うことでした。私にとっての桜は卒業式や上京した「さよなら」や旅立ちのシンボルでした。でも冬が長い地域の人々にとっての春は、心からの喜びの時であり、誰もが待ち望む花でした。そうやって番組を思い起こしていただけると、西の方、北の方では受け止め方が違っていたかと思います。
そしてもうひとつ、桜が咲かない年があるということ。
2013年は開花が早かったせいか全国的にいまひとつの咲きっぷりで「本当はもっとね」と各地で聞いていて、次の取材場所にたどり着くまで(着いても)ハラハラドキドキの連続でした。
そんな中、釜石の桜舞太鼓の皆さんがこう話してくれました。
「普段は当たり前だと思ってすごしていることが、突然失われることがある。だから花見をしたいなら自粛とか考えないで“ちゃんと”花見して欲しい。ちゃんと今その時をおもいっきり楽しんで欲しい」と。

桜の元では、誰もがとても穏やかでそこらじゅうに笑顔と愛情がいっぱいでした。他にそんな花があるでしょうか。あなたにはどんな桜の物語がありますか?


投稿時間:10:42 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク