2017年11月24日 (金)【みえDE川柳】 お題:温泉

天 美人の湯美人になった顔で出る/久実さん

吉崎先生 「美人の湯一度入ったぐらいでは」、これは15年くらい前、私が詠んだ句。温泉と言えば「美人の湯」、美人の湯を読み込んだ句が、この句を含めて25句もあった。川柳を作る人なら飛び付(つ)きそうな「美人の湯」。美人の湯を詠むなら、他人とはひと味違う「美人の句」を詠まないと入選は覚束(おぼつか)ないだろう。
 この句は、客観的に「美人になった顔で出る」わけではない。あくまで主観的に「美人になった顔」なのだ。いいじゃないですか、本人がそう思っているのなら。

 

地 宿題を間欠泉に急かされる/福村まことさん

吉崎先生 一読すると「はてな?」と思わせる句。理屈では、なぜ間欠泉に急(せ)かされるのか解(わか)らない。しかし、もう一度じっくり味わって読むと何となく解る。作者は、まだ仕上げていない宿題のことが頭の中にあったのですね。間欠泉を眺めていたら、ふとそのことが顕在化した。「こんなことしてていいのか!」と、噴き出たお湯に叱られた。う~ん、と思案していたら、間欠泉だからいっとき置いてまた噴き上がる。その様子を「急かされているように」感じたのだ。理屈より感性で味わう川柳。

 

人 温泉のある支店だと慰める/西井茜雲さん

吉崎先生 これは左遷に遭った同僚を慰めている図。たった17音字で句の背景まで読めてしまう。支社や支店にもいろいろあって、必ずしも左遷とは限らないけど、この句の場合、「温泉のある支店」と言っている。秘湯ではないかも知れないが、温泉はたいてい鄙(ひな)びた過疎地などにある。紛れもなく左遷なのだ。せめて温泉好きの人なら良いのだが…。シンプルで無駄のない技巧が光る。

 

<入選>

寒い日につかりにおいで榊原/かれんだーさん

混浴に水着を着ろと書いてある/あそかさん

温泉に行きたい父と行かぬ母/麦乃さん

効能を読めば効き目が2倍増/ペースかめさん

温泉の効きめにほしい顔のシミ/松ぽっくりさん

万能のお湯も効かない物忘れ/デコやんさん

妙案がひょいと浮かんでくる湯船/よもやま話さん

露天風呂猿と眺めている銀河/ベネガさん

温泉場試食のようにある足場/スランプさん

温泉と違ってすぐに冷めた恋/汐海岬さん

 

吉崎先生 吉崎柳歩先生

 「温泉」は、私たちの生活に密着し、心身ともに癒してくれる存在ですから、川柳のお題にしばしば採用されます。また、日本は温泉大国ですから、各地の温泉地や自治体が主催して「温泉川柳」を公募することも多いです。どのお題でもそうですが、人はみな同じようなことを考えるもの。「温泉」なら尚更(なおさら)です。温泉についての体験や考察から、少しでも他人と違う見方をすること、オリジナリティ(独自性)のある作品を詠むことを心掛けてください。それが「川柳の目」というものです。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50


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