【Q&A】強迫症の対処法は? 考えたくないのに同じことを考えてしまう。

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夜寝る前にふと、呼吸ってどうやってするんだっけ?と気になり、自分の呼吸の仕方に意識が向きすぎて過呼吸気味になり毎日苦しいです。
考えたくないのに考えてしまうため強迫症を疑っていますが、どうすれば呼吸のことが気にならなくなりますか?(20代 女性)

専門家による回答

「強迫観念」に似たものは、健康な人にも多く見られ、その場合は「侵入思考」と呼ばれます。「侵入思考」は、私たちの頭の中に自分が考えたくなくても勝手に浮かんでくる考えのことです。「強迫観念」と同様に、考えないようにしようとすればするほど、余計に浮かんできてしまう特徴があります。健康な人の「侵入思考」と強迫症の人の「強迫観念」の違いは、頭に浮かんでくる考えをそのまま受け入れて放っておくことができれば、健康な「侵入思考」ですが、放っておけずに何かしてしまおうとすると、つらい「強迫観念」になってしまうということです。

そこで、第一の対処のポイントは、「呼吸ってどうやってするんだっけ?」という考えが浮かんで来たら、そのまま放っておくことです。

そして第二の対処のポイントは、「最悪の場合の物語」を想像する曝露療法です。「呼吸ってどうやってするんだっけ?」という「侵入思考」は、最悪の場合の物語として、「呼吸の仕方がわからなくなって、死んでしまう」という考えとつながっていると思います。「死」は人間にとって最も恐怖を起こす観念(考え)なので、不安な感情が強く高まって、衝動的に、何とか呼吸の仕方を正しく思い出そうとするとか、呼吸を意識して行うなどの行為につながってしまいます。これが強迫症の悪循環です。悪循環に陥らないために、理解していただきたいのは「呼吸の仕方がわからなくなって、死んでしまう」と考えたからといって、本当に死ぬことは現実にはありえないということです。そこで、「呼吸ってどうやってするんだっけ?」という侵入思考が浮かんだら、「呼吸の仕方がわからなくなって、死んでしまう」という「想像曝露」をして、そんなことは実際には起こらないことに気づくことです。

第三の対処のポイントは、「反応妨害法」です。頭の中にふと浮かんでくる「侵入思考」と自分で積極的に頭を使って同じことを繰り返し考える「反芻する」「心配する」行動を区別することです。頭の中で繰り返し考える行動は「メンタルアクト」と呼ばれ、強迫行為、儀式行為です。「侵入思考」が浮かんでくるのは止められませんが「メンタルアクト」は自分でやめることができます。よって、「呼吸ってどうやってするんだっけ?」という考えが浮かんだ後に、そこからまたずっと考えてしまうという行為をやめるように習慣づけしてもらう必要があります。これが「反応妨害法」です。

第四の対処のポイントは、注意を向ける対象の偏りに気づいて、注意をシフトすることです。呼吸のことに意識(注意)が向きすぎている時に、例えば、聴覚の意識(注意)を戸外の音に向けたり、触覚の意識(注意)を毛布のざらざらした肌触りに向けてみます。

以上の四つのポイントを総動員するのが、この場合の認知行動療法です。ただ、あまりにつらくてお困りでしたら、専門家に相談してみてください。

(2021年9月15日(水)、16日(木)放送関連)