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メディアの動き 2023年11月17日 (金)

【メディアの動き】鳥島近海の地震,津波観測後に「後追い」で注意報

 10月9日午前5時25分ごろ,東京・伊豆諸島の鳥島近海で地震が発生。気象庁は,午前6時40分に伊豆諸島と小笠原諸島に津波注意報を発表し,各メディアも速報で伝えた。その後,7時44分に高知県,51分に千葉県九十九里・外房と千葉県内房,8時24分に宮崎県,鹿児島県東部,種子島・屋久島地方,奄美群島・トカラ列島にも発表した。ただ,実際には,一部の予報区を除き,注意報の発表基準である20センチ以上の津波が観測されてから出した,いわば「後追い注意報」だった。津波注意報は通常,津波の原因となる地震の震源や,地震の規模を示すマグニチュード(以下,M)をもとに地震発生から約3分を目標に発表される。しかし気象庁は,今回は地震波が不明瞭で詳しい震源やMが決まらず注意報の発表が遅れたと,9日の記者会見などで説明した。筆者の取材に対し気象庁は,国内で起きた地震で詳しい震源やMが決まらなかったのは,現行の津波予報の態勢が始まった1990年代以降,初めてだとしている。

 一方,11日に開かれた政府の地震調査委員会で,鳥島近海ではこれまでにもMが小さく通常は津波を伴わない規模の地震で複数回,津波が発生していることも指摘された。気象庁によると直近では2015年5月3日に起きたM5.9の地震で,このときも八丈島に津波が到達したあとに伊豆諸島などに津波注意報が発表された。

 気象庁は,「鳥島近海で地震が起きた場合,今後も津波到達後に注意報が発表される可能性がある」としている。メディアは,これを念頭に置き,ふだんからの心がけを含め,防災への呼びかけを検討する必要がある。