2014年8月

【みえDE川柳】 お題:思い出

天 思い出になかなかなってくれぬ傷/アラレさん

宮村典子先生 この傷は、手や足に負った傷ではなくて、いわゆる心に負った辛い傷でしょうね。簡単な失恋ではなく、一生に一度の本気の愛が実らず負った深い傷のように思われます。
普段は、すっかり忘れているのですが、何か不安な、つまらない気持ちになった時に、ふと思い出される切なくて甘い記憶が「思い出になってくれぬ傷」に秘められています。
また、あるいは、人間関係のギクシャクで生じてしまった傷が、まだ癒えていないのかも知れません。
いずれにしても、読み手の胸に響いてくる作品です。

 

地 立たされた思い出雨が降っていた/柴ちゃんさん

宮村典子先生 この句は、具象を詠んで心象を表現しています。
いつまでも廊下に立たされていたあの日は、確かに雨が降っていた……
立たされた原因は何だったろう?
忘れられない思い出の一場面として、作者の心のアルバムに残っているのです。
なぜなら、その時、作者の胸に降った悔しい、切ない雨は今も思い出の中で降り続いているのですから。

 

人 ピースして良い思い出にする写真/鷺草さん

宮村典子先生 記念として残す写真だからとりあえずピースしておこう!思い出のために撮る写真だからシアワセを残そう!
「良い思い出にする」に、そんな作者の心の動き(川柳らしい)がみえます。
確かに、ピースした写真とアルバムで再会するとうれしくなりますものね。
だから、若者も、おじいちゃんも、おばあちゃんもカメラに向かって楽しそうにVサイン。

 

<入選>

宿題の思い出だけが残る夏/はづきさん

線香花火思い出ポトリ落ちました/こはくさん

思い出に会いたくなって目を閉じる/夏子さん

コンビナートあの下だった潮干狩り/星流さん

思い出の断捨離これが難しい/銀色ダリアさん

思い出のジグソーパズル埋まらない/茶臼山一号墳さん

思い出という皿に乗せれば美しい/かずこさん

 

宮村典子先生  宮村典子先生

今月の課題は「思い出」。ちょうど夏休みの時期ですから、ピッタリの課題でした。
「思い出は……」という書き出しの句が多くありましたが、「……は」で始まると、どうしても報告、説明句になってしまいがちです。
この夏の思い出、または、自分の胸の中にある一番の思い出を手繰りだし、そこに焦点を当てると、インパクトのある句になるでしょう。
作り過ぎ、言い過ぎの句も多くありました。難しいですが、シンプルに書いて意味のある句を目指してください。

投稿者:NHK津放送局 | 投稿時間:18:50 | 過去の入選作 |   | 固定リンク


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