2012年10月

2012年10月30日 (火)

終着駅への旅

「終着駅」を担当した小山です。一風変わったテーマの今回の新日本風土記、いかがだったでしょうか。

北は稚内駅から南は枕崎駅まで。取材を重ねるなかで、終着駅という響きに惹かれて訪ねて来る人の多いことに驚きました。いわゆる「鉄っちゃん」がほとんど。でも、鉄道ファンではない私ですが、「たどり着けるところまで行ってみたい」という気持ちはとても共感できるものでした。

番組で紹介できなかった駅も含め、2つの終着駅の旅情報をご紹介します。

◆稚内駅(北海道) JR宗谷本線

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最果てのさみしい駅舎かとおもいきや・・・、今年4月にリニューアルした稚内駅は全面ガラス張りのデザインで、軽食や土産物コーナーを併設。2階には映画館まで設けられています。この駅で降りるほとんどの人は駅前のバスセンターでバスに乗り換え、宗谷岬へ向かいます。時間にして40分ちょっとで到着。ここはまさに日本の最北端。サハリン(樺太)を測量した間宮林蔵の銅像が迎えてくれ、小高い丘からは海の向こうのサハリンを大きく望めます。日本最北端の牧場もあり、夏には宗谷黒牛がのびのびと草を食んでいます。しかし、冬の厳しさに思いを馳せると、近くのレストランで食せるステーキにありがたや~と感謝の念が湧いてきます。「強烈な寒さの中、おいしく育ってくれてありがとう。」みやげ話にぜひお試しを。

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稚内駅のさらに先、北防波堤ドームに存在したかつての終着駅「稚内桟橋駅」は、今はまったく面影がありません。利用されていた頃を知っているのも高齢の方に限られ、歴史の彼方に消えゆこうとしています。副港市場という物産市場に写真展示がありますので、興味のある方は覗いてみてください。鉄道史から紐解く知られざる戦後史です。

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現在、6月から9月にかけて、稚内~サハリン間はフェリーで結ばれています。所要時間は5時間半。撮影時には、サハリンへ向かうフェリーのデッキからロシアの若い男女10人ほどが身を乗り出し、港まで見送りに来ていた日本人の年配者へ涙ぐみながら手を振っていました。北海道内陸の農村へ交流事業で訪れていたようです。ロシア人と日本人、良い出会いがあったんだなぁと心地良い光景でした。

「稚内駅」への行き方:札幌駅から特急でおよそ5時間半。高速バスで6時間弱です。

 

◆仙崎駅(山口) JR山陰本線(仙崎支線)

もう一つの終着駅は、番組で紹介できなかった駅です。

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山口県の日本海側を走るJR山陰本線。長門駅からわずか一区間だけ延びる仙崎支線の終着駅が仙崎駅です。落ち着いた雰囲気の和風木造駅舎。ここは童謡詩人金子みすゞの出身地です。

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ホームから駅舎に入ると、壁一面に描かれたみすゞのモザイク画が迎えてくれます。地元商工会が造ったもので、仙崎特産のかまぼこの板2万枚に「みすゞさんに会いに来ました」など、観光客らによるみすゞへのメッセージが記されています。仙崎駅を訪れる観光客は年間11万人。ほとんどが、新下関駅から仙崎駅を結び、車窓から日本海の雄大な海岸美を望める「みすゞ潮彩号」に乗ってやって来ます。

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駅前商店街には「金子みすゞ記念館」があり、生い立ちからみすゞ直筆の創作ノートなど、貴重な資料が取り揃えられています。みすゞファンは必見です。また、店先やくず入れなど商店街のあちこちにみすゞの詩が書かれています。町の人による手書きの詩を見ていると、仙崎の人がいかにみすゞを大事に思っているかが感じられ、微笑ましくなります。

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街歩きのハイライトは青海島南端にある王子山公園から眺める仙崎の街。みすゞが「龍宮みたいに浮んでる」と歌った光景を、清々しい風に吹かれながら見ていると身も心も爽やかになること間違いなしです。

<「仙崎駅」への行き方>

JR山陰本線「みすゞ潮彩」号           新下関→下関→長門市→仙崎 1往復/日

JR美祢線                                       厚狭→長門市→仙崎

投稿時間:10:51 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


2012年10月23日 (火)

「秋の東北」へ、ようこそ

「東北の秋」を担当した伊勢です。

今回は去年東北を歩き回った私が秋の旅にオススメの場所を3つご紹介したいと思います。

 

まずは番組冒頭にも出てきた青森・「八甲田山」。遠くに岩木山も望むことができ、とても綺麗でした。

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標高の高いところから麓にかけて紅葉がゆっくりと下りてきます。これからは山麓付近が見頃を迎えるかと思います。温泉もオススメです。八甲田の近くですと、奥入瀬や十和田の紅葉もとてもキレイですので、直前の紅葉情報を調べてあの辺りをぐるっと廻ってみるのもいいかもしれません。

 

同じ青森でいいますと、「りんご」。岩木山の麓にはこの時期本当にたくさんのりんごが赤くたわわに実っています。綺麗でもあり、美味しくもあり、一石二鳥です。

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そんなりんご園のなかに、番組でも紹介した常田健さんの常設館があります。とても力強い良い絵なので、是非、直接ご覧になってみて下さい。この時期ですと、まだりんご園には赤い実が下がっているかと思います。

 

続いては青森からずっと南へ下りてきて、福島県下郷町の「大内宿」。栗拾いをしていたミヨ子おばあちゃんが暮らす、かやぶきの里です。

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撮影したのは10月の末で、とても紅葉が綺麗でした。今年の紅葉はまだ詳しくは分かりませんが、下旬頃かな、、、とのことです。運が良ければミヨ子さんにも会えるかもしれません(山に行ってなければ)。

大内宿の秋はこれからです。

このほかにも、秋の東北はまだまだ色んな顔があります。例えば、鮭。去年、山形・遊佐町で鮭漁を撮影していたときも、漁を見学に来られている方もいました。

今回、私がご紹介したのはごく一部ですが、これを機会に足を伸ばして皆さんの目と耳、手と舌で、色んな「東北の秋」を見つけて頂けたら、うれしく思います。

最後に、実は現在「東北の冬」という番組を制作中です。色鮮やかな秋の東北が真っ白に。長い、長い、東北の冬。こちらも是非ご覧ください。

投稿時間:11:06 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


2012年10月16日 (火)

国際通りの商店街

「沖縄 国際通り」を担当しました成清です。
今年、日本への復帰40年を迎えた沖縄の復興の象徴、『奇跡の一マイル』といわれた、通りの物語はいかがでしたでしょうか。

戦前、畑が広がる地域だった場所が、戦後いち早くアメリカ軍から解放されたことで、沖縄のメインストリートに。沖縄の人々が焼け野原からの復興にかけた場所は、沖縄の戦後そのものであると感じながら取材をしました。

私が取材する中で最も印象的だったのは、復興の原動力になった、市場のおばぁたちのエネルギーです。そのエネルギーを感じられる商店街をご紹介します。

国際通りから伸びる商店街の1つ、川を辿っている商店街があるのはご存知ですか?

まず、こちらの写真。

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①【むつみ橋の交差点】

国際通りのほぼ中央に位置し、多くの観光客が行きかうこの交差点、実は下に川が流れているんです。ガーブ川というこの川沿いに、戦後商店が広がって行き、国際通りの発展の原動力になっていきます。

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②【市場本通り】

写真に写っているのは、先ほどの交差点から、川沿いに入った商店街。写真左手に川が流れていますが、今は蓋がされ、水上店舗と呼ばれる商店などがたち並んでいます。戦後、川沿いにミカン箱を並べ、商売を始めた人達がひらいた商店街です。

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③【新天地市場本通り】

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④【太平通り】

 

川沿いを上流に上っていくと、商店街の名前が次々に変わります。また、これは私の個人的な実感ですが、川沿いを上れば上るほど、観光客の数が減り、地元のおじぃやおばぁが、買い物をする姿に出会うことが出来ます。

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⑤【農連市場】

国際通りの交差点から歩いて6,7分で、川の暗渠がなくなり、大きな市場にぶつかります。農連市場というこの市場は、昔の沖縄の市場の面影を多く残していて、80以上のおばぁもたくさん現役で働いています。

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⑥【復帰前の標識の写真】

英語で書かれた「EXCHANGE」の文字。近くにいたおばぁに聞くと、復帰前の標識だとか。市場には今も新鮮な野菜や果物が売られており、買い物もお勧めですが、生き証人のおばぁたちとゆんたく(おしゃべり)をしてみるのも思い出になります。

今や、沖縄観光の一大スポットである通り。少し、見方を変えれば、戦後の沖縄の歩みに出会うことが出来ます。一度は行ったことがあると言う方も、是非今度は違った目線で訪れてみてはいかがでしょうか。

投稿時間:11:12 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


2012年10月09日 (火)

10月の新日本風土記

新日本風土記事務局スタッフです。

衣替えの季節になりました。10月、まだ暑い日もありますが、確実に秋が深まりつつありますね。落ち葉も少し増えてきたような気がします。それと共に、食欲も増してきたような・・・! 飼っている猫も、真夏とは段違いによく食べています。“食欲の秋”は、人間も動物も同じなんですね。

 「新日本風土記」は、今週は沖縄の話題。楽しかった夏を思い出しながら、ぜひ沖縄の熱に身を任せて下さい。舞台は、那覇の国際通り。観光用のお店ばかりと思っている方には、特にご覧頂きたいです。奇跡の1マイルと呼ばれた、沖縄の物語。いろんな発見があるはずです。

 打って変わって来週19日は、「東北の秋」。紅葉に彩られた美しい東北の風景、そしてそこに生きる人々が、静かに描かれています。夏の熱をさまし、心静かに秋の訪れを迎える。少し切なく、でも生きる希望に満ちた物語が綴られます。

 10月も、「新日本風土記」そして「もういちど、日本」をどうぞお楽しみ下さい。

投稿時間:11:08 | カテゴリ:事務局便り | 固定リンク


2012年10月01日 (月)

「日光」を見ずして 結構と言うなかれ

「日光」を担当しました児島です。時代を越えて愛され続ける聖地の物語、楽しんでいただけたでしょうか。

年間600万人が訪れ、修学旅行でもお馴染みの日光。私も小学校6年生で行きましたが、何を見たかほとんど覚えていません。けれども、大人になってから改めて訪ねると、日光の奥深い魅力に初めて気づくことができて、新鮮でした。世界遺産にも登録された社寺建築の美しさ、山々と水に抱かれ四季折々の表情を見せる自然、歴史の歩みや伝統文化の技を今に伝える人々の暮らし・・・。ちょっと足を運んでみれば、様々な出会いと発見がありました。

まずは、男体山。

標高2486メートル。日光のシンボルで、栃木県内からは美しいその姿を遠くからでも観ることができます。

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日光の歴史は、男体山が山岳信仰の聖地とされたときから始まりました。今から1230年前、奈良時代のことです。男体山には、5月5日から10月25日までの間、登ることが出来ます。中禅寺湖畔の二荒山神社中宮祠の奥に登山道があります。森林や岩場を抜けて、およそ3時間半から4時間で頂上の奥宮に到着します。眼下の中禅寺湖や、遥か富士山まで見渡す山々の絶景が楽しめます。8月1日から7日の「男体山登拝祭」の間は、夜間の登山が許されるため、山頂でご来光も見ることができます。

 

そして、旧イタリア大使館別荘。

中禅寺湖畔で平成9年までイタリア大使の別荘として使われていた建物で、現在は公園として一般公開されています。

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昭和3年、アメリカ人建築家の設計による建物は、モダンなデザインですが、地元の杉の皮を壁や内装にふんだんに取り入れ、落ち着いた味わいを演出しています。明治から大正、昭和初期にかけて、日光は外国人たちに愛される避暑地として大きく発展しました。中禅寺湖畔には、各国大使たちの別荘が立ち並び、夏には家族でバカンスに訪れ、ヨットや釣りを楽しんだといいます。建物には、華やかな時代の息吹とそれを受け入れた地元の人々の思い出が刻まれています。

 

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「日光を見ずして 結構と言うなかれ」 とまで讃えられた、日光東照宮。

中でも、国宝の陽明門は500を越える見事な彫刻で飾られています。

 

江戸時代の美の精華を堪能することはもちろんですが、日光には、それ〈以前〉の「山岳信仰の聖地」としての歴史、それ〈以後〉の「外国人に愛された避暑地」としての歴史まで考え合わせると、より味わい深くなると思います。

 

紅葉は、10月初旬に奥日光から始まります。

どうぞ、みなさんも魅惑の日光を訪ねてみてください。

投稿時間:14:09 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


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