【みえDE川柳】 お題:萌える
春の芽を食べて私も春になる/アラレさん
「私も春になる」が良い。春の芽といえば、タラの芽、フキノトウ、ウド、ワラビ、いろいろあろうが、定番はやはり天ぷらか? 「春の芽を食べて」のオープニング(出だし)も季節感いっぱいで良いが、「私も春になる」の結語の意外性が秀逸。「春」のリフレイン(繰り返し)も効果的。「私も春になる」とは、春を満喫してハッピーになるということだろう。文句の付け所(どころ)のない川柳。ハッピーな川柳。
雑草も萌えるアスファルトの隙間/颯爽さん
人間が張り切っているときには、「燃える」と書く。春が来て草木が新芽を伸ばそうと張り切っているときには「萌える」という漢字でかく。草冠に明るいと書く。中でも、名もない(あるのだけれど)雑草は逞(たくま)しい。石垣の隙間はもちろん、アスファルトで完全に覆われていても、いつの間にか生えてくる。隙間を見つけて生えてくるのではなく、弱いところを見つけて生えてくるのだろう。この句は、雑草の不撓不屈(ふとうふくつ)の精神を見習おうと言っているのか、そのパワーに呆(あき)れているのか?
草萌えてやさしい牛の眼に出会う/あそかさん
牧場の風景だろうか? シンプルで解(わか)りやすい句。気負ったところもなく、有ったことをそのまま川柳にしているように思える。それでいて風景が見える。作者が出会った風景が読者にもストレートに伝わる。風景が見える川柳は良い川柳である。長閑(のどやか)な春の牧場、牛だって牛舎で食べる牧草より牧場に生えている草を食べるほうが美味(おい)しいに違いない。近寄っていくと牛と目が合った。やさしい目をしていた。牛だって人だって、美味しいものを食べているときは、目が笑っているものだ。
<入選>
つくしんぼオマエも萌えているんだね/素人さん
萌えかけた芽に突然の五月病/ワン吉さん
萌えるのを許してくれぬ除草剤/十六夜さん
虫が付く若葉の頃もあったのに/安田 蝸牛さん
息づかいまで聞こえそう木の芽時/かぐや姫さん
若草に萌えてランチも新メニュー/スイッチさん
スポットを当ててよ発芽しています/橙葉(とうよう)さん
萌えるまで綺麗な水をやっている/まゆゆさん
人知れず萌える日もある水中花/福村まことさん
千年の森衰えぬ芽が萌える/金子鋭一さん
吉崎柳歩先生
みえDE川柳の放送が始まってから5年目に入りますが、今回のお題「萌える」は、これまでで最もむずかしい題だったかも知れません。人間味よりも、自然や季節感といった俳味の強い題でしたから、作りにくかったと思われます。その中で、今回の入選13句は、どれも上手に「にんげんの思い」が詠み込んであります。擬人法(物を人に見立てる)や擬物法(人間を物に見立てる)が有効でした。