文研ブログ

調査あれこれ 2017年03月31日 (金)

#72 世界の"いま"を読み解く国際比較調査ISSP

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子

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家庭生活に満足している日本人女性は33%、つまり3人に1人。これを多いととらえるか、少ないととらえるか。参考になるのが世界との比較です。
NHKが参加している国際比較調査グループISSP(International Social Survey Programme)は、世界約50の国・地域の調査機関が、毎年テーマを設定して共通の質問で世論調査を行っています。これまで「社会的不平等」「環境」「職業意識」など多岐にわたるテーマで調査を実施してきました。冒頭のデータは、2012年に実施した「家庭と男女の役割」調査の結果です。家庭生活に満足している日本人女性の割合は、調査を行った31の国・地域の中で、2番目に低い結果でした(詳しくは、「放送研究と調査2015年12月号」をご覧ください)。

ISSPが発足したのは1984年、NHKが参加するようになったのは1993年からです。以降、毎年国内で調査を行い、その結果は各国のデータを集約するドイツの研究機関を通じて、世界の政策担当者や研究者に活用されています。
調査テーマや質問項目は、毎年1回開催される総会で話し合われています。6~7か国から成るドラフティング(調査票設計)グループが練り上げた英語の調査票案について、通訳なしで活発な議論が交わされます。総会で確定した調査票は、それぞれの国の言語に翻訳したうえで調査を行います。

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2016年にリトアニア・カウナスで行われた総会の様子
(手前右から2人目が筆者)

総会で質問文や回答の選択肢を検討する際、イギリスの担当者に言い回しを確認する場面がたびたびあります。これは、ISSPのおおもとの調査票がイギリス英語で作られているためです。ところで同じ英語でも、イギリス英語とアメリカ英語とでは表現が異なることがあるのは広く知られています。ISSPでも、オリジナル版の調査票で“private creche”(民間の保育所)という選択肢は、アメリカの調査票では”private day care center”となっている例があります。“creche”は、アメリカ英語だと「キリスト生誕の光景」という別の意味にとられてしまう可能性があるからです。
2つ以上の言葉が使われている国では、複数の言語に翻訳して調査を行います。例えば南アフリカは6つの言語、フィリピンでは7つの言語、インドに至っては10もの言語に翻訳されています。調査票には、翻訳上の諸注意が記され、できるだけ原文の意図が伝わるような工夫がなされています。
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「放送研究と調査3月号」では、2013年に実施した「国への帰属意識」調査の結果をもとに、国への愛着と外国人に対する意識の関係について考察しています。日本では各国と比べて、国への愛着が強い人が多いのか。2016年にEUからの離脱を選択したイギリス国民は、3年前の時点で、移民に対してどのような感情を抱いていたのか。排外主義が吹き荒れる2017年の「いま」を占うヒントが結果から読み取れます。ぜひご一読ください。

調査あれこれ 2017年03月24日 (金)

#71 最近の朝ドラはなぜ高視聴率を維持し続けているのか?

メディア研究部(番組研究) 二瓶 亙

<朝ドラを習慣的に見続ける人が増えてきている>

文研の調査で、朝ドラを比較的よく見ている視聴者の中では、作品を問わず朝ドラを習慣的に見続ける人が最近増えてきていることがわかりました。
お気づきになっている人も多いと思いますが、ここ数年の朝ドラは20%を超える高い視聴率1)を獲得する作品が多くなっています。『あさが来た』(2015年度下半期放送)は、21世紀に放送された朝ドラ32作品中の最高視聴率(23.5%)を獲得しましたし、それに続いて放送した『とと姉ちゃん』(2016年度上半期放送 22.8%)は第3位、現在放送中の『べっぴんさん』も先週末(3月18日)までの平均で20.4%と20%を超えています。
<注>1)ここで言う“朝ドラの視聴率”は、すべてビデオリサーチ社の関東地区の世帯視聴率(各作品の全回平均)です。

ビデオリサーチ社の視聴率は、番組が放送される時間帯に、その番組が放送されるチャンネルをつけていたかどうかを機械で測定したテレビ受像の“実態”です。したがって、“テレビでその番組は流れていたが見ていなかった”ということも起こりえます。つまり、視聴率では、その人がその番組を「見た」と意識していたかどうかはわかりません。そこで、文研朝ドラ研究プロジェクトでは、2015年上半期放送の『まれ』から、朝ドラ視聴者がどのように各作品を見て、どう受け止めたのか、朝ドラに対する“意識”を探る視聴者調査を始めました。その調査によれば、図1のように、作品を追うごとに「朝ドラを見ることが習慣になっている」と“意識する”人が増え、『とと姉ちゃん』では8割を超えていました!最近の朝ドラは視聴率だけでなく、視聴者の意識の上でも視聴が増えていることが明らかになったわけです。

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<朝ドラが高視聴率を維持し続ける要因は何か>

では、人びとのテレビ離れが進んでいると言われる中で、このように朝ドラが高視聴率を維持し続けている要因は何なのでしょうか?朝ドラ研究プロジェクトは、その要因を解明することを通して、テレビがより魅力的なものになり今後も多くの人びとに見続けてもらえるようになる一助になることを目指しています。今回、3作品を調査したことで朝ドラ高視聴率維持の要因がいくつか見えてきましたので、文研の月刊誌『放送研究と調査』3月号 「『とと姉ちゃん』と前2作の視聴者調査を通して、朝ドラ高視聴率の要因を探る」にまとめました。例えば、『まれ』『あさが来た』『とと姉ちゃん』の主人公は明るく前向きに突き進む女性ですが、調査では、この“明るく”“前向き”というイメージは視聴者が朝ドラに求めるイメージの上位に位置しているのです。

一方、現在放送中の『べっぴんさん』の主人公は明るく前向きと言うよりは“おっとり”していて前3作の主人公とはかなり性格が異なります。しかし、それでも『べっぴんさん』は視聴率20%以上をキープしています。はたして朝ドラ高視聴率維持の要因は何なのか…『放送研究と調査』3月号の論文をお読みいただいた上で『べっぴんさん』の残り1週間を見ていただくと、皆さんにも新たな発見があるかもしれません! ぜひご一読ください。

文研フォーラム 2017年03月17日 (金)

#70 多くの来場に感謝~「文研フォーラム2017」

計画管理部(計画) 安楽裕里子

年に一度、文研の調査研究成果を発表するNHK文研フォーラム
今年は3月1日(水)〜3日(金)に東京の千代田放送会館で、“いま考える メディアのちから、メディアの役割”をテーマに開催しました。海外からのゲストも招いて様々なテーマで行った8つのプログラムには、「フォーラム」という名前になったおととし以降で最も多い、延べ1400人を超える方々にご来場いただきました。

 文研フォーラム2017ポスター
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ここでは、初日と2日目に行われたシンポジウムの様子をちょこっとご紹介します。
初日は“東京2020オリンピック・パラリンピックへ”と題し、世論調査の報告と、シンポジウム「パラリンピックと放送の役割を開催。

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上智大学の師岡文男教授、英チャンネル4のマーティン・ベイカーさん、車いすランナーでパラリンピック金メダリストの伊藤智也さん、NHK2020東京オリンピック・パラリンピック実施本部の樋口昌之副本部長をパネリストに迎え2時間半。リオ大会ではNHKのスタジオゲストも務めた伊藤智也さんからは、「障害者スポーツとして撮るのではなく、アスリートとしてカッコよく撮って欲しい」という率直な発言、また、日英の放送を比較した報告や、登壇者の熱いディスカッションに会場も沸き、2020年に向けた関心の高さが改めて感じられました。

2日目は、「テレビ・ドキュメンタリーにおける“作家性”とは?」として、文研発行の『放送研究と調査』に3年にわたって掲載した「制作者研究」のシンポジウムを2時間半にわたって開催。

ゲストにジャーナリストの田原総一朗さん、テレビ演出家・脚本家の今野勉さん、元NHKディレクターの相田洋さんという3巨匠、コメンテーターに早稲田大学の伊藤守教授を迎え、制作者の作家性などをテーマに自由闊達(制御不能?)なトークが繰り広げられました。

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このシンポジムの様子は、後日、文研ホームページで動画配信を予定しています。どうぞお楽しみに。

また、今回は午後の時間帯に1階ラウンジで、「文研カフェ」をオープン。文研の調査研究内容を紹介した各グループ力作のパネルを見ながら、登壇者やゲストと質疑を交わしていただくなど、交流の場としてにぎわっていました。

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文研各部グループ作のパネルを展示
世論調査部 視聴者調査グループとメディア研究部 メディア動向グループのパネル(クリックすると拡大表示されます)

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シンポジウム終了後の文研カフェ

3日間にわたったプログラムには、応募開始直後から多くの申し込みをいただきましたが、座席数の関係でご来場いただけなかった方も出てしまい、大変申し訳ありませんでした!
そんな皆さんに、会場でお配りした文研作成の資料を、近々「文研フォーラム」のホームページに掲載する予定ですので、ぜひご活用ください。
また、いくつかのプログラムでは、『放送研究と調査』の6月号、7月号等に採録を予定していますので、こちらもぜひご一読ください。
文研フォーラムはここ数年、毎年3月に開催しています。文研の一年間の調査研究成果に、多少のテレビ的演出も加え、分かりやすい発表に努めております。来年度もご期待ください!
ご来場いただきました皆さん、ありがとうございました。

ことばのはなし 2017年03月10日 (金)

#69  「俺はナンバーワンになりたいんだ」 ←誰が言ったことばでしょう?

メディア研究部(放送用語・表現) 太田眞希恵

 俺はナンバーワンになりたいんだ
 200mでは世界記録を狙いにいく
   
 俺はやると言っただろう
 自分を誇りに思うよ


これは、リオデジャネイロオリンピックを伝えるテレビ番組に出た、ある外国人選手のインタビューについていた翻訳テロップです。誰のインタビューかわかりますか?

このインタビューの話者は、陸上男子100m、200m、4×100mリレーに出場して3つの金メダルをとったウサイン・ボルト選手(ジャマイカ)です。多くの人がこの選手を思い浮かべたのではないでしょうか。「200m」「世界記録」というのが大きなヒントになったとは思いますが、実はそれ以外にも、多くの人を正解に導くヒントがあります。それは、「」という1人称代名詞や、「~んだ」「~よ」などのことばづかいです。ボルト選手らしいことばで訳されています。
このような“ある人物像と結びついた特徴あることばづかい”のことを「役割語」といいます。ちょっと聞きなれないことばですよね。先行研究にある次のような例題を解いてみると、イメージがつかめると思います。

問題 次のa~hとア~クを結びつけなさい。
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『<もっと知りたい!日本語> ヴァーチャル日本語 役割語の謎』金水敏 著(岩波書店)より (※正解は末尾に)

この「役割語」については、日本語研究の分野でいろいろな研究が進んでいます。漫画や小説などフィクションの世界で使われることが多いのですが、ノンフィクションの分野であるテレビのスポーツ放送でも、外国人選手のインタビューにあてた翻訳のことばにけっこう使われていることがわかっています。最初にご紹介したボルト選手の翻訳テロップもその例です。

さて、「俺」という1人称代名詞や、「~さ」「~よ」「~んだ」などの男性的なことばづかいが似合うボルト選手ですが、リオデジャネイロオリンピックのテレビ放送では、次のような翻訳テロップもありました。

 リオでのゴールと私の夢は同じです
   
 僕はなぜか他の種目より
 200mでいつも緊張するんです
   
 そうです リオが最後です


これらの翻訳テロップでは、「」「」や、「~です」という丁寧な表現が使われていました。このような違いは、なぜ現れるのでしょうか。

こうした、オリンピック放送に使われた翻訳テロップの「役割語」について研究・分析したものを『放送研究と調査』3月号に掲載しました。
 ■再考 オリンピック放送の「役割語」 ~“日本人選手を主人公とした「物語」”という視点から~ 
  『放送研究と調査』2017年3月号

2008年の北京オリンピックの際に分析した下記のものと合わせてお読みいただくと、オリンピック放送で展開される「役割語」の世界について、さらに理解できるかと思います。
 ■ウサイン・ボルトの“I”は、なせ「オレ」と訳されるのか ~スポーツ放送の「役割語」~
  『放送研究と調査』2009年3月号


ぜひ、お読みください。

 …これを「役割語」ふうに言うと、
「ぜひ、読んでくれよな」  (ボルト選手ふう)
「ぜひ、お読みくださいませ」(奥様ふう)
「ぜひとも、読むのじゃぞ」 (博士ふう)
「ぜったい、読んでよね」  (男の子 または 女の子)
…あなたなら、どんなふうに言いますか?

「ぜったい、読んでよ! ちゃんと読みなさいよ!」(家で息子に言うときの私…)



「問題」の答え:a-エ,b-ウ,c-ク,d-ア,e-キ,f-イ,g-カ,h-オ

放送博物館 2017年03月03日 (金)

#68 NHK放送博物館 特別展「東日本大震災 伝え続けるために」

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか
メディア研究部(メディア史研究) 東山一郎

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2011年3月11日 午後2時46分。
「あの日、あの時」からまもなく6年がたとうとしています。みなさんの心の中ではどのように記憶されているでしょうか。

NHKは地震発生から総力を挙げて災害報道にあたり、今も被災した方々と被災地の姿を見つめ、伝え続けています。今回、災害報道に関する資料の展示という形で東日本大震災を振り返ります。NHK放送博物館では、3月7日(火)から9月10日(日)までの半年間、特別展「東日本大震災 伝え続けるために」を開催します

NHKは昨年、各地の放送局や職員が保管していた東日本大震災に関する資料を収集しました。震災から5年が経過し、散逸するおそれがあったためです。取材ノートや被災地の「前線」での引き継ぎメモなどの資料には、記者やカメラマンをはじめ、あのとき被災した地域に入った者だからこそ、見て、聞いて、感じたことが刻み込まれています。これらは未曾有の大災害を伝える貴重な「記録」であり、伝え続けていくべき大切な「記憶」でもあります。
これらの資料に、当時の映像や写真、そしてこの6年、震災を伝え続けている番組の資料などを加えて今回の特別展を構成しました。記者やカメラマンたちは、何を感じ、何を考えたのか。取材ノートや写真には、甚大な被害を前にした戸惑いや葛藤など取材者たちがつづった手記を添えています。
仙台放送局の「被災地からの声」は、発災まもない時期から継続的に被災者の肉声を伝え続けている番組です。被災した方々が自筆でスケッチブックにメッセージを書き、テレビカメラに向かって思いのたけを語ります。被災した方々の思いが込められた、このスケッチブックもご紹介します。
亡くなった方に寄せる家族のメッセージを思い出の写真とともに伝える「こころフォト」からは、失われた一人一人の命の尊さと、残された方々が震災後の日々をどのように生きようとしているのかがうかがわれ、胸に迫ります。

特別展の準備で数々の資料に目を通す中で、私たちは「あの日、あの時」を忘れてはいけない、そしていつかまた来る大災害に備えなければならないと強く感じました。この展示が、東日本大震災の記憶を風化させず、いまだ傷跡深い被災地に思いを寄せていただく一助になればと思います。

今回の特別展は、9月10日(日)までの半年間に及びます。ぜひ、愛宕山のNHK放送博物館に足をお運びください。


NHK放送博物館

休館日 :月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は火曜日休館)、年末年始
入場料 :無料
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
所在地 :〒105-0002 東京都港区愛宕2-1-1  
TEL  : 03-5400-6900

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(ホームページはこちら)  


 

文研フォーラム 2017年02月21日 (火)

#67 いま「ポッドキャスト」が新しい?

メディア研究部(海外メディア研究) 柴田 厚

3月1日(水)・2日(木)・3日(金)に行われる「NHK文研フォーラム2017」の2日目に『米ラジオ・オンデマンド時代の到来か? ~拡大する「ポッドキャスト」サービス~』の研究発表を行います。

ポッドキャストって、いつの話?」というご指摘は、ある意味ごもっともです。日本のラジオはNHKの「らじる★らじる」、民放の「radiko」で多くの番組のストリーミング配信が聞け、世界的に見てもかなり進んだ状況です。でも、国土が広く、日本ほど通信環境が整備されていないアメリカでは、スマートフォンなど自分の携帯端末にコンテンツをダウンロードして聞く「ポッドキャスト」の“第2(第3とも)の波”が訪れ、いま静かなブームになっています。

その牽引役は、まずは「スマートフォン」。そして、確かな番組作りで知られる公共ラジオ「NPR」です。彼らの特徴は、政治・経済から、音楽、映画、歴史、笑い、クイズ、ドキュメンタリーまでさまざまなジャンルのポッドキャストを提供していることです(全て無料)。1回20分から30分程度、難しすぎず、かと言って薄っぺらくもない内容は、個人的には「万人受けはしないけれど、好きな人にはたまらない“NHK教育テレビ的”だ」と思っています。

そして、もうひとつ別の“波”も。世界を揺るがせているトランプ新政権をきびしくウォッチングするために、アメリカを代表するNew York TimesとWashington Postの2大紙が、相次いでポッドキャストを始めました。いわば、異業種からの参入です。NYTは『The Daily』の名の通り、毎日の配信。WPは『Can He Do That?』、(彼にできるの?)というタイトルが痛烈です(週1回の配信)。デジタルの普及でメディアの垣根が低くなっている今、ポッドキャストはさまざまな人が参加できるメディアになっています。

もちろん収益につなげることや、たくさんのコンテンツの中から見つけてもらう難しさなどの課題もありますが、デジタル時代に“個人の息吹を感じとることができるメディア”として、その可能性は今後広がるのではないかと感じています。実際、出演したNYTの記者に「そんなことまでしゃべっていいの?」と驚いたり、WPの記者が言いよどんだりするところで、妙に安心したりしました。ああ、人間らしくていいな、と。テクノロジーの力もありますが、『語りの力』を再認識できるアメリカのポッドキャスト。

まだまだ発展途上の“古くて新しいメディア”ポッドキャストの可能性について一緒に考えませんか。3月2日(木)の研究発表へのご参加をお待ちしています。 

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(参加申し込みはこちらから↓)
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文研フォーラム 2017年02月17日 (金)

# 66 台湾新政権は「メディアの公共性」を実現できるか

メディア研究部(海外メディア研究) 山田賢一

台湾では去年5月、民進党の蔡英文新政権が発足しました。親が政治家でない、かつ女性の最高指導者は、アジアでは珍しいとして注目を集めましたが、この新政権の特色として指摘されるのは、「メディアの公共性」を重視していることです。
従来、台湾では、メディアは財閥オーナーの所有物という側面が強く、2008年に中国時報グループという大手メディアグループの経営権を食品事業者の旺旺が握った際は、中国をほめたたえる報道が急増、中国事業で多大な利益を上げる旺旺のオーナーの意向が働いたとして、メディア関係者や市民の警戒が高まりました。
こうした声に配慮する新政権は、メディア政策として①公共放送の充実②「財閥のメディア支配」排除、の2点に力を入れています。このうち①に関しては、新理事の選出にあたって、多くのメディア関係者や女性を候補者としてリストアップ、これまでより大幅に「若返り」と「多様化」が進みました。また②に関しては、財閥の通信事業者「遠傳」によるケーブルテレビ事業者最大手「中嘉網路」の買収に政府の投資審議委員会が待ったをかけ、独立規制機関のNCC(国家通信放送委員会)に審査のやり直しを求めています。

こうした新政権の政策について、与党民進党や、与党に近い政党の時代力量はおおむね肯定的ですが、商業局や野党国民党それにメディア研究者の一部は、①の公共放送の規模拡大について、民業圧迫や官僚主義による非効率につながると批判しています。一方②に関しては、与野党を通じ「遠傳」の買収に否定的な見方が多く、ある程度のコンセンサスが得られる可能性もあります(その後2月8日に中嘉が売却断念を発表)。
当面新政権のメディア政策で最も大きな課題は、公共放送充実のために必要とされる【公共テレビへの政府交付金増額】と【公共放送グループ(現在は公共テレビを中心に、中華テレビ、少数派住民向けの客家チャンネル、国際放送の宏観チャンネルで構成)の構成員拡大】に向けての公共テレビ法改正です。しかし台湾では現在、年金改革や同性婚合法化といった社会の関心の高い案件が目白押しで、公共テレビ法改正案がいつ立法院(国会)に上程されるかメドはたっていません。政策の実現にはまだまだ山あり谷ありの状態で、今年どのような動きが見られるか注目されます。

詳細は、3月1日から3日にかけて行う「NHK文研フォーラム2017」の最終日(3日)午前10時から報告いたします。ぜひご参加ください。

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(参加申し込みはこちらから↓)
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文研フォーラム 2017年02月07日 (火)

#65 一緒に考えてみませんか? 『パラリンピックと放送の役割』

メディア研究部(メディア動向) 山田 潔

1つ1つの粒が立ち、キラキラ輝いていて、じっくり味わうとなかなかおいしい。高級ブランド米の宣伝ではありません。障害者スポーツの祭典・パラリンピックの競技中継を見た感想です。
2バウンドまでOKのルールから、ラリーの応酬が延々と続く車いすテニス。激しくぶつかり合う衝撃音に興奮する車いすラグビー。静寂のなか、ボールの中の鈴の音に集中するゴール・ボール。一度見始めると、自然とこぶしを握り応援してしまう、純粋にスポーツとしての興奮と感動を感じます。
NHKは、パラリンピックのリオ大会について、初めて総合テレビでの本格的な競技中継を行うなど、ロンドンの約3倍、133時間あまり放送しました。
スポーツには、する者、関わる者、観る者、それぞれに自然とお互いの垣根を低くし、理解を進める一面があります。パラリンピックを通して、障害があるけれど、同じ人間という実感が広がり、障害のある人もない人も、誰もが1人1人個性的で、輝ける共生社会になっていけるといいですね。

地球の裏側、ブラジル・リオデジャネイロで熱戦が繰り広げられてから、はや半年近くが経ち、東京2020大会が着々と近づいています。
2020年の東京大会で、パラリンピックをみんなで楽しみ、パラリンピックを共生社会の実現につなげていくために、放送はどう貢献できるのか。3月1日から3日にかけて行うNHK文研フォーラム2017の初日にパラリンピックと放送の役割~ロンドン・リオから東京2020に向けて~をテーマにシンポジウムを開催します。2012年の自国ロンドン大会からリオ、東京とパラリンピック放送を行う英国チャンネル4とNHKのリオ大会での中継番組比較を軸に、それぞれの放送当事者、北京大会での金メダルをはじめ合計5つのメダルを獲得した車いすランナー・伊藤智也さん、パラリンピックを社会変革の機会ととらえる上智大学教授・師岡文男さんをパネリストとして、東京2020に向けて放送の役割を考えます。
あなたも会場で、一緒に考えてみませんか。

また、シンポジウムに先立ち、「文研世論調査で探る東京2020への期待と意識」と題して、世論調査の結果から、オリンピック・パラリンピックの2016年リオ大会のテレビ視聴状況の分析、2020年東京大会に関する人々の意識などを報告します。なお、この調査は東京大会まで継続し、経年比較を行うことになっています。
こちらも是非ご参加ください。

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(参加申し込みはこちらから↓)
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それにしても、善し悪しは別としてオリンピック、パラリンピックは、やっぱり金メダルをとると盛り上がるんですよね。
選手の皆さん、ファイト。応援していきます!!

文研フォーラム 2017年02月03日 (金)

#64 テレビのネット同時配信 議論はどこに向かっていくのか?

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

2月2日(木)、NHKは今後の受信料制度の在り方について検討するため、
外部有識者による検討委員会を設置したと発表しました。
テレビ放送の内容をネットにそのまま配信する、いわゆる同時配信にかかる費用を
どのように負担してもらうのかなどについて議論してもらうとしています。

今NHKでは、災害時やオリンピックなどでは同時配信を行っていますが、
“常時”、つまりチャンネル丸ごとを配信することは放送法で認められていません。
しかし今後、人々がネット上で動画を視聴する流れが更に広がっていくとみられる中、
NHKでは、一昨年11月に始まった総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会(諸課題検討会)」において、
常時同時配信が出来るよう法律の改正を求め、議論が続いています。
そして今回、NHK自らも、法律が改正された場合を見据えた検討を開始することになりました。

NHKがこの発表を行ったちょうど同じ日、
総務省では、諸課題検討会とはまた別の会議の場で同時配信に関する議論が行われていました。
情報通信審議会(情通審)の「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」です。
この委員会は昨年11月に開始され、2日は第4回目の会合でした。

このように、総務省では今、2つの会議の場で同時配信について議論が行われています。
放送法に関わるNHKの問題を主に扱うのが諸課題検討会、
広く同時配信全般の課題の整理と解決の道筋について議論するのが情通審、と
2つの会議で議論を仕分けつつ、相互に連携をとって議論を積み上げていこうというのが総務省のねらいのようです。

そもそも大前提として、同時配信については、
欧米や韓国などの国々では数~10年前から一般的なサービスとして定着しているにも関わらず、
日本では、NHKだけでなく地上波民放においても、チャンネルを丸ごと同時配信している局がないという状況にあります。
(実験的試みはNHKとTOKYO MXで実施中。)
地上波民放はNHKとは異なり、制度的に同時配信を行うことは可能ですが、行っていません。
なぜ日本では同時配信が行われてこなかったのか、このことについては、
『放送研究と調査』2016年12月号の「「これからのテレビ」を巡る動向を整理するVlo.9でまとめていますのでご参照ください。

筆者は上記の総務省の2つの会議の傍聴や取材を続けていますが、
両会議で有識者から出されている意見は、
「テレビ離れが進む中、できるだけ早く同時配信については実施すべき」
「実施するならNHKと民放一緒で、できるだけ1つのプラットフォームが望ましい」
という趣旨が多くを占めています。
総論では、これらの意見に対する反対はあまりないのですが、
なかなかそこから先に議論は進まず、2つの会議とも足踏み状態が続いているように思います。

今後どのように2つの会議の議論は進んでいくのでしょうか。
常時同時配信の実現に向けて法改正を要望しているNHKと、
動画配信サービス全体のビジネスモデル像を構築する中で、
同時配信をどう位置づけていくのかを考えていきたい地上波民放とのアプローチの違いをどのように調整していくのでしょうか。
この他にも、権利処理や技術的要件などの課題も山積しています。
引き続き議論に注目していきたいと思います。

一方で、筆者は、放送と同じ番組をそのまま配信する同時配信というサービスが
テレビ離れをした人々に対するネットを活用したアプローチの答えとしてベストなのかどうかについては疑問を持っています。
これだけ多様な動画サービスがネット上に乱立する今、
同時配信のみをゴールとして議論を進めるのではなく、
同時配信も含めた、放送事業者のネット展開全体のあるべき姿を議論することこそが、
一見、遠回りのようにみえて、結果的に収れんしていく議論ができるのではないか――、そう思うのは筆者だけでしょうか。

文研では3月1日~3日、「文研フォーラム」で数々の報告やシンポジウムを実施しますが、
3日午後には、総務省の放送行政担当の大臣官房審議官との対論を企画しています。
同時配信についても、総務省の率直なご見解を伺う予定です。
この他、最新の世論調査の結果なども報告しますので、皆様のご参加をお待ちしています。

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(参加申し込みはこちらから↓)

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文研フォーラム 2017年02月01日 (水)

#63 本日申し込み開始!!ようこそ「NHK文研フォーラム2017」へ

計画管理部(計画) 吉田理恵

いよいよ今日から2月。本格的な春の訪れが待ち遠しいですね。さて突然ですが、今日(2月1日)は何の日でしょう???


 ①テレビ放送開始記念日
 ②「おんな城主直虎」ゆかりの井伊直政の命日
 ③プロ野球キャンプイン


 
クイズの答えは最後にご覧いただくとして、今日はもう1つ!
NHK文研フォーラム2017」申し込み開始日でもあるのです(タイトルですっかりネタばれしていますが)。

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ところで「文研フォーラム」って??!!われわれ放送文化研究所が年に1度、総力を挙げてお送りしている、研究成果の発表やシンポジウムです。今年は、ちょうど1か月後の3月1日(水)から3日間、東京・千代田放送会館にて開催します。
今回のテーマは、「いま考える メディアのちから、メディアの役割」。放送やメディアをめぐる環境、そして人々の意識も大きく変わる今、改めて足元を見つめ直し、そのうえでメディアは何ができるのか、何をすべきなのかを、ご来場の皆さまと一緒に考えたい。そうした思いを込めました。内外のメディア関係者や研究者、ドキュメンタリー制作の巨匠の方々、パラリンピアンの方など、豪華なゲストをお招きし、文研の研究員とともに考えます。
具体的なプログラムはこちら
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(クリックするとPDFファイルが開きます)

初日の「東京2020オリンピック・パラリンピックへ」を皮切りに、2日め以降も、アメリカ大統領選でのテレビメディアの取り組みや、テレビドキュメンタリーの“作家性”を考える制作者研究BBCのEU国民投票報道などなど、そしてラストの「これからのテレビを考える」まで、さまざまな角度と切り口で、メディアの現在と将来に迫ります。

「あ、これ参加してみたいな」というプログラムはありましたか?そんなあなた、今すぐこのページを開いて、「申し込み」ボタンをポチっとクリックしてください。お申し込みは先着順。定員に達したプログラムは受付を終了してしまうので、お早めに!
さあ、ぜひご一緒に、放送そしてメディアの現在と将来に、思いを馳せてみませんか?文研一同、首を長くしてみなさまのお越しをお待ちしております。

最後に冒頭のクイズの答え。正解は①②③全部でした!!