人形供養の社(やしろ) 淡嶋神社
「人形 愛し愛され」を担当した萩原です。
和歌山市にある淡嶋神社は、3月3日の「雛流し」をはじめ、人形供養の神社として知られています。日本人と人形の関係を探る上で、外せない場所だということで訪れました。
まず驚いたのは、拝殿に奉納されたひな人形の山。この1年で寄せられたもので、女雛と男雛だけで3千体以上はありました。そして、市松人形をはじめ様々な日本人形、干支の置物、招き猫などが境内に所狭しと並べられています。これだけまとまった数の人形を目の当たりにするのは日本中でもここだけかもしれません。しかも其々が、何らかの理由で持ち主の手を離れた人形達です。そこには、今まで感じたことのない不思議な"気配"が満ちていました。

【画像:市松人形】
人形を供養するとはどういうことなのか?
何人かの方にお話を聞きました。「結婚式のお祝いにもらった人形。送り主も亡くなったので納めにきました」「夫婦の思い出の人形ですが、子供と同居することになり、自分たちの思い出の品を整理するためにもってきました」など、理由は様々。
一番印象に残ったのが、"マリちゃん"と名付けられた、抱き人形を納めにきた女性の話でした。40数年前、娘さんに買い与えた人形"マリちゃん"。娘さん同様に洋服を縫ってあげたりして可愛がってきたそうです。「自分が死んだら、ゴミと一緒に捨てられてしまう。そうならないようにもってきたんです」最後の別れのとき、女性は涙を流して名前を呼び続けていました。「マリちゃん、さよなら・・・」
大切にしてきた人形は自分自身の分身なのではないでしょうか。人形を供養するとは、今までの人生に区切りをつけ、そして未来への一歩を踏みだす儀式だと感じました。
【画像:マリちゃん】
人形とは少々離れますが、神社近くの食堂で食べた料理が忘れられません。淡嶋神社は紀伊水道に面した海沿いに位置しています。近海で獲れた海の幸をふんだんに使った海鮮丼やシーフードカレーの美味しかったこと!また味わってみたいと思っています。そして海に沈む夕日はまさに絶景。人形を巡る旅の合間に、ほっと一息つくことができました。皆様も是非一度淡嶋神社を訪れてみてください。
【画像:夕日】
投稿時間:10:20 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
諏訪 独特の気
「諏訪」を担当した川口です。取材をして改めて感じたのは、諏訪という土地は、不思議と謎に満ちているということです。御柱を建てる理由すらはっきりとはわかっていないのに、あれだけのエネルギーを注ぎ、命をかけるほど熱くなれるのは何故なのか?"諏訪人の血"という言葉を何度も聞きましたが、それでわかった気にはなれず、今もいろいろな思いを巡らし続けているところです。

<神長官守矢史料館>
諏訪のなかでも独特の雰囲気を持つのが、諏訪大社本宮と前宮の間にある高部(たかべ)という地区です。諏訪大社の神事を長年司ってきた守矢家やその史料館があります。入館料の百円を払って入ると、鹿や猪などの獣の首がずらりと並んでいます。神様と一緒に食事をする御頭祭(おんとうさい)の供物を再現したものです。かつては、鹿75頭が供えられたといわれます。史料館のそばには、土着の神ミシャグジを祀る神社や、守矢家の先祖が眠る古墳があります。古墳からは諏訪湖や八ヶ岳を一望できます。守矢家78代当主早苗氏によると、いやなことがあった時も、そこに行くと、す~~と消え、心安らかになれるのだそうです。悩み事のある人には、おすすめの場所です。
<土着の神ミシャグジを祀る御頭御社宮司総社>
このブログ用の写真を撮ろうと、古墳に向かった時でした。「キ~~」だったか、「ギ~~」だったか、ものすごい声を張り上げながら、鷲のような大きな鳥が、羽根を広げて飛び出てきました。ドキッ~! 飛びかかられて、尖った嘴で突かれる光景が頭に浮かびました。落ち着いてよく見てみるとキジでした。でも、2メートル程のすぐ近くで 私の周りを2周しながら、すごい迫力で威嚇を続けます。もう、これ以上先に踏み込んではいけないという「お告げ」なのかもしれない。それに背くと、なにか災いが振りかかってくるような気がして恐くなり、写真はあきらめ、ゆっくりと後ずさりして離れました。農村でキジに出会うことは珍しくはありませんが、土着の神が祀られる諏訪の不思議な雰囲気のなかで、そう感じてしまったのかもしれません。もし、みなさんもあのキジに出会ったら、きっと同じように感じてしまうと思います。

<キジが落ち着きを取り戻した後にこっそり撮影>
投稿時間:10:20 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
長崎の路面電車
『あの街この街 路面電車』の回を担当した正岡です。今回の番組では全国に19ある路面電車すべてを取り上げました。それぞれの街で路面電車を愛する人々と出会えたことが、番組を面白くしてくれたと感謝しています。
今回取り上げた路面電車のある街の中でも、特に印象深いのは長崎です。有名な観光地でもある長崎で、路面電車は実によく活躍しています。運賃が120円と安いことと、観光スポットのほとんどをカバーすることが出来るということで、地元の人にも観光客にも人気があるようです。路面電車の窓から見る長崎の街は格別です。
そして、長崎には路面電車が好きな人にはたまらないおすすめポイントがあります。それは眼鏡橋の近くにあるレストラン『きっちん せいじ』です。このお店、路面電車を利用して作られています。ドアや窓、シートや吊革とすべてが本物です。昭和57年に起こった長崎大水害で水没して廃車になった電車を、スクラップにするのは忍びないと、この店のオーナーがもらい受けてきてレストランとして再出発させたのです。
昔懐かしい雰囲気を漂わせたこの店の一番の人気メニューはトルコライス。ドライカレーとナポリタンスパゲティーの上にトンカツがのっているこの料理は、味もボリュームも満足できる一品です。長崎の街を路面電車でぶらついて、トルコライスでお腹を満たす。なかなか贅沢な休日になること請け合いです。

投稿時間:10:20 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
建築好きにはたまらない町・弘前
「近代建築」を担当した高橋です。
弘前はお城の桜や夏のねぷた祭などで有名ですが、最近、建築が好きな人たちの間でも、一度行ってみたい町として話題になることが多いようです。そのわけは、前川國男の作品が初期から晩年まで8つも揃っていて、しかもそのひとつひとつが、各時期の特徴をよく表す名作ばかりということ。
前川國男(1905-1986)といえば、東京文化会館や京都会館など、戦後を代表する建築をいくつも手がけた巨匠です。最も旺盛に作品を生み出したのは60〜70年代。前川に限らずこの時代の建物というのは町にすっかり溶け込んでしまって、あまり意識されない傾向があります。誰もが見ているのに、ちゃんと見ていない建物。
そこに登場した市民グループ「前川國男の建物を大切にする会」は、前川作品の魅力を再発見するため、いろいろな活動を行ってきました。前川が作った空間でアートや音楽のイベントを開いたり、バスツアーを企画したり。戦後すぐの作品《弘前中央高校講堂》の椅子を、会員たちが2年がかりで修理したのも、この建物の良さを周囲に気づかせるきっかけになりました。
グループの最近の成果は、番組でもちょっとご覧いただいた手作りの博物館。前川のデビュー作である《木村産業研究所》に、「前川國男プチ博物館」としてオープンしました。建築写真や模型はすべてプロが提供した本格的なもので、かなり見応えがあります。展示デザインには、前川の弟子だった建築家・仲邑孔一さんも協力しました。27才の前川が建てた初々しくもピュアなモダニズム建築の中で、その生涯を振り返るというのも味わい深いものです。
所在地は弘前市大字在府町61番地。かつて武家屋敷が並んでいたという静かな住宅地です。開館は午前8時30分から午後5時まで(月曜〜金曜)。入場無料です。また6月18日までは、毎週土曜・日曜日の午前10時から午後4時まで、会員がガイドを務めます。建物の入口右側に「弘前こぎん研究所」という会社の事務所がありますから、平日はそこに一声かけてから中へ入ってくださいね。
投稿時間:10:20 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク