文研ブログ

文研フォーラム 2017年02月03日 (金)

#64 テレビのネット同時配信 議論はどこに向かっていくのか?

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

2月2日(木)、NHKは今後の受信料制度の在り方について検討するため、
外部有識者による検討委員会を設置したと発表しました。
テレビ放送の内容をネットにそのまま配信する、いわゆる同時配信にかかる費用を
どのように負担してもらうのかなどについて議論してもらうとしています。

今NHKでは、災害時やオリンピックなどでは同時配信を行っていますが、
“常時”、つまりチャンネル丸ごとを配信することは放送法で認められていません。
しかし今後、人々がネット上で動画を視聴する流れが更に広がっていくとみられる中、
NHKでは、一昨年11月に始まった総務省の「放送を巡る諸課題に関する検討会(諸課題検討会)」において、
常時同時配信が出来るよう法律の改正を求め、議論が続いています。
そして今回、NHK自らも、法律が改正された場合を見据えた検討を開始することになりました。

NHKがこの発表を行ったちょうど同じ日、
総務省では、諸課題検討会とはまた別の会議の場で同時配信に関する議論が行われていました。
情報通信審議会(情通審)の「放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」です。
この委員会は昨年11月に開始され、2日は第4回目の会合でした。

このように、総務省では今、2つの会議の場で同時配信について議論が行われています。
放送法に関わるNHKの問題を主に扱うのが諸課題検討会、
広く同時配信全般の課題の整理と解決の道筋について議論するのが情通審、と
2つの会議で議論を仕分けつつ、相互に連携をとって議論を積み上げていこうというのが総務省のねらいのようです。

そもそも大前提として、同時配信については、
欧米や韓国などの国々では数~10年前から一般的なサービスとして定着しているにも関わらず、
日本では、NHKだけでなく地上波民放においても、チャンネルを丸ごと同時配信している局がないという状況にあります。
(実験的試みはNHKとTOKYO MXで実施中。)
地上波民放はNHKとは異なり、制度的に同時配信を行うことは可能ですが、行っていません。
なぜ日本では同時配信が行われてこなかったのか、このことについては、
『放送研究と調査』2016年12月号の「「これからのテレビ」を巡る動向を整理するVlo.9でまとめていますのでご参照ください。

筆者は上記の総務省の2つの会議の傍聴や取材を続けていますが、
両会議で有識者から出されている意見は、
「テレビ離れが進む中、できるだけ早く同時配信については実施すべき」
「実施するならNHKと民放一緒で、できるだけ1つのプラットフォームが望ましい」
という趣旨が多くを占めています。
総論では、これらの意見に対する反対はあまりないのですが、
なかなかそこから先に議論は進まず、2つの会議とも足踏み状態が続いているように思います。

今後どのように2つの会議の議論は進んでいくのでしょうか。
常時同時配信の実現に向けて法改正を要望しているNHKと、
動画配信サービス全体のビジネスモデル像を構築する中で、
同時配信をどう位置づけていくのかを考えていきたい地上波民放とのアプローチの違いをどのように調整していくのでしょうか。
この他にも、権利処理や技術的要件などの課題も山積しています。
引き続き議論に注目していきたいと思います。

一方で、筆者は、放送と同じ番組をそのまま配信する同時配信というサービスが
テレビ離れをした人々に対するネットを活用したアプローチの答えとしてベストなのかどうかについては疑問を持っています。
これだけ多様な動画サービスがネット上に乱立する今、
同時配信のみをゴールとして議論を進めるのではなく、
同時配信も含めた、放送事業者のネット展開全体のあるべき姿を議論することこそが、
一見、遠回りのようにみえて、結果的に収れんしていく議論ができるのではないか――、そう思うのは筆者だけでしょうか。

文研では3月1日~3日、「文研フォーラム」で数々の報告やシンポジウムを実施しますが、
3日午後には、総務省の放送行政担当の大臣官房審議官との対論を企画しています。
同時配信についても、総務省の率直なご見解を伺う予定です。
この他、最新の世論調査の結果なども報告しますので、皆様のご参加をお待ちしています。

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(参加申し込みはこちらから↓)

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文研フォーラム 2017年02月01日 (水)

#63 本日申し込み開始!!ようこそ「NHK文研フォーラム2017」へ

計画管理部(計画) 吉田理恵

いよいよ今日から2月。本格的な春の訪れが待ち遠しいですね。さて突然ですが、今日(2月1日)は何の日でしょう???


 ①テレビ放送開始記念日
 ②「おんな城主直虎」ゆかりの井伊直政の命日
 ③プロ野球キャンプイン


 
クイズの答えは最後にご覧いただくとして、今日はもう1つ!
NHK文研フォーラム2017」申し込み開始日でもあるのです(タイトルですっかりネタばれしていますが)。

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ところで「文研フォーラム」って??!!われわれ放送文化研究所が年に1度、総力を挙げてお送りしている、研究成果の発表やシンポジウムです。今年は、ちょうど1か月後の3月1日(水)から3日間、東京・千代田放送会館にて開催します。
今回のテーマは、「いま考える メディアのちから、メディアの役割」。放送やメディアをめぐる環境、そして人々の意識も大きく変わる今、改めて足元を見つめ直し、そのうえでメディアは何ができるのか、何をすべきなのかを、ご来場の皆さまと一緒に考えたい。そうした思いを込めました。内外のメディア関係者や研究者、ドキュメンタリー制作の巨匠の方々、パラリンピアンの方など、豪華なゲストをお招きし、文研の研究員とともに考えます。
具体的なプログラムはこちら
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(クリックするとPDFファイルが開きます)

初日の「東京2020オリンピック・パラリンピックへ」を皮切りに、2日め以降も、アメリカ大統領選でのテレビメディアの取り組みや、テレビドキュメンタリーの“作家性”を考える制作者研究BBCのEU国民投票報道などなど、そしてラストの「これからのテレビを考える」まで、さまざまな角度と切り口で、メディアの現在と将来に迫ります。

「あ、これ参加してみたいな」というプログラムはありましたか?そんなあなた、今すぐこのページを開いて、「申し込み」ボタンをポチっとクリックしてください。お申し込みは先着順。定員に達したプログラムは受付を終了してしまうので、お早めに!
さあ、ぜひご一緒に、放送そしてメディアの現在と将来に、思いを馳せてみませんか?文研一同、首を長くしてみなさまのお越しをお待ちしております。

最後に冒頭のクイズの答え。正解は①②③全部でした!!

おススメの1本 2017年01月27日 (金)

#62 8Kスーパーハイビジョンの防災活用の可能性

メディア研究部(メディア動向) 山口 勝

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NHKは、世界に先駆けて2016年8月、4K・8Kスーパーハイビジョンの試験放送を始めました。8Kは医療分野での活用が始まっていますが、現行のハイビジョン(2K)の16倍の超高精細映像を、放送はもちろん公共放送の使命の一つである防災分野で生かすことは、8Kを開発した公共メディアとしても重要な課題です。

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(クリックすると大きくなります)

NHKは熊本地震の直後に大きな被害が生じた活断層に沿って8Kカメラで空撮を行いました。その映像を改めて活断層の専門家に分析してもらったところ、地震後の調査で未発見だった地震断層や亀裂が複数見つかり、その成果が10月のNHKスペシャル「活断層の村の苦闘~熊本地震・半年間の記録~」で放送されました。8Kによる災害分析を災害報道、番組制作に活用した初のケースです。

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この熊本地震の取材をもとに「8Kスーパーハイビジョンの防災活用の可能性」という論考を『放送研究と調査』1月号に掲載しました。ぜひご覧ください。
本稿では、リモートセンシングや地理空間情報、災害研究の視点から8Kが防災に有効であることを明らかにしています。 
8K空撮映像は、高度400mから地上に舞う蝶(ちょう)や数センチの亀裂も捉えることができます。空中写真よりも解像度が高く、ドローンより画角が広い特徴があります。亀裂は災害の芽」です地滑りや堤防の決壊は、小さな亀裂から始まります。わずかな亀裂を捉えることができる8Kスーパーハイビジョンは、さまざまな防災での活用が期待されます。一人ひとりの「動き」も見えるため、人命救助や捜索、車中泊・自主避難所の検出に有効です。ヘリコプターからの「斜め撮影」であるため高さ方向の情報が得られ、建物の倒壊状況なども把握でき、画像データから「立体モデル」「災害支援地図」を作ることができます。

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メディアだけでは分析しきれない多くの情報(ビックデータ)を含む8Kを「どう使うのか」。災害報道では、犠牲者の姿を映し出す可能性もあり、報道利用には、「技術開発」とともに「放送文化的検討」が必要です。
興味のあるメディア、防災関係者、そして研究者のみなさん、是非ご一読ください。

おススメの1本 2017年01月20日 (金)

#61 「切迫性を伝え切る」ってどういうこと?

メディア研究部(メディア動向) 福長秀彦

 おととし9月の鬼怒川の氾濫では、多くの人が濁流の中に取り残され、約4,200人がヘリやゴムボートで救助されました。住民に「切迫性を伝え切れなかった」ことが防災上の反省点の一つとされています。切迫性を伝え切れなかったのは何故か?このことをずっと考えてきました。

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 鬼怒川の氾濫から2カ月近くが経ったおととし11月、堤防が決壊した常総市上三坂地区を訪れ、住民の方々から話を伺いました。堤防から溢れた水の流れがいつの間にか激しく波打ち、渦を巻くような様相に変わっていたこと、堤防の上で決壊の瞬間を目撃し、慌てて逃げようとしたものの、濁流に呑みこまれてしまったことなど、衝撃的な話を数多く聞きました。住民の多くは、まさか自宅近くの堤防が決壊するとは思ってもいませんでした。

 堤防が決壊した原因は、川の水が堤防を乗り越えて(越水)住宅地側の土手をえぐり崩していく越水破堤が起きたためでした。越水したからといって、必ずしも堤防が決壊するとは限りませんが、越水すれば決壊の危険性が増すことになります。堤防決壊で一番多いのが、この越水破堤です。これらは河川工学や災害の専門家にとっては当たり前のことですが、一般の人びとにとっても常識と言えるでしょうか?私は越水破堤のことは全く知りませんでした。

 私が抱いた素朴な疑問は「越水すれば決壊の危険性が増すことを住民は知らされていたのだろうか」でした。「堤防が決壊するまで人びとがその危険に気づかないのはまずい。切迫性を伝えるのであれば、最悪のリスクを知ってもらう必要がある」と思いました。こうした疑問と考えを出発点に最初に書いたのが、鬼怒川の越水破堤を対象にした事例研究「堤防決壊と緊急時コミュニケーション」(「放送研究と調査」(2016年2月号)に掲載)です。

 川沿いなどで浸水のおそれがある地域では、越水する前に立ち退き避難することが最も重要なのですが、過去の水害をみると、越水しても逃げない人が多いのが現実です。中には越水の様子を見に行ったりする人もいます。ですから、越水から決壊までの限られた時間に、人びとに決壊の危険性を伝え、近くの頑丈な建物の2階以上に上がることなど適切に身を守るよう呼びかけることも、切迫性を伝える上で重要だと思います。

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 鬼怒川の事例では、越水から決壊まで1時間40分のタイムラグがありましたが、そもそも、一般的にタイムラグはどの位あるのでしょうか?鬼怒川の氾濫の後、国土交通省は越水しても決壊しにくい構造に堤防を補強する危機管理型ハード対策の導入を進めていますが、これによってどの位タイムラグを引き延ばすことができるのでしょうか?タイムラグを生かして切迫性を伝え切るために、情報はどうあるべきなのでしょうか?こうした疑問をもとに続編として書き上げたのが「越水破堤のタイムラグと緊急時コミュニケーション」で、「放送調査と研究」の最新号(2017年1月号)に掲載されています。

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 私はNHK報道のOBで、テレビニュースのエディター(編集責任者)をしていたことがあります。台風や低気圧が接近して重大な災害が起きるおそれがあるときには番組を中断して特設ニュースを長時間・繰り返し放送し、警報や洪水予報などを伝えてきましたが、早めに避難しないで被災してしまう方々も多く、切迫性を伝えることの難しさをいつも痛感していました。文研で緊急時コミュニケーションの研究をするようになったのも、そのためです。
 「切迫性を伝え切る」ことについて、今後も私なりに考えていきたいと思っています。

放送ヒストリー 2017年01月13日 (金)

#60 今とは違った戦前の地域放送

メディア研究部(メディア史研究) 村上聖一

年末年始、帰省先や旅行先でテレビをご覧になり、その土地でしか見られない地域ニュースや番組に触れられた方も多いのではないでしょうか。そうした地域放送の変遷についてまとめた論考を『放送研究と調査』1月号に掲載しましたので、そのご紹介です。

ただ、地域放送といっても、テレビではなく戦前のラジオについてです。なぜ戦前かと言いますと、当時は放送エリアなどが今とはかなり異なっていることから、放送の地域性を考える上で、今とはまったく違った視点が得られるのではないかと考えたためです。

日本でラジオ放送が始まったのは、1925(大正14)年ですが、全国向け放送が多い今のテレビとは違って、ラジオは地域色が強いメディアでした。また、放送エリアも必ずしも県単位ではありませんでした。以下の地図は、1931年時点で、鉱石ラジオで放送が聞けた範囲を示したものです。当時は社団法人日本放送協会が、北海道・東北・関東・東海・関西・中国・九州の7つの支部ごとに、独自性の強い放送を行っていました。

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(『ラヂオ年鑑』(1932年) ※地図は当時の日本の領土とは異なります)

地域放送の多さがわかるのが、次のグラフです。「自局編成」は、各放送局が独自に番組を放送していたもの、「入中継」(いりちゅうけい)は他の放送局からの番組を受けて放送していたものです。

例えば、大阪中央放送局の場合、7割の番組は独自制作で、東京などの番組を放送していた割合は3割程度でした。自局編成といっても、大阪発の全国向け番組もありますので、赤い部分がすべて地域放送というわけではありませんが、全国向けの番組が放送の大半を占めていたわけではなかったことがわかります。

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(『ラヂオ年鑑』1931年)

しかし、こうした状況は長くは続きませんでした。次のグラフは10年後の状況です。1930年代後半、日本放送協会の方針転換や国の統制強化もあり、ラジオ放送は急速に中央集権的なメディアへと変化していきました。

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(『ラジオ年鑑』1941年)

そして、このあと太平洋戦争が始まると、地域向け番組は大幅に縮小され、地域放送は受難の時代を迎えることになりました。

戦後、地域放送は再び拡充されていきますが、県単位で開局した民放ラジオ局の影響もあって、NHKの地域放送も、戦前のような東北、九州といった地方ブロック向けではなく、県域向けの番組が主体となります。放送の地域性は、1930年ごろとは性格が異なるものになったのです。

ここまで、簡単にラジオ時代の地域放送の変化をまとめましたが、経緯はかなり複雑なものでした。詳しくは、『放送研究と調査』1月号にまとめましたので、ぜひご一読ください。

放送博物館 2016年12月22日 (木)

#59 NHK大河ドラマ "蔵出し"ポスター展

放送博物館 和田源二

NHK放送博物館は、大河ドラマや連続テレビ小説、NHKスペシャルなど、番組広報用にNHKが制作したポスターを多数所蔵しています。放送博物館では、来年1月に大河ドラマ第56作「おんな城主 直虎」の放送が始まるのにあわせ、歴代大河ドラマのポスターを一堂に展示します(会期:2017年1月17日~2月26日)。

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今回展示するポスターのうち最も古いのは第3作「太閤記」(1965年)です。豊臣秀吉を演じた緒形拳さんの野性味豊かな演技、第1回の冒頭で当時開業したばかりだった東海道新幹線の走行シーンを使うという斬新な演出などが視聴者の心をつかみ、大河ドラマの存在感を不動のものにした作品です。当時はモノクロ放送でしたが、ポスターはカラー写真で、緒形さん演じる秀吉(木下藤吉郎)の雄々しい笑顔と、寄り添う藤村志保さん(ねね役)の柔和な表情が好対照です。

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幕末から明治維新までを舞台に幕臣旗本の姉妹を描いた第5作「三姉妹」(1967年)は、岡田茉莉子さん・藤村志保さん・栗原小巻さんという3人の名優が武家の女性らしい気高い表情を見せているのが印象的なポスターです。

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このほか、第8作「樅ノ木は残った」(1970年)の吉永小百合さんの清新な笑顔、第21作「徳川家康」(1983年)の夏目雅子さん、第23作「春の波涛」(1985年)の松坂慶子さんの、いずれもあでやかな着物姿も必見です。ポスターの内容にも半世紀を超える時代の変遷が感じられます。初期のポスターがドラマのシーンを再現したような写真が多いのに対して、平成に入った頃から、ポスター独自の完成度を追求したものが増えてきます。

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足利尊氏役で鎧姿の真田広之さんを、ジーンズなど洋装の宮沢りえさんら3人の女性が囲むというユニークなデザインの第29作「太平記」(1991年)、モノトーンに近い薄い色調であたかも幕末に撮影した写真であるかのようなテイストの第47作「篤姫」(2008年)など、味わい深いポスターがめじろ押しです。

展示では、大河ドラマ全作品のタイトルバック映像もダイジェストでご覧いただく予定です。日本を代表する作曲家による歴代のテーマ曲とあわせお楽しみください。展示場は、放送博物館3階の企画展示室です。皆様のお越しをお待ちしております。

「NHK大河ドラマ “蔵出し”ポスター展」
2017年1月17日(火)~2月26日(日) 


NHK放送博物館

休館日 :月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は火曜日休館)、年末年始
入場料 :無料
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
所在地 :〒105-0002 東京都港区愛宕2-1-1  
TEL  : 03-5400-6900

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(ホームページはこちら)  


 

放送ヒストリー 2016年12月16日 (金)

#58 『NHK年鑑2016』を発行しました!

メディア研究部(メディア史研究) 三矢惠子

今回は、ブログに初登場、『NHK年鑑』の紹介です。
2015年度の動きをまとめた『2016』版を11月11日に発行し、今週13日から、その中のNHKに関連した情報をこのホームページ上で公開しています。

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『NHK年鑑2016』

『NHK年鑑』はその名のとおり、1年に1度発行する、NHKを中心とした放送界の動きを記録した刊行物です。
とても歴史が長く、1931年に『ラヂオ年鑑』として創刊されて以来、名称はテレビ放送の始まった翌年の1954年に『NHK年鑑』に変えていますが、戦時中と終戦直後の3年間(1944~1946年)を休刊したほかは毎年発行して、NHKの歩みを記録し続けています。
(1944~1946年の内容も1947年版でまとめて掲載しています。)

 
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『ラヂオ年鑑』の創刊号


私は、1年前に編集に携わるようになりましたが、掲載している内容や執筆・編集の工程の全容を知って、あらためて『NHK年鑑』の資料価値の高さを感じています。

 ◇歴史が長いことは、すでに述べた通りです。
 ◇これ1冊で放送、技術、経営、その他、NHKのことが何でもわかります。
 ◇「番組解説」というこの本でしかわからない情報があります。

最新刊『年鑑2016』の「番組解説」では、テレビ(地上、衛星)とラジオの定時番組約650、特集番組約300、合わせて1000に近い番組について、放送日時、波、番組の内容、出演者等を紹介しています。
定時番組については、その番組の第1回の放送年月日が記録されています。番組が終了した場合は最終放送日も記録しています。この情報は、ほかでは見ることはできません。

「番組解説」からは、例えば「『きょうの料理』の初回放送日は1957年11月4日、『きょうの料理ビギナーズ』は、『きょうの料理』放送50年を記念して2007年4月2日から始まったこと」などがわかります。

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(校正段階の「番組解説」)

『年鑑2016』では、「放送90年」と「戦後70年」の節目にあたって放送した番組を一覧表にまとめて、「放送界の動き」に掲載しました。

外部の研究者や番組批評家の方などからは、「過去の番組や放送のことを調べるのにいつも使っている」という声をいただきます。
こうした資料が何十年か先の研究に役立つのかもしれないと思うと、ちょっとわくわくします。

 

おススメの1本 2016年12月09日 (金)

#57 障害者スポーツを、共生社会の窓口のひとつに

メディア研究部(メディア動向) 山田 潔

今年9月、リオ五輪に続いて障害者スポーツの祭典、パラリンピックが開催されました。
中継やニュース等いろいろなメディアが取り上げたので、目にされた方も多いのではないでしょうか。

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障害者がスポーツに打ち込む姿を、どのように見て、どのようなことを感じられましたか?
「障害があっても頑張ってるね。私もがんばらなきゃ。」
「結構、スポーツじゃん!」
「日本がんばれ!」
「スポーツはオリンピックだけで十分。」 などなど

いろんな、見方、感じ方があると思います。

パラリンピックには、「パラスポーツを通じて、よりインクルーシブな社会(障害者も健常者も共に生きる社会)を創出する」という視点があります。スポーツを通して、共に生きるという理念を肌感覚にしていこうということです。こうしたムーブメントには、お茶の間に直接届く放送の役割が大きいのではないかと思います。
リオを終え、2020年に向けた取り組みが加速していくこの時点で、放送が「障害者」「障害者スポーツ」といったテーマとこれまでどう向き合ってきたのか、そして、その現在地がどこにあるのかを、今後に向けて俯瞰してみました。取りまとめた小論を「放送研究と調査」12月号に掲載しています。
取材で立ち寄った社会福祉法人「太陽の家」で、1964年の東京パラリンピックの牽引者であった中村裕博士が開発した「和室用車いす」と出会いました。畳が傷まないようにとタイヤを幅広にしたものです。障害のある相手を1人の生活者として見る視線こそ、共生社会への鍵のように感じています。

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2020年の東京大会に向けて、パラリンピアンや競技を取り上げた講演や放送、そして障害者スポーツの体験イベント等の取り組みが各地で行われます。NHKでも、オリンピックとともにパラリンピックについてもさまざまな取り組みを行っていきます。
どこかで見かけたら、参加してみませんか。障害者スポーツにちょっと触れてみて、放送も楽しんでみませんか。そして、12月号の「障害者スポーツと放送」も読んでいただけるとうれしいです。

実は、筆者自身、ポリオの後遺症で松葉づえを使う障害者です。これまでスポーツとは縁遠い生活でしたが、きつくなったズボンが、スポーツをやれと言っています。
パラリンピアンにはなれないとしても、スポーツセンターに行って見ようかな。
気持ちよく受け入れてもらえるといいな。
誰かとつながれるともっといいな。

メディアの動き 2016年12月02日 (金)

#56 "スマホでテレビ" は、いつ実現するの?

メディア研究部(メディア動向) 村上圭子

11月22日、福島県沖で発生した地震により、津波警報が発令されました。
NHKや民放では、放送と同じ内容、もしくは同じ情報源を活用した内容を、
地震発生後すぐにインターネットでリアルタイムに配信しました。
早朝だったので、ベッドの中や通勤中にスマホのアプリやSNSで
ご覧になった方も多いかもしれませんね。

(写真 NHKニュース・防災アプリ)
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こうした災害時や、アメリカ大統領選、小池東京都知事の会見など
人々の関心の高いニュースについては、
ネットでも放送と同じ内容が視聴できる、「同時配信」というサービスが当たり前になってきました。
5年前の東日本大震災の時には、発生から半日くらいたってから
各局が五月雨的に配信する状況でしたから、大きく変わったと言えるでしょう。

しかし、こうしたサービスは、何かあった時だけであり、
地上波放送のチャンネルまるごとをスマホで見ることはできません。
実験的な取り組みとして、TOKYO MXとNHKが実施しているのみです。
一方、イギリスでは約10年前から、アメリカでも数年前から、
こうしたサービスは一般的となっています。
なぜ日本では同時配信のサービスの実施が各国に比べて遅れているのでしょうか。

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(クリックすると大きくなります)

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(クリックすると大きくなります)

理由はいくつかありますが、最も大きな理由としては、
日本では2006年から「ワンセグ」サービスという、
携帯電話(ガラケー)にテレビと全く同じ内容を放送の電波を使って届けるサービスを、
地上波放送局各局が取り組んできたという経緯があったことがあげられます。
ただ、人々の持つモバイル端末が、ガラケーからスマホに移り、
ワンセグチューナーが入ったスマホはごく一部となり、
サービスは廃れていっています。
もしかすると、ワンセグって何だろう?と
サービスをご存じない方も少なくないのかもしれませんね。

同時配信は、テレビと同じ内容をスマホで見ることができる、という意味では、
ユーザーの皆さんにとってはワンセグとあまり変わらないかもしれません。
しかし、放送の電波ではなくインターネット回線を使う、という意味で技術的には大きく異なります。
そして、技術的に異なるだけでなく、放送法や著作権法上の扱いも異なります。
そのため、ワンセグに代わって同時配信をすぐに実施するということには
なかなかならなかったのです。

しかし、一人暮らしで家にテレビがない人、スマホで映像を見る人が増える中、
テレビで見ることができる内容をなぜスマホで見ることができないのか、という声はどんどん大きくなっています。
こうした状況を受け、現在、総務省では同時配信に関する議論が始まっています。

 「放送を巡る諸課題に関する検討会」
 「情報通信審議会 放送コンテンツの製作・流通の促進等に関する検討委員会」

先月くらいに、新聞を始めニュースでも大きく取り上げられていたので、
ご存じの方も少なくないかもしれませんね。

また、NHKでも今月半ばまで約1万人の方に参加していただいて、
一日約16時間、総合テレビとEテレを同時配信する実験を行っていて、
今後、NHKとしてどのようなサービスが求められるのかを検証中です。

(写真 NHK同時配信(試験的提供B)アプリ)
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(スマートフォン画面)


日本における同時配信サービスは今後、どのような姿になっていくのか、
実施に向けてはどのような課題があるのか、
放送研究と調査12月号』で詳細にまとめています。
同時配信の他にも、「AbemaTV」など、
複雑に絡み合う日本の動画配信事情についても最新状況をまとめていますので、
ぜひご一読ください。 

調査あれこれ 2016年11月25日 (金)

#55 女性の家事時間 減った?増えた? ~2015年NHK国民生活時間調査より~

世論調査部(視聴者調査) 渡辺洋子

先日、実家に帰ったところ、“床拭きロボット”がせっせと床を磨いていました。
新しもの好きの父が、早速購入していたのです。
私も普通のお掃除ロボットの導入を検討していたのですが、年老いた親に一歩も二歩も、先を越されていました。

昨今、食器洗い機、ロボット掃除機など家事を便利にしてくれる道具が次々と開発され、普及しています。
ネット通販が身近になったり、お惣菜がコンビニでも購入できたりと、
便利なものやサービスが身のまわりにあふれ、その気になれば、家事にかける時間は大幅に減らすことができます。

では、こうした家事にかける時間は、実際には、減少しているのでしょうか。

こちらのグラフは、2015年にNHK放送文化研究所で行った国民生活時間調査の結果から、
家事時間の長い女性の30代と40代について、炊事・掃除・洗濯にかける時間の変化を示したものです。

<女30代、40代の炊事・掃除・洗濯の全員平均時間の変化(平日)>
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30代は1995年から2005年にかけて、40代はこの20年で、
それぞれ30分以上も炊事・掃除・洗濯にかける時間が減っていることがわかります。
データからも、家事の短時間化が進んでいることがみえてきます。
未婚の女性や働く女性の増加もこうした現象を後押ししていると言えます。

でも、減った家事がある一方で、増えた家事もあるんです。

<女30代、40代の子どもの世話の全員平均時間の変化(平日)>
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こちらのグラフは、同じく女性30代と40代について、子どもの世話にかける時間の変化をみたものです。
女性30代では2000年以降、女性40代では1995年以降、増加傾向にあります。

晩婚化で、40代でも幼い子どもを育てる人が増えたのでしょうか。
もしくは、少子化で、少ない子どもにより手をかけるようなったのでしょうか。

例えば、ベネッセ教育研究所の調査では、少子化により、友だちと遊ぶ機会が減り、
母親と2人で過ごす時間が増えたというデータもあります。(「第5回幼児の生活アンケート」より)
確かに、我が家の娘も一人っ子で、近所に遊び相手がいないので、大半の時間を親と遊んで過ごします。
自身を振り返っても、育児以外の家事をかなり省力化して、子どもに手をかけている実感があります。

このように女性の家事時間は、炊事・掃除・洗濯にかける時間は減っているものの、
子どもの世話にかける時間が増加し、全体としてはなかなか大きくは減っていかない、ということが分かります

女性の家事時間がなぜなかなか減らないのか、そして男性の家事時間がなぜなかなか増えないのか、
間もなく刊行される『放送研究と調査12月号』で、生活時間調査の結果をもとに詳細に分析しています。
よろしければ、是非、ご覧ください。