2014年7月

2014年07月29日 (火)

情にあつい街 神楽坂

「神楽坂」を担当した森本です。

神楽坂は都心にありながら、古きよき日本を思い出させる情にあつい街。

取材中も番組では紹介しきれないほど、たくさんの個性あふれる人たちと出会いました。街を愛し、取材にご協力して下さった方々に心から感謝しています。

そこで、今回は毘沙門様の境内で行われた花見会で出会った神楽坂の愛すべき人々をご紹介します。

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【料理担当のてっちゃん】

毘沙門様の境内で焼きそばを豪快に焼いていた男性。

実はこの方、路地にある割烹料理店の主人・萩原哲雄さんです。普段は繊細な包丁さばきで日本料理を出していますが、花見では“まいど”と書かれたエプロンを付け頭にはハチマキという出で立ち。鉄板で100人分もの焼きそばを焼いていました。せんべい屋を営む福井さんのお父さんが花見を始めてから数十年間、ずっと料理の担当をつとめています。

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「今年で64なんだけど、いまだに小使いなんだよ。哲雄哲雄ってさ」

神楽坂で60代というとまだまだ若手のようです。

花見当日、雨脚が強まる中、鉄板の前に立ち焼き続けること2時間。

疲れきった表情の萩原さん、しかし帰り際には、

「好きなんだよね。祭ごとが。こういうのって率先してやる人がいないと盛り上がらないからさ」と笑顔で話してくれました。

そんな萩原さんの実家は、神楽坂に残る料亭のひとつ「うを徳」。明治の文豪・泉鏡花の小説『婦系図(おんなけいず)』とゆかりのある場所です。小説の主人公、早瀬主税(ちから)とお(つた)のもとに頻繁に顔を出す魚屋「めの惣」のモデルとなったのが「うを徳」の初代・萩原徳二郎さん。泉鏡花はこの料亭を気に入っていたそうで、小説の中にまで登場させました。ちなみに登場人物は泉鏡花本人と夫人となった神楽坂の芸者・桃太郎(伊藤すず)がモデル。神楽坂は文学と花柳界の歴史を今も感じられる場所です。

萩原さんは1998年に「め乃惣」という名で独立し、路地にひっそりたたずむ店は地元の人からも愛されています。

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【うなぎ屋の未来の星】

萩原さんの隣で焼き鳥を焼いていたのは、高橋龍輔くん20歳。この日は妹さんと一緒に手伝いに来ていました。

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彼の家は飲食店が並ぶ本多横丁沿いにある1948年創業のうなぎ屋「たつみや」。創業以来、継ぎ足しで引き継がれているタレを使っています。かつてジョン・レノン、オノ・ヨーコが訪れ、写真家・荒木経惟氏も通ったほど、著名人にも愛される店です。

そんなうなぎ屋を継ぐため修行中の龍輔くん。料理の専門学校を卒業し、今年4月から店に立ち始めました。小さな頃からうなぎを焼くおじいさんの背中に憧れ、小学校の文集にも「うなぎ屋を継ぎたい」と決意を書いたそうです。

龍輔くんは生まれも育ちも神楽坂。家は萩原さんとお隣さんです。

子供のころ屋根に乗って遊び萩原さんにこっぴどく怒られ、せんべい屋の福井さんには横断歩道のない場所を渡ってよく叱られたそうです。

その一方で、龍輔くんが一人前になれるよう成長を見守ってくれる街の人々。

番組で紹介したベルトランさんの子どもたち同様、街の子はみんなに可愛がられ、叱られ、そして育てられています。

 

【坂の上のお茶屋さん】

神楽坂4丁目町内会長の齋藤弘次さん。

花見当日は、家族勢揃いで花見を楽しんでいました。

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齋藤さんは、毘沙門天のはす向かいにあるお茶屋さんのご主人。店内には座るスペースもあって、ほっと一息つける場所です。

外国からのお客さんも多く、何とお茶の種類や入れ方の説明書がフランス語でも書かれています。粋で神楽坂らしい心遣い。お茶のことを真剣に聞いてくるのは、フランス人が多いそうです。伝統と文化を重んじるフランスと神楽坂の街はやはり合っているのかもしれません。

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商店会の会長も過去つとめた齋藤さん。すっかり街の顔役ですが、実は静岡出身で神楽坂ではまだまだ新参者です。神楽坂通り沿いに店を開いたのは45年前。当初は料亭など一軒一軒挨拶に回り、街に貢献できるよう必死に働いたそうです。そうすることで徐々に神楽坂の人々が受け入れてくれたといいます。

古くからいる人と新しく来た人が共存共栄する神楽坂。

これからまたどんな表情を見せてくれるのか、楽しみです。

投稿時間:09:40 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


2014年07月22日 (火)

日本橋に行ってみた~い

「日本橋」を担当した小塚です。番組を見て「日本橋に行ってみた~い」と思われた方へ、おススメの歩き方をご案内いたします。

まずは行き方。地下鉄、東京メトロ日本橋駅(銀座線、東西線)か、東京メトロ三越前駅(銀座線、半蔵門線)が便利ですが、三越前駅で下車した方へのおすすめスポットが、地下通路に展示されている、絵巻「熈代勝覧(きだいしょうらん)」です。番組でご紹介していますね。あれです。本物はドイツのベルリン国立アジア美術館が所蔵。長さは約12メートル。1999年にドイツで発見され、作者は不明ながらも多くの歴史学者たちが江戸時代を知るための“第一級の資料”と絶賛した絵巻です。描かれているのは、ヒト1671人、犬20匹に馬13頭。それぞれが活き活きとした表情で描かれ、江戸後期の日本橋界隈の活気が伝わってきます。実は、現在進められている日本橋再開発は、この絵の賑わいを取り戻すことを目標に進められているんですよ。

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<東京メトロ「三越前」駅地下コンコースの「熈代(きだい)勝覧(しょうらん)」の複製絵巻>

 この絵巻に描かれている大店が「三井越後屋呉服店」で、現在の「三越」はその流れを組みお店です。そもそも店の名も「三井越後屋」の「三」と「越」に由来しているんですって。

店内では、毎週金、土、日の10時、12時、15時にパイプオルガンの生演奏を楽しむことができます。このパイプオルガン、どこにでもある代物とはわけが違います。昭和初期にアメリカから輸入されたもので、現在のお金に換算すると2億円もする高価なもの。教会で讃美歌を演奏するタイプとは異なり、無声映画や演劇の伴奏用に使われたシアターオルガンというタイプで、ポピュラーからクラシックまで、幅広い楽曲を演奏することができるんですって。演奏時間はおよそ15分。歴史を重ねた荘厳な調べに耳を傾けてみるのはいかがですか?nihon2.jpgnihon3.jpg<日本橋三越本店のパイプオルガン>

で、お次のお勧めスポットは・・・。あ、そうだ!三越には番組でもご紹介したタウン誌「月刊日本橋」が置いてあります。置いてあるのは本館1階の受付ですが、カウンターには出ていません。受付の方に言うと出してくれます。料金は無料。それを片手に街歩きの計画を練る、というのはいかがですか?

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<月刊日本橋7月号の特集「日本橋でランチ」>

 もし、三越で在庫が切れていたとしても、日本橋界隈の多くの店に置かれているので、“有名どころ”に入れば、どこかで入手できるんじゃないかな。ちなみに、7月号の特集は「日本橋でランチ」。夜は高そうだからまずはランチで…という方にはもってこいの情報ですね。

大きさはB6サイズ(B5の半分)。ハンドバックに入るので持ち運びには便利ですよ。

こうした小ぶりなものを愛でる傾向も“江戸好み”なんだそうです。

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<練り物の老舗「神茂」の店内に置かれた月刊日本橋>

編集スタッフは4人の女性。中心は編集長の堺美貴さんです。日本橋を取材して25年。“ネタ切れじゃないですか?”という私の意地悪な質問に “やればやるほど、知れば知るほど、新しいテーマが見つかるんです”と笑顔で答えていらっしゃいました。特に力を入れているのが特集記事で、今年に入って組まれた特集は「江戸の花見(4月号)」「花火(5月号)」「河岸(6月号)」。江戸の歴史や文化を掘り下げることで、日本橋のことを伝えようとする姿勢が伺えます。

nihon7.jpg<月刊日本橋のスタッフ>

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<編集長・堺美貴さん>

みなさんも、月刊日本橋を手にして、日本橋界隈をお散歩してはいかがですか?

人ごみの中に身を置くと、なんだか、絵巻「熈代勝覧(きだいしょうらん)」に登場する1671人の1人になったような気がしてくるかも知れませんね。

 

 

 

投稿時間:10:43 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


2014年07月15日 (火)

梅雨

「新日本風土記」事務局スタッフです。

先週の台風は、本当に大変でしたね。各地で被害が出てしまい、心が本当に痛みます。私自身が訪れたことはなくても、「新日本風土記」で撮影させて頂いた地域だったりすると、なおさら心が痛みます。梅雨ですから、雨が降らないと水不足になるなどの弊害も出ます。でも、できることなら穏やかな梅雨であってほしいもの。これ以上、嵐が吹き荒れませんように!

7月も半月が過ぎました。子どもたちにとっては、まもなく、楽しい夏休み。大人にとっても、お盆の里帰りでなつかしい人に会える季節です。梅雨があけたら、楽しいことがきっとたくさん! それまでは、「新日本風土記」「もういちど、日本」を見て、はやる心をおさえて下さいませ!

投稿時間:12:12 | カテゴリ:事務局便り | 固定リンク


2014年07月08日 (火)

和歌山のお寿司

「寿司」を担当しました須藤と申します。

番組中ではおいしそうなお寿司をこれでもか!と見せてしまい、夕食後の時間帯だというのにお腹が空いて困った方も多いと思われます。お寿司を見たら食べたくなってしまうのは、やっぱり日本人なんですよね。

さて、皆さんのふるさとにはどんなお寿司がありますか?

今回取材した地域の中だけでも、本当にいろんな郷土のお寿司に出会いました。海の魚、川の魚、野菜を使ったもの、葉っぱを使ったものなど…。「これがお寿司!?」と言う驚きもたくさんありました。そんな驚きにあふれた郷土のお寿司の世界で、とりわけ私たちが驚いたのが和歌山のお寿司です。

「和歌山県=お寿司」というイメージが無かった我々は、今回の取材を通して、和歌山のお寿司の奥深さを知らされる事となりました。

 

【年季の入ったさんまのなれずし】

紀伊半島の南部東側、三重県との県境にある新宮市は、熊野古道に代表されるように世界遺産が数多くある、神様と近い雰囲気が漂う神秘的な街。その新宮で最初に訪ねたお店は老舗の郷土料理屋の「東宝茶屋」さんです。

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ここは、とあるサンマのなれずしが有名。そのなれずしを味わおうと、はるばる遠方から訪ねてくる人が後を絶たないとか。

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「最初は普通の寿司屋だったんですが…」というご主人。ここには何と30年以上前から漬け込んでいるというサンマのなれずしがあるのです。なれずしが家庭で作られるものだった時代、お店で漬けた物は売れずに残ってしまいました。それが時間を重ねていくうち奇跡の発酵をとげ、30年ものと言われるなれずしが生まれました。その独特な香りと味は次第に口コミでひろがり、すっかりお店の看板メニューになってしまったそうです。

さて、それがこの品。

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魚も米も30年漬けたら液体になるんですね!?衝撃のその姿にどんな味がするのかドキドキしつつ、まずはひと口。…おや?…チーズとヨーグルトの間のような感じ。これは女の人は好きな味かも…うん、うまい!

たくましく発酵し続ける活発な乳酸菌が、お腹に働きかけ、便秘も解消し美肌につながるとか…。男性にとっては二日酔い予防のおつまみだというこの珍味は、ここでしか出会えません。興味のある方は熊野古道を巡る前に、是非お立ち寄りを!きっと体の調子が万全になりますよ。

 

【南紀人の元気の素はお寿司!?】

和歌山人がお寿司をどれだけ好きかお話ししてくれた「丸正酢」の社長はなんと88歳で現役の職人さんです。元気の秘訣はお酢、そして大好きなお寿司を食べる事という社長は、その寿司好きが高じて、地元のお寿司に合うお酢を研究してきたといいます。今ではその寿司酢は、この蔵の一番人気です。

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神聖な蔵に入る前に吹く法螺貝は、精神統一のために毎日欠かさない儀式。その肺活量に一同驚かされました。

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そして、こちらも日課だという太鼓も披露して下さいました。力強くバチを振る腕、しゃんとした立ち姿は、とても米寿とは思えません。

子どもの頃からお母さんやお嫁さんの作る、家庭のお寿司を食べてきた社長は、地元の海でとれる500本に一本あるかないかという「とんぼしび」と呼ばれるビンチョウマグロのお寿司が、世界一美味しいといいます。地元勝浦の魚と、社長の作った渾身のお酢で作るお寿司は、どれだけ美味しいものなのか…今度はマグロの旬の時期にまた訪ねてみたくなりました。

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一方こちらは潮岬で良く知られる串本の姫地区。「姫ひじきのおまぜ」を作ってくれたのは、漁師の奥さんだけで構成されたヒジキの加工場のおかあさんたち。ここではヒジキの収穫、釜炊き、天日干し、出荷まで全ての作業が40人ほどのおかあさん達の手で行われています。

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ヒジキの釜炊き作業は早朝から大釜に灯された火を絶やす事ないよう、大量のヒジキを炊き続ける重労働ですが、おかあさん達はてきぱきとチームワーク良く働きます。

そんな皆さんは、作業の節目があるごとに、慰労会もかねて皆でお寿司を作って食べるのだそうです。

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それにしてもこの姫地区のおかあさん達は元気です。若手(といっても5〜60歳?)が仕切り、どんどんおまぜが握られていきます。家ごとにおまぜのレシピも違うので「こうした方がいい」「こっちのほうが美味しい」と声が飛び交います。その様子は女子会のよう。

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この美しい海で揚がるお魚はとにかく新鮮で美味しいので、その時期ごとにいろんなお寿司にして楽しみます。「この地域はなれずしにはしないのですか?」と聞くと「新鮮だから保存する必要がない」とのこと。なるほど、納得の一言。食べたかったらこれはもう行くしかありません。

 

【秘密の鮎のたべかた】

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古座川の上流・平井川の水は、思わず顔を洗いたくなるほどの透明さ。そんな平井川のそばの平井集落はまさに桃源郷です。見渡す限り全てが自然、近くに聞こえる鳥の声、サラサラと流れる川の音、自分がどこにいるのか分からなくなるくらい幻想的な場所でした。

そしてここは鮎釣りの聖地。鮎釣りの聖地だから出来る、しかも釣りの解禁の時期にしかやらない、とっておきの鮎の食べ方を教えてもらいました。

その名も「にくずし」!

釣ったばかりの鮎を生きたまま川原で開き、家から持って来た握り飯と合わせ、梅肉をつけたらそのままパクリ!という何とも野趣あふれる食べ方。平井の皆さんは、鮎の食べ方としては、塩焼きよりも家に帰ってから作るお寿司よりも、これが一番美味しいと言うのです。

この食べ方のハッキリとした由来は分かりませんが、ここで育った皆さんは口を揃えて「親父がやっていたから」と言います。

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この鮎釣り名人のおばあさまに披露して頂いた「にくずし」。作っている様子は、ちょっと鮎が可哀想なので、ご想像にお任せしますが…。

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食べてみるとさらにびっくりです。スッキリさっぱりと食べられます。臭みなどまったく無いどころか、新鮮な若鮎は歯ごたえも香りも美味しい!地元の皆さんがこの時期だけのご馳走というのが良く分かる味でした。

 

神々しい大自然に囲まれた和歌山。海には海、山には山のお寿司がありました。そして、お寿司を楽しみにする郷土の人々の気持ちに出会う事が出来ました。土地の恵みに純粋に感謝し、おいしいおいしいと召し上がる皆さんの顔は、お金では手に入らない幸せを味わっている、誇らしげな表情にも見えました。

「その場所で生きる人たちと一緒に、その土地でしか出会えないものを体験する」のが旅だとすれば、和歌山はまだまだ手つかずの、本当の旅の要素が潜んでいる場所なのかも知れません。皆さんも是非、和歌山へ旅をしに行きませんか?

 

投稿時間:12:46 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


2014年07月01日 (火)

今週は寿司!!!

「新日本風土記」事務局スタッフです。

梅雨入り前には、かなり暑い日が続いた記憶がありますが、今年の夏は冷夏になりそうとも聞きました。結局、平年並みとの予想のようですね。あまり暑いのも困りものですが、でも、やはり夏は夏らしく。太陽さんさん、水遊びが心地よい季節であってほしいですね。四季の国に暮らしている醍醐味を、しっかりと味わいたいものです。

今週の新日本風土記は、寿司がテーマ。バラエティに富んだ、おいしいお寿司が続々と出てきます。番組の予告をご覧になるだけで、お寿司が食べたくなるはず! いわゆる高級なカウンター寿司も憧れですが、日本各地で郷土食にあふれたお寿司が作られています。そこに込められた、素朴で温かな思い。そして、先人たちの知恵と工夫。まさに、私たち日本人のソウルフードです。是非、ご覧下さい!

それに連動して、今週の「もういちど、日本」は魚介類のネタ。えびにまぐろにカキに。こちらも、是非ご覧下さい!

 

投稿時間:10:11 | カテゴリ:事務局便り | 固定リンク


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