2021年04月21日 (水)"メ"の形に似てるから?神話から? "三重県"の由来とは...
「三重県の“三重”の由来はなに?ぜひ調べてください」
NHK津放送局に視聴者の方からこんな質問が寄せられました。
言われてみると、なんでなんだろう…。
この春、三重県に赴任したばかり、“三重県初心者”の私、菊田一樹が調べてきました。
三重の由来は何?聞いてみた
「三重県の名前の由来ってなんでしょうか」
とりあえず、津放送局の同僚など周りの人に聞いてみると…。
「何かが3つ重なっているからでは?」
「三重県の形がカタカナの『メ』に似ているから、め、めぇ、めえ、みえになったって聞いたことがあるような」
「何かの神話からだった気がするんですが…忘れました」
うーん…なんだかはっきりしません。
三重県に赴任しているのに、県名の由来も知らずに、やれ「取材は丁寧に」だとか「地元のことを知り尽くせ」などと言っている人のなんと多いことか…。
よし、ここはやはりちゃんと専門家に聞いてみることにしましょう。
あの神話の人物が!
三重県の歴史ならなんでもわかるはず。そう思い、三重県総合博物館を訪ねました。
対応してくれたのは三重の歴史を25年以上にわたって研究している藤谷彰さん。
さっそく“三重”の由来について聞いてみると…。
「実はヤマトタケルという伝説上の人物が関係しているんです」
ヤマトタケル!意外な答えが返ってきました。
ヤマトタケルとは
『古事記』や『日本書紀』に登場するヤマトタケル。
市川猿之助さん演じる「スーパー歌舞伎」などでご覧になったことがあるという方もいらっしゃるかもしれません。
ヤマトタケルは武勇に優れ、各地の平定に出向きました。
しかし、東国を征伐した帰りに、今の三重県のあたりで病死。
魂は白鳥になって飛び立ったと伝えられています。
実際、県内には亀山市の「能褒野王塚古墳」や鈴鹿市の「白鳥塚古墳」といったヤマトタケルの墓と伝えられる場所など、ゆかりの地が点在しているといいます。
ヤマトタケルのあしが“三重”に
では、三重という名前とはどう関係があるのでしょうか。
『古事記』にある以下の記述が関係していると言います。
「わが足は三重の勾(まがり)の如くして 甚(いと)疲れたり」
「ヤマトタケルが今の三重県にあたる“伊勢国”を通って帰っていく途中で、『自分のあしが三重(さんじゅう)に折れ曲がるようになり、苦しい思いをした』という意味ですね。この記述から三重(みえ)という地名が生まれたのではないかと言われています」(藤谷さん)
ゆかりの地を訪ねて
あしが三重に折れ曲がった様に…。
なんだかとんでもないことになっていそうですが、その由来となった場所が県内に残っていると聞き、実際に訪ねてみました。
四日市市采女町にある杖衝坂です。
戦いで負傷したヤマトタケルが、剣をつえの代わりにしてのぼったことでその名がついたとされています。
実際に歩いてみるとかなり急。
脚が三重に曲がる、というのも大げさではないなと実感できました。
この記述を元に、いまの県北部のあたりが「三重郡」と呼ばれるようになったとされています。
え!県庁所在地が四日市に?
三重郡…三重県とは違うのでしょうか。
実は、県名にまで三重が使われるようになるまでには、少し別の経緯があると藤谷さんはいいます。
「廃藩置県のあった明治時代に県の名前をつけるにあたって、当時の政府は県庁所在地のある場所の名称を原則的に取るとしたんです。実は三重県の場合、一時、三重郡の四日市に県庁所在地を置いた時期があったので、県名にも『三重』という名前が使われることになったんですね」(藤谷さん)
今の三重県ができるまで
地図を使って詳しく見てみます。
明治4年、今の三重県内には、安濃津県や度会県がありました。
明治5年になって安濃津県の県庁が、津から三重郡の四日市に移された際に、「県名は県庁所在地の場所に」の原則を元に、県名を三重県に改称。
三重県と度会県の2つになります。
さらに明治9年、三重県と度会県が一緒になったことで、いまの三重県ができたというのです。
神話と近代…そして県名へ
ということで、結論です。
「三重県の“三重”の由来は、ヤマトタケルの伝説からきているとされている。ただし、県名に採用されたのは当時の県庁所在地が三重郡にあったから」
でした!
自分が住んでいる県の名前が、古くから伝わる神話とつながっているとわかるとなんだか誇らしい、うれしい気持ちにもありますね。
さて、今回、寄せられた質問は、皆さんからの疑問やご意見を元に、NHK津放送局が取材を進める「まるみえニュースポスト」にお寄せいただいたものです。
日々の生活の中で感じた疑問、あのニュースのここを深掘りしてほしいなど、どんなことでもいいので、投稿をお待ちしています。
アクセスはNHK津放送局や「まるっと!みえ」のホームページから可能です。
私、菊田や、記者たちが取材して、放送や記事につなげます!