文研ブログ

おススメの1本 2018年11月09日 (金)

#153 いのちを守る「黄色いタオル」 ~2017年九州北部豪雨・2018年西日本豪雨の避難行動を考える~

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか

■  西日本豪雨 高齢者中心に避難の遅れ 

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写真1 岡山県倉敷市真備町上空からの映像(NHK・2018年7月7日)

7月に発生した「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)」では、岡山県・広島県・愛媛県などで死者・行方不明者が232人にのぼりました(2018年10月9日現在)。特に岡山県倉敷市真備町では、町内を流れる小田川などの中小河川が氾濫し、地区の3分の2、住宅約4000棟が浸水(写真1)。51人が亡くなり、その9割が高齢者でした。倉敷市が避難勧告や避難指示を発表したのは7月6日の午後10時以降で、周囲の状況がわからない夜間に大量の水が押し寄せ、避難が遅れたのが原因とみられています。

図1は2017年に倉敷市が作成した真備町の「洪水・土砂災害ハザードマップ」(部分)です。紫色で示された部分が、河川の氾濫で浸水すると想定されていた区域です。これは西日本豪雨で浸水した地域とほぼ一致しています。しかし豪雨のあとの内閣府のヒアリングに対して、住民は「ハザードマップでは自宅周辺まで浸水することを明示していたが、現在は河川改修がなされたこともあって『超えないだろう』と油断していた(原文ママ)」と話しています。

西日本豪雨によって「地域の災害リスクの認知」と「高齢者などの迅速な避難」という課題が改めて浮き彫りになりました。現在、内閣府に有識者のワーキンググループが設置され、対策が検討されています。

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図1 倉敷市真備町の「洪水・土砂災害ハザードマップ(部分)」

■  高齢化率41.9%の村で起きたこと

こうした課題に、すでに地域ぐるみで取り組んでいた村がありました。
NHK放送文化研究所では2017年7月の「九州北部豪雨」で被災した福岡県朝倉市・東峰村、大分県日田市の20歳以上の男女2,000人を対象に世論調査を行いました。このデータを改めてみてみると、興味深いことがわかりました。

調査の対象とした3自治体のうち、東峰村は人口約2,000人の小さな山村です。福岡県内で最も高齢化が進んでおり、高齢化率は41.9%(2018年4月1日現在)となっています。ところが、豪雨災害が起きた2017年7月5日に東峰村にいた人のうち42%もの人が、自宅や職場などから安全な場所へと避難していました。さらに避難したタイミングのデータをグラフにすると、立ち上がりが他の2つの自治体に比べて2時間ほど早いように見えるのです(図2)。九州北部豪雨の死者・行方不明者は42人でしたが、このうち東峰村は3人でした。


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図2 立ち退き避難をした時間帯(7月5日午後0時~11時)


■幸福の「黄色いタオル」

これはいったいなぜなのか? 東峰村に取材したところ、その「秘密」の背景がわかりました。豪雨災害に備えて、2015年から毎年村ぐるみの防災訓練を毎年繰り返し、「いかに高齢者をスムーズに避難させるか」に注力していたのです。昨年の九州北部豪雨のちょうど10日前に行った訓練には、村民の半数にあたる1,050人が参加。高齢者の避難を手助けするサポーターを決めておき、実際に避難経路の確認もしていました。

訓練では、迅速な避難を促す東峰村独自の「自分のいのちを災害から守る7か条」が書かれた黄色いタオルが全員に配布されました(写真2)。自宅を離れて避難する時には、このタオルを玄関先などに結び、「避難済み」であることを示すルールになっていて、訓練でも実践しました。ちなみにタオルに黄色を選んだのは、東峰村が俳優の故・高倉健さんのゆかりの地で、主演映画「幸福の黄色いハンカチ」にちなんでのことだそうです。

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写真2 東峰村の「黄色いタオル」


■  「グッド・プラクティス」の共有を

災害が起きると、メディアは自治体などの「あら探し」をしがちです。もちろん、対応が適切だったかどうかを客観的に検証することはメディアの重要な役割です。その一方で、高齢化率の極めて高い東峰村のような取り組みを、他の地域の模範となる「グッド・プラクティス」として積極的に周知・共有していくことも、有効な減災報道だと考えています。

今回ご紹介した世論調査の内容は、11月1日刊行の『放送研究と調査』11月号に掲載されます。あわせて同10月号掲載の「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)をテレビはどう伝えたか」もご覧ください。

おススメの1本 2018年11月02日 (金)

#152 8Kで地域の災害を記録し、伝えつづける意味 ~NHK熊本 8K防災ワークショップから~

メディア研究部(メディア動向) 山口 勝


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ハイビジョンの4倍・16倍の高精細映像を使った4K・8K放送が、いよいよ12月1日に始まります。自然や芸術、スポーツ中継など、新たな映像体験が期待されています。
私はこの8Kを「美しさ」だけでなく「命を守る映像センサー」として活用できないかと、8K防災活用の研究に取り組んでいます

きっかけとなったのは2016年の熊本地震。地震直後に8Kカメラで空撮した被災地の映像を解析すると、従来の空中写真や現地調査ではわからなかった断層や亀裂、家屋倒壊や車中泊の様子などが詳細にわかり、防災や人命救助に役立つことが分かりました。NHKスペシャル「活断層の村の苦闘 熊本地震半年間の記録」(2016年10月放送)や、サイエンスZERO「防災から医療まで活用 8K  SHV」(2017年4月放送)、「超高精細映像で災害に挑む 8K SHV」(SHV試験放送2017年4月、5月、6月放送)などの番組にも展開しました。

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熊本地震から2年半となる10月6,7日。NHK熊本放送局の220インチ大型8Kモニターを使って、視聴者のみなさんと8Kワークショップ「8Kでわかった熊本地震の爪痕」を開きました。2日間で定員の2倍以上となる120人が参加。地震や防災に対する関心の高さを感じました。参加していただいた皆さん ありがとうございました!

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ワークショップでは、まず8Kを防災に生かす方法や事例について解説した後、NHK熊本局制作の「熊本地震 痕跡を未来へ」という20分の8K番組を見ていただきました。この番組は、地方局が独自に制作した初の8K番組です。熊本地震の活断層や破壊された阿蘇大橋、断層が鉄筋コンクリートの建物を引き裂いた東海大学阿蘇キャンパスなど、災害を後世に伝えるために「震災遺構」として保存することが決まった場所を、8K撮影しました。人が近寄ることが出来ない峡谷の壁面に表れた断層露頭は、小型8Kカメラをドローンに乗せて撮影。断層で引きちぎられた建物の床や柱の8K映像は、現場以上に、破壊の様子を鮮明に伝えていました。参加者からは、「立体感や奥行き感があるので驚いた。床の砂ぼこりまで見える」「この8K空撮で、美しい熊本や九州の島々をぜひとって、全国の人に見てもらいたい」などの声をいただきました。

撮影監督のNHK熊本局の中西紀雄チーフエンジニアは、「アマゾン熱帯雨林での自然番組の撮影で使った小型8Kカメラなら、NHK熊本局という地方局でも8K番組が作れる。熊本の震災を8Kで記録することで、自分のふるさと熊本に恩返ししたいと企画した」と制作意図を熱く語りました。防災教育が専門の熊本大学竹内裕希子准教授は、「風化し、失われやすい震災遺構を現物と8Kというデジタルの両方で保存することで、災害を後世に伝えることができる。熊本県が構想する『巡回型震災ミュージアム』の一角に、熊本城に近いNHK熊本局が入り、8Kをはじめとした映像で震災の記録を、多くの人に見てもらえるとすれば、防災教育や復興観光への貢献にもなるのではないか」と述べました。

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今回のワークショップで、最前列で見ていた高齢の女性から頂いた言葉が強く記憶に残りました。番組を見た感想を聞くと「熊本地震の記憶が、よみがえってきました」と涙をこらえながら答えてくださいました。この方は、冒頭に紹介した2016年放送のNHKスペシャル「活断層に苦闘する村 熊本地震半年間の記録」の舞台となった西原村大切畑から、ワークショップのために熊本放送局まで来てくださっていたのです。
地域の放送局が、地域の災害を記録し、伝え続けることの意義を改めて感じました。
震災当時は渦中にいた方たちが、震災から2年たって、ようやく何が起きていたのか知りたくなったのかもしれないと感じました。

「公共放送から公共メディアへ」とNHKは変わろうとしています。新しく始まる8K放送、美しい自然や文化だけでなく、8Kで災害を記録し、放送するだけでなく、こうしたワークショップや上映会、VODなどを使って伝え続けることは、災害などから命と暮らしを守ることが使命であるNHKだからこそできる、新たな公共メディア像の1つではないかと感じました。

 

ことばのはなし 2018年10月29日 (月)

#151 文研・放送用語班の「中の人」はいったい何をしているのか

メディア研究部(放送用語・表現) 塩田雄大


NHKでは、いろいろな職種の人が働いています。その中には、具体的にどんな仕事をしているのか、なかなかイメージしにくいものもあります。放送文化研究所の仕事も、もしかするとそうかもしれません。

このたび、「NHKのさまざまな仕事や内容を、ネット動画で紹介する」という連続企画の第一弾で、放送文化研究所の放送用語班が取り上げられました。
「紹介する」と言っても、働いている本人が出演するのではなく、その仕事ぶりを、プロの演じ手が(かなり)デフォルメして伝えるという形式になっています。
動画の制作担当者と面談を重ねて、放送用語班の仕事と研究員の行動特性を伝え、全体の構成が作られていきました。

演じていただいたのは、なんと! 超ビッグネーム、友近さんです。
友近さんに、放送用語班の研究員が「憑依ひょうい」したという仮構でできあがったのが、今回の動画です。

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気になることば

放送のことばが気になるのは、放送用語班の研究員として当たり前のことです。加えて、各研究員は、放送のことばだけを気にしているわけではないんです。というか、放送以外のことばも、気になっちゃうんです。

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たとえば、「素爪」ということばがあります。これは、「マニキュアを塗っていない爪」という意味(だそう)です。
では、このことば、「すつめ」と言うのか、「すづめ」と言うのか? 「すづめ」だったら、「すずめ」と同じ発音になってしまうのではないか? 「すずめ」って言えば「半分、青い。」の楡野鈴愛は確かに「素爪」っぽい雰囲気だったな、あれ、「雰囲気」って「ふいんき」だっけ「ふんいき」だっけ、ところで「かに爪コロッケ」は「かにつめ」なのか「かにづめ」なのか、「汚部屋」は「おへや」か「おべや」か、で「猫砂」の発音はいったいどうなるんだ、ちなみに「酢イカ」は「SUICA」と同じアクセントでいいのかい、と、もうやめておきますがこんなふうにとめどなく思いがあふれていっちゃうのが、放送用語班の研究員なんです。これ、ぼくだけじゃないんですよ、ほんとに。

研究員はみんなずっとこんな感じですから、テレビを普通に見ていても、気になるところが自然と耳に残ってくるんです。



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調査あれこれ 2018年10月26日 (金)

#150 幼児のインターネット動画利用が増加中!? ~2018年6月「幼児視聴率調査」から~

世論調査部視聴者調査) 行木麻衣


先日、我が家の息子(3歳)をスマホで撮影していたら、カメラに向かって「○○チャンネルまた見てね!」と、YouTube(ユーチューブ)に出ているお子さんのまねを始めました。(「○○チャンネル」とは、子どもの名前やニックネームをつけたチャンネルでおもちゃレビューなどを行っている動画です)。インターネット動画が大好きな息子ですが、とうとうYouTubeごっこを始めたのかと驚きました。
近年、小学生の将来なりたい職業でYouTuber(ユーチューバー)と答える子もいると聞きます。小学生にもインターネット動画利用が広まってきていますが、幼児はインターネット動画をどのくらい見ているのでしょうか。

文研では、毎年6月に2~6歳の未就学児(東京30km圏)を対象として「幼児視聴率調査」を実施し、テレビの視聴状況、録画番組・DVDの利用状況などを聞いています。
きょうは、今年6月4日(月)~10日(日)の1週間に実施した「幼児視聴率調査」から、幼児のインターネット動画利用と保護者の意識を紹介します。

「幼児視聴率調査」の付帯質問で、幼児の休日を除くふだんの日1日にインターネット動画をどのくらい再生しているのかを尋ねています。「15分未満」から「2時間以上」まで「見る」と答えた人すべてを足し上げると(視聴計)、インターネット動画を見る幼児は、今年は50%で、2015年以降、増加傾向が続いています。男女別・年齢別でみても、今年はそれぞれ50%前後と性別や年齢による差はみられませんでした。

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また、インターネット動画の再生時間量をみると、インターネット動画を見ている幼児の中では「30分未満」が最も多く、続いて「30分以上1時間未満」でした。2016年と比べて1時間を超える長時間利用者が増加し「ほとんど、まったく見ない」が減少しました。

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インターネット動画の再生時間は「30分未満」が多いものの、1時間以上の長時間利用者が増加しているという現状を受けて、一児の母として、子どもがインターネット動画を見ることに対して保護者の方々はどのように感じているのか気になってきました。
こちらは、付帯質問で「お子様がインターネット動画を見ることについて、どのように思うか」を尋ねた結果です。


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「子どものためになる動画を見せたい」が51%と最も多く、約半数の保護者が「子どものためになる動画」を期待していることが分かります。一方で、約3割の保護者が「動画は子どもに悪い影響がある」と感じています。「その他」を選択した方には具体的に記入してもらいましたが、その中には「時間を決めている」「長時間でなければよい」といった時間制限をしている、「移動中など、仕方なく」といった本当は使いたくないけれど仕方なく使っているなどの回答がみられました。
約半数の幼児がインターネット動画を利用している中で、インターネット動画に対して不安に思う面がある一方、ためになる動画を見せたいという保護者の気持ちや、時間を制限するなどしてインターネット動画と上手に付き合っている保護者の姿が見えました。
今回、上の5つの選択肢に入らなかった「その他」は21%で、想定よりもさまざまな意見があがりました。保護者の方々が「お子様がインターネット動画を見ること」について日ごろから幅広い視点で考えていることの表れだと感じます。今後も幼児とインターネット動画の関係について、保護者の意識がより的確につかめるような調査設計を検討していきたいと思います。

幼児にテレビはどのくらいの時間見られているのか、録画番組やDVD利用の状況…など、今年の詳細な結果は『放送研究と調査』10月号で報告していますので、お読みいただければ幸いです。

 

おススメの1本 2018年10月19日 (金)

#149 災害多発の時代 テレビ・ラジオは何ができるのか? ~平成29年7月九州北部豪雨被災地の住民調査から考える~

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか


2017年7月の「九州北部豪雨」では、7月5日から6日にかけて、台風と梅雨前線の影響による猛烈な雨が福岡県と大分県の中山間地に降りました。中小河川が氾濫、流域の集落が浸水や土砂災害に見舞われ、死者・行方不明者は42人にのぼりました。


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災害後、私も被災地に入りました。泥に覆われた坂道を30分ほど歩いてたどり着いた福岡県朝倉市の集落は、両側を急峻な山の斜面に挟まれ、川沿いのわずかな平地に建つ住宅や商店は土砂に埋もれていました。発災当時、外は滝のような雨、目の前の川には大量の流木や土石流、背後の山からは土砂が家の中になだれ込む・・・そんな状況が目に浮かびました。「この地域の人たちはどうやって身を守ったのだろうか?」「警報や避難情報は有効だったのだろうか?」当時の状況を明らかにするため、NHK放送文化研究所は、被災した福岡県朝倉市・東峰村、大分県日田市の20歳以上の男女2,000人を対象に世論調査を実施しました。


■「立ち退き避難」は20~29% 川のようになった道路を通って

自宅などから避難場所などに移動する「立ち退き避難」をした人は、朝倉市で20%、東峰村で29%、日田市で21%でした。「立ち退き避難」をした動機は「雨の降り方が激しかった」「周りの道路が川のようになっていた」「近くの川の水位が上がってきた」などの異常な現象でした。土砂災害警戒情報や避難勧告・避難指示などの「情報」だけで動いた人はほとんどいませんでした。
さらに、移動する途上の状況を聞いたところ、半数以上の人が「道路が川のようになっていた」と回答。浸水していない安全な状況下で移動した人は2割程度でした。
気象状況が急激に悪化した九州北部豪雨では、災害が発生するまでの「リードタイム(先行時間)」がほとんどありませんでした。今回の調査では、避難勧告や避難指示が出たときには、すでに浸水などの被害が起きていたこともわかり、「防災情報の限界」を痛感しました。


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■速報は「テレビ」から「メール」にシフト

従来の被災地の調査では、防災気象情報や避難情報を知ったメディアとして「NHKテレビ」がトップにあげられてきました(手前味噌になりますが・・・)。しかし今回の調査では「行政からのメール()」が「NHKテレビ」にほぼ並び、場合によっては「行政からのメール」の方が多いケースもありました。今後はメールや防災情報アプリでこうした緊急情報を得る人の方が増えていくのは間違いありません。 
ネットによる防災情報の伝達が今後一層拡大・充実していく中で、「テレビ・ラジオ」の役割が問われています。
 ※緊急速報メール(エリアメール)や自治体の防災情報メール


■激甚化する災害 テレビ・ラジオだからできることは?

今回の調査では、防災情報や災害報道に関する意見も自由に書いてもらいました。これからの防災報道のあり方を考えていく上で、被災地の方々の生の声は「宝」です。「雨雲のレーダー画像をもっと見せて」「通行可能な道路の情報を伝えて」「停電中や自動車を運転しているときにはラジオだけが情報源。ラジオで避難情報の対象地区名などをきめ細かく繰り返し伝えて」といった具体的な要望も多く寄せられました。また、学校関係者と思われる方から「視聴者が投稿した映像がテレビで流れ、地元の校区内の状況がわかった。現場の映像を見られたことで、学校としても早期に動くことができた」という報告もありました。

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平成最悪の水害となった西日本豪雨、台風20号・21号・24号、大阪府北部地震と北海道胆振東部地震・・・。今年の6月以降、各地で災害が相次ぎました。まもなく終わる「平成」という時代は、阪神・淡路大震災、東日本大震災、西日本豪雨などに代表される「災害の時代」として記憶されるのかもしれません。災害が激甚化していく中で、「テレビ・ラジオだからできる防災・減災報道」をさらに進化させるときに来ているのではないでしょうか。

今回ご紹介した世論調査の内容は11月1日発行予定の『放送研究と調査』11月号に掲載されます。あわせて放送研究と調査』10月号掲載の「西日本豪雨(平成30年7月豪雨)をテレビはどう伝えたか」もご覧ください。

 

メディアの動き 2018年10月12日 (金)

#148 アメリカ公共放送局が生き残りをかける次世代放送規格とは?

メディア研究部(海外メディア研究) 大墻 敦


今回、『放送研究と調査』10月号に掲載した論考を書くにあたり、自宅のパソコンから、アメリカのワシントンDCやアリゾナ州フェニックスにいる「ATSC3.0」(次世代地上放送規格)の導入に取組む関係者たちのパソコンにスカイプでつなぎインタビューをしました。「自前の伝送路を持たないと、インターネットに負ける」「インターネットと同等の機能をもつ伝送路で勝負!」など、オフィスでの勤務を始めたばかりの彼らの威勢の良い英語が、深夜の私の部屋に響きました。

日本では2011年7月にアナログ放送が停波し、まだ7年。なのに「もう次世代?」と思われる方も多いかと思います。放送局で長年にわたり働いてきた私でも、そう思います。そもそも、アナログからデジタルへ転換する理由も、当時、よくわかりませんでした。私は番組制作が専門で、技術的なことには疎い人間です。
そんな私がこの論考に取り組むことになったきっかけは、昨年12月に行ったAPTS(America’s Public Television Stations、アメリカ公共テレビ連盟)のロナ・トンプソン副社長へのインタビューでした。彼女が「ATSC3.0の導入により公共放送はNetflixなどのOTT企業、YouTube、Amazon、Facebookなどに押され気味の状況を挽回するチャンスだ」と熱弁をふるうのに驚きました。正直、「ATSC3.0って何?」という気持ちでした。しかし、調べていくとアメリカでも地方のテレビ関係者たちの危機感は強く「このまま座してインターネットに敗北するのか」「リスクはあるけれども、うって出るべきか」と悩みが深い現状を知りました。

mr1810cover-140.png今回の論考のタイトルは「次世代放送規格「ATSC3.0」にアメリカ公共放送局はどう取り組んでいるのか?~地方都市における新たなテレビ・エコシステムの構築へ~」と、ちょっと長くて難しそうです。でも、私としては、テレビの将来を考えるうえでは欠かせない視点の提供ができたのではないかと考えています。関係者たちが全員口をそろえて言ったのは「成功するかどうかは分からないけど、前進するしか道はない」という主旨の言葉でした。是非、読んで下さい。




おススメの1本 2018年10月05日 (金)

#147 「トライアル研究」の発表会はトライアルでした

メディア研究部 鳥谷部寛巳

つい2年ほど前まで「アーカイブ研究」なるものをよく知らなかった自分が、こうしたイベントの開催を担うことになるとは思ってもみませんでした。「NHK番組アーカイブス学術利用トライアイル 研究発表会2018」のことです。その模様を『放送研究と調査』10月号掲載の「アーカイブ研究の現在」で報告しました。

NHKは2010年から、NHKアーカイブスに保管されている放送番組を学術利用の閲覧に供する事業(詳しくは公式ウェブサイト参照)を行っています。そこから生まれた成果論文は61本、研究発表(学会等にて)は65件にのぼります(今年3月末時点)。
事業の担当チームは去年末、アーカイブ研究の一層の発展につなげることを趣旨とした研究発表会を開くことを決めました。開催は半年余り後(今年7月)。成果論文の中から5つほどを選考し、利用番組の一部上映を盛り込むなどアーカイブ研究ならではの発表会にしようということになりました。突然ですが、そのときの私の心のつぶやきを以下に。

……こういう立ち上げって、誰かがプロデューサー役を担って少々強引に事を進めていかないと、“絵に描いた餅”で終わりかねないんだよな~。それだけにとっても大事な役割。結構大変な役割。個人的にはなるべく、いや何とか避けたいところ。ま、自分はこの事業に関わってまだ1年半と最短だから、免れるかな……

しかしながら結局、立場上&成り行き上(詳細略)、ほとんど買って出るかのごとく私がプロデューサー役を務めることになりました。組織に身を置いて30年。多少は物分かりがよくなっているのです(発表者はじめ関係者の皆さん、実はそんな経緯で申し訳ありません)。

私は番組制作畑の出身ですが、アーカイブ研究についてはほぼ素人。担当チームの先輩たちや審査委員の先生方の意見・指導を仰ぎ、開催の段取りとプログラム内容を少しずつ固めていきました。まさに手探りの“トライアル”だったように思います。
その中でも特に苦心し、印象に残っているのは、発表会のラインナップをバラエティーに富んだものにしようと試みた、「研究分類」です。これは自分のアーカイブ研究への理解を深める意味でもかなり勉強になりました。どんな分類なのかは、冒頭で紹介した報告の中で共同執筆者の宮田章が解説しています。「のっぺらぼうの顔にいくらか目鼻がつく」(=「茫洋としていたアーカイブ研究が分節できる」)ことにつながった、「これまでになかった研究分類」。もともと発表会用の便宜的なものではありましたが、それこそ意味ある“トライアル”になったように思います。今回発表された研究5件の内容(要旨)とともに、ぜひご一読ください。

147-1005-111.pngちなみに、発表会が終了したあとに、発表者・審査委員・来場者が自由に参加できる懇親会を行いました。発表者の皆さんが喜んでくださっている様子、アーカイブ研究に関心のある人たちがつながっていく様子を拝見し、「開催してよかったな」としみじみうれしくなりました。あんなことを思っていたくせに。現金なものです。








おススメの1本 2018年09月28日 (金)

#146 あさどらてれこのほうそく

メディア研究部(番組研究) 亀村朋子

連続テレビ小説『半分、青い。は今まさに最終回を迎えようとしています(2018/9/29(土)最終回放送)。北川悦吏子さんオリジナルの作品ということで、「物語がどのような結末を迎えるのか?」そこを楽しみに見ていた方も多かったと思います。
そんな今日このごろではありますが、朝ドラ研究プロジェクトでは、『放送研究と調査』9月号に、『半分、青い。』の前作である『わろてんか』の視聴者アンケート調査の結果を報告しました。「いまさら?」と思われたそこのあなた!申し訳ありません。放送終了直後の調査結果を分析しまとめるには、ある程度の時間を要するので、どうしても現在放送されている作品との「時差」が生まれてしまうことになります。

『半分、青い。』は、最終週に至るまでジェットコースターのような展開が度々あり、ハラハラドキドキすることが多かったのに比べて、『わろてんか』はそれほど心揺さぶられ過ぎずに、安心して見られた感が強い作品でした。その大きな理由として考えられるのは、『わろてんか』は実在の人物たちをモチーフとして作られた話だったことです。それを承知して見ていた視聴者は多く、「きっとハッピーエンドになる」と分かっているからこそ安心して見ていた…そんな意見もアンケートに多く見られました。

朝ドラは、半年ごとに作品が入れ替わります。『半分、青い。』のように振幅の大きなドラマは、見ていて「面白い」と同時に「少々疲れる」ところもあるのではないかと思います。『わろてんか』の感想には、「見ていて疲れないのが良い」という意見がありました。また、「わろてんか(=笑ってくれないか)」というタイトルどおりに「笑うことにより幸せになれる、という感じがとても好き」という心温まる感想もありました。そんな『わろてんか』の分析結果は、ぜひ『放送研究と調査』9月号「朝ドラ研究 視聴者は朝ドラ『わろてんか』をどう見たか」でお読みください。
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『わろてんか』『半分、青い』に続く今後の朝ドラは、『まんぷく』『夏空』と、「モデルあり」と「オリジナル」とが1作ごとに交互に登場します。朝ドラを長期で楽しんでいる人にとっては、タイプの違う作品を半年ごとに新鮮な気持ちで見ることができるので、「朝ドラという枠は、よく出来ている」と思いますし、そこに朝ドラがヒットしている要因もあると思います。当然、見る人の好みによって好き嫌いは生じますが、例え自分にとってあまり好きではない作品であっても、半年というスパンは、「そのくらいなら頑張って見よう」「次のドラマに期待しよう」と思って見続けられるギリギリの期間なので、離れないお客さんが多いのかもしれない、とも思います。もちろん好きな作品であれば、毎日の15分がささやかな楽しみの時間ともなります。「モデルあり」と「オリジナル」が テレコテレコ(交互)にやってくることも、飽きさせない工夫となっているのではないでしょうか。「朝ドラ・テレコの法則」は成功している、そんな気がするのです。
来年の春、朝ドラ100作を機に、文研の朝ドラ調査は総まとめに入ります。またブログでも報告させて頂きますのでご期待ください。

 

おススメの1本 2018年09月21日 (金)

#145 "カラー写真"は、語りかける

メディア研究部(メディア動向) 谷 卓生

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 73年前の今日。1945年9月15日、終戦直後にマーシャル諸島で撮影された日本軍の兵士たち。・・・ニューラルネットワークによる自動色付け+手動補正。


渡邉さんのツイートより(Twitter @hwtnv)


このツイートは、広島原爆の実相を伝えるデジタルアーカイブズ「ヒロシマ・アーカイブ」などの制作で知られる東京大学大学院の渡邉英徳教授が、今月(9月)15日に、ツイッターに投稿したものだ。元の白黒写真を、早稲田大学理工学術院の研究グループが開発したAI(人工知能)を使って自動でカラー化し、さらに画像処理ソフトも使って自然な感じに仕上げている。

渡邉さんは、元の白黒写真も同時に投稿する。

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2枚の写真を見比べて、皆さんはどのような印象を持たれるだろうか。
渡邉さんは、毎日のように「その日」の白黒写真をカラー化して投稿している。このような日付のシンクロとカラー化が生み出した生々しさによって、私には、73年の時空を越えて旧日本軍の兵士たちが語りかけてくるような気がする。同じように、カラー化された写真に触発された人が多くいるのだろう。このツイートは、3100あまりリツイートされ、およそ3800のが付いている(9月18日現在)。さらには、自分の身内の戦争体験や自身の戦争に対する考えなどが、コメントとして多数つけられている。コメント同士でやり取りが行われることもあり、渡辺さんのツイートから、いわば“小さな言論空間”が生まれたとも言えるのではないだろうか。

渡邉さんは、このようなプロセスを「記憶の解凍」と呼び、3つのフェーズから成り立っているとする。


まず,白黒写真が持つ“凍った“印象が,カラー化によって“解かされる“。次いで,創発する対話によって,人々の記憶がよみがえり“解凍“される。そして,元の写真への社会の関心が高まり,写しこまれた記憶が未来に継承される。


渡邉さんのツイートより(Twitter @hwtnv)


アーカイブされていた白黒写真がカラー化され、“現在のツイッター空間”に投げ込まれることで、写真は死蔵されるのでなく、息を吹き返すのだ(渡邉さんは、フェイスブックやインスタグラムにも、戦争の時代の写真を中心に、同様の投稿を行っている)。

さらに、現在は、写真だけでなく、白黒の“動画”もカラー化することが可能になった。これまでもカラー化は行われてきたが、かなりの時間とコストが必要で簡単に行うことは難しかった。しかし、NHK放送技術研究所(技研)が開発した「AIによる白黒動画カラー化」技術を使えば、容易にカラー化できるようになり、放送にも利用された(8月に放送されたNHKスペシャル『ノモンハン 責任なき戦い』で、ノモンハン事件の記録フィルムのカラー化に使われた)。
この技術が、一般にも広く使えるようになれば、白黒動画の分野でも、「記憶の解凍」が多数行われ、「記憶の継承」に大いに資することになるだろう。


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技研公開2018

※技研が開発した「AIによる白黒動画カラー化」技術については、『放送研究と調査』2018年8月号「人工知能で白黒フィルムの映像を自動でカラー化」をご覧ください。

メディアの動き 2018年09月14日 (金)

#144 受信料は時代遅れで不公平?-デンマークの選択

メディア研究部(海外メディア研究) 中村美子

4月に、デンマークに行って来ました。

いま、番組研究グループの渡辺誓司主任研究員と共同でパラリンピック放送をテーマに調査研究を進めています。デンマークの公共放送DRのパラリンピック放送を取材することが、デンマークを訪問する第1の目的でした。
ところが、1月に「受信料廃止/税金化」と「DRの予算を5年間で20%削減」の2点について与野党が合意し、4月にはこの政治合意を前提に、政府は2019年から5年間のメディア政策提案を発表しました。いま、ヨーロッパ各国で、公共放送の財源制度や財源規模の見直しが続いています。が、正直に言って、デンマークの動きはノーマークでした。

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他の国に比べると“電光石火”の決定に、いくつもの疑問がわきあがりました。受信料廃止の理由は?税金化のリスクをどれほど考慮したのか?また、DRに「ニュース、教育、文化」に集中することを政府は求めています。公共放送にとってコンテンツを通じて視聴者との関係の構築することがますます重要になっています。ましてや、NetflixやYouTubeなどの利用が高まり、情報や娯楽の選択肢は拡大しています。それなのに、公共放送の範囲を狭める意図は何か?

そこで、パラリンピック放送の現地調査をチャンスに、メディア政策に係る国会議員、メディア・コミュニケーションの研究者、当事者のDRにこうした疑問をぶつけてみました。その答えは、ぜひ『放送研究と調査』9月号 「受信料廃止を決めたデンマーク ~新メディア政策協定と公共放送の課題~」をご覧ください。

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原稿では、聞き取り調査での空気をお伝えすることができませんでしたが、国会議員は、DRを“governmental broadcaster”と呼び、「DRに対する政府のコントロールを維持し続ける」と正直に語るため、内心複雑な思いがありました。また、研究者とDRの幹部職員が、「政治的交渉に立ち入ることができない」と淡々と語る様子も想像とは違ったものでした。

デンマークでは来年総選挙が予定され、左派への政権交代があるかもしれません。その場合、メディア政策の修正も考えられますが、「受信料の廃止/税金化」は与野党合意ですから、よほどのことが起きない限り、これが覆ることはありません。

ところで、デンマークの取材は今回が2回目です。10年余りのブランクがありました。海外のホテルでは滞在中、部屋のテレビのチャンネルをあちこち変えながら、その国のテレビ番組をチェックします。なぜか、公共放送DRが放送する6つのチャンネルしか見ることができませんでした。広告放送のTV2など数チャンネルはあったはずなのに、どうしたのでしょうか。ホテルが悪い? 一応、三つ星には宿泊できました。あとで思い出したのですが、デンマークの地上デジタル放送は、DRのチャンネル以外すべて有料サービスで提供されています。これが、原因かもしれません。

それにしても、DRのどのチャンネルも超真面目。ドキュメンタリーやクラシック・コンサートが目に付き、夕方の子ども向けチャンネルはアニメ、若者向けと思われるチャンネルではテレビゲームの攻略をテーマにしたスタジオ番組でした。最近世界的にじわじわと人気が出てきた北欧ドラマ・ミステリーは、週末を含め5日間の滞在期間中、まったく見ることができませんでした。こんなところに、もうすでに政治の意向が影響しているのでは、と思ってしまいました。