WEB特集

2021年10月27日 (水)すべすべ!投票用紙の"秘密"を探る

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選挙で使う投票用紙って、触るとなんだかすべすべして気持ちいいですよね。それになんだか字を書きやすい気も。いったいどんな素材なの?調べてみると、投票用紙に隠れたさまざまな秘密がわかってきました。

(津放送局 中野七海 記者)

 

“投票用紙の疑問”調べます

 

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「投票用紙は手触りがさらさらでとても書きやすいです。何が素材に使われているんでしょうか。やはりお高いのでしょうか」(津市在住 山田さん)

 

そんなメッセージがNHK津放送局の投稿フォーム「まるみえニュースポスト」に届きました。なんとなく気にはなっていたけれど、そういわれるとなぜあの手触りなの?なんだかいろいろな秘密が投票用紙にはありそうです。三重県選挙管理委員会で聞いてみることにしました。

 

色の組み合わせが毎回違う!

 

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対応してくれたのは、橋本哲也書記長補佐です。

 

まず橋本さんが話したのは、国政選挙の投票用紙の色。実は、他の選挙のものを誤って使わないようにするため、毎回色の組みあわせが変わっていると言います。

 

「小選挙区や比例代表で色が違うなぁ」くらいの認識はありましたが、毎回色の組み合わせが変わっているとは。全く気付きませんでした。

 

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10月31日に投開票の衆議院選挙では、水色(あさぎ色)が小選挙区、ピンク色が比例代表、緑色(うぐいす色)が国民審査と区別されています。実際に投票に行くときは、ちょっと気にしてみて下さい。

 

スムーズに書ける秘密は表面に

 

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そして、普通の紙とはちょっと異なる質感という投票用紙の表面。その場で同じ材質の紙に書かせてもらいました。鉛筆でスムーズに書けて気持ちいい感じ。

 

開発・製造しているユポ・コーポレーションによると、投票用紙の表面は人の手には感じられないほどの細かい凸凹があるといいます。そのため、強く力を入れなくても鉛筆の粒子が引っかかりやすく、スムーズに書けるというのです。お年寄りなどでも、安心して書くことができる、というわけです。

 

自然と開く投票用紙

 

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名前などを書いた後、投票箱に入れるときは、半分に折るという人も多いと思います。箱に入ったあとの投票用紙は、中で自然に開いているんです。この点について橋本さんに聞くと。

 

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「投票箱の中で開いていると、開票作業の時に確認が早くできるんです。そのため、開票の結果をすばやく提供できることにつながるんです」

 

その秘密は原料にあります。一般的な紙に使われるパルプとは違って、ポリプロピレンという樹脂を使って製造されています。そのため、折っても元に戻りやすい特徴があるといいます。

 

投票用紙に込められた思い

 

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この紙を卸している業者によると、値段は一般的なコピー用紙と比べて20倍以上とちょっと高めとのこと。今回の衆議院選挙で三重県内で用意された投票用紙は合わせて463万7400枚。ちゃんと有権者全員分が用意されています。

 

「候補者の名前ははっきり書いてください。そしてみなさんの持っている一票を投じてください」(橋本さん)

 

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1枚1枚に「少しでも書きやすく」という思いが込められていると思って、皆さんも投票に行ってみてください。

 

まるみえニュースポストでは、今回のように取材して欲しい身の回りの問題や、ふだん何気なく気になっていることなど、なんでも募集中です。投稿をお待ちしています。

 

 

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中野七海 2021年入局

好きな三重弁は「かえるのかんぴんたん」

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:17:00 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年10月21日 (木)鍵は家族の絆!"特別防犯対策監"杉良太郎さんが語る

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俳優の杉良太郎さん、杉さんの妻で演歌歌手の伍代夏子さん、それにEXILEの松本利夫さん。実は3人は、全国各地で特殊詐欺の被害防止の啓発活動を行っています。

 

NHK津放送局では3人が三重県警察本部を訪れた際に単独インタビュー。杉さんによると被害を防ぐ鍵は“家族の絆”にあるといいますが…。インタビューのほぼ全文を公開します。

 

(聞き手:津放送局 周防則志 記者)

 

被害を防ぐポイントは3つ! 

 

記者)
特殊詐欺の被害を防ぐポイントはどこにありますか?

 

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松本さん)
特殊詐欺にはいろいろありますが、全てにおいて「お金の話が出たらまずは疑え」というのが1つポイントだと思います。オレオレ詐欺、還付金詐欺、クレジットカードの暗証番号を聞かれたりもそうです。お金の話が出た時点でまず疑うこと、そのあとに人に相談をするのがポイントです。

 

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杉さん)
声に出す(会話をする)ことです。年をとると、なかなかしゃべりなれない。家族としゃべる機会もない。朝から誰ともしゃべっていないと隙をつかれる可能性がある。話し相手になって喜んでしまう可能性もある。みんなと話す、怖がらないで声に出していくことでしょうね。

 

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伍代さん)
「絶対に私は大丈夫です」とみんなおっしゃるんですよ。「誰と話をしたって大丈夫、だまされないから。息子の声ぐらいわかるし」っておっしゃるんですけど、それでも被害が後を絶たない。

 

だから、犯人と思われる人や知らない人と話さないことが1番です。電話に出ないのは、本当に皆さん勇気がいるみたいなんですね。ずっと電話が鳴っているのに出ないのはもしかして知っている人かも、急用かもと思って、ドキドキするみたいなんですね。でも犯人の巧みな話術に絶対にひっかかってしまうので、知らない人からの電話は切る。もしくは留守電にするとかをおすすめします。


詐欺電話かかってきた経験ありの人も多い?

 

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記者)
活動には多くの芸能人の皆さんが携わっていますね。

 

杉さん)
芸能界の中の有志が集まって、皆さんの力を借りると発信力も違いますので、説得力を持ってやっていくためには、こういった社会活動に対して相当理解していただいている事務所とかご本人にお願いをして、一致協力しながらやっています。

 

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アイドルの方は、若い人たち、子どもたちのところにメッセージを送って、「お父さんお母さんおじいちゃんおばあちゃんに、家に帰ったらこう言ってね」と言ったり、年配の我々は、老人ホームや高齢者のところへ行ってお願いをしたりしています。

 

警察だけではなかなか届きにくいことも多いですから、防犯協会とか町内会長さんとか、地域の人の力を得てやっています。成功している地域ではやはり話し合いがある。みんながいろんなことを言い合う。それが犯罪阻止につながっているかなと。

 

記者)
これまでの活動の中で印象に残っていることはなんでしょうか?

 

伍代さん)
(啓発イベントに)お集まりいただく皆さんは高齢の方が多いんですけれども、そこで必ず聞くんです。「詐欺の電話がかかってきたことありますか?」って。そうすると結構手が上がるんです。びっくりして「だまされたんですか?」と聞くと、だまされちゃった人もたまにその会場の中で1人いるかいないかの割合いる。

 

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中には「相手と会話をしている。6時くらいにかかってくるんだよ毎日」と言って、楽しみに待っちゃっている男性が1人いたんですよ。「ダメですよそんなの。それを誰かに言いましたか?」と聞くと、「今初めて言いました。警察にも言っていません、家族にも言っていません、誰にも言っていません。だけど、向こうがだまそうと一生懸命になっているところが面白い」って言う人もいたんです。それがものすごく印象的だったんです。


「ご近所にも知らせた方がいいです。そうやって言ってくださいね。気をつけましょうね、地域でみんなが注意しましょうね」って言ってその時は終わったんですけど、やはり電話はかなり無作為にあちこちにかけているんだなと、これだけたくさんの人が電話を受けたことがあるんだなと思って。


新型コロナウイルスの影響も…

 

記者)
コロナ禍で啓発活動の制限もあったと思います。

 

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松本)
やはりこうやって現場に来て自分たちのメッセージを直接伝える場がなかなかなかったですね。コロナが少しでも収束して、自分たちもメッセージを強く伝えていくことが1番の望みです。この先もまだコロナがどうなるか分からないですが、詐欺自体は多発している中で、少しでも1人でも救われるよう、今後も頑張っていきたいです。

 

記者)
新型コロナの影響は被害に遭う側にも何かありますでしょうか。

 

伍代さん)
「おうち時間」が多くて、電話に出てしまうんですよね。それで丸めこまれてしまう。お家にいる時間が長い方への対策は、とにかく留守番電話とか警告が流れる電話に変えていただくか、犯人と話さないでいただきたいなと思います。

 

“家族の絆”が薄れる中で

 

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周防)
そこで“家族の絆”が大切になるという活動をされていますよね。

 

杉さん)
私がこの職に就く時の話し合いの中心になったのが「家族の絆」なんです。家族団らん、家族が集まって食事をしたり、話をしたりする機会がなくなってきているんじゃないかと。

 

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「家族の絆」が希薄になってきている、そして高齢者が増えておひとり住まいも増えてきた。そこにつけ込んだのが特殊詐欺です。お年寄りは1人で自分を守れないという、計算されつくした犯罪じゃないかなと思っています。

 

記者)
家族の間では、日ごろどんなことを気をつけていればいいのでしょうか?

 

松本さん)
日ごろからコミュニケーションを取ることです。先ほど杉さんもおっしゃっていましたが、声に出して会話する。ほかにも電話するとか、今ではメールやLINEなどあるので、とにかく連絡を取り合うという環境作りがとても大切です。

 

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若い人も両親から相談されやすい雰囲気、環境作りをする。コミュニケーションをとることで、詐欺のグループに犯罪を起こしづらい状況をこちらで作っておくのが大切なんじゃないかなと。日ごろから心構えを持っておくことです。

 

犯人をあらゆる点で追い詰める!

 

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記者)
特殊詐欺の加害者に対して言いたいことはありますか。

 

杉さん)
警察庁でも、あらゆる点で追い詰めようと、とにかくてっぺんを取りに行くということで、壊滅作戦を今やっているところです。


突っ込んで言えば、詐欺罪というのはちょっと軽いと僕は思っているんです。軽いから安易にやってしまうとか、適当にやればこれだけの利益になるとか、アルバイト料の何十倍、何百倍ともらえるみたいな、そういったことはもう許さない。安易にこういったところに手を染めちゃいけない。

 

記者)
これほど情熱をもって進めている杉さんの活動の原動力はどこにあるんでしょうか?

 

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杉さん)
わからないです。質問されると昔は「お母さんの影響がありました」とかなんかいろんなことを言ってたんですけど、近頃はわからないですね。ただやってるんですよ。一生懸命やるとかいろいろ考えてないんです。

 

まぁそういった性格なんじゃないですかね。今の仕事、9割は法務省と厚生労働省と警察庁です。ちょっと前までは外務省があった。今ほとんど、芸能界は離れているかな。

 

“家族の支え合い”“電話でお金の話は不自然”

 

記者)
今後はさらにどのような活動をしていこうと考えていますか?

 

杉さん)
根本的にやらなきゃいけないのは、家族の支えあいがないと、思いやりがないと防げないということ。人の弱いところ、寂しいとかそういった隙間を狙ってくるのは、非常に悪質だと思っているので、電話、それからご本人たちの「家族の絆」です。

 

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また金融機関などで、できたら暗証番号だけではなく、顔認証とか指紋認証を加えて欲しいなと思っているんです。なかなか一足飛びにはできませんが。

 

今、各県の警察からいろいろな要請があります。地域によって文化や習慣が違いますので、土地に根付いたようなところをまたさらに頑張っていきたいなと思います。

 

記者)
最後に県民の皆さんにメッセージをお願いします。

 

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松本さん)
やはり家族間のコミュニケーション、連絡が取れる状況を常に心がけることが、本当に詐欺を撃退するのには一番いいのかなと思っています。日ごろから、家族間で合言葉なども決めながらコミュニケーションをとっておく。そして常に1人1人が自覚をもっておけば詐欺にあわないんじゃないかと思いますので、「家族の絆」を心がけていただきたいなと思います。

 

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伍代さん)
とにかく知らない人に現金を渡さない、キャッシュカードも渡さない、そしてATMにもいかない、これを心がけていただきたいと思います。

 

杉さん)
本当にこれだけ覚えておいて欲しいのは、「電話でお金の話が出るのは絶対不自然」ということです。

 

「俺だ俺だ!」と言われても、「俺って誰?」って一言聞いてほしいなとは思いますね。「俺だ俺だ!」と言われて、自分の方から「なになにちゃん?」って子どもの名前を言っちゃったりなんかするのは特に良くないですから。それだけ気をつけるだけでも全然変わるんですよね。

 

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「知らない人からの電話は詐欺ですよ、お金の話が出たら詐欺ですよ」というステッカーが貼ってあるのにだまされちゃうこともある。最初は詐欺かな、と思うけれど、「多分詐欺じゃないかな」と思ってだまされていくっていうケースもあるので、お金の話が出たら切ってください、そして電話があったということを警察に連絡してください。

 

 

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周防則志 2020年入局 

“地域の課題を解決する”報道を目指している

 

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:12:30 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年10月04日 (月)"コロナきっかけ"AKB48と高校生がMVでコラボ!

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人気アイドルグループ「AKB48」のニューシングル『根も葉もRumor』。このミュージックビデオで、メンバーと共演しているのが、“ダンス強豪校”三重高校ダンス部の部員たちです。


出演のきっかけは、なんと新型コロナウイルスの感染拡大にあったといいます。“奇跡のコラボ”を果たした理由とは?共演した部員の思いに迫ります。


(津放送局 村木麻衣ディレクター)

 

本当なん?奇跡のコラボ

 

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「自分たちがAKB48さんとコラボするっていうのが普通ではありえない貴重なこと。いろいろな人から『すごいな!』とか『本当なん?』と驚かれました」

 

そう語るのは三重県松阪市にある三重高校の3年生でダンス部のキャプテンを務める柳瀬綺心(あやみ)さんです。

 

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三重高校ダンス部『SERIOUS FLAVOR』は全国大会で準優勝したこともある強豪。今回、部内からオーディションで選ばれた80人がAKB48のニューシングル『根も葉もRumor』のミュージックビデオに出演しました。

 

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激しい動きが特徴のロックダンスですが、なかでも圧巻なのがサビの部分で披露される『ウィッチウェイ』。両足を交互に上げる動きが特徴で、人数も相まって見た人に圧倒的な印象を残します。


コロナ禍に「今できることを!」

 

コラボのきっかけは、ある1本の動画でした。

 

去年、新型コロナウイルスの影響でなかなか集まることができずにいた部員たち。そうした中でも、顧問の神田橋純さんがオンラインで指導を続けるなど、新しい形での部活動を模索していました。

 

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「今できることをやろう!」

 

そう考えた部員たちは、それぞれの自宅でダンスを撮影し、それを1つにまとめて編集した動画をユーチューブで公開しました。

 

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キレのあるダンスに加え、トランプをしたりジャグリングをしたり、お気に入りのぬいぐるみが登場することも。部員ひとりひとりの個性が詰まったダンス動画は、ネット上であっという間に話題となりました。

 

まさかの秋元康さんからのオファー

 

この動画が音楽プロデューサーの秋元康さんの目に留まり、神田橋さんの元に連絡がありました。

 

「部員のほとんどが部活動で初めてダンスをやりだしたという点を評価してもらったみたいです。『初心者にダンスを教えるのが得意な先生がいると聞いたけれど、AKB48の子たちにもダンスを教えてくれないか』って連絡があって」

 

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まさかの依頼に最初は驚きを隠せなかったという神田橋さん。「根も葉もRumor」の振り付けを考えて、さらにAKB48へのダンス指導を担当することになりました。


そして、部員たちもミュージックビデオに出演することになりました。

 

練習期間はわずか1か月…

 

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振り付けが完成したのは6月でしたが、撮影は7月に決まっていたので、練習期間はわずか1か月。コロナ禍での活動制限や、夏の全国大会の練習などで、1日に確保できる時間は30分程度しかありませんでした。

 

それでも部員たちは部活以外の空いた時間に自主的に練習に励み、あっという間にマスターしていったといいます。

 

「テンポが速いので、それに振りを合わせていくのが大変でした。そして何より、何十人と大勢で踊るので、振りを合わせるのも難しかったですね」(柳瀬さん) 

 

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そして迎えた撮影当日。静岡県伊東市の学校に、AKB48のメンバーと、部員80人が集まりました。

 

分からないことだらけで緊張するときもあったものの、いざ撮影が始まってみると、自然と体が動いていったという部員たち。AKB48のメンバーのミュージックビデオへの熱意に、「自分たちも頑張ろう!」とやる気が出てきたと話します。

 

コロナを越えた先に…“プロから学んだこと”

 

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「コロナ禍で色々できないことがあって悔しい思いをしました。でも、辛いときでもそれに負けずに『自分たちができること』を考えながらやってきたことで、前より強くなったと思っています。それを活かして出演したミュージックビデオなので、地域の人にも全国の人にも、自分たちのダンスを見て元気になってもらいたいです」

 

そう力強く語った柳瀬さん。AKB48という“プロのアイドル”の魅せるダンスを間近で見て、一緒に踊ったことが、彼女たちを大きく成長させたことがうかがえました。

 

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来年3月には自主公演も予定。コロナ禍の“奇跡のコラボ”の経験を糧に、前を向いて活動を続けます。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:13:00 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年09月29日 (水)自民党総裁選「浮遊する党員票はどこへ」

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自民党総裁選挙が混戦の様相を呈している。激しさを増す票の争奪戦。中でも、国民に近い目線で結果が現れる「党員票」は議員票と同数の382票。その行方に注目が集まっている。それは、ここ三重県でも変わらない。

 

三重県において、ここ数回の党員投票で最も多くの党員票を集めてきたのは石破元幹事長だ。しかし今回、石破氏が立候補しないことで、これらの票が「浮遊する」と言われている。1万3000人を数える県内の自民党員らは、いま何を考え投票先を決めるのか。NHK津放送局の若手記者が総力を挙げて取材した。

(NHK津放送局 総裁選取材班)

 

 

三重県は“石破県”!?

 

「三重県は“石破県”だからね」(自民党三重県連幹部)そう言われるほど、三重県では過去の自民党総裁選で石破元幹事長が多くの票を獲得してきた。予備選挙を含め石破氏が立候補した平成24年、平成30年、令和2年の総裁選の党員投票ではいずれも石破氏が最多の票を獲得。去年(令和2年)行われ「菅の圧勝」と言われた総裁選でも、三重県では石破氏がおよそ8500票のうち4200票あまり、50%近くの得票率でしのぎを削った菅氏と岸田氏を圧倒している。

 

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「田村さんにお願いされたら…」

 

なぜ、石破氏はそれほど三重県で党員票を集めることができたのか。それは自民党の派閥「石破派」に所属する田村憲久厚生労働大臣の存在を抜きには語れない。松阪市などを地盤とし、平成8年、区割りが見直される前の三重4区で立候補して初当選を果たした。以来当選8回を重ねる、言わずと知れた重鎮だ。

 

「総裁選になると『思想は違うかもしれないが良かったら石破に入れてくれ』って田村さんから丁寧な電話がかかってくる。それで総裁選が終わって石破さんが負けてもまたお礼の電話がかかってくる。『私の力不足で・・・』と」とある県議が明かしてくれたエピソードからは、田村氏の気配りがかいま見える。その電話は県議にとどまらず市議や一般の党員にまでかかってくるという。

 

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津市に住む林田さん(仮名)は、自民党員歴がおよそ60年になるベテラン党員だ。田村の伯父の田村元・元衆議院議長の頃から自民党を支持している生粋の「自民党ファン」だが過去の党員投票では政策を聞いて投票先を決めてきた。郵政民営化に期待をかけて小泉純一郎元総理大臣に投票したこともある。しかし石破氏が立候補するようになってからは必ず石破氏に投票してきたという。記者に語った言葉が象徴的だ。


「政策を聞いて決めるけど、田村さんからお願いされたら別の人に投票するわけにはいかないよ――」

 

 浮遊する“石破票”“党員票”はどこへ

 

三重県では党員投票で連戦連勝の強さを誇ってきた石破氏だが、総裁選告示日を目前に控えた9月15日事態が動く。石破氏は、国会で記者会見し立候補を見送る考えを明らかにした。すでに立候補を表明していた河野規制改革担当大臣の支援を表明する一方、石破派としては「政策集団としてそれぞれの行動を拘束することはしない」とした。

 

一方の三重県津市。石破氏の会見とほぼ時を同じくして、自民党三重県連では幹部らを集めた役員会が行われていた。非公開で行われた役員会のあと会議に出席した県連幹部は「役員会で総裁選の方針は議論されなかった」とした上で次のように明かしてくれた。


「県連として総裁選の支持を一本化することはしない。県連幹部が支持候補を表明することもない。事実上の『自主投票』ということだ」

 

その2日後、総裁選は告示日を迎えた。三重県内の投票権を持つ党員党友はあわせて1万3175人。この1万3175票をめぐり争奪戦の火蓋がいよいよ切って落とされた。

 

ある県議は、石破氏が立候補しないことで“石破票”がどこに行くかが焦点になるとした上で「これまでは『議員に言われたからその人に投票する』という人が多かったと思うけど、たぶん自分の考えに従って投票する人が増えるんじゃないかな。今、三重県連はふわふわしている。誰が票をとるかまだわからない」とつぶやいた。

 

「ふわふわしている」というのは三重県選出の自民党議員をめぐる事情にも起因している。事情というのは当選12回を数える川崎二郎氏、それに当選6回の三ッ矢憲生氏、三重県連を支えてきたベテラン国会議員の2人がことしになって相次いで政界引退を明らかにしたこと。川崎氏は総裁選に立候補した野田幹事長代行の推薦人に名を連ね、三ッ矢氏は同じく立候補した岸田前政務調査会長の派閥の中心人物であるが、両氏の引退を踏まえ「これまでより票のグリップは効かなくなる」と予想する関係者も少なくない。三重県連が“ふわふわ”するのに伴って、県内の党員票も“ふわふわ”と浮遊する。

 


党員は、いま、何を思う

 

自民党の党員は党費を払っている。その額一般党員で年間4000円。高いと見るか安いと見るかはさておき、この党費を納めるなど一定の条件を満たせば総裁選で投票する権利を得ることができる。「一国の総理大臣を選ぶことが出来る総裁選に参加できることが党員であることの最大の恩恵」とすら言う人がいるほど党員にとって重みのある権利だと言える。

 

党員はその権利をどう行使するのか。

 

鳥羽市の離島の住民は我々の取材に対し「地方を何とかして欲しい。緊急事態宣言で田舎は経済が本当に厳しいことになっている」と苦しい胸の内を明かした。79歳の元会社員は「汗水垂らして働く人が報われる日本にしてくれる人を選びたい」と後世を慮った。スーパーの経営者は「自民党を変えてほしい」と訴えた。パン屋を営む男性は「自民党は体質が古い」と語気を強めた。育休中の母親は「身の回りの問題に目を向けられる人に投票する」と明かした。薬剤師の男性は今の自民党を「年寄りが子どものケンカをしているようだ」とくさした。旅館の経営者は「予約が全く入らない。コロナ対策なんて誰がやっても同じでしょ」と吐き捨てた。

 

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いずれも総裁選で投票権を持つ自民党員だ。そしてその多くが記者に対し「投票先は自分で考えて決める」と明言した。

 

 

公明党は

 

自民党以外の政党は総裁選をどう見ているか。

自民党と連立政権を組む公明党。県本部の幹事長を務める今井智広県議は「今後の国のリーダーを決める選挙であり、新型コロナウイルス対策も議論されている。総裁選での議論が、今後の国の政策にも反映されるため、しっかりやってほしい」と期待する。

 


野党側「自民党総裁選で国政は停滞」


一方、野党側は新型コロナ対策やポストコロナの経済対策を国会で議論せず総裁選に明け暮れる自民党に批判を強めている。

 

立憲民主党の県連幹事長を務める三谷哲央県議は「あくまで総裁選は他党の話でありとやかく言うことではない」とした上で、「コロナ対策など喫緊の課題がある中で国政が停滞しているのは事実だ。国民は冷ややかな目で見ていると思う」と指摘する。

 

また国民民主党の県連幹事長を務める加納康樹四日市市議は「自民党への注目を集められるよううまくやっている。そこに国民は不在だがある意味あっぱれだ」と皮肉った。

 

共産党三重県委員会の大嶽隆司委員長は誰が総裁に選ばれたとしても自民党の体質は変わらないと突き放す。「総裁選に立候補した4人はいずれも安倍政権や菅政権の現役閣僚や閣僚経験者、党の要職に就いてきた人ばかりだが、これまでの政治に対する反省の弁が一切聞かれない。これまでの政治に対する反省が無ければ新しい政治は生まれない」と批判する。

 

 

総裁選の裏で進む“野党連携”


こうした中、衆議院議員選挙に向けて立憲民主党を中心に主要野党が画策するのが野党間における連携の強化だ。中でも野党系の候補が乱立して与党への批判票が分散することを防ぐ「野党候補の一本化」は実現すれば与党候補への脅威となるが、擁立を見送らなければならない政党も出てくるため、各野党の本部レベルで調整が進められている。

 

立憲民主党、共産党、社民党、れいわ新選組は、9月に新型コロナウイルス対策の強化や消費税の減税などを盛り込んだ衆議院選挙の共通政策を市民グループと締結。小選挙区での候補者の一本化など選挙協力の調整を加速させる方針だ。


三重県でも4つの小選挙区のうち1区から3区の3つで候補の一本化が進められていて、今後、どれだけ共闘態勢を組めるかも一つの焦点となる。

 

野党側には自民党総裁選が注目を集めることで野党が埋没し、衆院選で自民党への追い風が吹くことへの危機感を抱く向きがある一方「コロナ対策より総裁選を優先する自民党の姿は批判材料になる」という見方もある。多くの関係者が総裁選の情勢や結果を注視している。

 

 

投開票日は9月29日

 

9月18日からの3連休が明けた21日。複数の自民党の県議や市議が「連休中にあの人(県内選出国会議員)から直接電話があったよ」と教えてくれた。水面下で繰り広げられる“争奪戦”の全容は到底見渡せないが、投票の締め切りが近づくにつれ浮遊する票の奪い合いが激しさを増していることは間違いなさそうだ。

 

三重県の党員党友の意思がどの候補に向かうのか。注目の総裁選の投開票は9月29日に行われる。

 

 

(9月29日更新)


総裁選の勝者は岸田氏

 

 

9月29日、「最後の最後まで誰が勝者になるかわからない」との声もあがった自民党総裁選挙が終わった。決選投票の末、新たな総裁に選出されたのは、岸田前政務調査会長。菅総理大臣の後を継ぎ、これから日本のかじ取りを担うことになる。

 


三重県の党員・党友は誰を総裁にふさわしいと選んだのか。29日午前9時半、津市の自民党三重県連で始められた開票作業は1時間あまりで終わり、午後、結果が発表された。

 

 

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県内で最も多くの党員票を得たのは、河野規制改革担当大臣。その得票率は4割を超えた。複数の関係者によるとこれまで石破氏の支援に回っていた田村氏が、今回の選挙戦で河野氏の支援に回ったという。この結果に、県内の関係者からは「河野氏個人の人気と田村氏の強力なバックアップの力が大きい」という声が聞こえてくる。一方「意外にとった」とささやかれるのが新総裁に選出された岸田氏だ。去年の予備投票では、菅総理大臣と石破氏の後じんを拝す1630票だったが、今回票数にしておよそ1300票を上積みした。岸田派に所属する三ッ矢氏の力もさることながら、ある自民党三重県連の幹部は「この総裁選で岸田さんははっきりものを言うように変わった。印象の変化が期待感に繋がったのではないか」と指摘する。その上で「総裁選がこれだけ注目されれば、次の総選挙で自民党への追い風になるだろう」と期待を寄せる。

 


一方、同じ日に記者団の取材に応じた立憲民主党三重県連の顧問を務める岡田克也氏は「議論ができる国会にしてほしい。本会議の代表質問だけではなく、予算委員会を開いて具体性のある議論をするべきだ」と岸田氏に注文を付けた上で、次の衆議院選挙について「政策論争の中身が問われる選挙になるだろう」と指摘した。

 

 
注目された自民党総裁選挙が終わり、県内の関係者の目は、早くも衆議院選挙に向いている。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:00 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年09月02日 (木)犬が鉄柱におしっこしたあと水をかけるのはNG?

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交差点で鉄製の信号機の柱が突然倒れました。警察が調べたところ、原因は「犬の尿の可能性が高い」ことがわかったのです。いったいどういうこと?

 

「散歩中の犬がおしっこするのは仕方ない」
「おしっこしても水をかけておけばいい」

 

そんなふうに思う人も多いでのは?調べてみると意外な事実が明らかになってきました。

(津放送局 記者 周防則志)

 

犬の尿で信号機が倒壊か

 

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現場は三重県鈴鹿市。

 

三重県警察本部の科学捜査研究所などが調べたところ、倒れた信号機の柱付近の地面からは、同じ交差点の別の柱付近の地面の約42倍、信号機の柱からも、8倍近い尿素が検出されました。

 

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警察は、倒れた信号機付近が犬の散歩コースだったことから「犬の尿に含まれる塩分などが原因となって腐食が通常よりも早く進んだ可能性が高い」という調査結果をまとめました。

 

このニュースを、NHKが伝えたところ、SNS上にはさまざまな意見が寄せられました。

 

「散歩は排せつのためだから、しかたないよね」

「おしっこかけたらそのままにせず、ちゃんと水をかけないと」

「腐食しないようにコンクリートの柱にすればいいのでは」

 

ニュースでは、犬のしつけに詳しい、東京にある赤坂動物病院の柴内晶子院長の話も紹介。

 

犬が散歩中に外で排せつをしないことで、大きなストレスになったり病気になったりすることはありません。犬の健康状態を把握するために、散歩中ではなく、自宅で排せつするようしつけるのを勧めます」というコメントを掲載しました。

 

①散歩は排せつのため?

 

このニュースが公開されるやいなや、SNSでは大きな話題に。

 

「驚き!そんなこともあるんですね」

「一体、何匹、何年がかりなんだ?」

 

さまざまな声が寄せられました。

 

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そうした中でも多かったのが、次のような声です。

 

「犬の排せつをすませてから散歩?排せつのために散歩させているのに」

「散歩でおしっこ禁止は現実的ではないです」

 

さきほどの柴内院長に「散歩は排せつの目的」という声についてあらためて聞いてみると。

 

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赤坂動物病院 柴内晶子院長:

「散歩に行って、排せつをさせて帰ってくるということが1つのセットになっているという人は多いと思います。でも、排せつは必ずしも散歩の目的ではないです。外では尿の状態を確認するのが難しいので、犬の健康のことを第一に考えるのであれば、家で済ませた方がいいです」

 

「マーキングしないことがストレスになるということはありませんし、根気強くしつけをしていくことで、十分に覚えてくれます。“犬と暮らす”という点をあらためて考えて、インストラクターや獣医師などに相談してみてください」

 

そのうえで、もし外でしてしまいそうになった時は、ペットシーツを敷いて尿をさせるのがいいといいます。

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また最近では犬のおむつのような役割をする「マナーベルト」をつける犬も見かけますが、この点については…。

 

柴内院長:
「マナーベルトをつけて散歩に出かければ中に尿が入るからOKという飼い主さんもいますが、あまり私はお勧めしたくないです」

 

「マナーベルトは、あくまで健康状態などが良くなくて尿が漏れてしまう、という時に使うものであってほしいです。ずっとそれをつけていますと尿道の周りがただれるトラブルも起きているので要注意です」

 

②おしっこしたら水をかければいい?

 

続いてよく見られた声がこちら。

 

「犬の散歩には、水を入れたペットボトルを持って行き、水で洗い流してください」

 

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たしかに最近は、よく見る光景です。

 

尿をしてしまったとしても、水で流しておけば腐食も防げるという考えなのだと思いますが、この対策について、警察に聞くと…。

 

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三重県警察本部 交通規制課:
「実はだめなんですよ。鉄の腐食の要因になるのは、水と酸素、そして塩分などの環境要因なんです。鉄の柱に尿をかけたうえに、さらに水をかけるってことは、腐食を防ぐ意味では好ましくありませんね」

 

ダメなんですね…。

 

三重県の工業研究所金属研究室にも聞いてみましたが、たとえ尿を洗い流したとしても、水分がついている状態を放置することになり、鉄にとってはよくないと話していました。

 

元々は、においを消すために始まったことかもしれないですが、少なくとも腐食を防ぐという点ではNGなようです。

 

念のため、におい対策としての意味について、柴内院長に聞いてみました。

 

柴内院長:
「ペットボトルにちょっとくんできたくらいの水の量では、1回の排尿量を十分に掃除するということにはとても至らないですね。逆に道路などに広げてしまうだけになることもあるので、においを消すっていう点でもそれほど意味のあることではないと思います」

 

③コンクリート柱にすればいい?

 

「コンクリート製ならこのようなことは発生しにくいのでしょうけど」

 

SNSには対策に関しての言及も見られました。実は三重県警では、コンクリート製の柱から鉄製の柱へと建てかえを進めています。なぜなのか聞くと。

 

三重県警交通規制課:
「耐用年数が長いというのと、地震に強いのが主な理由ですね」

 

耐用年数はコンクリート製の柱が42年なのに対して、鉄製の柱は50年。耐用年数通りであれば8年ほど長く使えます。さらに、鉄製の柱の方が、耐震性が高いことも大きなメリットです。

 

三重県は、南海トラフ巨大地震などで大きな影響も予想される地域。地震が発生した時の安全を考慮して、コンクリート製の柱はこれから減らしていきたいというのです。

 

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一方で、鉄製の柱については、施工方法などの見直しを進めています。

 

まずは、柱の根元の地面。もともとアスファルトを敷いていましたが、より隙間が小さくなって水がしみにくい、コンクリートにすることにして、傾斜もつけました。さらに、柱の根元部分そのものの厚みを持たせるなどしています。

 

また、点検の精度をあげることで、腐食がひどくなる前に表面の亜鉛メッキを再塗装することなども、これから実験していくことにしています。

 

ただ、こういった対策をとっても、日々尿がかけられることで、腐食が進んでしまう可能性が高いので、警察は尿をかけるのはやめてほしいとしています。

 

誰もが気持ちよく暮らせるように

 

ニュースを受けて、犬を飼っていると思われる人のアカウントでは、「こういう話が出ると、肩身が狭くなる」という声もみられました。

 

信号機の柱が倒れるのは、その道を利用する人たちにとっては、非常に危険なことですが、犬を飼う人と、飼っていない人が今回の件で対立してしまうことは、私たちにとっても本意ではありません。

 

取材を進める中で、ふだんから公共の場での犬の排せつに気をつけて散歩していて、犬のことを本当に大切に考えている飼い主が多いんだなと知ることができました。

 

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犬を家族の一員と考えるのが当たり前になっている今、飼い主と犬が社会の中でどうやったら気持ちよく、安心して暮らしていけるのか。犬を飼っている人も、飼っていない人も、そうしたことを考えるきっかけに、今回のニュースがなってほしいと思います。

 

 

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周防則志 2020年入局 

“地域の課題を解決する”報道を目指している

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:20:00 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年09月01日 (水)グーグルがパートナー? "みえDXセンター"設置の狙いとは

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デジタル改革の司令塔となる「デジタル庁」発足と時を同じくして、三重県に立ちあげられた「みえDXセンター」。県内外を拠点に活動する様々な分野の専門家が、デジタル化に向けた相談に直接応じる新たな窓口です。グーグルやZoomなども「パートナー」として登録しているといいます。

 

いま、話題のDX=デジタル・トランスフォーメーションは地方でどう進むのか。設置の狙いや今後の課題について、三重県デジタル社会推進局で局長を務める、田中淳一氏に話を聞きました。

 

(聞き手:記者 鈴木壮一郎)

 

ーー「みえDXセンター」では、何ができるのか。

 

田中局長:
「みえDXセンター」は、企業や専門家を紹介するワンストップの相談窓口です。センターに相談を寄せてもらえば、必要に応じて専門家やデジタル分野をけん引する企業の皆さんをご紹介する形になります。

 

県内の事業者や役所の方々など、あらゆる立場の方々がDXに取り組む第一歩を踏み出すための応援をしたいという思いで立ちあげました。

 

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ーー具体的には、どういう相談を想定しているのか。

 

田中局長:
本当に些細なことでいいなと思ってるんですけど、例えば老人クラブで「スマホの使い方を教えてほしい」とか。あるいは県内企業で「世界最先端のテクノロジーについて教えて欲しい」とか。簡単なご相談から専門的なものまで、気軽に寄せていただきたいと思っています。

 

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ーーどういう人が助言してくれるアドバイザーとして登録されているのか。

 

田中局長:
「みえDXアドバイザーズ」は、デジタルの専門家に限らず、ジェンダーや、ダイバーシティー、情報発信といった新しい社会作りに必要な分野の専門家に参画していただいています。

 

また「みえDXパートナーズ」は、国内外のDXを牽引している企業の皆さん、例えばグーグルやアマゾン、それからZoomやスラック、ソフトバンクやドコモなど、国内外の企業に登録していただいています。専門家の方々には、県内の企業と一対一で相談に対応してもらい、パートナーズの企業には、複数の県内企業を対象にセミナーを開いてもらうことなどを想定してます。

 

DXは、デジタルを活用した新しい社会をつくっていくということですが、デジタルを中心とした社会ではなくて、「どんな社会に向かっていきたいのか」ということに、どうデジタルを活用していくかを考えていくべきだと考えています。


例えば市や町のみなさんが、デジタルを活用した社会作りをしていこうという時に、デジタルの専門家だけではなくて、新しい社会作りに必要となる様々な分野の専門家からアドバイスをもらったうえで、DXを進めてほしいと思っています。

 

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ーー県として専門的なデジタル人材を事業者などに紹介する背景には、どのような課題があるのか。

 

田中局長:
デジタル人材・DX人材と言っても、非常に定義が難しいです。また、デジタルに精通した人材というのは、日本の中でも非常に数が限られてきているという現状もあります。県内全域でDXを推進していくためには、市や町、それから県内企業の皆さんが、それぞれ個別にデジタル人材確保に向けてアプローチをしていくよりも、一元的な相談窓口を県が設けた方が、圧倒的にスピードが速くなるという狙いがあります。

 

きょう(9月1日)政府にデジタル庁が発足しましたし、全国的にも三重県のように、デジタルの専門部署の新設を計画をしていると聞いています。そういったことから今後、デジタル人材の“枯渇”は避けられないというイメージはあります。

 

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ーー地方においてデジタル人材の確保は非常に大きな課題。解決に向け必要な方策は。

 

田中局長:
デジタル人材・DX人材の確保に関する方策は、2つしかないです。1つは新規で獲得する。そして、もう1つは育成していく。この2つだと思います。


そうなると、デジタルの専門家を外部から呼んでくるばかりではなく、内部で育成していく方がより現実的で有効だと思っています。今、三重県のデジタル社会推進局には私を含めて50人のメンバーがいますが、その全員が、三重県のこれからのDX人材になっていくと思いますし、内部の人材をデジタル時代に適応した人材に育成していくということが極めて重要だと思っています。

 

私は、これまでデジタルだけでなく、地方創生にも関わってきましたけれども、「人と人が出会って化学反応を起こしていく」ということそのものが、地域を豊かにしていくと考えています。ですので、できるだけ幅広い専門家と、地域の方々がたくさん関わっていただき、新しい社会作りに役立ててもらえればと思っています。


「デジタルによって社会がどう変わるのか」ではなくて、「どんな社会にするためにデジタルを活用していくのか」ということをみんなで一緒に考えていきたい。デジタルを遠い存在と考えないでいただいて、どんな小さなことでも結構なので、どんどん相談を寄せていただきたいです。

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2021年07月14日 (水)旅館がコロナで"ヒマ"だからダンスしたらバズった件

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旅館の従業員が、音楽に合わせてキレッキレッのダンスを披露。

 

新型コロナウイルスの影響で“ヒマ”だからとTikTokで公開した動画がまさかの100万回再生!

 

なぜ動画はなぜバズったの?そして、動画に込めた思いとは?

 

苦境の旅館、起死回生の舞台裏です。

 

(津放送局 記者 周防則志)

 

“ヒマ”だから始めたTikTok

 

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「ヒマでぼーっとしていてもしかたないし。自粛で、気持ちが下がっていく中で、皆さんに元気を届けられたらいいなと。1本あげてダメだったら、やめとこうくらいのそんな軽い気持ちで始めましたね」

 

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TikTokで初めて動画を公開した時のことについて、「鳥羽ビューホテル花真珠」のおかみ、迫間優子さんは、そう語りました。

 

例年、伊勢神宮への参拝者など年始のシーズンは多くの観光客が訪れますが、新型コロナウイルスの影響で激減。

 

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当時は、愛知県などで緊急事態宣言が出ていたこともあり、宿泊客は去年の2割程度に落ち込み、焦りも感じていたという迫間さん。

 

でも、お客の皆さんも旅行に行けず、つらい思いをしているはず。

 

そんな時だからこそできることは何か、そう考えた中でたどり着いたのが、TikTokだったといいます。

 

公開後すぐに100万回再生

 

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最初に動画を投稿したのはことし2月。

 

ホテルの男性従業員3人が音楽に合わせて軽快に踊る動画でした。

 

公開するとすぐに「ホテルのスタッフと思えないほどかっこいい!」と話題に。

 

ほんの数日で100万回再生を超え、バズったのです。

 

「公開して1時間で数千、時間が経つごとに、数万、数10万とどんどん増えていったので驚きましたね。ここまでバズると思っていなかったので、うれしさとこれからへの不安が入り交じったような気持ちでした」(迫間さん)。


“動画見て来た”という客も!

 

その後、感染状況がいったんは落ち着き、3月から5月の大型連休にかけては予約の埋まり具合も次第に回復。

 

しかし、感染状況が悪くなると、また宿泊客は減ってしまう、その繰り返しだったといいます。

 

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そうした中でも、TikTokの動画は着実にお客に届きつつあるとといいます。

 

この日も、「TikTokを見て来た」という女性が宿泊に。

 

「今、旅行先を調べるのって、大体TikTokかインスタグラムなんですよ。TikTokで見たスタッフさんがいるかなと思って。一緒に写真を撮りたいなと思っていたのでよかった」とのこと。

 

TikTokがきっかけでファンになったという人が泊まりにくることも少なくないと言います。


こうした1つ1つの反響が、スタッフのモチベーションにもつながっています。

 

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「TikTokなど、ネットで寄せられる感想も嬉しいですけれど、直接泊まりに来てくださって、言葉をかけてもらえるのはありがたいです。動画が集客に結びついているなと実感しますし、何よりご覧になった皆さんに元気を届けられているんだなと思うと、やりがいを感じますね」(フロントスタッフ 加藤皓信さん)

 

地域全体で盛り上がる

 

鳥羽ビューホテルでは、旅館業のすそ野の広さも知ってもらおうと、新たなチャレンジも進めています。

 

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地元の養殖業者や、清掃業者、それに地域の観光地…。

 

旅館は、それだけで成り立つことはできず、地域のいろいろな産業や働く人たちと関わっているからこそやっていける存在です。

 

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旅館だけのPRをするのではなく、地域全体を盛り上げていこうと、地元のさまざまな人や施設とコラボした動画を作り始めたのです。

 

アフターコロナを見据え

 

今回、従業員たちが訪れたのは、鳥羽水族館。

 

伊勢志摩地域を代表する観光地のうちの1つです。

 

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スナメリやジュゴンなど、観光客にも人気の動物たちと一緒に動画を撮りました。

 

さらに、この日は、鳥羽市のお隣、伊勢市の旅館「海の蝶」ともコラボ。

 

この旅館、実は、鳥羽ビューホテルの取り組みを見て、TikTokを始めたといいます。

 

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「どこの旅館も厳しい状況で、気持ちも落ち込んでいると思います。こんな時だからこそ、みんなで協力して旅館どうし、三重県を盛り上げたいなと思ってコラボすることになりました」(海の蝶 スタッフ)


2つの旅館のスタッフもすっかり息が合い、予定していた撮影を終えたときのことでした。

 

急遽、水族館の従業員も一緒に動画の撮影に加わろうという話になりました。

 

厳しい状況の中、地域全体で頑張っていきたい。

 

その場にいたみんなが思いを1つにすることができた瞬間でした。

 

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「コロナ禍が終わった時に、伊勢志摩・鳥羽というのが一番行ってみたい観光地になってほしい」

 

鳥羽ビューホテルの迫間さんは、そのように語っています。

 

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“アフターコロナ”を見据え、今は、胸躍る動画で魅力を届けたい。

 

旅館のにぎわいが戻る時を信じ、取り組みは地域を巻き込んで広がっています。

 

 

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周防則志 2020年入局 

“地域の課題を解決する”報道を目指している

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2021年07月07日 (水)横断歩道で手、上げますか?"ハンドサイン"が今、注目

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横断歩道で、手を上げてから渡っていますか?

 

「小学校低学年の頃まではあげてたかな」

 

「大人になったらちょっと恥ずかしいし…」

 

そんな人が多いかもしれません。

 

でも、「今から渡りますよ」という意思を示す“ハンドサイン”が、今、あらためて注目されているんです。

 

(津放送局 記者 伊藤憲哉)

 

「私、渡ります」の意思を示そう

 

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「大人も少し手を上げて とまっ手えの意思表示」

 

「見せ手 目立っ手 命を守る」

 

横断歩道で歩行者が手を上げて、「渡りたい」という意思を伝えるハンドサインの標語です。

 

実は三重県、JAF=日本自動車連盟による調査で、信号機のない横断歩道での車の一時停止率がおととし全国ワースト。

 

去年は、27.1%と改善しましたが、それでも7割以上が止まっていない状態です。

 

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こうした中、停止率をさらに向上させようと、三重県警察本部ではハンドサインのキャンペーンを始めました。

 

手上げ横断“復活”がきっかけ

 

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きっかけとなったのは、ことし4月、交通安全教育の指針の一部が改正されたこと。

 

「手を上げて運転者に横断する意思を明確に伝えよう」という項目が43年ぶりに復活したのです。

 

もちろん、歩行者がいれば、手を上げていようといなかろうと、車のほうが絶対に止まらなくてはいけません。

 

ただ、ドライバー側だけで呼びかけても限界があるとして、県警では、歩行者側にもハンドサインを促すことで、停止率の向上をはかろうと考えたのです。

 

「横断歩道ハンドサインキャンペーンによって、信号機のない横断歩道での停止率をアップさせる。それによって歩行者の方が安全に渡れるようになるので、交通事故防止にもつながると考えている」(県警察本部交通企画課 伊藤勝彦室長)

 

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実際に意味あるの?

 

ところで、実際に効果はあるのでしょうか。

 

県警本部では、事前に県内4箇所で調査を行ったといいます。

 

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その結果、ハンドサインをした場合は停止率が85.1%。

 

しなかった場合は37.4%と、したほうがはるかに停止した車は多かったのです。

 

実際、以前からハンドサインが広く普及している長野県では、横断歩道での停止率が70%を超え全国トップという実績もあります。

 

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やはり、ハンドサインは“効果あり”と考えて良さそうです。

 

YouTubeも活用

 

「運転者に横断する意思を“ハンドサイン”で示す 横断歩道“ハンドサイン”キャンペーンを行っています」

 

県警本部では、キャンペーンを多くの人に知ってもらおうと、YouTubeにも動画を公開。

 

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動画の中での歩行者役は、交通企画課の警察官が担当したほか、リアルさを実感してもらうため、実際の公道を使用しました。

 

特に気を遣ったのは、「大人でも抵抗感がないようにする」こと。

 

そこで、「少し」だけ手をあげるといった方法をすすめることにしました。

 

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また、渡った後に、軽くドライバーに会釈するというポイントも盛り込みました。

 

会釈は絶対しなくてはいけない、というわけではありませんが、ドライバーに「次も止まろう」と思ってもらうことにつながるかもしれないという考えからです。


ドライバーと歩行者の意思疎通が大切

 

このハンドサインの取り組み。

 

交通心理に詳しい帝塚山大学の蓮花一己学長は、歩行者とドライバーの意思疎通という点で、とても重要だと指摘します。

 

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「道路空間は広い意味での公共空間。知らない人、いろんな立場の人がいるので、ドライバーと歩行者がコミュニケーションをとる、というのは事故防止には欠かせないんです。そういう意味で、ハンドサインは、コミュニケーションの最初の一歩、きっかけのようなものだと言えます」

 

「横断歩道での車の停止率が安定するには、習慣化していくことが大切です。ハンドサインが周知・徹底されて、それを小さい頃に習った子どもが大人になっても続けていく、という風にまでなっていかないといけない。時間はかかりますが、ぜひずっと続けてほしいです」(蓮花一己学長)

 

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「これから渡りますよ」

 

そんなちょっとした意思表示が、事故を防いだり、安全につながるかもしれない。

 

ハンドサイン、皆さんも始めてみてはどうでしょうか。

 

 

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伊藤憲哉 2019年入局

中学時代 サッカー ジュニアユースで全国大会出場

 

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:20:00 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年07月01日 (木)"ひきこもっていてもいい"コロナ禍に必要なひきこもり支援とは

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「20年以上通院し、投薬治療をしていますが、ほぼひきこもり状態が続いています」

 

「他人と話すことに恐怖すら感じる」

 

20年以上の長期にわたってひきこもる男性から、NHK津放送局に寄せられた1通のメッセージです。

 

深刻化するひきこもりの長期化に加え、コロナ禍によってひきこもる人たちを取り巻く状況も変わってきているといいます。

 

いま、ひきこもりに求められる支援とは何か、考えてみます。

 

(津放送局 鈴木壮一郎)

 

「ただただ、年を取っただけ…」

 

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「何やったんやろうな、自分の人生。ただただ、年(とし)を取ったというだけですね…」

 

何度かメールでやりとりを重ねたあとの電話で、その男性は声を絞り出すようにして話をしてくれました。

 

20年以上にわたって、ひきこもり状態にあること。

 

当時の仕事を辞めてから、“時間が止まってしまった”という感覚にとらわれること。

 

40代後半にさしかかった頃から、“どこで足を踏み外したんだろう”という自問を繰り返すようになったこと。

 

言葉を選びつつも、質問に対する答えはとても明確でした。

 

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ひきこもりの人はコミュニケーションが苦手な人が多いというイメージを勝手にもっていたのですが、男性の口調からはそのような印象は受けませんでした。

 

ただ、自身のひきこもりが長期化していることに話が及ぶと、男性は少しだけゆっくりとした口調になって、次のように話してくれました。

 

「『同級生に子どもが生まれ、その子どもが独立した』という話を聞くと、自分はいまだに“親の子ども”から脱出できず、独立すらできてないことに、(自分は)異常な生活を送っていると感じたりする。ひきこもる時間が長くなればなるほど、自分に自信がなくなってきている」

 

そして、自分の人生について、「ただただ、年を取っただけ」と振り返ったのです。

 

県内の“ひきこもり”1万6000人

 

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三重県内におよそ1万6000人。

 

これは、県内にいると推計されている、ひきこもっている人の数です。

 

基となるのは、2016年と2018年にそれぞれ内閣府が行った調査。

 

それによると、15歳から39歳では54万人余り、40歳から64歳では61万人余りがひきこもり状態にある(※1)と推計されています。

 

これを、単純に三重県民の人口に置き換えると、県内に1万6000人がいると推計されるのです。

 

(※1:自室からほとんど出なかったり、趣味の用事のときだけ外出したりする状態が6か月以上続いている人)

 

“長期化”“高年齢化”が課題

 

姿が見えづらくなりがちなひきこもりの人たち。

 

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今回、三重県が実態調査を行い、ひきこもりの長期化が深刻となりつつある現状が明らかになってきました。

 

三重県では、ことし1月から2月にかけて、調査を実施。

 

県内の相談支援機関に対し「原則的に6か月以上にわたって家庭にとどまり続けている状態」の360のケースについて回答を得ました。

 

その調査結果です。

 

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ひきこもっている「期間」について尋ねた質問では、5年以上の人が全体の55.1%と半数を超え、さらに20年以上の人は全体の17.3%に上るという「長期化」の実態が浮かび上がっています。

 

また、ひきこもっている人の「年代」では、最も多いのが30代の28.9%、50代が20.6%と続きます。30代以上が全体の72%を占めることに。

 

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全国的にも「ひきこもりの高年齢化」が指摘される中、三重県でも同様の傾向にあることが明らかになってきたのです。


鍵となるのは“家族の理解”

 

長期化や高年齢化が進む当事者をどのように支援していったらよいのか。

 

「家族の理解が、立ち直りに向けた鍵になる」と話すのは、2015年から津市でひきこもる人の家族が集まる会を主催している、みえオレンジの会の堀部尚之さんです。

 

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自身の息子も長くひきこもり状態にあったという堀部さん。

 

かつては、「息子がひきこもっている状態」が理解できなかったと言いますが、自身の反省も込めて、親の理解が最も重要だと言います。

 

「ひきこもりが長引く原因は、『親が諦めてしまった』場合が一番大きい。家庭内でおとなしくしているから放置してしまったり、周りの人にひきこもる家族のことを内緒にしてしまったり、親がひきこもる子どものことを諦めてしまったら、“8050”(※2)まで行ってしまう」

 

そのうえで、堀部さんは、ひきこもっている子どもやきょうだいなどの家族との接し方について、次のようなヒントを教えてくれました。

 

「彼らが望んでいるのは、とにかく『まずわかって欲しい、僕のつらさをわかってほしい』ということです。そこがスタートになる。彼らが社会に出て行く勇気をいかに醸成させるかが重要になる」

 

(※2:「8050」「8050問題」、80代の親と50代の“ひきこもり”の子が孤立する状態のことを指す言葉)

 

立ち直りかけても…コロナ禍の壁

 

堀部さんに話を伺った日は、家族会が開かれた日でした。

 

この日、テーマとなったのは、「コロナ禍で困っていること」について。

 

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参加した家族からは、当事者会や支援団体など、社会につながり始めたところで新型コロナウイルスが拡大してしまい、つながりが途絶えてしまったことを心配する声が相次いで聞かれました。

 

「ちょっと興味のある社会参加があったが、コロナ禍になってしまい、年配の親を心配して『コロナを持って帰ったらいけないからことしは見送る』と」

 

「十何年ぶりに行きたいと思っていた家族旅行が行けなくなった」

 

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「たかが家族旅行」と思う方もいるかもしれませんが、長年ひきこもっている子を持つ家族にとって、「家族で旅行に出かける」というのは紛れもない大きな一歩です。

 

せっかく動き出した、そのときに、むしろ「外に出ないこと」を奨励される世の中になってしまった。

 

大切な一歩一歩にも関わらず、コロナ禍が大きな壁となってしまっているのです。

 

ひきこもっている人たちの状況がますます見えづらくなってしまっている今、求められる支援とは何でしょうか。

 

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堀部さんは、「押しかけるのはダメ」としながらも、積極的にアプローチを試みる、いわゆる「アウトリーチ型支援」が今まで以上に重要になると教えてくれました。

 

「コロナ禍でもできるのは、当事者に電話をすることや、LINEで話をすること、またはZoomで話をすることや葉書を届けることです。本人が望まないのに、押しかけてもダメなので、まずは葉書を出したり、『LINEで話しましょうか』ということからのスタートではないか」


「ひきこもる権利は当然ある」

 

取材の最後、堀部さんは「ひきこもる権利」について、教えてくれました。

 

「誰にでも『ひきこもる権利』というのは当然あると思う。つらいときは思い切ってそこから逃げる。健全に逃げるということが大事です。家族も『そんなにつらいなら、一旦ストレスから逃げようよ。また勇気が出てくるまでじっとしていようよ』と受け入れることです。

 

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「ただ、それは勇気が出てくるまでであって、家族は勇気を醸成させないといけない。そのために『つらさ』を共有することが大事になる。家族が白い目で見ることが一番ダメなんです」


人と人のつながりが今まで以上に途絶えてしまいがちな今だからこそ、一番身近な「家族」の存在が大切になること。

 

それに、それぞれが抱える生きづらさに寄り添うことの大切さを、堀部さんは教えてくれました。

 

 

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鈴木壮一郎

2008年入局 初任地は津局 

去年9月から7年ぶりの津局勤務

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:19:30 | WEB特集 |   | 固定リンク


2021年06月17日 (木)ドミニクさんの決意 人気菓子"カヌレ"工場火災からの再起

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「もう、これで私の人生終わりだな…」

 

店を支えてきた人気商品“カヌレ”の工場が燃えていく…。

 

炎に包まれる建物を前に、立ち尽くすフランス出身のパン職人。

 

窮地に追い込まれた彼を奮い立たせたのは、プロの職人としての“誇り”とオーナーとしての“覚悟”でした。

 

(津放送局 記者 石塚和明)

 

本場フランスの味を日本に

 

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三重県中部。鈴鹿市の閑静な住宅街に、パン屋「ドミニクドゥーセの店」はあります。

 

27年前の創業以来、地元の人たちに親しまれてきた名店で、全国各地にもファンがいます。

 

オーナーシェフを務めるのはフランス出身のドミニク・ドゥーセさん。

 

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34年前、鈴鹿サーキットでF1グランプリが開催されることになったのをきっかけに来日。

 

サーキット内のレストランのシェフとして働き、あのアイルトン・セナやミハエル・シューマッハなど名だたるレーサーたちの食事も担当しました。

 

その後、“本当のフランスの味を日本に”との思いから、慣れ親しんだ鈴鹿市に店を構えました。

 

地元の人たちからは“ドミニクさん”と呼ばれ、慕われてきた一方で、民放のバラエティー番組の「パン職人選手権」で2連覇を果たすなど、その腕の確かさは広く知られています。

 

 

コロナ禍の切り札“カヌレ”の存在

 

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そんなドミニクさんが何度も試作と失敗を繰り返し完成させたのが、フランスの伝統菓子「カヌレ」。

 

オリジナルの銅製型を使い、研究し尽くした焼き加減で、「外はカリカリ 中はフワッと」した食感が特徴です。

 

発売後、瞬く間に人気は全国へと拡大。専用の工場を建てて各地に出荷し、全国のデパートやイベントなどで販売されるようになりました。

 

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新型コロナウイルスの感染拡大後は、各地のイベントへの出店が相次いで中止になったり、店内のレストランが1年以上休業したりといった危機が何度も訪れましたが、支えとなったのがこのカヌレでした。

 

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オンラインショップなどでの売れ行きが好調で、コロナ禍をなんとか乗り越える切り札となってきたのです。

 

たった一晩ですべてが…カヌレ工場全焼

 

しかし、5月24日、ドミニクさんに悲劇が襲います。

 

カヌレ工場で火災が発生。従業員はおらず、けが人はいませんでしたが、工場は全焼してしまいました。

 

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「電話がかかってきて、『工場が燃えているよ』って言われました。聞いた瞬間、体の中が熱くなって、急いで向かいました」

 

消火活動が行われている中も、大きく炎が上がり燃え続ける工場。

 

夜空に火の粉が飛んでいく中、ドミニクさんは、現場に立ち尽くし、絶望したといいます。

 

「たった一晩でこれまで積み上げてきたたくさんのものを失ったんです。『従業員どうする』とか『借金どうやって返す』とか、一気に頭の中がいっぱいになりました。隣にいた奥さんに正直に言いました。『今までいろんなことがあったけど、もうこれで人生終わりだな』と」

 

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オーブンやオリジナルの型にも被害が出て、1万5000個あった型のうち、無事だったのは34個だけ。

 

店頭のみでの販売となり、各地のデパートに出荷するなど量産はできなくなってしまいました。

 


“誇り”と“覚悟”を胸に

 

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そうした中でも、ドミニクさんは、火事のあったその晩、再起を決意したといいます。

 

「全国のファンにまたカヌレを届けたい。いち早く届けるために、とにかくカヌレを焼きます。もちろん今までの数は出来ないけど頑張ります」

 

プロの職人としての誇りを胸に、毎日厨房に立ち続けています。

 

さらに、これまでともに歩んできた従業員への思いがドミニクさんを奮い立たせているといいます。

 

「本当にお客さんも従業員も愛しています。急いで早くカヌレを復活させて、従業員たちの経済の影響にならないように…」

 

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それまで気丈に話していたドミニクさんが突然言葉を詰まらせ、涙をこらえました。

 

再び開けた口から出たのは、オーナーとしての覚悟でした。

 

「…およそ20年間もいる従業員もいます。『すいません火事になって明日から仕事がなくなりました』なんて言えませんよ。ひとりになると思い悩む時もありますが、とにかくみんなのために倒れない。とにかく乗り越えます」

 

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寄せられる応援の声 決意新たに

 

そんなドミニクさんの支えになっているのは、お店のファンからの声です。

 

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「ネットで火災があったのを知って、びっくりしました。今日は応援のためにカヌレを買いにきました」

 

「よくきますが、1番はカヌレが好きです。またよりたいです」

 

取材中も、火事の知らせを受けて店を応援しようという客が次々に訪れ、そう語っていました。

 

さらに、再び量産できる環境を整えようと、クッキーの詰め合わせを「応援セット」としてネットショッピングで販売したり、カヌレを返礼品としたクラウドファンディングで寄付を募っています。

 

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するとSNSでは応援する多くのメッセージが。

 

「これは支援せねば!」


「絶対また食べたいもんね あのカヌレ」

 

「1日も早い復活を願っています」

 

エールを受けたドミニクさんは復活に向けた思いをさらに強くしています。

 

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「ものすごいエネルギーいただいています。私はできることをやります、頑張ります。日本で私の人生が終わるまでいいカヌレ焼きます。絶対諦めない、絶対頑張る」。


カヌレを待つ、全国のファンのために。

 

逆境の中も、カヌレを焼き続けるドミニクさんの目はしっかりと前を向いていました。

 

 

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石塚和明 2016年入局 

スイーツ好き・フランス語は自己紹介程度

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:19:30 | WEB特集 |   | 固定リンク


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