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メディアの動き 2023年11月17日 (金)

【メディアの動き】群馬テレビ,経営と労組が対立,地域放送の公共的使命をめぐり

 群馬県唯一の民放で独立局である群馬テレビ(前橋市)の労働組合は10月18日,県労働委員会に救済の申し立てを行った。武井和夫社長による過度な人事異動などを不当労働行為だとして,改善を求めている。

 また,交渉の中で,社長が経費削減を理由に,複数の自治体を名指しして「スポンサーでない自治体に取材に行く必要はない」,ニュース取材は「NHK前橋に行ってもらえばいい」という趣旨の発言をしたとして,これらの発言は放送の公共的使命を定めた放送法や,民放連の放送基準に抵触すると訴えている。

 これに対して群馬テレビは,「これまで誠意を持って十分な説明をしてきたと考えている」などとコメントしている。

 取材は不要だとされた自治体の1つ,渋川市の髙木勉市長は,同月23日の定例会見で「発言が事実であれば極めて残念で問題である」と発言。また,群馬テレビの筆頭株主である群馬県の山本一太知事は,同月19日の定例会見で,社長の発言を重く受け止め,県が事実関係の調査を行う意向を示した。

 筆者の取材に対し,労働組合の前島将男委員長は,「地域の報道は民放とNHKが担っていくべきで,経営にはその役割と責任を自覚してほしい」と話す。

 地方経済の低迷が続く中,地域民放は経営の維持と公共的使命の遂行をどう両立させていくのか。報道機関として,スポンサーや株主とどう距離をとっていくのか。今回の対立が,群馬テレビ自身の社内体制を検証する契機となるのかに注目していきたい。