文研ブログ

調査あれこれ 2019年05月24日 (金)

#188 日本人で宗教を信仰している人は何%? 増えてるの減ってるの?

世論調査部(社会調査)小林利行


「ふだん信仰している宗教がありますか」
みなさんがこんな質問をされたらどう答えますか?

NHKが去年10月から11月にかけて行った「宗教」に関する世論調査(全国の18歳以上対象)の結果によると、「仏教」と答えた人が31%、「神道」が3%などと、何らかの宗教を信仰していると答えた人は合わせて36%になりました。

この調査は2008年にも実施しているのですが、何らかの宗教を信仰していると答えた人の割合は、この10年でほとんど変化していません。

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宗教に関する意識や行動は、10年ぐらいではあまり変わらないのかなと思って他の質問をみてみると、むしろこの結果が例外で、他の多くの数字は増加したり減少したりしているのです。

例えば、信仰心があるかどうかを尋ねた質問では、信仰心が「ある」という人が2008年は33%でしたが、去年は26%に減っています。

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では、仏教や神道など、何らかの宗教を信仰している人に限ってみるとどうなるでしょうか。
(①のグラフで、緑や赤などのカラフルな部分の人を100%として考えるということです)

「何らかの宗教を信仰している」と答えた人の中で、信仰心「あり」と答えた人は2008年は65%でした。しかし、去年は53%に減っているのです。

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つまり、「何らかの宗教を信仰している」と答えた人の中でも、信仰心を持つ人が少なくなっていて、最近では約半数になっているということです。

私は宗教学の専門家ではないので詳しく解説できないのですが、日本人にとって宗教を信仰するということは何を意味するのかということを考えさせられる結果ではないでしょうか。

実は、この調査は20年前にも行っていて、多くの質問で過去20年間(3回分)の比較が可能です。
ここで紹介した以外にも、「へえ~」と思える結果がたくさんあります。

例えば、「人に知られなくても悪いことをすれば必ずむくいがあると思うか」という質問があります。
20年前には74%の人が「そう思う」と答えていましたが、去年は何%だったと思いますか?
多くなったのか少なくなったのか? その変化はどの程度なのか?

気になる方は『放送研究と調査』4月号をご覧ください。

※ブログ内では、選択肢をある程度まとめて示しているグラフもあります。

 

おススメの1本 2019年05月23日 (木)

#187 "モンスター"を止めるのは誰だ!?

メディア研究部(メディア動向)大髙 崇


“モンスター”井上尚弥の試合、見ました?
ボクシング世界戦、ボッコボコに殴り倒して2ラウンドKO勝ち。強すぎ!
試合前は「最強の対戦相手!」とのふれこみでしたが、「あれ? 相手の選手、弱くね?」と思ってしまうほどの完勝でした。
井上選手、強くて、男前で、礼儀正しくて……、


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という思いとともに……、心の中は、正直……、

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……の日曜でありました。

そんなことはどうでもいいとして(^^;)
試合終わってさっそく、やっぱり、動画がたくさんインターネットにアップされてます。
いわゆる違法アップロードですね。
放送局など「権利者」の側からすると、相当な予算を投じて制作・放送した番組が、次々と無断でアップロードされてしまう状態は、当然放置できません。
そのため、放送局では常々、違法アップロードの番組動画を見つけては、サイトの運営者などに「削除要請」をしています。
私もかつて、この業務の担当でしたが、なにせ相手はインターネットの大海原。自局の番組をすべて探し出すのはとても無理! 大量の動画を見続けて、目がカッサカサになるのがわかります。それでも、ざっくりですが、1日で百件以上の違法動画を見つけることもしばしばありました。
ですが、このあとが、けっこう手間暇がかかるんです。
そのサイトの運営者に対し、削除してほしい動画のアドレスを一つずつコピペして(つまりコピペ百回!)、削除を依頼するメッセージを送ります。削除要請対応のフォーマットがしっかりしているサイトならある程度は楽なのですが、「ここ、メッセージ送って大丈夫なの?」とヒヤヒヤしてしまうサイトも、もちろんたくさんあります。。。

で、削除要請の仕事が終わった頃には、いつもこう。

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まさに、
モンスターにボッコボコにされた気分。

……今年の国会でも海賊版サイト対策の法案提出が見送りになりました。なかなかいいパンチが当たらないこのモンスター、KOされる日は来るのでしょうか。

私も一員の文研・メディア動向グループでは、海賊版サイト問題など、メディアと著作権に関する動向や研究論文を逐次発表しています。以下のリンクよりぜひご覧ください!

◎海賊版サイトや違法ダウンロード関連の記事
「放送研究と調査」2018年9月号
『調査研究ノート 海賊版サイトは"ブロッキングすべき"か』
「放送研究と調査」2019年4月号
(メディア・フォーカス)違法ダウンロード「全著作物に拡大」,文化審議会が報告書』

◎メディアと著作権関連の記事
「放送研究と調査」2018年8月号
『“著作権70年時代”と放送アーカイブ活用(前編)~深刻化する「権利者不明問題」~』
「放送研究と調査」2018年9月号
『“著作権70年時代”と放送アーカイブ活用(後編)~大量著作物利用への道」~』
 「放送研究と調査」2019年4月号
(メディア・フォーカス)ベストセラー『君たちはどう生きるか』,ドラマ化で著者遺族が出版社に抗議』

調査あれこれ 2019年05月17日 (金)

#186 東京五輪・パラまで1年余り。 人々の意識に変化は!?

世論調査部(視聴者調査) 斎藤孝信


2020年東京オリンピック・パラリンピックまで、残すところ1年余り。観戦チケットの予約開始や、各種目の代表選考など、大会に関するニュースや話題を耳にする機会が多くなってきたように感じます。

文研では2016年から継続して、全国の20歳以上の男女3600人を対象に「2020年東京オリンピック・パラリンピックに関する世論調査」をおこなっています。最新の第4回調査(18年10月実施)の結果は、「放送研究と調査」4月号で詳しく報告しているほか、文研のホームページでも全文をお読みいただけます。
このブログでは、その中から、今回の注目点を少しだけご紹介します!

<準備状況の評価が大幅に改善>
大会の準備状況についての評価は、調査開始からの2年間で大きく改善しました。
「とても順調だと思う」と「まあ順調だと思う」を合わせた『順調だ』は、第1回(16年10月)の18%から、第4回は52%になり、すべての調査を通じて初めて『順調ではない(あまり+まったく)』を上回りました。

第1回調査は、大会の総費用が3兆円を超える可能性が明らかになったり、新国立競技場の着工が遅れたりしていた時期でしたので、多くの人々が準備の進ちょくを危惧していたのでしょう。
それから2年が経ち、第4回調査の時点では、各競技施設の建設が着々と進み、競技日程も発表された(発表は18年7月)こともあり、『順調だ』と受け止める人が増えたのではないでしょうか。

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ちなみに(今回の報告内容からは、少し横道にそれますが)・・・。
前回の東京オリンピックの時はどうだったのでしょうか。

文研が東京都民を対象に、1964年6月に実施した世論調査(「オリンピックの準備は、あまり進んでいないようだ」という意見に対して、「賛成」か「反対」か「どちらともいえない」かの3択で回答してもらう方法)をひもといてみると・・・。

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このように、大会が4か月後に迫る中でも、半数以上の人が「準備はあまり進んでいない」と厳しい評価をしていました。当時は、交通インフラ整備や街の美化などが「五輪までに間に合うのか?」と問題になっていたようです。そうした不安と、国内初のオリンピックを成功させなければ!というプレッシャーが、この数字の裏側にはあったのかもしれません。

<「純粋なスポーツ」として捉える人が増えたパラリンピック>
第4回調査では、パラリンピックに対する人々の意識にも変化がみられました。たとえば、「パラリンピックは、どのように伝えるべきか(スポーツとして?福祉として?)」では、「オリンピックと同様に、純粋なスポーツとして扱うべき」が、第1回の37%から、43%に増加しました。

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全文掲載した報告の本編では、ここでご紹介した内容のほか、大会への関心の有無や、開催に伴う期待と不安、大会時のメディア利用の意向なども詳細に報告しています。ぜひご一読ください。

放送ヒストリー 2019年05月10日 (金)

#185 「現実に負けに行く」精神

メディア研究部(メディア史研究) 宮田 章

ネット時代の昨今、人々は見たいものだけを見て、聞きたいことだけを聞いていると言われる。自分の好みや信念に合う情報なら、それがフェイクでも現実と信じ込み、逆に自分の好みや信念に合わない現実を「そんなことあるわけがない」と否認する人も多くなっているようである。

筆者はかつてテレビドキュメンタリー(以下「ドキュメンタリー」と記す)の実作者であり、今はその制作技法の経年的な展開を研究している[i]。この小文では、多くの優れたドキュメンタリーが、その作り手の好みや信念が、現実に裏切られることをむしろ喜び、歓迎するタイプの精神から生まれたことを指摘したい思う。

優れたドキュメンタリーの作り手の多くは自己否定の達人である。ある現実についての自分の考えが、現実自体によって裏切られることを喜ぶ性格を持ち合わせている。そうでないと、その作り手は、自分の考えとは違う現実が持つ魅力を、自分の番組に取り込みにくいからである。優れたドキュメンタリーの作り手の多くは、いわば「現実に負けに行く」という気概を持っている。

「現実に負ける」ためには、「負ける」に値するだけの自分の考えを持たなければならない。優れたドキュメンタリーの作り手の多くは調べ魔である。徹底的にリサーチしてそのテーマについて自分の考えを養い、それをロケ前の番組構成案にまとめる。「どうせ負けに行くのだから」などと手を抜くことはない。構成案が的確であればあるほど、より高いレベルで現実に「負ける」ことができる。

ロケ現場についたら構成案の細かい部分は忘れる。なるべく相手のペースに合わせて、その時その場のヒト、コト、モノに接する。運良く、自分では思いもよらなかった現実の豊かさ・複雑さ・割り切れなさ・・・に触れられたなら、めでたく「負け決定」である。優れた作り手はこれを発見として歓迎する。ロケだけではない。ロケ後の編集室でも多くの発見がある。収録してきた映像と音声を多種多様に組み合わせる中で、たくさんの未知のものが生まれるからである。ドキュメンタリーの企画時を入口、放送時を出口とすれば、入口と出口で作り手の考えは変わっていなければならない。入口と出口が同じなら、わざわざドキュメンタリーなど作る必要はない。作り手が入り口で知っている程度のことは、そのテーマに関心がある者なら、大抵知っているからである。

フェイクを現実と信じ込み、現実をフェイクと否認する傾向をネットが固定・強化するばかりなら、この社会は危うい。自分の好みや信念が、現実に裏切られることをむしろ喜び、歓迎するという精神現実に負けに行く」ドキュメンタリー制作の精神は、現代において重要な意味を持っているのではないだろうか。


[i] 『放送研究と調査』2019年4月号に、NHKドキュメンタリーの制作技法の中長期的な展開」という論文を掲載しました。NHKのテレビドキュメンタリーを対象にした初めての通史です。興味のある方はご一読下さい。

メディアの動き 2019年04月26日 (金)

#184 映画「THE ATOMIC TREE」(原爆の木)を撮るのに、 なぜ"VR"を使ったのか?

メディア研究部(メディア動向) 谷 卓生


「どうして、“被爆した松”の話を、映画にしようと思ったのか」、わたしの質問に対して、監督は、「ただただ、この松のストーリーが大好きなんだ」と答えた。

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以前、米国の祭典SXSW1)(サウス・バイ・サウスウエスト)について書いたブログで紹介したバーチャルシネマ「THE ATOMIC TREE」(原爆の木)2)。4月、この映画の2人の監督のひとり、米サンフランシスコで暮らすエマニュエル・ヴォーンリー(Emmanuel Vaughan-Lee)さんに話を聞いた。日本のメディアからのインタビューは初めてだという。

エマニュエル監督が()かれたというストーリーとは・・・今から約400年前、神聖な島(広島の宮島)の山で生まれた松が、広島で盆栽業を営む山木家で代々育てられ、1945年に爆心地から約3キロの地点で被爆。戦後、米建国200年(1976年)を祝うために山木家から米国に寄贈され、米国立樹木園で展示されていた。その後、2001年に、盆栽の寄贈者の孫たちが米国を訪れた際に、初めて被爆の事実を伝え、樹木園はそれを公表した。それ以降、その松は、「ヒロシマサバイバー」と呼ばれ、もっとも尊い木のひとつとして、世界的にも知られるようになった。・・・

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監督は、この物語を表現するために、360度カメラを使った「バーチャルシネマ」という手法を採った。スクリーン上の映像を見るのではなく、「見る人が、松の木があるのと同じ世界・空間にいる」ことができるバーチャルシネマ。“同じ空間“で、この松の年輪に刻まれた約400年の記憶を体感してもらいたい、より強く木とのつながりを感じてもらいたいと意図したという。確かに、それは、かなりうまくいったと言え、わたしは、以前のブログに、「VRならではの“木との対話”」というふうに表現して、このことを伝えた。わたしとしては、木を擬人化した、このような表現は、違和感がないものであったが、エマニュエル監督は、インタビュー中、何度も「自然をキャラクターとして捉えることは、西洋人にはないと思う」と話した。この映画の日本での撮影を、コーディネートした向井万理さん(映像ディレクター/プロデューサー)も、「ディズニーのアニメなどを除けば、自然を擬人化することはほぼない。観客は、ディズニーアニメもあくまでファンタジーと割り切ってみている」と補足してくれた。
しかし、SXSWで、この映画を見た人から、監督にとって、とてもうれしい感想が寄せられたという。

  「この映画を見ることで、“木の友だち”ができた!」

他には、涙を流しながら映画を見ている観客もいたという。バーチャルシネマという手法が生んだ“体験”が、“新たな価値観”を伝えることにも役だったと言えるのではないだろうか。

日本人としては気になる、“原爆”のことをどう考えているかを監督に聞いてみた。
「自分はアメリカ人なので、とてもセンシティブな問題だ。映画自体も、原爆のことにだけ焦点を当てたものではない。原爆のことをどう考えるかは、それぞれの観客にゆだねたい」と述べるにとどまった。この映画は、日本人にも見てもらいたいので、日本語版の制作を検討していて、日本でもぜひ上映したいという。

エマニュエル監督たちが、バーチャルシネマを作ったのは、本作で2本目。「VRを使った表現の可能性を感じているし、この市場は伸びていくと考えているので、今後も、バーチャルシネマの制作を続けていきたい」と話した。


1)アメリカ南部テキサス州オースティンで毎年3月に開催される、最新のテクノロジーや映画、音楽、メディア、ゲームなどに関する世界最大級のイベント(https://www.sxsw.com/)

2)SXSWでの上映が、世界初。監督は、エマニュエルさんとアダム・ロフテンさんhttps://goprojectfilms.com/films/the-atomic-tree/)

 

おススメの1本 2019年04月24日 (水)

#183 平成時代の「放送研究」あれこれ ~放送文化研究所・30年間の論文・リポートから~ ②「平成の皇室観~『即位20年 皇室に関する意識調査』から~」(平成21年)

メディア研究部(メディア動向) 柳澤伊佐男

NHK放送文化研究所(文研)が手掛けた平成30年間の調査研究について振り返るシリーズ、2回目は、平成21年(2009年)に行われた「即位20年 皇室に関する意識調査」についてご紹介します。

この世論調査は、天皇の即位20年というタイミングをとらえ、平成21年10月30日からの3日間、全国の20歳以上の男女を対象に、電話法(RDD追跡法)で行われました。NHK社会部との共同調査で、調査対象は3,313人。このうちの62%にあたる2,043人から回答を得ています。調査の目的は、「皇室への関心・感情や、皇室との距離、皇位継承のあり方などについての意識を探ること」で、その結果が、「即位の礼」20年にあたる同年11月12日のニュースで報道されました。詳細は、翌年(2010年)の『放送研究と調査』2月号に掲載されています。

調査結果の一部をご紹介します。天皇が憲法で定められた象徴としての役割を果たしていると思うかを尋ねたところ、▼「十分に果たしている」と答えた人が全体の48%、▼「ある程度果たしている」37%、▼「あまり果たしていない」8%、▼「全く果たしていない」2%で、「果たしている」と答えた人の割合は85%に上りました。象徴としての役割を「十分に果たしている」と評価した人は、男性・女性ともに年齢が高くなるほど多くなっていました。

また、皇室に親しみを感じるかとの問いに対して▼「とても親しみを感じている」と答えた人が16%、▼「ある程度親しみを感じている」46%、▼「あまり親しみを感じていない」29%、▼「全く親しみを感じていない」9%でした。

調査は10年前に行われたものですが、当時から、多くの国民が、今の天皇は憲法が定める象徴としての役割を果たしていると考えていたことや皇室に親しみの感情を抱いていたことがわかり、大いに興味を持ちました。


「天皇に対する感情」は、文研が行っている「日本人の意識」調査の中でも尋ねています。平成30年(2018年)の調査では、▼「尊敬の念を持っている《尊敬》」と答えた人が全体の41%、▼「好感を持っている《好感》」36%、▼「特に何とも感じていない《無感情》」22%で、▼「反感を持っている《反感》」0%(0.2%)でした。

こちらの世論調査は、昭和48年(1973年)から5年ごとに実施されていますが、昭和の時代は、《無感情》と答えた人が常に40%を超え、最も多い回答でした。それが、平成になると、《好感》が大幅に増え、平成25年(2013年)の調査から、《尊敬》や《好感》が《無感情》を上回るようになっています。

私は平成の「国体」や「植樹祭」に出席された両陛下の取材を担当したことがあります。そうした「三大行幸啓」(もうひとつは「全国豊かな海づくり大会」)だけでなく、災害の被災地を訪問された際も何回か取材しました。画面を通してですが、南太平洋の島々で戦没者を慰霊するお姿も強く印象に残っています。こうした象徴としてのお務めを伝えてきたことが、平成の「皇室観」につながっているのでしょうか。

では、新しい時代の「皇室観」は、どうなるのでしょう。「令和」の時代に行われる世論調査を通して考えてみたいと思います。

※紹介した論文は、放送文化研究所のホームページに掲載されています(「日本人の意識」の論文は2003年の調査以降)。
冊子でご覧になりたい場合は、国会図書館やお住まいの都道府県立図書館のサイト等で検索・確認していただくか、NHK放送博物館(東京都港区愛宕2-1-1)でも、ご覧いただけます。


放送ヒストリー 2019年04月22日 (月)

#182 公共放送の内側から見た「放送制度」

メディア研究部(メディア動向) 山田 潔


「放送法の一部を改正する法律案」が3月5日、国会に提出されました。この改正案は、NHKのテレビ放送をインターネットで常時同時に配信できるようにNHKのインターネット活用業務の対象を拡大すること、また、関連団体も含めたNHKグループの経営の適正性を確保することなどに向けた制度整備を図るものです。電波による無線放送を行ってきた公共放送NHKを、インターネット動画配信が一般化したこの時代に、どのように対応させるべきか、現時点での「放送制度」が審議されています。

私たちは『放送研究と調査』2019年2月号から「シリーズ 証言を基に読みとく放送制度」の掲載を開始しています。これまでに何度も修正され、作り上げられてきた「放送制度」の形成過程を、学識経験者や、放送事業者、行政機関の関係者などからの聞き取りを基に検証するシリーズです。

初回は、行政法学者である塩野宏・東大名誉教授の証言でした。第2回は、NHKの経営企画部門で放送制度の見直しなどに関わった元NHK監事・黒川次郎氏の証言(『放送研究と調査』2019年3月号)です。

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証言する黒川次郎氏

黒川氏は、1960年代前半の放送法改正の動きに対応してNHKが設置した放送法制研究会の若手事務局員として、同じく若手研究員だった塩野氏を含む外部有識者による制度検討を間近で経験。その後も受信料体系の見直しや衛星放送開始に伴う制度的対応など放送制度に関する幅広い業務をNHKの中心として担いました。塩野氏とほぼ同時代に、放送制度の形成過程をNHKの内側から見てきた人です。黒川氏の証言は多岐にわたりましたが、今回は1970年代半ばまでを取りまとめました。

カラー放送や衛星放送が放送制度と関係が深いのはもちろんですが、証言を聞くと、一見あまり関係がなさそうな沖縄返還、地価高騰といった事象もNHKの経営にとって大きな影響があったようです。放送制度が技術や社会情勢と密接に絡んでいることがわかります。

「平成」から「令和」へ、いよいよカウントダウンが始まっています。新しい時代、放送はどのように役割を果たしていくのでしょうか。放送制度形成の経緯を、証言を通して立体的に知ることが、今後を考える一助となればいいのですが。

少し間をあけながら、シリーズは今後も続けていきます。
当研究所が届けるアナザー・ストーリー、ぜひ楽しんでください。

おススメの1本 2019年04月19日 (金)

#181 平成時代の「放送研究」あれこれ ~放送文化研究所・30年間の論文から~ ①「報道リポートを考える」(平成元年)

メディア研究部(メディア動向) 柳澤伊佐男


間もなく「平成」という時代が終わります。この30年の放送の歩みを振り返ってみますと、衛星(BS)放送の開始に伴う多メディア・チャンネル化、デジタル化、インターネットの発達による放送と通信の融合など、めまぐるしく変化したことがわかります。そうした「平成」時代の放送界の動きについて、NHK放送文化研究所(文研)はどう向き合ってきたのでしょうか。

そのような動機から、文研が平成の30年間に手掛けた調査研究について、毎月発行している『放送研究と調査』に発表された論文・リポート等から振り返ってみました。その中には、研究の内容がユニークなものも少なくありません。何がユニークなのかは、「独断と偏見」になってしまいますが、そのいくつかを、このブログの場でご紹介したいと思います。まずは、平成元年の論文「シリーズ・報道リポートを考える」です。

この論文は、同年(1989年)の『放送研究と調査』1月号から7月号にかけて、6回にわたって連載されました。この論文が出る前年の11月号に「報道リポートを考える 新しいニュース表現の可能性を求めて」という座談会の記事が掲載されています。この時の座談会で提起された問題が6回にわたる論文の柱になっています。タイトルを見ますと、1回目が「字から入る習性をやめる」、2回目が「事実のみを語る」、3回目が「取材力と常とう表現」、以降、「『ニュース』のスタイル」「『リポート』のスタイル」、最終回が「『リポート』のことば」となっています。この論文をベースにしたものが、のちに1冊の本になっています(松岡由綺雄『ニュースよ 日本語で語ってほしい ~放送文章入門~』平成4年)

 
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この論文の発表当時、私は記者生活2年目でした。取材、原稿もちろんですが、話して伝えるリポートにも苦しんでいました。事案の本筋を伝える「本記」原稿とともに、意義や課題を提起する「リポート」原稿を作るのですが、原形をとどめることがないほど、デスクに直されていました。いくら「話し言葉でわかりやすく」伝えようと思っても、デスクに直された原稿を読み上げるだけの「内容が伝わらない」リポートになっていたようです。

この論文の発表から30年、NHKをはじめとするテレビでの「ニュースリポート」はどう変わったでしょうか。画面を見る限り、アナウンサーのようによどみない言葉で報告を行う記者・リポーターが多いようです。感覚的なものかもしれませんが、「しゃべり」の能力は、全体的にあがっているようです。では、伝える内容については、どうでしょうか。今回取り上げた論文では「取材力の甘さを話のうまさでカバーしてはいけない」と戒めています。私自身の反省を込めて、この言葉を後輩の記者・リポーターに伝えたいと思います。

※今回紹介した論文をご覧になりたい場合は、国会図書館やお住まいの都道府県立の図書館のサイト等で検索・確認していただくか、NHK放送博物館(東京都港区愛宕2-1-1)で、ご覧いただけます。

調査あれこれ 2019年04月12日 (金)

#180 都市直下型地震 その時役立つメディアとは? ~大阪北部地震のメディア利用動向インターネット調査とは~

メディア研究部(メディア動向) 入江さやか
編成局 編成センター      西 久美子


■大都市・大阪を襲った「直下型地震」

2018年6月18日午前7時58分ごろ、大阪府北部を震源とするマグニチュード6.1の地震が発生。
大阪市北区、大阪府高槻市、枚方市、茨木市、箕面市で震度6弱の強い揺れを観測しました(以下、大阪北部地震と表記)。この地震で、関西地方の多くの鉄道が当日の夕方にかけて運転を見合わせたため、いわゆる「帰宅困難者」が多数発生しました。NHK編成局編成センターとNHK大阪放送局では地震発生当日のメディア利用動向を早期に把握するため、大阪府在住の16~79歳の男女・2,051人を対象にインターネットによる調査を行いました。さらにこの調査結果を揺れの大きかった大阪府北部とそれ以外の地域に分けて分析しました。

大阪北部在住の回答者の4分の1が「帰宅困難者」に

調査結果をみますと、大阪北部に在住する回答者(1,014人)のうち、25%の人が「歩いて帰宅した」「自宅に帰らず外出先などに泊まった」「普段と違う交通機関を使って帰宅した」などと回答し、いわゆる「帰宅困難者」になっていたことがわかりました。

これらの「帰宅困難者」が、帰宅の可否を判断するのに利用したメディアについては、「インターネットのポータルサイト(Yahoo!・Google等)」が27%で最も多く、次いで「NHKテレビ」(23%)「交通機関のサイト・乗り換え案内アプリ」(17%)「民放テレビ」(16%)などとなっていました。自分の行動や対応を決めるための情報を、主にテレビやネットから得ようとしていたことがわかりました。

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図1 大阪府北部在住の「帰宅困難者」が帰宅の可否の判断に利用したメディア
(複数回答・上位5位まで)
 
 

■もしもテレビやスマホが使えなくなったら?

今回の大阪北部地震では、交通・通信・ライフラインなど大都市を支える機能が一時的に停止・低下しましたが、テレビ・スマートフォンなどの情報機器はほぼ使用できる状況でした。一方、この地震から2か月半後の「北海道胆振東部地震」では、北海道のほぼ全域が停電(ブラックアウト)し、テレビやスマートフォンやパソコンが利用しにくい状況になり、ラジオが主な情報源になりました。

都市直下型の大地震の際に正確な情報が得られないと、帰宅できないばかりか、大きな混乱につながるおそれもあります。今回の地震を受けて大阪府では、災害時の一斉帰宅の抑制とともに、「安否確認・情報収集手段の確保」も呼びかけています。テレビやネットが使えなくなった場合に備えて、電池で使える「ラジオ」もぜひ1台備えておきたいものです。

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図2 大阪府が作成したチラシ「STOP!一斉帰宅」から
(http://www.pref.osaka.lg.jp/attach/23998/00000000/chirashi.pdf)

今回の調査結果の詳細は、NHK放送文化研究所のウェブサイトでご覧いただけます。
「放送研究と調査」2019年3月号 
都市直下型地震 その時役立つメディアとは? ~大阪北部地震のメディア利用動向インターネット調査とは?~

あわせて、「北海道胆振東部地震」の調査報告もぜひお読みください。
「放送研究と調査」2019年2月号 
北海道ブラックアウト どのメディアが機能したのか 
~「北海道胆振東部地震」メディア利用動向インターネット調査から~

メディアの動き 2019年04月05日 (金)

#179 「Screenless Media」の可能性

メディア研究部(メディア動向) 越智慎司 

3月29日、「Screenless Media Lab.」という研究所の設立発表会を取材しました。TBSラジオが外部の研究者とともに、「聴覚からの情報」についての研究を始めるということです。ラジオのリスナーを増やすのにつなげようということなのでしょうか?取材すると、目指すところは、もっと先にあることがわかりました。

研究所の所長に就任したのは、政治社会学者の堀内進之介さんです。スマートスピーカーなどの技術と人間との関わりについての著書があり、企業で音声に関する研究も行ってきました。

設立発表会で堀内さんは、「Screenless Media Lab.」の研究テーマのひとつとして、「『視覚からの情報』と『聴覚からの情報』のバランス」を挙げました。堀内さんによると、これまでは情報の取得や伝達の手段としては、視覚からが優位とされ、視覚からの情報に偏っている環境があるが、近年の研究では、聴覚からの情報が、内容の整理や理解、動機づけといった積極的な関わりについて、効果が高いと評価されているということです。研究所では、情報過多で受け手が疲れるなどの問題が起きている中、視覚からと聴覚からの情報の役割を切り分け、聴覚からの情報が受け手の理解や意欲にどのようにつながっているかといった視点から研究を進めることにしています。

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(右から2人目が堀内所長)

また、TBSラジオの制作現場の人たちは経験で、「ラジオショッピングは商品の返品率が低い」とか「パーソナリティーの話を聞いていると、その気になってくる」といった、ラジオ独特の効果のようなものを感じているということです。研究所では、こうした現場で培われたものと研究者の知見とを合わせて、音声メディアでどのような情報の伝え方をすればよいか、使うワード、語順、速さ、言い方といった具体的な部分についても研究するそうです。

NHK放送文化研究所が2015年に行った「もしラジオ未利用者が1週間ラジオを聴き続けたら」という調査でも、利用者から「知らない人の話を、ラジオだとすんなり聴けた」「なぜか、話していることが頭に入る」といった、ラジオを評価する声があがっています。

単なる音声メディアでなく、視覚のメディアとも共存する「Screenless Media」としての可能性を探ろうとする「Screenless Media Lab.」ですが、ロゴなどに「TBS」の文字がありません。研究の成果は、書籍の出版やラジオ番組での報告などを通じて、業界や社会に広く還元したいと考えているそうです。