【みえDE川柳】 お題:たすき
たすき掛けすると出て来るドーパミン/あわわわ!さん
昔は、あだ討ちなど、いざ決闘というときには動きやすいようにたすき掛けをした。現代では各分野に制服というものがある。野球には野球の、消防士には消防士の制服がある。「たすき掛けする」とは、闘いの準備を整えるということ。準備をきりりと整えれば、おのずとドーパミンが出てきて、気力も充実してくるのだ。
たすき掛けばかりで恋が実らない/汐海岬さん
今年こそはと、手段を選ばず想(おも)う人にアプローチを仕掛けているのだが、なかなか振り向いてくれない。人生でも同じ事。さあこれからと張り切ってみても、思うようには事は運んでくれない。「たすき掛け」という言葉の意味を、実らない恋の実例を挙げて生き生きと解説してみせた好句。
準ミスの準は小さく書くたすき/颯爽さん
母数にもよるが、準ミスでもたいしたものなのだ。正ミスとの違いは審査員の評価が紙一重だったにすぎない。それでも、たすきに書くとなると、正真正銘の「ミス」と「準ミス」の違いは大きい。「準」の字を小さく書きたいという気持ちは痛いほどわかる。ただし、虫眼鏡でないと読めないようではクレームが付くだろう。
<入選>
サミットへタスキきりりとおもてなし/しょうたろうさん
公約を破るたすきが泣いている/麦乃さん
名前だけ分かれば良いというたすき/かぐや姫さん
駅伝も果たし合いにもいるたすき/福笑いさん
沿道の景色楽しんでるたすき/アラレさん
夢で逢(あ)う母はいまでもタスキ掛け/弥生さん
老いるとはこれかとたすき締め直す/E子さん
骨壷(こつつぼ)にたすきをかけた忘れ物/福村まことさん
棚田百選子等(ら)にたすきを拒まれる/あそかさん
新茶摘む茜(あかね)だすきはコーヒー派/うさぎ物語さん
宮村典子先生
吉崎柳歩先生
卒業式など、年度の切り替えの時期にふさわしい「たすき」というお題だったが、駅伝のたすきや、作業をするに当たっての「たすき掛け」という直接的な意味に限定された句が多かったように思う。後輩やお嫁さんなど、後任に託すものもいろいろ出してほしかったが、それなら「バトン」のほうが良かったのかも知れない。しかし、入選の13句は、それぞれ吟味された力作がそろっていたと喜んでいる。