2011年12月20日

2011年12月20日 (火)

幻の「べっぴん」を追って

ふぐを担当した山口局の渡辺です。寒くなって鍋のおいしい季節ですね。

ふぐは非常にチャーミングでその外見も愛でられている魚です。

トゲのあるハリセンボン、おなかの大きいマンボウ、角ばったハコフグ、決して泳ぎは上手くないけれど一生懸命に小さなひれを動かすそのユニークな姿。水族館で見ると、思わず目を奪われてしまいます。


実はふぐにとって「見た目」というのは味の決め手にもなっています。セリ場では触れるのは御法度。生きたまま取引され、弱るのを極端に嫌うからです。そのため、ふぐを買う仲買は姿かたちに優れ、イキがよい「べっぴん」と呼ばれるふぐを長年の経験で見抜き、高値で競り合います。ストレスのないその身はしなやかで飴色に輝き「絹ごし」と表現されます。

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(写真1ふぐを競り合う仲買たち)

今回はその最高級トラフグ「べっぴん」のヒミツを、ふぐ漁発祥の地、粭島(すくもじま)の漁に密着して探りました。伝統の漁法を守って一匹一匹、手作業で釣り上げられるふぐはなるほど美しく、見事です。しかし質の高さを生むのは釣った後の取り扱い方です。島ではふぐを「お姫様を扱うように」扱う習わしがあります。


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(写真2粭島のふぐ「べっぴん」)

それこそ海底から引き上げる時からそおっと静かに、暴れさせないようにし、怒って膨らんでいたらやさしくなでて空気を抜きます。共食いを防ぐために歯を折るのも瞬間的にスマートに行います。折る歯も決まって下の歯。上の歯だと口が腫れるというのです。


そうして釣られる最上級品が「べっぴん」なのです。かつては船が沈むほど釣れたというべっぴんは今や海水温の上昇や、開発による産卵場の減少などで数が激減しています。しかも2000本仕掛けを下ろして10尾釣れれば御の字という漁はいくら高値で取引されるといっても漁業者にとっては過酷なものです。

だからこそべっぴんは本当に価値を持ったふぐです。少ないから価値があるというのではなく、相応の手間暇がかけられているから高価なのです。でも食べるのは意外と簡単です。しっかりした料理屋さんや身欠きの専門店で「天然物」を求めることです。もちろんコースでひとり2万円ぐらいと非常に高価なのですが、原価が高値なためにお店では「天然物」はほとんど儲けが出ないくらいの価格です。

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(写真3天然もののふぐ刺し)

また、オススメは内臓などを取り除いた身欠きです。ふぐ刺しも鍋も自分で調理して材料を用意する必要がありますが、年末年始を過ぎれば2~3人前でおそらく1万円しないぐらいで購入できます。お取り寄せはもちろんですが下関の台所、唐戸市場では毎日数百本のふぐの身欠きをじっくり吟味しながら手頃なお値段で手に入れることができます。

それと、今回のロケで聞いたのですが、白子を持たないことから安くなるメスのほうが、身は繊細でおいしいということでした。そしてその違いは天然物ほど顕著だというのです。これについては非常に微妙な違いなので検証を割愛したのですが、ぜひご自身の舌で雄雌の味の違いを比べてみてはいかがでしょうか。いずれにしても貴重な天然トラフグ「べっぴん」。その魅惑的な味わいを是非ぜひ、味わってみて下さい。

投稿時間:10:33 | カテゴリ:ディレクターおすすめスポット | 固定リンク


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