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メディアの動き 2023年11月16日 (木)

【メディアの動き】オーストリア憲法裁判所,公共放送の監督機関の委員の選任方法に違憲判決

 オーストリア憲法裁判所は10月10日,公共放送ORFの2つの内部監督機関である財団評議会と視聴者評議会の委員の選任方式を定めたORF法の条項について,連邦政府の影響力が大きすぎ,公共放送の独立性と多元性の保障を定めた憲法に違反するとの判決を出したと発表した。2022年6月に東部ブルゲンラント州が,同条項が違憲だとして提訴していた。

 財団評議会は,ORFの予算と決算の承認,会長の任命,受信料額の決定などを行う監督機関。35人の委員で構成され,このうち連邦政府が9人,9つの州政府が各1人,国会に議席を持つ政党が6人,視聴者評議会が6人,ORF職員総会が5人を選任する。憲法裁判所は,連邦政府と視聴者評議会が選任する分について多元性を確保する規定がないこと,また連邦政府が選任する数が,政府から独立した視聴者評議会より多いことが,独立性と多元性保障の原則に反するとした。

 視聴者評議会は,視聴者を代表し,ORFの番組や編成について勧告を行う機関。30人の委員からなり,このうち13人を,商工会議所,労働組合,教会など法定の13団体が直接選任する。残りの17人は,教育,芸術,スポーツなど14分野の団体が3人ずつ候補者を政府に提出し,その中から連邦首相または担当大臣が任命する。憲法裁判所は,首相が任命する人数が13団体が直接選任する数より多いこと,また首相の裁量の余地が大きいことが,独立性と多元性保障の原則に反するとした。

 同裁判所は,2025年3月末までにORF法を改正することを求めた。