文研ブログ

ことばのはなし 2017年12月08日 (金)

#105 ら抜かないことば

メディア研究部(放送用語・表現) 塩田雄大

べつに、怒って出てかなくってもいいじゃない。


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はぁあ、休みの日にやんなるわ。女ですもの泣きはしないけど、なんであたしの気持ち、わかってもらえないんだろ。
なにこの本、『放送研究と調査』(2017年12月号)? あいつ、あいかわらずマニアックだね。え、“「高齢者」は、72歳7か月からである”って、どういうこと?

▼「高齢者」は公的には「65歳以上」と定義されることが一般的であるが、一般の人々の意識の平均値を算出すると「72歳7か月から」であった。

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うわ、もしかしてこんなこと真剣に算出しちゃったりしてる人がいるの?


▼「雨かもしれませんね_ 」および「もう終わったのかもしれませんよ_ 」のように書くときに、句点[ 。]と疑問符「?」のどちらを使うかを尋ねたところ、句点[ 。]であるという回答がいずれも約半数を占めた。

そうそう、これは「?」じゃなくて「 。」であるべきよね。


▼テレビで[見れる]という発言があったとき、それに合わせて字幕スーパーを施すとしたらどのようにするのがよいかを尋ねたところ、【「見られる」と表示するのがよい】という規範的な意見は、[女性][50歳以上][大卒][関東]に特に多い。

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うそやだなにこれ、この条件、年齢以外はぜんぶあたしに当てはまってるじゃん。

もしかしてあいつ、あたしにこれ見せようとして…

メディアの動き 2017年12月01日 (金)

#104 中国返還から20年、香港の「報道の自由」の行方は?

メディア研究部(海外メディア研究) 山田賢一

香港が中国に返還されて20年が経ちました。20年前は、香港が中国に返還されると、経済の自由放任で栄えた香港が共産党独裁政権の下で衰退していくとの見方がありましたが、その後、香港は2003年に中国本土との間でCEPAという経済緊密化協定を結び、経済的な一体化を進める中でそれなりに繁栄を維持してきました。その一方で、中国本土にはない香港の魅力であった「報道の自由」について、特にここ数年“萎縮”が進んでいるとの指摘があります。

その背景には、テレビにしても新聞にしても、香港のメディアオーナーの多くが中国ビジネスに精を出す財界人で、中国への批判的な報道をすることに腰が引けているということがあります。これが特に目立っているのが商業テレビ局トップのTVBで、もともと親中派の香港の財界人が所有していましたが、2015年には報道部の編集主任に親中派政党「民建聯」の前幹事長が就任した上、その後、中国資本がTVBの株式の一部を正式に取得するなど、中国による「直接支配」の様相も出てきました。

104-1201-111.gifさらに衝撃的だったのは、2015年から2016年にかけて起きた「銅鑼湾書店事件」です。銅鑼湾書店は、中国共産党政権の内幕などを暴露する書籍を扱う香港の書店ですが、2015年10月から年末にかけて、書店の幹部5人が相次いで「失踪」したのです。これらの書店幹部はその後、中国中央テレビ(CCTV)など中国系のメディアに拘束された状態で相次いで登場、「違法行為」を認めるインタビューの映像が報道されました。しかし、2016年6月、このうちの1人の林栄基氏が釈放後に香港で記者会見し、テレビでの自白は事前に原稿が用意され「強制されたものだった」と述べたのです。また、5人のうちの1人の李波氏は、香港にいる間に行方不明になっており、中国政府が香港にいる香港人を拉致したのであれば、中国本土とは異なる社会システムを維持するとした「一国二制度」を侵すものに他ならないとして、香港市民を震えあがらせました。

『放送研究と調査』12月号では、こうした香港のメディア環境の変化について、今年9月に行った現地調査を踏まえ、特に主要テレビ局であるTVBと公共放送のRTHKを中心に紹介するとともに、従来型メディアが“萎縮”する中で新たな報道の自由の守り手として雨後の筍のごとく立ち上げられているネットメディアについても、その現状と課題を報告します。

放送ヒストリー 2017年11月24日 (金)

#103 「オーラル・ヒストリー」は、対話を通して歴史を紡ぐ

メディア研究部(メディア史研究) 広谷鏡子

「オーラル・ヒストリー」
と聞くと、「ん? オーラルケア? 歯磨き? そのヒストリーって何?」なんて思うのが、まず一般的な反応でしょうか。耳にしたことがあるぞ、という方は、ずばり『オーラル・ヒストリー』という著書のある、御厨貴(みくりやたかし)・東大名誉教授の名前を思い浮かべられるかもしれません。

私たちは、2025年に100年を迎える日本の「放送」の歴史を研究しています。数年前から、放送史を「オーラル」、つまり、実際に歴史の中で生きてきた人々の「口述」(=「証言」)によって記録するという研究方法に取り組んでいます。

歴史という大層なものを「口述」によって書き起こす? 実はこの研究方法は批判も受けてきました。それは、「人間の記憶なんて信用できるの? そんな曖昧なもので客観性を保てるの?」というものです。おっしゃるとおりですね。でも考えてみてください。「口述」と相対するものに「文書」がありますが、文書資料なら信用できるのでしょうか。文書資料も当時の作成者の意思によって「作られたもの」です。完全に「客観的なもの」と断じることはできませんよね。たとえば公文書なら当局の、日記であれば著者の意図や主観が入っています(私も日記をつけていますが、生意気にも後世の人々が読むことを期待して、都合の悪いことは書かなかったりします)。重要なことは、文書資料が「真実」であり、口述資料が「正しくない」と片付けてしまうべきではない、ということです。

私たちは、「歴史上の事実」だけを明らかにしたいのではありません。放送と関わった人たちが、当時何を思い、どのような未来を目指したのか、その足跡は「放送史」という大きな流れの中で、どんな役割を果たしたことになるのか。それらを知ることで、私たちは歴史には別の側面があることを発見し、歴史の実相を手繰り寄せることができるのではないでしょうか。一人ひとりの証言の蓄積が、支流をつくり、やがて注ぎ込むべき大河を壮大なものにしていくと私たちは確信しています。「オーラル・ヒストリー」によって、文書資料にはこれまで記載されてこなかった、人々の語りでしか知ることのできない豊饒な世界に、ぐっと近づけるような気がしています。

103-1124-11.jpg「証言をとる」と言うと、堅苦しい、重々しいイメージですが、インタビューでは、証言者との「対話」を重視します。準備も大変ですし、緊張もしますが、自分たちが歴史の新しい一幕を開いているのかもしれないのですから、楽しいひとときでもあります。

もうひとつ。貴重な証言ですから、「とりっ放し」にしたくありません。今後、別のテーマの研究にも活用できるよう、オリジナル音声(映像)データを「保存」するシステムも、大急ぎ整備中です。2016年度に当研究所のメンバーで作成した「『オーラル・ヒストリー』方法論・試案」『放送研究と調査』11月号に掲載していますので、合わせてご覧ください(12月1日に全文公開されます)。

100年後の人たちが、「放送」を血の通った歴史として振り返ることができますよう!

おススメの1本 2017年11月17日 (金)

#102 NHK・武蔵野美術大学共催 展覧会『吉田直哉 映像とは何だろうか』

計画管理部(計画) 大森龍一郎


11月27日(月)
から武蔵野美術大学美術館にて、 元NHKディレクター・吉田直哉(1931-2008)が歩んだ足跡、映像表現へのまなざしを紹介する展覧会「吉田直哉 映像とは何だろうか ----テレビ番組開拓者の思索と実践」が開催されます。NHK放送博物館では、吉田直哉の番組制作の元となった台本、原稿、写真などの貴重な資料を保存することになり、この展覧会を武蔵野美術大学  美術館・図書館と共催することになりました。(詳しくはこちらNHKサイトを離れます

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武蔵野美術大学特別講義での吉田直哉

【テレビ番組の開拓者 元NHKディレクター・吉田直哉】
吉田直哉は、NHKがテレビ局の本放送を開始した1953年にNHK入局。以来、映像表現への妥協のない姿勢を貫き、その後のテレビ番組形式の先駆けとなる多くの作品を制作しました。吉田は文章のすぐれた書き手でもあり、映像メディアについての論考をはじめ、番組制作での経験談、生い立ちを綴ったエッセイなど、多くの著作を残しました。NHK退職後、武蔵野美術大学に新設された 映像学科の初代主任教授として、映像の高等教育機関設立に尽力しました。

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吉田直哉制作番組台本

【展示予定の吉田直哉制作のNHK番組】
・NHK特集「ポロロッカ・アマゾンの大逆流」
・大河ドラマ「太閤記」
・NHK特集「ミツコ 二つの世紀末」 等


【展覧会のみどころ① 代表的な制作番組、著作に綴られた言葉】
展示会場の外周ゾーンでは、吉田が制作した全番組のなかから特徴的な30番組を取り上げ、外周全体に液晶ディスプレイを配置。象徴的なシーンを映し出すとともに、各番組のために執筆された吉田の論考、番組制作のエピソードを紹介します。

【展覧会のみどころ② 吉田作品の魅力を造形的視点から解明】
本展覧会では、美術・デザインを専門とする武蔵野美術大学ならではの造形的な展示手法を展開。会場には島のように点在する展示ブースがキーワードごとに設置され、作品の魅力をグラフィカルに解説します。各制作番組の奥に通底する吉田の知られざるまなざしにスポットを当てます。

テレビ番組の開拓者、吉田直哉の世界をぜひご堪能ください。


展覧会情報
「吉田直哉 映像とは何だろうか -テレビ番組開拓者の思索と実践」(NHKサイトを離れます)
 会 期|2017年11月27日(月)-12月22日(金)
 休館日|日曜日
 開館時間|10:00~18:00(土曜日は17:00閉館)
 会 場|武蔵野美術大学美術館 展示室3 
     (東京都小平市小川町1-736)詳しいアクセスはこちら(NHKサイトを離れます)
 入館料|無料 


展覧会関連イベント
研究発表
「吉田直哉の思索と実践 ムサビで映像を学ぶことのヒント」
日 時|2017年12月11日(月)16:30-18:00(16:00開場)

会 場|武蔵野美術大学 美術館ホール
参加方法|入場無料/先着順(予約不要、定員約150名)/直接会場へお越しください
登壇者|篠原規行(武蔵野美術大学 映像学科教授)、黒澤誠人(武蔵野美術大学 美術館・図書館)、稲口俊太(本展研究スタッフ)

 

調査あれこれ 2017年11月10日 (金)

#101 東京オリンピック、ふたたび!

世論調査部(視聴者調査) 斉藤孝信

◆嗚呼(ああ)、なつかしのオリンピック ~文研の倉庫を掘り起こしてみれば~

2020年の東京オリンピック・パラリンピックまで、早いもので残り3年を切りました。そこで今回のブログでは、オリンピックのお話をさせていただきます。
皆さんの記憶に残っている一番古いオリンピックは何大会でしょうか?40歳の私にとっては、1984年のロサンゼルス大会です。ロケット・ベルトを装着した宇宙飛行士のような格好の人が空を飛んだ開会式。柔道の斉藤仁さんと山下泰裕さんの感動の金メダル。毎日、家族と一緒に、ブラウン管テレビにかじりついて観戦した思い出があります。
53歳以上(「記憶」ということでいうと、50代後半ぐらいからでしょうか)でしたら、「1964年の東京オリンピックだ!」という方も多いと思います。開会式やバレーボール「東洋の魔女」の映像は今でもよく目にしますが、大会前に高速道路や鉄道網の整備が急ピッチで進んだこともよく知られています。きっと東京の街は大騒ぎだったのだろうなあ、と想像します。
当時の人々はどんな思いでオリンピックを迎えようとしていたのか。実は開催直前の1964年6月に、文研が東京23区民を対象に世論調査を行っていました。
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文研の倉庫に保管されている64年調査の資料


それによると、「オリンピックが開かれるのをうれしく思うか」という問いには、92%が「うれしい」(「大変うれしい」+「うれしい」)と答えていました。

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さらに時代を反映していて面白いのは「どんな点で一番関心をもっているか」という問いで、最も多かったのが「外国に対してはずかしくないオリンピックの運営ができるかどうか」の36%で、「日本選手がよい成績をあげるかどうか」の23%を上回っていました。戦後最大の国際イベントだっただけに、人々が、日本の復興を世界にアピールできる機会を喜び、並々ならぬ思いで成功を願っていた様子がひしひしと伝わってきます。

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◆迫る!2020年東京オリンピック・パラリンピック 人々の期待と不安の「現在地」を報告します

それから半世紀あまり。東京で2度目となるオリンピックが迫る中、文研では全国3600人を対象に「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」を昨年10月に実施しました。
開催都市になることへの評価を尋ねたところ、8割を超える方が「よい」と答えました。9割以上の方が開催を喜んでいた1964年調査とは質問も対象の地域も違うので単純に比較はできませんが、多くの人が肯定的にとらえていることがわかります。こうした調査は2020年まで毎年10月に実施しますので、今後、人々の思いがどのように変化していくのかも楽しみです。

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今回の調査結果は、『放送研究と調査』11月号に掲載中です。「東京都民」と「東京都民以外」での比較分析もしています。期待や不安の度合いに、果たしてどんな違いが見られるのでしょうか!?
さらに!実は今年10月に、2回目の調査も実施しまして、今まさに鋭意分析中です!いずれ皆さんにご報告できればと思っておりますので、そちらも合わせて、どうぞお楽しみに。

調査あれこれ 2017年10月27日 (金)

#100 憲法改正への賛否、半世紀の推移

世論調査部(社会調査) 荒牧 央

今年は日本国憲法が施行されてから70年になります。少し前の話になりますが、5月の憲法記念日の前後には各地で記念行事や催しが行われました。東京の国立公文書館で開催された特別展では、日本国憲法の原本や、制定に至る過程で作成された資料が展示されていました。

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日本国憲法の原本(筆者撮影)

NHKの世論調査で憲法について尋ねたのは、1962年の「第6回参議院議員選挙全国調査」が最初です。今の憲法を改正する必要があるかどうかという質問に対し、「改正する必要があると思う」20%「改正する必要はないと思う」21%で、ほぼ同じ割合でした。残りの6割は「どちらともいえない」などです。

この質問は現在まで50年以上にわたって繰り返し使われており、(間隔の空いている時期はあるものの)改正に対する賛否の長期的な推移をみることができます。1960年代から70年代前半にかけては、「必要」が多くなったり「不要」が多くなったりしながらも、どちらかがもう一方を大きく上回ることはありませんでした。92年、93年の調査でも同様のことが言えます。

大きな動きがあったのは2000年代です。2002年の調査では「必要」が58%と半数を超え、「不要」を大幅に上回りました。1990年代以降、自衛隊と国際貢献のあり方について議論が高まったことや、「新しい権利」など憲法改正のテーマが多様化したことが影響したのではないかと考えられます。

今年3月に実施した直近の調査では「必要」43%、「不要」34%。「必要」が上回ってはいますが、両者が再び接近しました。憲法改正の論議が現実味を帯びる中で、人びとが改正に対して慎重な姿勢を示すようになったのかもしれません。

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22日に行われた衆議院選挙では、与党が憲法改正の発議に必要な3分の2の議席を維持し、改憲に前向きな野党も含めると議席の8割を占めました。内閣支持率の低下などから先行きが不透明になっていた憲法改正論議も、再び活発になると考えられます。世論調査部ではこれからも憲法に対する国民の意識を追って行きたいと考えています。

『放送研究と調査』10月号では、1974年、1992年、2002年、2017年の4回の世論調査の結果を中心に憲法意識の変遷について報告しています。

調査あれこれ 2017年10月20日 (金)

#99 幼児に人気の番組、いまむかし

世論調査部(視聴者調査) 星 暁子

最近の小さい子どもたちがよく見ている番組をご存じですか?
きょうは、文研が毎年6月に2~6歳の未就学児(東京30km圏)を対象として実施している「幼児視聴率調査」の結果から、幼児に人気の番組についてご紹介します。
こちらは、今年6月5日~11日の1週間で、幼児によく見られた番組のリスト(20位まで)です。
(このあとご紹介していく番組について、文字に色をつけています)

99-1020-11.png今回最もよく見られたのはEテレの「おかあさんといっしょ」です。長く続いている幼児向けの番組として知られていますが、さかのぼって調べてみたところ、実は調査が始まった1996年以降で視聴率がトップになったのは初めてのことでした。Eテレ(教育テレビ)の番組がトップになったのも初めてです。
では「おかあさんといっしょ」の人気が高まってきているのか(だとしたら嬉しい!)と調べると…実は、ほかの人気番組の視聴率が徐々に低下してきているため、「おかあさんといっしょ」がトップに浮上したということのようです。

では、過去はどんな番組がどのくらいの視聴率だったか、10年前(2007年)、20年前(1997年)の、幼児によく見られた番組のリスト(10位まで)を見てみましょう。

99-1020-23.png今も続いている番組やシリーズがいくつもありますね。アニメやヒーロー・戦隊シリーズは今でもたいへん人気がありますが、当時の視聴率は今よりだいぶ高いことがわかります。
アニメに注目すると、2007年には「Yes!プリキュア5」「サザエさん」「ちびまる子ちゃん」が30%を超え、1997年には「ドラえもん」「クレヨンしんちゃん」が50%を超えていて、当時の人気ぶりがうかがえます。
ヒーロー・戦隊シリーズをみると、今年は「仮面ライダーエグゼイド」「宇宙戦隊キュウレンジャー」が10位圏外になっています(ちなみに「キッチン戦隊クックルン」は、食育番組です)が、2007年には「仮面ライダー電王」が30.9%、「獣拳戦隊ゲキレンジャー」が25.9%でした。1997年にはヒーローシリーズの「ビーロボカブタック」が39.8%、「ウルトラマンティガ」「電磁戦隊メガレンジャー」が29.2%と、いずれも高視聴率を記録していました。

ただ、この調査の「視聴率」はテレビの放送と同時の視聴(リアルタイム視聴)についてのものなので、録画やDVD、動画で見られているものを含めると、一概に「アニメやヒーロー・戦隊シリーズの番組が見られなくなってきている」とはいえないのかもしれません。この調査では、自由記述で「お子さんが録画してよく見るテレビ番組/DVD/動画」のタイトルを書いてもらっているのですが、アニメやヒーロー・戦隊シリーズの番組名も数多く挙がっており、今でも子どもたちの「お気に入り」には違いないようです。
見ている子どもたちは成長とともに入れ替わっていくのに、20年以上もの長きにわたって支持され続けている番組があるということは、テレビ業界にとっての「財産」なのでは、と思えます。

幼児にテレビはどのくらいの時間見られているのか、録画番組やDVD利用の状況…など、今年の詳細な結果は『放送研究と調査』10月号で報告していますので、お読みいただければ幸いです。

メディアの動き 2017年10月13日 (金)

#98 「トランプワールド」VR配信は放送に何をもたらすのか?

メディア研究部(メディア動向) 山口 勝

VR(バーチャルリアリティー、仮想現実)
は放送に何をもたらすのでしょうか?
2017年6月、NHKは、ドキュメンタリー番組のBS1スペシャル『知られざるトランプワールド~360°カメラが探訪する新大統領を生んだ世界~』で、世界初となる放送と同期させた360°映像のVR配信を行いました。視聴者は、放送を見ながらスマホを上下左右に動かすことで、テレビ画面の外側につながる世界を360°体験。TVの新しい見方を提案したのです。

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トランプタワーがあるマンハッタンの街並みやトランプ氏が学んだ軍隊式寄宿舎の内部の360°映像は、視聴者から「新たな映像体験!」と反響を呼びました。東京オリンピックの1000日前となる10月29日(日)のBS1スペシャルでは、360°VR同期配信第2弾として「カヌー競技」をテーマにした番組を放送する予定です。
NHKでは「ニュースや番組を360度で『体感』する」をコンセプトにVRジャーナリズムに取り組み、NHK VRをネット上で運用しています。
VRジャーナリズムでは、「どこにカメラを据えるのか」という取材者のスタンスの重要性が、改めて問われます。

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7月にアップされた「九州北部豪雨災害360°現場報告」(写真上)では、短時間に13万を超えるアクセスを記録しました。見る方向を変えるたびに、大量の土砂や木材が家屋を押しつぶす様子が次々と視野に入ってきて、ふだんのニュース映像以上に、災害現場の臨場感が伝わりました。災害報道におけるVRの新たな可能性を感じさせます。

一方、世界の注目が集まるオリンピックでも、VR元年と呼ばれた2016年のリオデジャネイロ大会からオリンピック放送機構(OBS)が、360°VR配信を開始。次世代通信規格5Gが試験導入される2018年 平昌、サービスが開始される2020年 東京のオリンピックでは、世界的IT企業や通信キャリアがオリンピックスポンサーとなり、多視点や自由視点などより高度なVR配信に乗り出そうとしています。

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競技場を取り囲むように複数のカメラを配置して、多視点、自由視点、360°リプレイ映像など多彩なVRコンテンツを作るTrueVR(インテル提供)

通信ベースのVR配信は、これまで様々な映像文化を開発してきた放送と通信の関係を逆転させる可能性もあります。VR配信は、新しい公共放送サービス、公共メディアサービスとなるのか。5G時代の公共放送サービスはどうあるべきか。IT、通信業界と世界の公共放送の最新動向から読み解き、『放送研究と調査』10月号に下記タイトルで報告しました。
「公共放送による360°映像のVR配信の意義~2020年とその先に向けて~」

ぜひご一読ください。

放送博物館 2017年10月06日 (金)

#97 企画展「ヒロインたちの肖像 連続テレビ小説ポスター展」をもっと楽しむ!

放送博物館 堀田伸一

NHKの連続テレビ小説は現在放送中のわろてんか』で第97作を数えます。NHK放送博物館では、この連続テレビ小説のポスターを集めた「ヒロインたちの肖像 連続テレビ小説ポスター展」2018年1月28日(日)まで開催しています。今年の1~2月に開催した「NHK大河ドラマ"蔵出し"ポスター展」に寄せられた「朝ドラの展示も見たい!」という声にお応えするものです。
今回の記事では、この企画展を何倍も楽しく見るためのポイントをご紹介します。

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●  ポスターに見る「ヒロインたちの肖像」
今回の展示のメインは、なんといっても、当博物館で所蔵している、連続テレビ小説77作品・310種類の広報ポスターから厳選された49点のポスターです。連続テレビ小説のポスターは、ヒロインの顔が大写しになったものが多いのが特徴です。

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ポスターごとのヒロインの描かれ方や表情の違いを比べると、今回の企画展が何倍もお楽しみいただけると思います。


●  オープニング映像
今回の企画展では、ポスター展示のほか、NHKに映像が現存する91作品について、オープニング映像の冒頭部分を視聴できるコーナーを設けています。オープニングに描かれた日本各地の美しい風景や、懐かしのテーマ音楽をお楽しみいただけます。
また、出演者などのクレジットに目を向けると意外な発見があるかもしれません。例えばちりとてちん』(2007)のオープニング映像には、のちに『ゲゲゲの女房』(2008)でヒロインを演じる松下奈緒さんが「テーマ曲ピアノ演奏」でクレジットされています。
クレジットの中には、作品のリアリティを追及するための「時代考証」や「方言指導」なども表示されています。ヒロインの母の実家がかまぼこの老舗という設定だった『天花』(2004)の「かまぼこ製作指導」、戦時下が描かれる『梅ちゃん先生』(2012)の「竹やり指導」など、ちょっと変わったクレジットを探すのも楽しみ方のひとつです。


●  「職業でみるヒロイン像」「ヒロインを愛した男たち」
ヒロインの生涯が描かれることが多い連続テレビ小説では、ヒロインの職業や伴侶は重要な要素です。今回の企画展では、これまでのヒロインたちの職業と結婚相手を、写真で振り返ることのできるコーナーも設けています。
「職業でみるヒロイン像」からは、アイドルから宇宙飛行士にいたるまで、実にさまざまな職業で活躍する姿が描かれてきたことがわかります。「ヒロインを愛した男たち」に目を向けると、渋い演技が魅力的な実力派俳優からお笑いタレントにいたるまで、こちらも実にさまざまなタイプの男性の顔が並びます。
多種多様な職業や結婚相手を切り口に、ヒロイン像を思い浮かべながらポスターを眺めれば、ポスターに描かれたヒロインの表情も一味違って見えてくるはずです。

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このほか、連続テレビ小説に欠かすことのできない、名優や往年の名アナウンサーたちによる「語り」を楽しむことのできるコーナーや、老若男女で楽しめるクイズコーナーもあります。ぜひ、期間中にNHK放送博物館にお越しください。

「ヒロインたちの肖像 連続テレビ小説ポスター展」
2017年9月30日(土)~2018年1月28日(日)


NHK放送博物館

休館日 :月曜日(月曜日が祝日・振替休日の場合は火曜日休館)、年末年始
入場料 :無料
開館時間:午前9時30分~午後4時30分
所在地 :〒105-0002 東京都港区愛宕2-1-1  
TEL  : 03-5400-6900

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(ホームページはこちら)  

調査あれこれ 2017年09月29日 (金)

#96 あなたにとって朝ドラとはなんですか?

メディア研究(番組研究) 亀村朋子

文研ブログで何を書こうか? そう考えた時に浮かんだのは、「朝ドラ研究プロジェクト」で最近悩んでいる問題について、です。
できれば読者の皆さんのお知恵をお借りしたいと思います。以下、少しだけお付き合いください。

あなたにとって○○とはなんですか?という質問を最近テレビでよく見かけます。
その手の質問は、一昔前までは絶対にしてはいけない質問のひとつだったように思います。
つまりそれは紋切り型であり、インタビューされる側がどう答えていいか困る質問であり、しかもその上で返ってくる答えはパターン化されているからです。
例えば、引退するプロ野球選手に「あなたにとって野球とはなんですか?」と聞いたら、「私を育ててくれたものです」とか、「私の人生そのものです」といった答えが多く返ってくることでしょう。しかし、それはあたりまえ以外の何ものでもなく、もっと具体的にインタビューしなければいけない、と現場ではよく教わったものです。

今私たちがやっている研究は、まさに「あなたにとって朝ドラとはなんですか」という非常に答えにくいテーマを掲げてしまっていて、これで日々悩んでいるのであります。
ストレートに「あなたにとって朝ドラとはなんですか」と聞くのではなく、別の言い方で、それぞれの視聴者にとっての「心の中の朝ドラ」というものを浮き彫りにするためには、どういう質問をすればいいのか―――
そこで、あるメンバーがひとつの設問を考えました。

あなたにとって、朝ドラとはどんなヒトに例えられますか?

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メンバーの一人は、「同じ町内の少年野球チームの子たち」と答えました。普段からすごく気にかけているわけではないが「今年は強いよ」と聞くと、がぜん関心が湧いて試合を見に行ってしまうような存在、だそうです。ちなみに私がイメージするのは「小学校の同級生」。子供の頃は(親が見ているから)毎日会っていたけれど、中・高・大学さらに社会人になってからは忙しくてしばらく会わない時期が続き、中年になってからしばらくぶりに同窓会で会い、それがきっかけで頻繁に会うようになる、そんな存在です。
…こんな感じの具体的な設問を糸口として「朝ドラとはいったい何か」を私たちは捉えたいのです。今の多メディア時代にあってもまだまだテレビは多くの人に見てもらえる、そのヒントを探っていきたいと思っているのです。それには、いったいどんな質問をしたら有効な回答を得られるのか? 皆さんのアイディアを絶賛募集中であります。

さて、現在の朝ドラ『ひよっこ』は明日が最終回。そんな時期に、一つ前の朝ドラ『べっぴんさん』の話になりますが、「放送研究と調査」9月号には視聴者調査を通して見た朝ドラ『べっぴんさん』の特徴と、朝ドラの高視聴率を支える視聴継続要因の検証」が掲載されています。
『べっぴんさん』が、視聴者にはどのように見られていたのか?
中でも興味深かったのは、作品のイメージを問う設問で前2作(『あさが来た』『とと姉ちゃん』)とはまったく違う結果が出たことでした。果たしてそれはどんな結果だったのか―――答えはぜひ、「放送研究と調査」9月号でご覧下さい。

今年度も早いもので半分が終了。来週からは『わろてんか』の放送がスタートします。引き続き皆さんに愛される朝ドラであることを祈りつつ、研究は続きます。皆さん、良いアイディアがあったら教えてください! よろしくお願いします!