文研ブログ

メディアの動き 2018年05月18日 (金)

#125 スマホは媒体と場所を選ばない

メディア研究部(メディア動向) 関谷道雄

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『放送研究と調査』5月号に掲載した「越境するローカル 交錯するメディア」は、放送、新聞、そしてプラットフォームの3つの業種を8か月かけて取材を進め、執筆しました。脱稿後、取材にご協力いただいた方々に弊誌を送付したところ、「結構幅広いテーマだったんだね」という趣旨の感想が複数寄せられました。弊誌は、放送を中心とした調査研究の専門誌です。放送がメインテーマなのは当然ですが、今回はプラットフォーム活用の視点を縦軸に、放送と同じ既存メディアとして新聞を取り上げました。若年層を中心にしたテレビ離れ、さらに新聞離れが指摘されて久しいですが、スマホのユーザー側から見れば、スマホ上では、プラットフォーム、放送、新聞の差異はどんどん小さくなっているように見えます。私自身、スマホの購入は2010年ごろと周囲を見回しても比較的早いほうで、以来、スマホを中心に放送、新聞に接し、スマホが媒体を選ばなくなりつつあることを実感してきました。その一端が本稿で取り上げたラジオによる文字情報の積極活用と新聞による動画展開です。

また、プラットフォームの伸張に伴い、放送、新聞両媒体の関係者の間では、「どのように活用して、収益に結び付けるか」という議論が活発化しています。収益化の話は難しく、軽々にその議論には入れませんが、深刻なテレビ離れ、新聞離れを背景に、両媒体の関係者の危機感は年々強まっているように見えます。

その一方で、プラットフォーム展開をチャンスと捉える関係者も出ています。本稿では取り上げませんでしたが、沖縄戦のデジタルアーカイブコンテンツを制作した沖縄タイムス社デジタル部記者の與那覇里子氏は「スマホは場所を選ばない。地方の課題を全国の俎上(そじょう)に載せることができる」(『新聞研究』2016年3月号P57)と、収益化に悲観的な見方とは対照的に、積極的にスマホに活路を見出そうとしています。與那覇氏の意見は「我が意を得たり」でした。放送、新聞とも企業としてプラットフォーム、スマホに対応して、収益化を図り、存続させるというテーマは、今後さらに重要性を増していきます。それでも放送、新聞のうち、ローカル局、地方紙という地域社会を担うメディアは、與那覇氏が指摘したチャンスという視点もあわせ持つ必要があるように思います。

調査あれこれ 2018年05月11日 (金)

#124 トランプ政権1年 日米同時世論調査から

世論調査部(社会調査) 吉澤千和子

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世界に衝撃を与えた2017年1月のトランプ政権の発足から1年3ヶ月あまりが経ちました。メキシコ国境に壁を建設して移民の規制を強化する方針を打ち出したり、TPP=環太平洋パートナーシップ協定から離脱したり、さらには鉄鋼製品などの輸入制限措置、初の米朝首脳会談を行う意向表明など、トランプ大統領にまつわるニュースを目にしない日はないかもしれません。

先月、フロリダで日米首脳会談が行われました。一緒にゴルフを楽しみ親密さを示した両首脳、北朝鮮に非核化に向けた行動を求めることでは一致しましたが、経済や貿易の問題では、自国の利益を優先する姿勢を鮮明にしているトランプ大統領が日本との間の貿易赤字削減に強い姿勢を示し、今後厳しい交渉となることも予想されます。

私たちの暮らしに大きな影響を与えるトランプ大統領の政策や言動について、アメリカや日本の国民はどう見て、今後についてどう考えているのでしょうか。NHKでは就任1年を前にした去年12月にアメリカと日本の両国民の意識を探る日米同時世論調査を実施しました。

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■トランプ大統領に良い印象を持っているのはどんな人?

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トランプ大統領に良い印象を持つ人は、アメリカで3人に1人、日本では5人に1人と多くはありません。
では、アメリカでトランプ大統領に良い印象を持っているのはどんな人なのでしょう?まとめると下の表のようになり、共和党を支持する白人の男性で、地方に住み、年齢は40歳以上の中高年、そして年収の高い人たちとなります。
逆に、トランプ大統領に悪い印象を持っているのは、民主党支持層、黒人、女性、都市在住者、若年層です。 

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■アメリカ第一主義は支持されているの?

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トランプ大統領がスローガンに掲げるアメリカ第一主義をどう思っているかについても聞きました。日本では3人に2人が良くないと思っていますが、アメリカでは6割の人が支持しています。アメリカでは、トランプ大統領へは悪い印象を持つ人が多い一方で、アメリカ第一主義については、多くの人が支持しています。

このほか、調査では「アメリカは分断が深まったと思うか」や「アメリカは世界で指導的役割を果たすべきか」「北朝鮮問題の解決方法」「日米関係の展望」なども聞いています。詳しい分析結果は『放送研究と調査』5月号 に載っていますので、ぜひご一読ください。

放送ヒストリー 2018年04月27日 (金)

#123 「災害報道」の後に残された"モノ"の意味 ~特別展「東日本大震災」を振り返る~

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか
メディア研究部(メディア史研究) 東山一郎

2011年の東日本大震災の災害報道に関わったNHKの各放送局や職員の手元には、取材のメモや写真など多くの資料が残されました。これらの資料は、未曾有の大災害の報道の背景を伝える貴重な「記録」であり、「記憶」でもあります。NHKではこれらの資料を収集、時系列・項目別・地域別にアーカイブ化し、 昨年NHK放送博物館(東京都港区)で開催した特別展「東日本大震災 伝え続けるために(2017年3月7日~9月10日)においてその一部を公開しました。
こうした取り組みはNHKでは過去に例がありません。そこで、特別展の概要と開催までの経過を総括した「災害報道資料のアーカイブ化と活用の試み」『放送研究と調査』4月号に掲載しました。

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NHK放送博物館で開催された特別展の会場

一口に「災害報道の資料の収集」と言っても、収集を始めた時点で大震災から5年近くが経過しており、容易な作業ではありませんでした。記者・キャスター・カメラマンなどに広く資料の提供を呼びかけたほか、仙台局・盛岡局・福島局に直接足を運び、居室から地下の倉庫まで、時にはホコリにまみれながら「探索」しました。

「特別展」では、東日本大震災の発生した瞬間をとらえた各地の映像、取材にあたった記者やカメラマンの手記、被災地の取材前線の「引き継ぎメモ」に記された若い記者の思い、被災地などからNHKに寄せられた救援を求めるFAX、東京電力福島第一原発事故の状況を解説するためにスタジオで使用した模型など、約100点を展示しました。
特別展開催期間中の放送博物館の来場者は6万4,952人。特別展についてのアンケートを実施したところ、3,360人から回答をいただきました。「印象に残った資料や展示物は何か」という問いに対しては「東日本大震災大震災発生時の映像」25%で最も多く、次いで「被災地の写真と記者・カメラマンの手記」12%「記者の取材ノートやメモ」が9%でした。
アンケートの自由記述を整理すると、震災の記憶の風化を懸念し「これからも伝え続けてほしい」という趣旨のコメントが60件以上ありました。また、同様の展示を「全国で」「常設化して」という意見も目立ちました。

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特別展は昨年9月に閉幕しましたが、2018年2月にオープンしたNHK仙台放送局の新放送会館に設けられた恒久的な「東日本大震災メモリアルコーナー」にその一部が活用されています。さらに5月6日までは企画展「東日本大震災を伝え続けるために」も開催されています。

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NHK仙台放送局での企画展(5月6日まで)

「放送」、その中でも「報道」は、常に新しいものを追いかける仕事であるだけに、過去の資料の大半が置き去られ、消え去っていきます。しかし、それらの中にも見る人の心に響くものがあるということを私たちは学びました。
東日本大震災から7年。「伝え続けてほしい」という多くの人々の声にどのように応えていくか。これからも模索を続けていきます。

放送ヒストリー 2018年04月20日 (金)

#122 ドキュメンタリーの「作品性」 

メディア研究部(メディア史研究) 宮田 章

テレビ番組には作品性が濃いジャンル薄いジャンルがあります。

たとえばドラマは作品性が濃いジャンルです。ドラマの1カット1カットは基本的にすべて、作り手(俳優を含む)の思惑が映像・音声として具現化したもので、まぎれもない作り手の産物(作品)です。ドラマ作品を支えているのは作り手の優れた技巧(創造力)に裏付けられた表現としての魅力です。一片のフィクション(虚構)であるドラマが、現実、あるいは現実に取材した番組に伍していくためには、表現としての独自の魅力が必要です。ドラマの作り手に現実の取材力は求められませんが、魅力的な虚構を構築する創造力は必須です。

反対に、ニュースは作品性が薄いジャンルです。ニュースの中身は、ニュース記者の思惑とは関係なく存在している事実・現実です。ニュース記者の仕事はこれをできるだけ客観的に記録して人々に伝えることです。ニュースは作品ではなく記録であり、原理的に言えば、個々のニュースは、それが記録した事実の力以外に表現としての魅力をもつ必要はありません。ニュース記者に取材力は必須ですが、創造力はむしろ抑制の対象です。

では、ドキュメンタリーはどうでしょう?
結論から言うと、ドキュメンタリーはドラマのように「作品」でもあり、ニュースのように「記録」でもあるという、「どっちつかず」あるいは「どっちもあり」のジャンルです。ドキュメンタリーの作り手がいくら作品を作ろうとしても、取材対象である現実は、作り手の思惑とは違う、あるいは作り手の思惑を超えたものを必ず含んでいます。つまり、現実に取材して得た映像や音声は必ず記録性を帯びます。逆に、作り手がいくら記録を標榜しようと、ドキュメンタリーは、その作り手が(しばしば意識せずに)依拠している視点や手法の産物であることから逃れることはできません。つまり、得られた映像・音声は必ず作品性を帯びるのです。作品性と記録性が混在し、常にせめぎ合っているジャンル、それがドキュメンタリーです。

筆者(宮田)は、作品性と記録性がせめぎ合うところから生まれる、ドキュメンタリー独特の現実表現に強い魅力を感じます。ドキュメンタリーの魅力は多彩です。作品性より記録性が勝るタイプ、反対に、記録性より作品性が勝るタイプ、いずれのタイプにも多くの秀作、傑作が存在します。過去のドキュメンタリーを見ていると、この作品性と記録性のバランスは、テレビドキュメンタリーが誕生した1950~60年代から、同時録音技術が普及した70年代、そして現代に至る大きな時間の流れの中で、ゆっくり変化しているように感じます。

『放送研究と調査』4月号に発表した論考(「データから読み解くテレビドキュメンタリー研究」)は、作品性と記録性のせめぎ合いの一端を、数量的データを用いて可視化する方法を示したものです。興味を持たれた方はご一読ください。

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放送ヒストリー 2018年04月13日 (金)

#121 「ゆり戻し」としての戦前の「講談調」野球実況人気

メディア研究部(メディア史研究) 小林利行

「ジュラシック・パーク」(1993年公開)という映画をご存じですか。
DNA操作で恐竜を現代によみがえらせてテーマパークを作ったものの、恐竜が暴走してパニックになるという物語です。当時大ヒットして、今でも続編が作り続けられています。
CGを駆使したリアルな恐竜の映像が話題になった映画ですが、私にはそのこと以上に心に残っている場面があります。
恐竜をよみがえらせた科学者たちは、パーク内で恐竜が勝手に繁殖しないようにメスだけを造り出しました。しかし主人公たちは、恐竜から必死に逃れている途中で「」を見つけるのです。これは、「カエルのメスだけを長期間隔離しておくと、種の保存の本能から一部がオス化して繁殖が可能となる」という事実をベースとして原作者が創作したものですが、人間が「自然」を無理やりコントロールしようとすると、何らかの「ゆり戻し」が起こるということを強烈に印象付けた場面でした。

一見かけ離れた話なのですが、今回私が戦前の「講談調」野球実況人気の背景を調べていくうちに思い出したのが、この「自然を無理やりコントロールすること」と「ゆり戻し」の関係だったのです。

1930年前後、日本放送協会の松内則三アナウンサーの「講談調」の野球実況(以下「野球話術実況」)が大人気となりました。これはレコードにもなって、10万枚売れれば大ヒットといわれた時代に歌謡曲でもないのに15万枚も売れました。そのアナウンスは、事実を客観的に描写する“実況”というよりも、おおげさで創作的なまさに“講談”に近いものでした。
先行研究では、この人気の背景について「講談調」という日本人になじみのある口調だけに言及したものが多いのですが、私はまず「当時どんな番組がどのような割合で放送されていたか」に注目しました。

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グラフを作ってみると、娯楽番組が減少する時期と「野球話術実況」の全盛期が重なっていることが分かりました(当時、日本放送協会は “実況”を「報道」に分類していました)。
さらに調べてみると、良し悪しは別として、「娯楽」が少ないというこの状態は、聴取者の希望や外国の放送局との比較から見るとかなり不自然であることも明らかになりました。当時の聴取者調査の結果では、「娯楽」の希望が「報道」や「教養」を大きく上回っています。また、多くの欧米の放送局では、プログラムの大半を「音楽」が占めていたのです(ちなみにアメリカの聴取者調査で希望が多いのも「音楽」でした)。

これらのことから、ジュラシック・パークの「卵」にあたるのが「野球話術実況」ではないかと思ったのです。つまり「野球話術実況」は、やや無理のあった放送番組の割合の中で発生した「ゆり戻し」なのではなかということです。

『放送研究と調査』4月号では、このことを頭のすみにおいて、この時期の放送に「娯楽」が少なくなった理由や、その穴を埋めるようにエンターテインメント化した野球実況の背景について論考しています。
みなさんも、「これは一種のゆり戻しだな~」と感じられるかどうか、ぜひ一読してみてください。

最後にちょっとだけ。
「野球話術実況」の人気が終息する1934年から終戦(1945年)にかけて、「娯楽」は少ないままなのに、(少なくとも私の目には)「ゆり戻し」現象は見られなくなります。「野球話術実況」の検証を通して、これ以降のラジオ放送が、「ゆり戻し」が発生するスキさえないほど戦争遂行のために統制されたものだったと改めて感じました。

調査あれこれ 2018年04月06日 (金)

#120 東京オリンピックまで2年余り。あなたが見たい競技は!?

世論調査部(視聴者調査) 斉藤孝信

年度替りのこの時期はただでさえせわしなく感じるものですが、今年は桜の開花が早かったせいか、あるいは日本勢の活躍に沸いたピョンチャンオリンピック・パラリンピックに夢中になっていたせいか、特にあっという間に時間が過ぎ去った気がします。
あっという間といえば、2020年東京オリンピック・パラリンピック。開催決定の頃には「まだ先の話」と思っていたのに、気が付けば、残すところ2年余りに迫ってきました。
世界の一流アスリートを直接見られるチャンス!楽しみです。テレビ観戦でも、最近の夏のオリンピックは、2012年ロンドン、2016年リオデジャネイロと、「地球の裏側(?)」で開催されたため、深夜・早朝の競技中継が多く、寝不足に悩まされた方も多かったと思いますが、2020年は「良い時間」に見られそうで楽しみですね。

皆さんは、2020年の東京オリンピックでどんな競技の観戦を楽しみにしていますか?
文研が2017年10月、全国の20歳以上の男女3600人を対象に実施した「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」では、東京オリンピックでどんな競技や式典を見たいと思うかを、複数回答で尋ねました。

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トップ5をみてみると、「体操」が71%で最も多く、以下、「陸上競技」「開会式」「競泳」「卓球」も半数以上の人が見たいと回答しました。前回のリオ大会で、男子団体が「体操王国」の意地を見せて金メダルを勝ち取った「体操」や、男女とも団体でメダルを獲得した「卓球」(すさまじいラリーに、手に汗握った方も多いのではないでしょうか)など、日本勢の活躍が印象的だった競技が上位を占めています。きっと調査にご協力くださった皆さんが、あの感動を思い起こしながら調査票に○をつけてくれたのだろう、と想像しながら集計しました。

前回私が担当したブログ(2017年11月10日号)では、1964年の東京オリンピック直前にも、文研が東京都民を対象に世論調査を行っていたことをご紹介しました。再び当時の調査結果をひもといてみると、そこにも「どんな種目を見たいか」という質問項目がありました。

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当時のトップ5は、「水泳」「体操」「開会式」「マラソン」「陸上競技」。やはり直前の大会(1960年ローマ)で日本が多くのメダルを獲得した水泳や体操を見たいと答えた方が多く、「次も活躍してくれるはず!」「東京でも勇姿を見せてくれ!」という期待が大きかったのだろうと想像できます。

ちなみに、1964年東京大会終了後の11月に行われた調査では、「とくに印象に残っている競技」を1人3種目まで挙げてもらっているのですが、この結果も面白い!

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大会直前の「見たい種目」としては37%だった「バレーボール」が78%でトップになったほか、事前には8%だった「重量あげ」も44%の人が「マイ・ベスト3」に挙げたのです。皆さんご存知の通り、バレーボールでは「東洋の魔女」の愛称で知られる女子チームが当時のソ連を破って金メダル、男子も銅メダル。重量あげでは三宅義信選手が金メダルを獲得しています。こうしたデータを振り返ると、気が早いようですが、2020年の東京大会ではいったいどんな競技のどんな選手が私たちに感動を与えてくれるのか、今から楽しみです!

話を戻しますと、2017年10月調査で尋ねた「見たい競技」を男女別に集計してみると、興味深い違いが明らかになりました。果たして男性、女性、それぞれが見たいと思っている競技とは!?さらに、2020年東京大会から追加種目となる「野球・ソフトボール」「スポーツクライミング」「空手」「スケートボード」「サーフィン」は、現時点でどの程度の人が見たいと思っているのでしょうか?
こうした分析結果は、『放送研究と調査』4月号で、詳しくご報告いたします。
どうぞお楽しみに!

放送博物館 2018年03月30日 (金)

#119 減点パパ+減点ファミリー展を開催中です!

メディア研究部(メディア史研究) 東山一郎

NHK放送博物館
(東京・港区)では、企画展「減点パパ+減点ファミリー展」を開催しています。
「減点パパ」「減点ファミリー」というフレーズにピンとくるのは、おそらく40代半ばを過ぎた方々ではないかと思います。ピンとこなかった方にも楽しんでいただけるように、「減点パパ」「減点ファミリー」とは何か、どんな展示なのか、簡単にご紹介していきます。

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「減点パパ」「減点ファミリー」は、1970年代から80年代にかけて放送されたNHKのバラエティー番組『お笑いオンステージ』のなかのひとつのコーナーです。『お笑いオンステージ』は日曜日の大河ドラマの前、よる7時20分からの放送で、番組前半のショートコメディ「てんぷく笑劇場」と番組後半の「減点パパ」「減点ファミリー」が人気のコーナーでした。「減点パパ」は73年4月から始まりました。俳優や歌手、芸人など著名人の子どもがまず登場して、司会の初代 三波伸介さんがその子に顔の特徴を聞きながら、パパの似顔絵を描いていく。似顔絵が完成すると、そこで初めてパパが登場。そして、お子さんが得意なものは? 将来の夢は? など、子どもに関する質問がパパに次々に投げかけられ、答えられなければ、似顔絵に×印がつけられていく・・・、コーナーの最後には、子どもがパパに向けた作文を披露する。似顔絵、Q&A、作文という三つの要素を通して、著名人の意外な一面が垣間見えたり、ほのぼのとした親子関係が見えたりというコーナーでした。75年からタイトルが「減点ファミリー」となり、パパだけでなく、ママ、おじいちゃん、おばあちゃんも登場するようになりました。

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初代 三波伸介さん(当時の番組宣伝用写真から)

今回の企画展は、放送博物館に保存されていた三波伸介さんによる似顔絵およそ100点を、著名人のお子さん、お孫さんによる作文や二代目三波伸介さん所蔵資料などとともに構成したものです。三波伸介さんは当時、『笑点』(日本テレビ)の司会をはじめ、数々のテレビ番組にレギュラー出演していた喜劇人で、昭和のテレビを代表するスターのひとりです。三波さんによる上手な似顔絵の数々がまず、この企画展の見どころです。
その似顔絵を見ていくと、「減点パパ」「減点ファミリー」のゲストが実に多彩だったことに驚かされます。30数年前のバラエティー番組に「この人が!?」という意外な方も多数出演されていました。例えば、細川隆元さん、毒舌で知られた政治評論家です。現在、テレビで活躍中の加藤一二三さんも現役の棋士として出演していました。そして俳優の大滝秀治さんなど、多彩で意外な方々が出演されていました。大滝さんは似顔絵とともにお嬢さんによる作文も展示させていただいています。

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展示したおよそ100人の似顔絵からは、芸能関係に限らず、この当時の放送、そして文化を彩っていた方々、今も彩り続けている方々の姿を見ることができると思います。

「減点パパ・減点ファミリー」のコーナーを締めくくっていたお子さんたちの作文は、数は多くはありませんが、作文実物のほか、映像でも紹介しています。俳優の吉田義夫さんの放送回も映像で紹介しています。吉田さんは、当時の「週刊TVガイド」の記事にもあるように、稀代の悪役俳優として知られた方でした。その吉田さんが、お孫さんが読む作文を聞いて、はにかんだような嬉しいような、何とも言えない表情をされているのがとても印象的です。子どもたちの作文の展示にふれると、なんとなくほっこりとした気分になると思います。

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「週刊TVガイド」1980年10月3日号(東京ニュース通信社)
*次回のゲストは誰かを読者に予想してもらう記事で、似顔絵には目隠しがされていました。

今から30数年前のテレビ番組を題材とした展示ですが、番組を知らない若い世代の方にとっても、親の世代はこういう番組を見ていたんだとか、この人はこんなに昔から活躍していたんだとか、何か発見がある展示だと思います。
7月8日(日)まで開催しています。ぜひ、NHK放送博物館にお越しください。
4月29日(日)には二代目 三波伸介さん出演の企画展関連イベントも開催されます。こちらもぜひご参加ください(事前申込制)

 


NHK放送博物館

休館日 :月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は火曜日休館)、年末年始
入場料 :無料
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
所在地 :〒105-0002 東京都港区愛宕2-1-1  
TEL  : 03-5400-6900

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(ホームページはこちら)  

文研フォーラム 2018年03月23日 (金)

#118 「NHK文研フォーラム2018」たくさんのご来場 ありがとうございました!

計画管理部(計画) 大森龍一郎

3月7日(水)~9日(金)、千代田放送会館で「NHK文研フォーラム2018 テレビの未来 メディアの新地図」を開催、3日間でおよそ1400人のみなさまにご来場いただきました。ありがとうございました。

CNNやPBSなど海外メディアの責任者をゲストに招いたシンポジウムや、日米世論調査の報告学生と共に「テレビの未来」を考えるワークショップ民放連会長をゲストに迎えた対談NHK老舗料理番組の歴史研究ドキュメンタリー番組・放送用語に関する研究発表など、多様なプログラムを展開しました。

また、1Fラウンジでは「文研カフェ」をオープン、登壇者と来場者、文研所員との交流の場としてよろこんでいただきました。さらに、今回初めての試みとしてデジタル特別展「東日本大震災 伝え続けるために」のデモサイト限定公開も行いました。

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◆海外からゲストを招いたシンポジウム。

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◆終了後には、1階「文研カフェ」で登壇者・ゲストと来場者の交流も。

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◆大学生を招いたワークショップ「大学生たちと考える“テレビの未来”」、注目を集めました。

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◆デジタル特別展「東日本大震災 伝え続けるために」も3日間開催。幅広い年代の方が体験しました。

3日間を通した来場者アンケートでは、およそ5割が「とてもよかった」、4割が「よかった」と、とても喜んでいただけたようです。
文研では今年いただいたアンケートなどを元に、次回、また新たな気持ちで文研フォーラムを開催したいと思いますので、ご支援よろしくお願いいたします。

おススメの1本 2018年03月16日 (金)

#117 朝ドラの"みかた"

メディア研究部(番組研究) 亀村朋子

春の訪れを感じる今日このごろ。あと2週間もすれば新学期ですね。
とある「朝ドラウォッチャーさん(仮名)」が以前Twitterでこんなことを言ってました。

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そうかーなるほどね…「新しいクラスは?」「担任は?」「毎日楽しく過ごせるといいなぁ」「面白い先生がいい」…そんなワクワクするような期待が、新しい朝ドラを見る時にはあるのかもしれない…
朝ドラ常連のこの方は、4月と10月になると「新学期気分」を味わいながら見続けているんですね。有り難いことです。新しく作品が入れ替わっても、次を楽しみにしながら見続けてくれている方が大勢いる。朝ドラは、まさにそんな「味方」に支えられている番組だと思います。

朝ドラには、ご存じの通り、二つのタイプがあります。
「実在モデルありの一代記もの」と、「モデルのいないオリジナルもの」です。
昨年4月から放送された『ひよっこ』は、それまで3作連続で(『あさが来た』『とと姉ちゃん』『べっぴんさん』)「モデルあり」が続いたあとに放送された、久しぶりの「オリジナルもの」でした。
主人公は、何かを成し遂げる偉人ではなく、茨城に住む普通の庶民の女の子。昭和への懐古や、庶民の生活への賛歌を感じ取れる『ひよっこ』は、放送中盤のアンケート結果では、「明るくて」「健全で」「前向きで」「さわやかな」イメージを呼び、8割近くの回答者から「満足」と支持されました。しかし、同じアンケートの中で「(モデルがいない話なので)物語がどこに向かっているのか分からない」と答えた人が6割以上いました。
「見て満足」なのに「分からない」とは、これいかに?…ちょっと矛盾していますよね。

そこで、朝ドラを見るときに皆さんがどのような「見方」をしているのかを探ってみれば、「何かヒントになるかもしれない」と思いつきました。「見方」とは、言い換えれば、「どういう心構え(目線)で朝ドラを見ようとしているのか」ということです。2年半にわたって朝ドラ調査を継続していますが、今回初めて「見方」に注目して、アンケートや聞き取り調査で聞いてみることにしました。
そもそも「朝ドラの見方」なんてものが存在するのでしょうか?
そしてその調査結果は…?
『放送研究と調査』3月号 に掲載した「朝ドラ研究 視聴者は朝ドラ『ひよっこ』をどう見たか ~柔軟に見方を変えて楽しむ視聴者~」で報告しています。ぜひご一読ください。

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現在放送中の『わろてんか』に続く今後の朝ドラは、『半分、青い』『まんぷく』『夏空』と、「モデルあり」と「オリジナル」とが1作ごとに交互に続いていくことになっていて、なかなか目が離せません。これからも、「視聴者はどのように朝ドラをミタカ?」=「朝ドラのミカタ」を探っていきたいと思います。

調査あれこれ 2018年03月09日 (金)

#116 仕事のストレスが多い日本人

世論調査部(社会調査) 村田ひろ子

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皆さんは、仕事でストレスを感じることがどのくらいありますか?仕事でストレスを感じるのは、通勤時の満員電車、なかなか達成できないノルマ、上司や同僚とのトラブルなど、さまざまな原因が考えられそうですね。職場を離れた後も、上司からの叱責や人事評価のことなどをあれこれ思い返して、胃が痛くなるという方も結構いらっしゃるのではないでしょうか。

さて、日本では仕事でストレスを感じている人が各国と比べて多いのか。NHKが参加している国際比較調査グループISSPが実施した調査からみていきましょう。仕事でストレスを感じることが『ある(いつも+よく)』という男性は、日本で5割を占めていて、先進各国と比べて多くなっています。働き盛りの30、40代の男性に限ってみると、日本では6割にのぼり、各国の中で最も多いという結果です。女性についてみても、日本人で『ある』という人は半数近くで、各国の中で多くなっています。

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なぜ、日本では仕事のストレスを感じる人が多いのか。次に、ストレスと関係の深い職場の人間関係についてみてみましょう。経営者と従業員の関係が『良い(非常に+まあ)』と答えた男性は、多くの国で7割以上を占めている一方で、日本では半数程度。各国と比べて低い水準です。女性についても、日本で『良い』と答えているのは6割で、男性同様、各国と比べると少なくなっています。

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最近セクハラなどの被害を訴え出る「#Me Too」運動が世界的に広がっていますが、ISSP調査では「この5年の間に、職場の上司や同僚から、いじめや身体的・精神的な攻撃といったハラスメントを受けたことがあるか」どうかを尋ねています。セクハラに限らず、さまざまな嫌がらせを受けた経験を聞いているわけですが、ハラスメントを受けたことがあるという日本人は、男性で20%、女性で33%となっています。各国と比べると多くなっていて、職場の人間関係の悪さと合わせて気になる結果です。

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「ハラスメントを受けたことがある」と「経営者と従業員の関係」についてみると、特に女性で関連が強くなっています。つまり「ハラスメントを受けた」と答えた人が多いと、「人間関係が良い」が少なく、日本はその傾向が顕著です。

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日本には、人間関係やハラスメントに悩む人が多い、ストレスフルな職場がたくさんありそうです。ここで、今回の調査からはちょっと離れて、ストレスへの対処法をひとつご紹介します。自分にとっての「気晴らし」をできるだけたくさんリストアップし、その気晴らしについてあれこれ想像をめぐらせるだけで効果があるそうです。私なら、「チョコを食べる」「映画をみる」「猫のモモちゃんをなでなでする」・・・。うんうん、確かに効果がありそうです。

116-0309-5.png「放送研究と調査3月号」では、最新の国際比較データから、仕事のストレスをもたらす要因について探るほか、各国との比較において日本人が仕事をどうとらえているのかについて考察しています。「働き方改革」の進め方についてのヒントも得られるかも!?

※)ISSP国際比較調査「仕事と生活(職業意識)」(Work Orientations Ⅳ-ISSP 2015)。
参考文献:NHKスペシャル取材班、2016、『キラーストレス 心と体をどう守るか』、NHK出版