文研ブログ

メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】関東大震災100年,各メディアが特集「災害教訓の誤った語り継ぎ」の事例も

 9月1日で,1923(大正12)年の関東大震災の発生から100年になった。各メディアは1日の前後に特集番組や特集記事を相次いで放送・掲載。関東大震災の被害を振り返り,今後の大地震への備えなどを訴えた。

 このうち4日にNHK総合で放送された『映像の世紀バタフライエフェクト』は,関東大震災で奇跡的に焼け残った東京の神田佐久間町・和泉町を取り上げた。周辺がことごとく焼失する中,この地区の住民はバケツリレーなどで消火にあたり延焼を食い止めた。この2つの地区が焼失を免れたのは,すぐそばに神田川が流れていたことや,火が迫ったタイミングが,はじめは地区の南側,次に西側,東側,最後に北側と時間差があり,消火活動を1方向に集中できたことなどが大きな要因だった。しかし,「住民の団結によるバケツリレー」ばかりが強調され,美談として語り継がれた。番組では,このエピソードが戦争遂行のために次第に都合よくすり替えられ,「住民は空襲から逃げず立ち向かう」「焼夷弾が落ちたら1秒でも早く駆けつけ消火にあたる」などの無謀かつ危険な行動の手本として利用されたことを紹介。そして1945(昭和20)年3月10日の東京大空襲では,神田佐久間町・和泉町も焼け野原となり多くの人が逃げ遅れて亡くなったことを伝えた。

 災害時の教訓は,ときに一部だけが強調されて美談となり,誤った内容で語り継がれる危険性があることを,この事例は示している。情報の途絶によって拡散し,朝鮮人の虐殺などを引き起こした「流言飛語」とともに,100年前の震災が今に伝える教訓である。

メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】ニュージーランド,TVNZが広告収入減で事業の大幅な見直しを迫られる

 ニュージーランド最大の放送局TVNZが,広告収入の大幅減に直面し,大規模なコスト削減を迫られている。9月18日に経営側からスタッフに送られた文書で明らかになった。

 文書で経営側は,「現在,テレビ広告市場は厳しい状況にあり,最大のプレーヤーとして影響を受けている」と危機感を訴えた。幹部らは,「すべての可能なコスト削減の機会」を特定したとして,あらゆるプロジェクトの見直し,幹部や高収入スタッフの昇給の停止,出張回数の大幅減,マーケティング調査やインフラ整備の大規模な縮小など,多方面にわたるコスト削減の具体策を示した。

 TVNZは,これまでたびたび運営形態を変えてきた。1943年に設立された国営放送局が前身で,長年にわたり受信料と広告収入に支えられていたが,2000年に受信料制度が廃止された。2003年には政府全額出資の株式会社になり,広告収入や商業収入を財源としている。

 株式会社になってからも,他局があまり取り上げないテーマや少数派の意見に配慮した番組を放送することなどを使命とする「TVNZ憲章」を掲げていたが,2011年に廃止された。憲章が柔軟な企業活動を妨げるなどとして議会が廃止を決めたが,公共放送サービスの存在意義を軽んじるものだとの批判もあった。

 広告・商業収入のみで運営してきたTVNZは,2020年以降,新型コロナウイルスの影響による景況の悪化などから広告収入を大幅に減らしており,2023〜24年の会計年度には1,560万ニュージーランドドル(約14億円)の赤字が見込まれている。

メディアの動き 2023年10月16日 (月)

【メディアの動き】韓国KBS 理事会,社長を解任し後継選びを開始

 韓国の公共放送KBSは9月12日午前,臨時の理事会を開き,キム・ウィチョル(金儀喆)社長の解任案について審議し,理事11人のうち与党系の理事6人が賛成して可決した。ユン・ソンニョル(尹錫悦)大統領が同日午後にこれを承認し,キム氏は社長職を解任された。

 キム前社長はムン・ジェイン(文在寅)政権時代に任命された。解任案は8月末の定例理事会で与党系の理事によって提出され,経営の悪化や偏向報道などが解任理由に挙げられた。今回の臨時理事会では,キム前社長に弁明の機会を与え,解任案の決議を行う予定だったが出席せず,書面で意見を提出していた。野党系の理事5人は「解任は不当だ」として採決前に退席する中で可決された。

 キム前社長は「解任されるほど大きな過ちを犯したとは思わない」として,9月13日に解任取り消しを求め提訴した。KBSの社長をめぐっては,ムン・ジェイン政権下の2018年にコ・デヨン(高大栄)社長が解任されたほか,イ・ミョンバク(李明博)政権下の2008年にもチョン・ヨンジュ(鄭淵珠)社長が,政権交代後に任期途中で解任されている。解任された2人は行政訴訟を起こし,その後,勝訴している。

 KBSの理事会は後任の社長選びを開始し,9月25日に募集を締め切った。12人が応募し,同月27日の書類選考の結果,ユン大統領と親交のある夕刊紙,文化日報の論説委員を務めていたパク・ミン氏を含む3人に絞られた。10月に理事会が面接を行って最終候補者を決める予定で,国会での聴聞会を経て,大統領が新社長を任命する。

調査あれこれ 2023年10月12日 (木)

経済対策は国民の心に届くのか?~内閣改造も政権浮揚につながらず~【研究員の視点】#507

NHK放送文化研究所 研究主幹 島田敏男

 9月13日に行われた内閣改造は、上川陽子外務大臣をはじめ5人の女性閣僚の起用で注目されました。ところが2日後に決まった副大臣と政務官は全員が男性。思わず「艶消し」という言葉を思い浮かべた人もいれば、与党の女性議員の層が薄いと感じた人もいたことでしょう。

 この改造人事の後、最初のNHK電話世論調査が、10月7日(土)から9日(月・祝)にかけて行われました。

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☆あなたは岸田内閣を支持しますか。それとも支持しませんか。

  支持する   36%(対前月±0ポイント)
  支持しない   44%(対前月+1ポイント)

改造前と比べてほぼ横ばいでした。岸田総理の周辺は、人事によって自民党内での求心力を高め、政策遂行の力を強化するのだと力説していました。しかし、国民の側の評価は冷ややかで、いわゆるご祝儀は舞い込んでこなかったということです。

 岸田内閣の発足は2021年10月4日。新型コロナウイルスの感染拡大が社会を覆っていた時期でしたが、その後は徐々に収束の方向に向かいはじめ、永田町界わいでは「岸田総理はついている」とも言われました。

 ただ、2022年2月にはロシアがウクライナに軍事侵攻を開始し、食糧や資源の流通が滞ったりして世界規模で経済活動に影響が及び、国際社会の秩序も動揺が続いています。

☆岸田内閣の発足から2年がたちました。あなたは、この2年間の岸田内閣の取り組みを評価しますか。

  評価する   40%
  評価しない   54%

これを与党支持者、野党支持者、無党派の別に見てみると、「評価する」は与党支持者65%、野党支持者27%、無党派25%となっています。与党支持者で何とか3分の2を占めていますが、野党支持者と無党派では4分の1にすぎません。野党支持者と無党派では、「評価しない」が7割に上っています。

 この2年間、岸田総理は「新しい資本主義」「異次元の少子化対策」「安全保障の対処力強化」とスローガンを並べ立ててきました。しかしながら国民の目には具体的な優先政策が何で、自分たちに求められる新たな負担は何なのかといった点が腹に落ちていないように感じます。

 とりわけ物価高への対応を柱とする経済対策には厳しい目が向けられています。

keizaitaisaku1012_2__W_edited.jpg9月25日

 内閣改造後の9月25日に岸田総理は官邸で、「近年の税収増加を経済対策で国民に還元する」と強調しました。確かに2021年以降、所得税、法人税、消費税の基幹3税を中心に、財務省の当初の見積もりよりも結果として税収が多くなる「上振れ」が続いているのは事実です。

 ただ、これについては物価高騰で原材料費や人件費が上がった分、製品やサービスの価格に転嫁されたために税収増となっているだけで、経済の実勢が上向いているわけではないというエコノミストの分析も出ています。

☆政府は、物価高対策などを盛り込んだ新たな経済対策を、10月末をめどにまとめる方針です。あなたは、対策の効果に期待していますか。期待していませんか。

  期待している   38%
  期待していない   57%

期待していないが全体の6割近くを占めています。この設問でも、野党支持者と無党派で「期待していない」という否定的な回答が7割に達しています。

 税収が増えた分を国民に還元するということは、国民の不満や不安を解消するために、まず目先の支出、金配りを優先するということでしょう。そうなると、国が抱える多額の借金の返済に充てる財政健全化の取り組みは後回しになる懸念も生じます。

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☆政府は、新たな経済対策を早期に実施する方針です。一方で、防衛費の増額や、少子化対策強化のための財源の確保も課題となっています。あなたは国の財政状況に不安を感じていますか。感じていませんか。

  感じている   75%
  感じていない   19%

この設問に対しては、与党支持者で「感じている」が8割、野党支持者と無党派で7割超という結果になっています。岸田政権の足元を支える与党支持者の方が中長期的な財政状況の悪化を懸念しているのは少し驚きです。

 これまで国会の予算委員会で岸田総理と議論を戦わせた野党幹部に感想を聞くと、こんな答えが返ってきました。「彼は延命と自己保身にはたけているが、目指している国のあり方や国家像を感じたことはない」つまり、岸田総理は足元の出来事への対応に終始しているだけだという痛烈な批判です。

 岸田内閣の支持率が一進一退を続ける背景には、総理大臣から発せられるメッセージに耳を傾けても、近い将来のことさえなかなか見通すことができないという、一種の「もやもや感」が国民の間にあるように感じます。

 10月20日には政府の経済対策などを巡って議論する臨時国会が召集される予定で、その直後の22日には衆議院長崎4区と参議院徳島・高知合区の補欠選挙が行われます。

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 岸田総理は新たな経済対策をてこにして2つの補欠選挙で与党の2勝を目指していますが、どちらの選挙も野党候補が1本化されています。限られた地域の選挙ではありますが、岸田政権2年への評価が示される側面も否定できませんので与野党対決の結果に注目です。

 そして、この選挙結果のいかんに関わらず、物価高に苦しみ、先行きに対する不安をぬぐえない国民に、しっかりした政治のメッセージが届くことに期待せずにはいられません。

 通常国会の閉会から4か月もたっています。臨時国会での久しぶりの本格論戦が、目先のことだけでなく、多くの国民が自分たちの将来について思いをいたすことができるものになるよう、政府・与党にも野党にも期待したいと思います。

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島田敏男
1981年NHKに入局。政治部記者として中曽根総理番を手始めに政治取材に入り、法務省、外務省、防衛省、与野党などを担当する。
小渕内閣当時に首相官邸キャップを務め、政治部デスクを経て解説委員。
2006年より12年間にわたって「日曜討論」キャスターを担当。
2020年7月から放送文化研究所・研究主幹に。長年の政治取材をベースにした記事を執筆。

調査あれこれ 2023年10月03日 (火)

メディアは社会の多様性を反映しているか~2022年度調査から② ~テレビニュースでは「名前がない」女性たち~【研究員の視点】#506

メディア研究部(多様性調査チーム) 青木紀美子 小笠原晶子 熊谷百合子 渡辺誓司

テレビの多様性調査の結果を紹介する前のブログ(#505)では、テレビの世界は番組全般をみてもニュース番組をみても「若い女性と中高年の男性」が中心で、人口推計では高齢になるほど女性が多い日本の現実とかなり違いがあることをお伝えしました。それでは年齢以外の側面からみると、女性と男性の取り上げられ方には、どのような特徴があるのでしょうか。

今回は、2022年度に私たちが行った調査のうち、夜のニュース報道番組の登場人物についての分析結果から、女性と男性の取り上げられ方をみてみます。調査の対象としたのは2022年6月と11月のある1週間、平日(月~金)の夜9~11時台のニュース報道番組で話をした、あるいは話が引用された人たちです。なお性別で集計した際に、女性・男性にあてはまらない性自認や性表象の人たちは数がとても少なかったため、今回も女性と男性に絞って比べてみます。

ニュースでは、番組が登場人物を一定の重みをもって取り上げているかどうかをみる材料として、字幕表記などによって名前がわかる立場で登場しているかどうかが1つの指標になると考えました。「名前あり」「名前なし」に分類し、人数を女性と男性に分けて比べてみた結果が下の図です。

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「名前あり」は圧倒的に男性が多く、女性の5倍近くになります。また、男性に絞ってみると、「名前あり」が「名前なし」の2倍以上でした。一方、「名前なし」では女性と男性の差がかなり小さくなりました。そして、女性に絞ってみると、「名前あり」よりも「名前なし」が多いという結果が出ています。

それでは女性と男性はどのような立場で登場しているのか。これをみるために登場人物を職業・肩書別に分類したのが下の図です。女性と男性の人数の偏りが少ない指標を左から順に並べました。

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偏りが小さく、女性の人数が比較的に多いのは「親、家族」「雇員、従業員」「市民、住民、通行人」などです。一方、偏りが大きく、女性の人数が少ないのは「メディア・マスコミ関係者」「学識者、研究者、専門家」「スポーツ関係者」「政治家」「中小企業主、個人事業主」「財界人、企業経営者、役員」などでした。

ここまでの情報をあわせてみると、夜のニュース報道番組に出てくる女性は、いわば「名もなき」市民や雇員として取り上げられる人が多く、これに対して男性は、名前はもちろん社会的権威や決定権がある立場で登場することが多いことがわかります。こうした格差があるのは、なぜなのでしょうか。

これについては、日本では女性の社会進出が遅れているという現実があり、それがメディアに反映されているという側面もあるかもしれません。そこで社会の実態に比べてみるとどうか、格差が大きい職業・肩書の指標と比較可能なデータを探して比べてみたのが以下です。

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3つのグラフそれぞれ一番左側の数字が夜のニュース報道番組に登場した女性の割合、そのほかのデータは総務省などのデータをもとにしています。こうして比べてみると、テレビの世界に登場する「政治家」「学識者、研究者、専門家」「医師」における女性の割合は、社会の実態よりもさらに少ないようです。これは限られた日数のサンプル調査ではありますが、名前の有無、職業・肩書という側面からみても、テレビの世界が社会の多様性を反映しているとは、なかなか言いがたいことを示唆しています。

2回のブログでみたテレビのジェンダーバランスの偏りは何を意味しているのか、また背景には何があるのか。文研フォーラム2023秋 10月4日(水)13時~ 「メディアの中の多様性を問う~ ジェンダー課題を中心に」では、メディアにおける多様性の課題をパネリストとともに考えます。

文研フォーラムの事前申し込みは既に締め切りましたが、その後も多くの方から視聴のご要望を頂いているため、10月4日のフォーラム開催当日にも申し込みも受け付けることにしました。ご関心ある方は、当日、下記リンクからお申し込みください。受け付け後に視聴用URLを送付します。
https://www.nhk.or.jp/bunken/forum/2023_aki/index.html
上記リンクでは、10月10日(火)~12月24日(日)に見逃し配信も予定しています。

2022年度調査結果全体については、「放送研究と調査」10月号で詳しく報告しています。
https://www.nhk.or.jp/bunken/book/monthly/index.html?p=202310

また、これまでの多様性調査チームの調査報告も以下からご覧いただけます。

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか① 調査報告 テレビのジェンダーバランス
『放送研究と調査』2022年5月号 掲載

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか② 研究発表「テレビのジェンダーバランス」ディスカッションから
『放送研究と調査』2022年8月号

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか③ 将来に向けた危機感を問うアメリカの事例と専門家の提言
『放送研究と調査』2023年1月号

放送研究リポート
テレビ出演者のジェンダーバランス~トライアル調査から
『放送研究と調査』2021年10月号

調査研究ノート 海外公共放送とダイバーシティー戦略 "多様性"の指標とは
『放送研究と調査』2021年2月号

調査あれこれ 2023年10月02日 (月)

メディアは社会の多様性を反映しているか~2022年度調査から ①~テレビの世界は「中高年の男性と若い女性」~【研究員の視点】#505

メディア研究部 (多様性調査チーム) 青木紀美子 小笠原晶子 熊谷百合子 渡辺誓司

 誰もが生きやすい、多様な人々が力を発揮できる社会をつくっていくためには多様性の尊重と、公平性、包摂性の実現が欠かせないという認識が広がってきました。では、社会を映す鏡であると同時に、社会のあるべき姿を示す役割も持つメディアは多様性をどう反映しているのでしょうか?それを把握する一つの方法として、私たちは、テレビ番組に登場するジェンダーバランス、まずは女性と男性を中心に調べてみました。

 その前に、総務省の人口推計によると、日本の人口に占める女性と男性の割合は、女性は男性より多く、2022年時点で総人口の51.4%を占めています。

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 一方、テレビに登場している女性と男性の比率は、2022年度の文研の調査では、番組全般で、女性は半分に満たない約4割でした。これは、番組について放送日時や内容、登場人物などを記録したメタデータを使い、6月の1週間、NHKと民放キー局計7チャンネルで放送された全ての番組(映画、アニメ、再放送を除く)を対象に調査したものです。なお番組全般は、エム・データ社の性別分類で分析しています。

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 さらに、NHKと民放キー5局の夜ニュース報道番組(夜9時~夜11時台に放送)にしぼり、6月と11月のそれぞれ5日間(月~金)で、登場した人物を調べてみると、登場する女性の割合は、番組全般の出演者よりも1割程度少なく、約3割を下回りました。

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 次に年代別にみてみます。日本の人口統計では、50代まで男性が女性を上回っていますが、60代以降は女性が男性より多くなっています。

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 しかし、メタデータをもとに分析した番組全般出演者でみると、女性は20代が最も多く、30代以降は減少します。男性は40代がピークで50代以降は減少しますが、60代、70代とも女性より圧倒的に多くなっています。

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 夜のニュース報道番組でも同じような傾向がみられました。女性は19-39歳で最も多く、40歳以降は減少します。男性は40-64歳が最大で、65歳以降は減少しますが、40代以降、女性よりはるかに多くの男性が登場しています。

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 テレビ番組やニュースに登場する人たちは全体として男性に偏っていることがわかりましたが、ある分野では、女性の方が多い、あるいは女性と男性が半々に近い状況がありました。それが、番組の司会者やリポーターです。番組全般では「アナウンサー・キャスター・リポーター」、夜のニュース報道番組では「レギュラー出演者」という指標に分類して数えています。テレビ番組全般、夜のニュース報道番組とも、登場する数は、男女半々に近く、バランスが取れているようにみえます。

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 ところが、番組全般の「アナウンサー・キャスター・リポーター」や夜のニュース報道番組の「レギュラー出演者」も、年代別、年層別にみると、女性と男性の現れ方の違いがみえてきます。
 番組全般、夜のニュース報道番組とも、女性は20代、30代に大きく偏っています。調査からは、明らかに「中高年の男性と若い女性」という構図がみえてきました。

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 私たちは、2021年度からこの調査を行っていますが、2021年度と22年度、ほぼ同じ傾向でした。22年度は、このようなジェンダーバランスのほか、障害の有無や人種的多様性についても、テレビの登場人物をみる分析指標に加えています。調査結果全体については、「放送研究と調査」10月号で詳しく報告しています。ぜひご覧ください。
https://www.nhk.or.jp/bunken/book/monthly/index.html?p=202310

 また、文研フォーラム2023秋 10月4日(水)13時~ 「メディアの中の多様性を問う~ ジェンダー課題を中心に」では、こうした調査データもご紹介しながら、メディアが社会の多様性推進に向けて、果たすべき役割について、パネリストとともに広く考えます。
すでに事前申し込みは締め切りましたが、その後も多くの方から視聴のご要望をいただいておりますので、今回は当日申し込みも受け付けることにいたしました。当日になりましたら、ぜひ下記リンクからお申し込みください。受付後に視聴用URLを送付します。
https://www.nhk.or.jp/bunken/forum/2023_aki/index.html

なお、同時配信を見逃された方は、10月10日(火)~12月24日(日)まで、上記HPで見逃し配信を予定しています。

 

これまでの多様性調査チームの調査報告は以下からご覧いただけます。

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか① 調査報告 テレビのジェンダーバランス
『放送研究と調査』2022年5月号

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか② 研究発表「テレビのジェンダーバランス」ディスカッションから
『放送研究と調査』2022年8月号

連載 メディアは社会の多様性を反映しているか③ 将来に向けた危機感を問うアメリカの事例と専門家の提言
『放送研究と調査』2023年1月号

放送研究リポート テレビ出演者のジェンダーバランス~トライアル調査から
『放送研究と調査』2021年10月号

調査研究ノート 海外公共放送とダイバーシティー戦略 "多様性"の指標とは
『放送研究と調査』2021年2月号

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】"ゆっくり北上"台風7号で特別警報,通過後はお盆の新幹線に影響

 台風7号が,8月15日午前5時前に和歌山県潮岬付近に上陸し北上。近畿や東海,中国地方などに大雨をもたらした。特に台風の発達した雨雲がかかり続けた鳥取県では,線状降水帯が発生。気象庁は15日午後4時40分,鳥取県に大雨の特別警報を発表し,最大級の警戒を呼びかけた。

 さらにこの台風は,新型コロナが5類に移行してから初めて迎えたお盆の交通機関に大きな影響を与えた。このうちJR東海は,12日に東海道新幹線の計画運休の可能性に言及。13日には「15日は終日,名古屋駅と新大阪駅の間で運転をとりやめる」と計画運休の実施を発表した。そして,台風通過後の16日は「始発から通常どおり運転する予定」だった。しかし,台風が日本海に抜けたあとも湿った空気が流入し続けた影響で,16日は東海などで雨雲が発達。沿線の大雨の影響で午前8時半ごろから静岡県内で運転を見合わせた。その後,見合わせ区間は広がり,一時は,直通する山陽新幹線を含めた東京駅と博多駅の間にまで拡大。16日の東海道新幹線は,185本以上が運休,240本以上で遅れが発生し,約30万5,000人に影響が出た。ダイヤの乱れは17日の夕方ごろまで続いた。

 専門家によると,今回の台風は進行速度が比較的ゆっくりだった。また,日本海に抜けたあとも湿った空気が台風に向かって流入し雨雲が発達したことなどが特徴といえる。台風通過後も大雨が降り続くという事態はこれまでもあったが,それを的確に予測し交通機関の運行などにどう生かすか,大きな課題を残した。

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】福島第一原発の処理水,海洋放出開始,中国の猛反発など影響広がる

 福島第一原子力発電所にたまる処理水について,東京電力は8月24日,基準を下回る濃度に薄めたうえで,海への放出を開始した。処理水は,原発事故の直後から発生している汚染水を処理したあとに残るトリチウムなどの放射性物質を含むもので,その量は134万トンと,1,000基余りのタンクで保管できる容量の98パーセントに達し,12年前の事故発生時からの懸案となっていた。放出に先立って東京電力がトリチウムの濃度を確認したところ,国の基準や自主的に設けた基準を大きく下回っていた。

 放出の開始を受けて,福島県内の漁業者などからは風評被害を懸念する声が聞かれた。さらに中国政府が猛反発。放出開始直後に「断固たる反対と強烈な非難を表明する」などとする外務省報道官の談話を発表したあと,税関当局が日本を原産地とする水産物の輸入を24日から全面的に停止すると発表。「福島の核汚染水」という強いことばを使い,「中国の消費者の健康を守り,輸入食品の安全を確保する」と表明した。中国のSNSでは「福島で放射線量が瞬時に上がった」などの根拠のない投稿も拡散した。これに対し,西村環境大臣は記者会見で「事実に反する内容を含む発信には政府として適切に反論を行う(略)科学的根拠に基づいた情報を開示することで,国内外の理解や安心の醸成につながると考えている」などと述べた。

 処理水の放出期間は30年程度に及ぶ見込みで,長期的な安全性の確保と国内外の理解を得ることが課題となっている。メディアにも,この問題に関する正確な情報を長期にわたって伝え続けることが求められている。

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】NHKのネット活用業務「必須業務化」へ,公共放送WG取りまとめ案まとまる

 8月31日,総務省「デジタル時代における放送制度の在り方に関する検討会」で,「公共放送ワーキンググループ(WG)」の取りまとめ案が示された。案では,現在は任意業務として行っているNHKのネット活用業務を必須業務とすべきとの方向性が示された。

 また,ネットのみで同時・見逃し配信を視聴する人にも相応の負担を求めることが適当だとした。ただ,パソコンやスマートフォンを保持しただけで対象とするのではなく,ID取得等,視聴意思が明確な行為を前提としている。

 必須業務の範囲は「放送番組と同一のもの」を基本とし,放送番組以外については,1)災害情報等の国民の生命・安全に関わる情報,2)放送番組の密接関連情報・補完情報,に限定。提供の対象は費用負担者を前提としつつ,1)については例外的に非負担者への提供も必要な場合があることに配慮すべきとした。NHKがこれまで無償で提供してきた番組周知のための情報や取材を深掘りしたテキスト配信等の「理解増進情報」は廃止の方向性が示された。

 また,放送番組以外の具体的な範囲や提供条件については,NHKが原案を策定し,評価・検証を第三者機関が実施して,総務相がNHK予算に意見を付し,国会審議で判断されるとした。

 案では,日本のコンテンツ産業が海外事業者との競争に直面する中,NHKには放送全体のプラットフォームの役割が期待されているとしている。今後NHKはどのような姿で,個人の自律的な判断や民主主義社会の発展,日本のコンテンツ産業に貢献していくのか。改めてその役割が問い直されている。

メディアの動き 2023年09月16日 (土)

【メディアの動き】調査報道大賞で『週刊文春』のジャニーズ報道などが大賞に

 8月9日,優れた調査報道を顕彰する「調査報道大賞」が決定した。90の応募作から2つの大賞を含む7つの作品が選ばれた。

 大賞の1つは『週刊文春』の「ジャニーズ事務所・ジャニー喜多川 少年たちへの性加害の一連の報道」だった。この報道は1999年の初報から24年を経ている。調査報道大賞の特徴は,時間がかかっても成果が顕著になった報道を対象としていることで,その典型だといえる。

 授賞理由には「他メディアの沈黙も映し出すこととなり,ジャーナリズムの在り方を考えることにもなった」との記述もあり,大手メディアがこの問題について,最近まで触れてこなかったことに疑問を投じた形となった。

 もう1つの大賞は神戸新聞の「神戸連続児童殺傷事件の全記録廃棄スクープと一連の報道」だった。「遺族との関係を長く結んでいた地方メディアならではの役割を示していることにも注目したい」と評価された。

 映像部門ではNHKの『ETV特集』「ルポ死亡退院~精神医療・闇の実態~」が優秀賞を受けた。精神科病院で患者が不当な扱いをされている実情を描いたもので,映像や音声という内部状況を直接示すものが報道されたことが「格段の意義がある」と評価された。

 また,「データジャーナリズム賞」に,朝日新聞の「みえない交差点」が選ばれた。警察が公開している60万件余りの人身事故に関するデータを分析した結果,「警察も把握していなかった事故多発交差点」を全国各地で発見し,改善へつなげたことが評価された。