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文研フォーラム 2020年02月12日 (水)

#236 仕事も家庭も楽しめない日本人!? ~国際比較調査から見える日本人の姿~

世論調査部(社会調査)村田英明

みなさんは「国際比較調査」データをご覧になったことがありますか?調査に参加する国々が、同じ時期に、同じテーマで、同じ質問の世論調査を行い、国民の意識の違いや自分の国が抱える様々な問題を浮き彫りにすることができる、とても役に立つ調査です。
と言うと何だか難しく、取っ付きにくい感じがしますが、例えば、こんな調査ならばどうでしょう。

 ■「日本は、仕事にストレスを感じる人が多い国である。男女とも、およそ半数の人が仕事にストレスを感じており、男性は調査した国の中で2番目に多く、女性は4番目に多くなっている。アメリカや中国などでは、仕事にストレスを感じる人は3割程度しかいない。」 (2015年・ISSP「仕事と生活(職業意識)」調査)

 ■「日本は、家庭生活の満足度が低い国である。家庭生活に“非常に満足している”または“満足している”という人は、男性が4割ほど、女性が3割ほどで、参加国中、満足度は男性が4番目に低く、女性は2番目に低い。」(2012年・ISSP「家庭と男女の役割」調査)

仕事や家庭生活といった身近なテーマだと興味がわくのではないでしょうか。それと同時に、「なぜ日本人は仕事にストレスを感じるのだろう?」「なぜ日本人は家庭生活の満足度が低いのだろう?」といった疑問がわいて、その理由を知りたくなるはずです。

今年の文研フォーラムでは、世論調査部が20年以上前から世界の国々と協力して毎年実施してきた「ISSP国際比較調査」についてご紹介します。開発途上国を含めて40以上の国と地域が参加している調査から見えてきた“日本人の姿”や“日本の課題”をゲストとともに詳しく見て行きます。

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ゲストにお招きするのは、NHKのニュース番組にもご出演いただいている白河桃子さんと常見陽平さんです。日本人の働き方の問題や、結婚や家庭の問題に詳しいお二人が、調査から浮かんだ様々な疑問にお答えします。どうぞお楽しみに!!
研究報告は、国際比較調査のベテラン、村田ひろ子主任研究員が担当します。

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文研フォーラム 2020年02月10日 (月)

#235 子どもたちのリアルなコンテンツ視聴に迫ります!

世論調査部(視聴者調査)阿曽田悦子

現在、私は1歳と3歳の子育て真っ只中。
ご飯を作っているとき、片付けしているとき、ちょっと休憩したい時。
一番お世話になっているのが「テレビ」です。

上の子が1歳の頃までは、Eテレや知育教材など“親が見せたいコンテンツ”を見せていました。
2歳になり、“自分の見たいコンテンツ”を主張するように。
3歳になると、自分でテレビのリモコンを操作し、DVDやYouTubeまで見るようになりました。

子どもたちの最近のブームは「アナと雪の女王」。
毎日、飽きることなく何度も見ているため、まだ上手に話すことができない
1歳の娘も「ありの~ままの~」と鼻歌らしきものを歌っている始末です。
テレビ番組にこだわらず、“見たい時に見たいコンテンツを見る”
これが、我が家の子どもたちの「テレビ」の見方です。

テレビ番組を放送された時間に見るリアルタイム視聴や、録画やDVDでの視聴、テレビで動画を視聴したりなど、いろいろな形の「テレビ」の見方がありますが、そもそも、幼児が1日にテレビ番組をリアルタイムで視聴している時間はどれくらいでしょうか?
毎年6月に実施している「幼児視聴率調査」のデータをご覧ください。


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2006年のリアルタイムの視聴時間は、2時間19分。その後2011年までは2時間以上でしたが、2019年は1時間37分になってしまいました。
特に夕方の時間帯では、今なおリアルタイム視聴が最も多いものの、録画DVD視聴、インターネット動画視聴が存在感を増している兆しがみえています。

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子どもたちをとりまく環境も変化し、テレビコンテンツだけではなく、
映像コンテンツが多様化している中で、子どもたちは何を見ているのでしょうか?

3月4日の文研フォーラムでは、「幼児視聴率調査」と「メディア利用の生活時間調査」の最新データをもとに、幼児のコンテンツ視聴の実態、母親のリアルな生活・メディア動向を詳しく報告します。
またゲストには、民放初の0歳~2歳向けの幼児番組「シナぷしゅ」を企画した、テレビ東京・飯田佳奈子プロデューサーと、Eテレの編成主幹・中村貴子を迎え、「幼児コンテンツ」のミライを一緒に考えます。

これからの時代を生きる子どもたちは、どんなコンテンツを、どのように見ているのか?
「何みてる?令和のこどもたち」 皆さん、ぜひご参加ください。


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文研フォーラム 2020年02月07日 (金)

#234 2020年のジャーナリズムのキーワードは「エンゲージメント」?

メディア研究部(海外メディア)青木紀美子

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「隠れた飢餓」の問題について話し合うため、カリフォルニア州サクラメントの
公共ラジオCapital Public Radioが開いた住民との対話集会
                  (写真:Steve Fisch/FischPhoto)

アメリカ、ハーバード大学のジャーナリズム研究所NiemanLabは、毎年の終わりに翌年の動向「予想」(1)を報道分野の先駆者や研究者に依頼し、発表しています。メディアの危機が深刻なアメリカでジャーナリストや識者は何に注目しているのか?海外メディアの動向調査を担当する私には、その知見からヒントを頂くことも多い読み物です。

2020年のNiemanLab予想で目立った言葉の一つは「エンゲージメント」でした。日本では「エンゲージメント・リング」など婚約という意味で使われることが多い言葉ですが、ジャーナリズムの分野では市民と「接点を持つこと」「双方向の対話をすること」「継続的なつながりを育むこと」「活動をともにすること」といった読者視聴者、さらに幅広い市民との関係を表す言葉として使われるようになっています。

非営利調査報道メディアProPublicaのエンゲージメント担当記者、ビーナ・ラガベンジュランさんは「エンゲージメント報道は、取り上げる課題の当事者がその取材報道に参加する機会をつくること」と説明し、特に地域ジャーナリズムの分野で人々とのエンゲージメントが増えることを予想しています。(2)

ヴィスコンシン大学ジャーナリズム校の教授スー・ロビンソンさんも、2020年のアメリカ大統領選挙に向けて有権者とのエンゲージメントを試みるメディアが増え、特に地域メディアの選挙報道の内容を変えてゆくだろうと述べました。(3)

カリフォルニア州の公共ラジオのコンテンツ責任者クリスティン・ムラーさんは「エンゲージメントは従来の報道を見直し、透明性を高め、取材から発信まで地域社会とともにかたちづくることで、人々とメディアとの間の距離を縮めるものだ」とした上で、このエンゲージメントをジャーナリズムの財政基盤の強化にも結びつけることを2020年の課題と位置づけています。(4)

情報が氾濫し、メディアへの信頼も落ち込む時代。このような「エンゲージメント」を柱に、人々が必要とする情報、信頼できる情報を届けることで、双方向の対話があるつながりを育み、信頼の回復をめざす試みを欧米では「Engaged Journalism」と位置付け、実践例や成果、課題や評価の指標などについて情報の交換が行われるようになっています。

具体的な手法は多様で、オンラインで募集した質問や意見を出発点に取材をすることもあれば、地域の課題について住民が話し合う機会を設け、その議論を参考に報道内容や発信方法を方向づけることもあります。共通しているのは、人々の声にもう一度耳を傾けることから始め、市民を、情報を受ける「オーディエンス」から情報をかたちづくる「パートナー」へと見直し、”市民のため”だけではなく、“市民とともに”発信することをめざしていることです。

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文研フォーラム2020では、アメリカのCapital Public Radioをはじめ、イギリスのBBCや西日本新聞社からエンゲージメントに取り組む方々の参加を得て、実践例を紹介し、その可能性や課題について話し合います。

(1)  https://www.niemanlab.org/collection/predictions-2020/ 
(2)  https://www.niemanlab.org/2019/12/the-year-of-the-local-engagement-reporter/
(3)  https://www.niemanlab.org/2019/12/campaign-coverage-as-test-bed-for-engagement-experiments/
(4)  https://www.niemanlab.org/2019/12/the-year-we-operationalize-community-engagement/ 

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文研フォーラム 2020年02月06日 (木)

#233 地方局が集めた4,900枚の「戦争体験画」

メディア研究部(放送用語・表現)井上裕之

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この絵は、沖縄戦の体験を描いた「戦争体験画」の1枚です。砲弾を浴びて倒れた一家の姿が描かれています。
絵を描いた豊永スミ子さんは当時6歳。家族で砲火をくぐり抜けて避難していましたが、1発の砲弾が近くでさく裂。父親と幼い弟を失いました。絵の右側には、弟を抱き上げて泣きながら取り乱す母親。絵の左側には、砲弾を腹に受けて苦しむ父親と、父親にしがみつく豊永さん自身が描かれています。描いているうちに、豊永さんは、着の身着のままで亡くなった家族の姿をきれいに彩ってあげたいと思い、クレヨンで色を塗ることにしました。

沖縄戦の、住民側から見た視覚的な記録を――
そんなねらいで、沖縄放送局でニュースデスクをしていた2005年、局を挙げて「戦争体験画」を集めました。ローカル放送で戦争体験者に呼びかけたところ、500枚以上の絵が寄せられました。沖縄戦は、米軍側が撮影した映像の記録が残っている戦闘です。しかし、寄せられた絵には、そこに記録されなかった、住民側から見た多様で凄惨な地上戦の姿がありました。豊永さんの絵もその1枚です。沖縄のローカル放送で1年以上にわたり、毎日ニュースで紹介し続けました。

それから時を経た2018年、こんどは札幌放送局が、北の地上戦の絵を集めました。樺太(今のサハリン)や千島列島での戦争体験の絵を描いてほしいと呼びかけたところ、短期間ですが、100枚以上の絵が集まりました。札幌局で中心となったのは、十数年前に沖縄戦の絵をいっしょに集めた同僚でした。一見、場所も離れ、別々に行われたように見えるプロジェクトですが、つなげてみると、息の長いプロジェクトのようにも見えます。

NHKで最初に「戦争体験画」の募集を呼びかけたプロジェクトは、1974年にさかのぼります。原爆のショックで記憶を失った戦災孤児の少女を描いた朝ドラ『鳩子の海』をテレビで見た、という男性が、自分で描いた1枚の絵を当時の広島放送局に持ち込みました。その絵を放送で紹介したところ、たいへんな反響があり、こうした絵を集めることになったと言います。その影響を受けた長崎放送局でも絵の募集を実施。全国放送の番組でも紹介されました。

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   1974年に広島放送局に届けられた絵。小林岩吉さんが原爆投下直後に見た光景を描いた。
   けがややけどをして水を求める大勢の人や,舟から肉親をさがす人などが描かれている。

それから、NHKが行ってきた「戦争体験画」募集のプロジェクトは合計6回。実施したのは、いずれも地方局です。集まった絵は、合わせて4,900枚余りに上りました。こうした絵は、カメラが普及していない時代のできごとを伝える貴重な記録です。そこには、描いた人の気持ちも込められています。それは、プロの画家が描いた戦争画などとも異なります。戦争体験画とはいったい何なのか?私たち自身も、それを知りたいと思っています。

終戦からことしで75年。これまでの戦争体験画のプロジェクトを整理し、戦争体験画の意味と可能性をさぐるワークショップを、文研フォーラム2020で開くことになりました。専門家をパネリストにお招きし、歴史、文化、美術などの視点で議論します。また、これまでの戦争体験画のプロジェクトの担当者たちも集まります。みなさんもぜひご参加ください。

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文研フォーラム 2020年02月04日 (火)

#232 放送アーカイブが生み出す新たな価値を求めて

メディア研究部(メディア動向)大髙 崇

イギリス人アーティストのイアン・ベリー(Ian Berry)の作品をご存知でしょうか?
地下鉄、バーなどの都会的な情景画や、アイルトン・セナの肖像画。ブルーの世界に彩られた油絵のような質感ですが、近づいてよーく見ると・・・
実はデニム(ジーンズ)の生地を貼り合わせた「切り絵」なのです。デニムの様々な青・黒・白の濃淡だけでリアリティたっぷりに表現されている傑作ぞろい。

イアンは、自分がもう履かなくなったたくさんのデニムを見て「捨ててしまうのはもったいない」と思ったのが、創作を始めたきっかけだと語ったそうです。
衣服としての役割を終えたデニムがアーティストの感性を刺激して、絵画の素材という意外な形で新たな光があたったわけです。

お見事!!
こんな風にNHKアーカイブスが保存する100万本の過去番組にも新たな光をバンバンあてたい!
その思いで文研フォーラム2020に臨みます!(^O^)♪
3月5日午前10時からのプログラムC 「NHKアーカイブスに公共メディアの価値を探る」では、過去番組をNHK以外の専門家や研究者の視点から活用する事例を紹介します。

●大学などの研究者の方々にアーカイブスの番組を視聴して論文を書いていただく「学術利用トライアル」での研究成果を発表。「ドキュメント72時間」やNスぺ「人体」シリーズ、「歌舞伎の舞台映像」の昔と今を分析した結果、意外な発見が続々と…!

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●認知症ケアの専門家の方々との連携で生まれた「回想法ライブラリー」を徹底解剖。
むかしの思い出を語り合うことで脳が活性化する効果が期待される認知症の心理療法に、NHKアーカイブスが一役買っています。古い映像のリノベーション成功事例です!

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過去の番組は、たくさんの人の感性を刺激することでしょう。
そして、放送とは違った、意外な形で新たな光があたることでしょう。

 「デニムを絵画に活用しよう」のような発想には、たくさんの方々とのコラボが必要です。みなさん、ぜひ語り合いましょう!

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文研フォーラム 2020年02月04日 (火)

#231 デジタル・ディスラプション?デジタル・トランスフォーメーション?

メディア研究部(メディア動向)村上圭子

あまり聞きなれない2つのキーワードをタイトルにしました。この2つ、皆さんはご存じですか?ディスラプションとは「破壊」、トランスフォーメーションとは「変化・変質」という意味です。

 イギリスの通信社ロイターの研究所とオックスフォード大学が毎年出しているリポートJournalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2020」が今年も1月に発表されたのですが、その冒頭のサマリーには、「この10年でモバイルとSNSによって既存メディア産業が大きく“破壊”された」と書かれています(図1)。モバイルとSNS、まさにデジタルによるディスラプションですね。

    (図1)
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      出典:「Journalism, Media, and Technology Trends and Predictions 2020」

  では、こうしたデジタル・ディスラプションは日本でも起きているのでしょうか。
図2は民放連研究所が行なった「媒体別広告費の中期予測」です。2025年に向けて、テレビ(地上波)はインターネットに大きく水を開けられると予測しています。昨年11月末に民放連研究所が主催した「ローカルテレビ経営研究会」でも、所長の木村幹夫氏は「ネットがテレビに代わるリーチメディアになるディスラプションは当分起こりそうにないが、そのことへの備えは今から必要だ」と指摘しました。

  (図2)
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           出典:民放連研究所 (民放経営四季報2019夏)

 一方、広告収入ではなく受信料収入で成り立つ公共放送はどうでしょうか。ここ数年、欧州では公共放送のあり方や受信料制度を巡って様々な議論や、実際に制度改革が行われています。欧州も日本と同様、テレビ端末を持つ世帯が受信料を支払い、公共放送を支えるという制度を運用する国が多数です(2013年にテレビ端末の有無に関わらず個人が負担する制度に変えたドイツを除く)。しかしスウェーデンでは2019年に受信料制度が廃止されてドイツと同じ制度に、デンマークは同じく2019年から段階的に公共放送の予算が受信料から政府交付金へと移行することになり、それに伴ってチャンネル数の大幅削減も行なわれました。去年末にはイギリスでも、受信料未払いに対する刑事罰の廃止が検討されていると報じられています。OTTによる多様な動画配信サービスの充実によって、公共放送のサービスや価格、制度が相対化され、これまでのようなあり方でいいのかという問いが投げかけられているのだと思います。
 日本でも、総務省「放送を巡る諸課題に関する検討会」では、NHKに対して、業務・受信料・ガバナンスの三位一体改革の必要性が繰り返されています。また、「NHKから国民を守る党」が活動を続けるなど、NHKには国民からの厳しい目も注がれています。ただ、公共放送を取り巻く変革のうねりは、日本固有の問題ではなく世界的な潮流といえるでしょう。

  こうした状況にどのように対応していくか。それが、冒頭にもう1つあげたキーワード、デジタル・トランスフォーメーションです。放送波だけでなくネットでも、テレビ端末だけでなくモバイルにも、番組や情報をどう提供していくか、そのためのビジネスモデルの変革や法制度の改革をどのように進めていくのか…等々。他の事業と異なり、地上放送業界は、テレビ端末の上に限られた局だけがチャンネルを持つことを許されてきた、いわば“一艘の船”。NHKと民放の二元体制、在京キー局とローカル局のネットワークモデル、広告代理店主導の強固なビジネスモデル等、この船を支えるこれらの“骨組み”はあまりに複雑に絡み合い、また多様な立場の多数の“乗組員”がいて、羅針盤を描ける人がいない状態が続いています。図3には、現在、私が取材を通じて感じている変革に向けた課題の主なものを挙げてみました。もちろんこれ以外にも挙げればきりがないですが…。

 (図3)
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  しっかりした取材基盤を持ち、確かな情報を伝え、社会でいま何を考え、解決していくべきか、絶えず問題提起し続けるメディアの機能は、フェイクニュースが氾濫しフィルターバブルの問題が指摘されるインターネットが中心となる言論社会にとって、また、人口減少や少子高齢化で課題が増大する地域社会にとって、これまで以上に重要になってくると思います。その機能の重要な担い手として、これまで一世紀近く続いてきた地上放送は、時代の変化に応じた変革を行うことが果たして可能なのでしょうか。

 こうしたことを考えるために、3月6日、「NHK文研フォーラム2020」では「これからの“放送”はどこに向かうのか? 本質的な論点に向き合うために」と題したシンポジウムを行います。アカデミックな視点から、今後の放送やメディアを考えるための糸口をさぐれればと思っています。

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文研フォーラム 2020年01月31日 (金)

#230 誤情報・虚偽情報との闘い・真価を問われるメディア報道

メディア研究部(メディア動向)福長秀彦

3月の「文研フォーラム2020」では「SNS時代の誤情報・虚偽情報とメディア~“フェイク”にどう向き合うのか~」というシンポジウムを行います。誤情報・虚偽情報の拡散について研究している私もパネリストの一人として参加することになりました。

うわさや流言、デマ、都市伝説。世の中に事実の裏づけがない情報が溢れているのは、今も昔も変わりません。私はNHK報道のOBで1975~91年にかけて記者をしていましたが、当時も取材で聞き込んだ情報には、怪しげな“ガセネタ”の類がかなり交じっていました。その中から事実の裏づけがとれたものだけを拾い出しては記事を書いていました。“ガセネタ”の類はゴミ情報として捨てていました。巷でうわさになっている誤情報や虚偽情報を打ち消す記事を書いた記憶はありません。

でも、今やそんなことで済むような時代ではなくなったようです。インターネットやSNSの普及によって、誤情報・虚偽情報はかってないほど広範囲に、そして瞬く間に伝播するようになりました。私の現役時代は、誤情報・虚偽情報がどれほど世の中に広まり、社会にどんな影響を及ぼしているのか、簡単にうかがい知ることはできませんでした。しかし、今ではTwitterのリツイートなどによって、それらが社会に拡散し、人びとが反応する様子がリアルタイムで可視化されます。

 誤情報・虚偽情報に注意を呼びかけるテレビニュース
                (大阪府北部の地震)
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(注)2018年6月18日NHK総合テレビの放送画面

誤情報・虚偽情報の中には、社会に悪影響を及ぼすおそれがあるものが多くあります。ジャーナリズム=報道機関には一定の取材力、速報力、情報伝達力がありますから、有害な誤情報・虚偽情報を迅速に、リアルタイムで打ち消して、それらに惑わされないよう伝える役割があると考えます。メディア報道の真価が問われるところだと思います。

もちろん、誤情報・虚偽情報との闘いは容易ではないでしょう。客観的な事実よりも信じたい情報を信じる「ポスト・トゥル―ス」の風潮、“マスゴミ”の言葉に象徴されるメディア不信、AIによってますます巧妙化するおそれがある偽動画…。メディアはこれらとどう向き合い、どうしたら一人でも多くの人びとに正確な事実を伝えることができるのか、内外のジャーナリストやメディア研究者の皆さんとシンポジウムで掘り下げます。


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文研フォーラム 2020年01月28日 (火)

#229 「NHK文研フォーラム2020」申し込み受け付けは2月3日(月)からです!

計画管理部(計画)吉田  準

NHK放送文化研究所(文研)が年に一度、総力を結集してお届けする「NHK文研フォーラム2020」を、3月4日(水)・5日(木)・6日(金)の3日間、東京・紀尾井町の千代田放送会館にて開催します。今年は、シンポジウムやワークショップ、研究発表など7プログラムを集中して行います。

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今回のテーマは「メディアの真価とは?」。世界的にメディアへの信頼が揺らいでいる中、一人ひとりの心に届き、心を動かす情報をどのように届ければいいのか。求められるメディアの真価について、国内や海外から各界の専門家を招き、文研の研究員とともに考えます。具体的なプログラムはこちら

激変するメディア界の動向に関心のある方には、欧米のメディア関係者が参加する「SNS時代の誤情報・虚偽情報とメディア」、「情報が氾濫する中での『信頼とつながり』」や、ここ数年の放送政策がテーマの「これからの“放送”はどこに向かうのか?」がおすすめ。世論調査による最新データで日本人の姿に迫るのは「何見てる?令和の子どもたち」「仕事も家庭も楽しめない日本人!?」。このほかワークショップ「NHKアーカイブスに公共メディアの価値を探る」、「市民が描く『戦争体験画』の多様性と可能性」など、盛りだくさんなプログラムでみなさまのご来場をお待ちしています。

参加申し込みの受付は、2月3日(月)正午から文研ホームページで開始します。
お申し込みは先着順で、定員に達したプログラムから受付を終了しますので、ぜひ早めにお申し込みください!
NHK放送文化研究所の研究員一同、みなさまのお越しをお待ちしております。

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会場案内:千代田放送会館(東京都千代田区紀尾井町1-1)

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地下鉄赤坂見附駅(銀座線・丸ノ内線)D出口から徒歩約10分
地下鉄永田町駅(半蔵門線・有楽町線・南北線)各出口から徒歩2~8分
地下鉄麹町駅(有楽町線)1番出口から徒歩6分
来場者向けの駐車場はございません

 

 

文研フォーラム 2019年03月05日 (火)

#173 世論調査でかんたんチェック! あなたは多数派?少数派? 文研フォーラム2019

世論調査部(研究開発) 原 美和子/平田明裕/萩原潤治

 

いよいよ明日から、文研フォーラム2019!
きょうは、研究発表と連動した体験コーナーのご案内です。

世論調査でかんたんチェック! あなたは多数派?少数派?
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□世論調査の結果がどうだろうと、自分には関係ない
□世論調査とアンケート、大した違いはないんじゃない?
□世論調査って、本当にちゃんと調査しているの?

「NHKで世論調査をしています」というと、こんなご意見や疑問をいただいたりします。えー残念、手前味噌ですが、世論調査って、実に奥が深くって、面白いんだけどなあ。そもそも世論調査は、世の中のみなさんの意見を積み上げた結果なのだから、本当はNHK世論調査というより、「みんなの」世論調査であるはずなんですが・・・・・。

世論調査を、もっと身近に感じてもらいたい、もっと関心を持ってもらいたい、ということでこのたび取り組んだのが、世論調査結果を活用したウェブコンテンツの開発です。

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※画面の詳細は変わる可能性があります

これはフォーラム2日目の研究発表「世論調査から探る人々のニュース・情報選択」と連動したもので、『放送研究と調査』2018年12月号に掲載した世論調査報告「情報過多時代の人びとのメディア選択」のデータをもとに、いくつかの質問に答えると、たとえばこんなことがわかります。

あなたの情報に対する意識は、同年代の中では多数派?少数派?
年代によって、メディアの利用や意識の特性にどのくらい違いがある?ない? 
あなたの情報“視野”は、広い?せまい?

フォーラム開催期間中の午後、会場の千代田放送会館1階で、体験コーナーを設置予定です。フォーラムへいらっしゃる方々、ぜひともお立ち寄りください!

なお、このコンテンツは、体験してくださった方々のご意見も参考にさらにブラッシュアップし、3月中には、文研公開HPから、どなたでも体験できるようにする予定です、こちらもどうぞお楽しみに!
それでは、千代田放送会館でお待ちしています!

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文研フォーラム 2019年02月20日 (水)

#172 競争から協力へ、危機をチャンスに変える ~アメリカのメディア連携~

メディア研究部(海外メディア研究) 青木 紀美子

お金がないと、紙おむつを買うにも小分けにして買うために高くつき、定期を買うにも短期間を買うお金しかないため高くつく、歯の治療をするのも耐えられなくなるまで我慢するため、大変な治療が必要になり、銀行口座がないと給与の小切手を現金に換えるために手数料がかかる・・・

これは全米10大都市のうちでも最も貧困率が高い東部ペンシルベニア州の都市フィラデルフィアで、まとまったお金がないと日々の暮らしのコストがいかに増えるか、という現実を伝える「High Cost of Being Broke(貧困の高いコスト)」というシリーズ記事の内容です。実は1社が連載したものではなく、市内の商業テレビや公共放送ラジオ、新聞やオンラインメディアが取材した記事を2018年8月から12月にかけて10本持ち寄るという企画でした。

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         「High Cost of Being Broke」のウェブ画面 

フィラデルフィアでは、2016年から2017年にかけて受刑者の社会復帰の問題を、そして2018年から貧困の問題を、媒体や視聴者読者層を異にする市内の報道機関が協力して取材し、報道するメディア連携が行われています。重要だけれども見過ごされがちな社会の課題を、力をあわせて多角的に取材し、解決策まで踏み込んで伝えることで、より大きなインパクトをもたらすことをめざす「RESOLVE(解決)」という連携プロジェクトです。

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連携プロジェクト「RESOLVE」に参加しているメディア

アメリカでは、地域メディアの多くがビジネスモデルの急激な変化、経営悪化や買収合併に伴う合理化による取材要員の減少、フェイクニュースの氾濫に伴うメディアの信頼低下など、同時におしよせる危機に直面し、ジャーナリズムの新たなあり方を模索する動きが広がっています。

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「RESOLVE」の編集会議


競争より協力を、というメディア連携もその一つです。限られた要員の持てる力を最大限に活かして最大限のインパクトを、解決が難しい社会の課題に向き合うことで信頼回復を。危機をチャンスに変えようという試みです。 

3月6日の「文研フォーラム」は、フィラデルフィアのメディア連携の主要メンバーであるフィラデルフィア・メディア・ネットワークの統括編集長、それに課題解決型の報道に重点を置く連携を各地で支援しているソリューション・ジャーナリズム・ネットワークの地域代表を招き、地方のジャーナリズムにメディア連携がどのような意味を持つのか、話し合う予定です。

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スタン・ウイッシュナウスキーさん
フィラデルフィア・メディア・ネットワーク
統括編集長・副社長


 

 

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                      セアラ・ガスタヴァスさん
                     
ソリューション・ジャーナリズム・ネットワーク
                      米西部山岳地方マネージャー