"えん歌"を生んだ周防大島
「演歌」の回を担当しました三毛です。
番組をご覧いただいた皆さま、そして取材でお世話になった皆さま、ありがとうございました。列島縦断、演歌漬け。演歌と生きる人々のそのまなざしが、胸に焼き付いています。
今年11月、作詞家・星野哲郎の故郷、山口県周防大島を訪ねました。淡路島、小豆島に次いで、瀬戸内海で3番目に大きな島です。星野は生前、「僕の感性は間違いなくこの美しいふるさとで育った」と語り、作詞家として東京で成功した後も、時間を見つけては度々里帰りしていたといいます。
取材の数週間前、島と本土を結ぶ大島大橋に巨大貨物船が衝突する事故がありました。島の生命線である送水管が破損し、全島で断水という深刻な状況が続いていました。トイレや食事も大変な毎日にも関わらず、島の方々が笑顔で取材に応えてくださった姿が印象に残っています。
島に入り、海沿いの国道をぐんぐん進むこと40分。突然現れたおしゃれな建物。
星野哲郎記念館です。
演、縁、援、艶、宴… 心打つ“えん歌”を世に送り出してきた星野哲郎。館内には、貴重な手書きの原稿や著名人からの手紙が展示されていたり、カラオケスペースがあったりと、演歌を楽しむ工夫が散りばめられています。2019年5月までは、作曲家・船村徹さんを偲ぶ特別展が開催中。昭和の歌謡界を彩ったお二人の素顔が垣間見られるかも?ぜひ足を運んでみてください。
続いて、周防大島の絶景ポイントをご紹介。
嵩山展望台は、大島大橋から車で約30分。瀬戸内海特有の多島美を一望できます。

おすすめは夕景色。
眼前に広がる絹のような海面、刻々と変化する空と海のグラデーションは本当に美しく、まるで天国のようでした。しかし、展望台までの山道はかなり細く急勾配なので、日没後の運転には十分にお気をつけください!
投稿時間:16:44 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク
知るほどに熱かった!商店街の物語
「麻布十番」の回を担当しました「みるくりえいと」の渡辺です。
取材でお世話になった多くの皆さま、そして、番組を見てくださった皆さま
ありがとうございます。
今回は、幾つもの危機を乗り越え、街を守り、街を築いてきた商店街の人々の熱い思いをたくさん取材させていただきました。
番組では紹介しきれませんでしたが…
今、商店が立ち並ぶ石畳の「麻布十番通り」にもかつて大きな危機がありました。
時は戦後の復興期、焼け野原から再出発し希望を取り戻しつつある街に、東京都は幅50メートル近い道路を作る計画を決定しました。でも、道路ができたら商店街はスッポリと覆われてなくなってしまいます。商店街の人たちは猛烈な反対運動を繰り広げ、一度決定した東京都の計画を変えてもらったそうです。商店街のパワー、凄いですね。
もし計画が実現していたら、今、麻布十番商店街はなかったかもしれません。
こうして、商店街の人がひとつになって街を守った―という先代たちの記憶が次世代にも引き継がれ、この街の色を作っているように思いました。
番組の中で「南山ジャズバンド」の小学生たちが演奏していたステージが
「パティオ十番」と呼ばれる楕円の形をした広場で、普段は人々の憩いの場所となっています。
この「パティオ十番」は、商店街が街づくりの一環として1986年(昭和61年)に作ったのですが、もともとは戦後、幅50メートルの道路に反対した際、計画変更に奔走してくれた当時の都の建設局長が「商店街にはコミュニティ広場が必要」と、広場の元となる空間を計画しておいてくれたものでした。
この方、都市計画家の故・石川栄耀氏で、歌舞伎町の命名をした人として知られています。新宿・歌舞伎町の広場もこの方の計画なのだそうです。
そんな憩いの場「パティオ十番」には、高さ60センチ程の「きみちゃん像」が建っていて、毎日この像を見守っている紳士がいらっしゃいました。
「きみちゃん」は、童謡「赤い靴」のモデルになった女の子で、横浜の埠頭から船に乗って異国に渡ったと思われていましたが、結核を患って船には乗っていなかったことが後にわかったのだそう。教会の孤児院に預けられましたが、療養の甲斐なく、1911年(明治27年)わずか9歳でこの世を去っていました。
きみちゃんが6歳から9歳で息を引き取るまでいた孤児院が、麻布十番(旧・永坂町50番地)にあった「永坂孤女院」だったのです。
商店街の人たちが1989年にこの像を完成させると、その日からきみちゃんの足元に小銭が置かれるようになり、チャリティーが始まったのだそう。それから29年、1日たりとも募金が途絶えた事はなく、その総額は1300万円を超える額に。それらは全てユニセフに寄付されているのだとか。
冒頭の紳士が、「今日は、1万円札が入っていたんですよ」と、送金の通帳と共に見せてくれました。
今、足元には小さな募金箱が設置されていて、私たちの撮影中にも小銭を入れていく人がありました。
麻布十番の人たちは、それぞれに、自分の暮らす街を愛していました。
皆さんも麻布十番を訪問する機会がありましたら、そんな人々の思いを感じながら
ブラブラ歩いてみてください。
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