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さつま狂句とは

さつま狂句は鹿児島弁の川柳。番組では、毎月兼題(テーマ)を決めて、視聴者の皆さんから狂句を募集しています。
寄せられた投稿句の中から、選者の小森寿星さんが選りすぐりの作品をご紹介します。
最終週には入選3句をイラスト付きでご紹介します。入選された方にはイラストのカラーコピーを送らせていただきます。
寿星さんには、狂句作りのワンポイントも教えていただきます。皆さん、ぜひ、さつま狂句に挑戦、投稿して下さい。
お待ちしています!

さつま狂句のポイント

番組の中で挙げた「さつま狂句を書く上でのポイント」をまとめて掲載しています。

「課題に忠実に」・・・兼題「半端」

今回は、サッカーの大迫勇也選手についての「半端ない」「半端ねえ」という句が多く寄せられました。しかしこの「半端ない」は「素晴らしい、完璧だ」といった良い意味で使われています。しかし、今月の兼題の「半端」は、「中途半端だ」というような完璧ではないことを指していますよね。「半端」だからこそ狂句であり、おもしろいのです。

「より鹿児島弁らしく(その2)」・・・兼題「うったっ」

今月は、「うったっは」「うったっに」「もっつっを」などの中途半端な表現がありました。 鹿児島弁にこだわってそれぞれ「うったちゃ」「うったち」「もっつく」として、言葉の位置を変えれば収まります。

「もっと鹿児島弁を大切にしよう」・・・兼題「つがらんね」

さつま狂句を郷土文芸として残すためには、消え去ろうとするような言葉を掘り起こしたり、味わい深い古い言葉をもっと大切にしたりして生かしましょう。

「より鹿児島弁らしく」・・・兼題「歯痒い(はがい)」

言葉づかいの中で「総入歯がんぶいを」とか「こんを」と、名詞は鹿児島弁になっておりますが、助詞の使い方が鹿児島弁になっていないのが見られます。 格助詞「を」を、「ゆ」や「ゆば」、「ぬ」などを使って鹿児島弁の表現を使ってみましょう。 それぞれ「総入歯がんぶゆ」あるいは「総入歯がんぶゆば」「こんぬ」として、細かいところまで鹿児島弁にこだわらなければなりません。

「一つの句には一つの訴えで」・・・兼題「ずっさらし」

投句の中で「ずっさらし女房に固い旦那」というのが見られました。 句としては面白いのですが、これではピントが合わず課題の言葉がぼやけてしまいます。 あくまでも課題をメインにしましょう。

「直接的な言葉で表現しない」・・・兼題「余計(じんじ)」

上5、中7で具体的に説明しているにもかかわらず、下5で「利口じく女房かか」とか「いみ女房かか」と、だめ押しをしている句が見られます。そこは情景の描写だけにとどめましょう。

「独自の言葉で表現しよう」・・・兼題「節約(かんじゃっ)」

過去に発表された句をつなぎ合わせたような観念的な句が見られます。独自の表現につとめましょう。

「アルファベット文字を安易に使わない」・・・兼題「アイデア」

ネットで調べなければ分からないようなアルファベット文字、例えば今回はJKなどが見られました。これは外来語でも同じです。さつま狂句にはなじみませんので、今回の兼題の「アイデア」のように一般に浸透してからにしましょう。

「上5で説明しない」・・・兼題「たっちき」

一番言いたいことを上5に持ってきますとそのあとはどうしても説明的になってしまいます。説明だけの句は「ああ、そうですか」だけになりがちです。言いたいことは出来るだけ後の方に据えて読み手に想像させる楽しみを持たせましょう。

「句の説明は書かない」・・・兼題「両方(まんぼ)」

句の説明を書かなければ分かってもらえないというのは推敲不足ということです。さつま狂句はあくまでも5・7・5だけで勝負しましょう。

「常とう句は控えよう」・・・兼題「自由吟(兼題はありません)」

今回は「サクラサク」などの句がたくさん出てきました。これらの句は今までに何百と詠まれておりましてまた出てきたかという感じです。前後をよっぽど工夫しない限り埋没してしまいます。新しい素材を探して選者の目を開かせましょう。

「具現は強い」・・・兼題「習(な)る」

発表された句と自分が投句した句と見比べてどうでしょうか。「いま習ったこともすぐ忘れる」だけではアピールになりません。入選句はいずれも事柄を具体的に、しかも細かいところにこだわっておりまして現実味があります。

「読み手の想像力を刺激しよう」・・・兼題「塩辛(しおは)れ」

投句の中にはこれでもかこれでもかと、言いたいことをびっしり詰め込んだ説明だけの句が見られます。「言わぬは言うに勝る」という言葉があります。自分の言いたいことはぐっと我慢して後は読み手の想像力に任せましょう。

「安易に助詞を省略しない」・・・兼題「嵩張(かさば)い」

投句の中に「焼酎しょちゅうすし」とか「もどっ」と、片言の日本語のような表現がありました。 それぞれ、「焼酎しょちゅし」とか「女房かかもどっ」と必ず接続の助詞を入れなければなりません。

「具体的に表現した方がわかりやすい」・・・兼題「さいも」

投句の中の「さいも」の対象で、「嫌いな料理」とか「良い物」のような表現がありました。このような場合、対象物の具体名を出した方が現実味が増して訴える力が強くなります。最後になりましたが、今年1年薩摩狂句をご覧いただき、そして沢山の方に投句いただきましてありがとうございました。新しい年もどうかよろしくお願いします。

「「っ」抜き表現に注意」・・・兼題「潮時」

今回の投句に「猫は逃げ」「止(や)めっ儲(も)け」「こさっ出せ」「縁談(はな)しょ受け」のような「っ」抜き表現が見られました。本来の鹿児島弁の使い方としては「猫は逃げっ」「止(や)めっ儲(も)けっ」「こさっ出せっ」「縁談(はな)しょ受けっ」としなければなりません。言葉の位置を変えるか言葉を変えるなどの工夫が必要です。

「言い過ぎず、不足せず」・・・兼題「メール」

あれもこれもと詰め込みが多くて説明だけの句がある反面、作者自身にしか分からないような句があります。解決方法は「表現を工夫するのみ」です。

「無理な当て字をしない」・・・兼題「希(まれ)けん」

投句の中には17音字に収めるために無理な当て字が見られます。一例ですが「禁煙」に「やむっ」との当て字などです。これでは耳で聞いた場合、何をやめるのかさっぱり分かりません。全部が全部そのようにはできませんが、出来るだけ耳で聞いても分かりやすいような表現を心がけましょう。この場合は「きんえん」とするということです。

「上手な縮めかたで句の幅を広げよう」・・・兼題「えしれん」

例えば  「毛(け)嫌(ぎら)い」→「毛(け)嫌(ぎ)れ」
     「力(ちから)い」→「力(ちか)れ」
     「姿(すがた)い」→「姿(すが)て」
とすれば1音字省略できて使える場所も変えることができます。
一語一語縮められないかチェックしてみることも大事です。
それによってまた正しい鹿児島弁の使い方にもなります。

「もっと推敲を」・・・兼題「案の定(あんのじゅ)」

「推敲不能の言葉に出会うまで推敲しなさい」という格言に出会いました。出来上がったと満足せずに、自分の力を疑(うたぐ)って「言葉を言い換えてみる」「言葉の順番を変えてみる」「内容を見直してみる」などチェックしてみましょう。

「具体的なモノを入れてみよう」・・・兼題「あせくい」

句の中で具体的なものが登場しますと状況が明確に伝わり、より現実感が増します。ただしそれは自分一人だけが知っていることではなくて、世間一般に通用しているものに限ります。

「自分なりの世界を持つ」・・・兼題「行楽(でばい)」

沢山の句の中から共感が持たれるのは、やはりその人なりの世界があるということです。誰もが詠むような句ではなく、表現や詠む素材など人と違った句は惹かれるものがあります。

「自分の言葉で表現する」・・・兼題「自由吟」

文章に使うような硬い響きの漢字熟語をそのまま使った句があります。17音字に収めるためには便利で飛びつきやすいでしょうが、あまり聞き慣れない熟語の場合は薩摩狂句には馴染まないようです。自分なりにくずして表現してみましょう。

「本来の鹿児島弁を」・・・兼題「選(え)っ」

薩摩狂句でもよく使われる言葉に「梅(うめ)」「馬(うま)」「奥(おく)」などがあります。これも鹿児島弁にこだわれば「梅(うんめ)」「馬(うんま)」「奥(おっく)」となります。似たようなところでは「五寸(ごすん)釘(くぎ)→五寸釘(ごっすんくっ)」「今先(いまさき)→今(いんま)先(さっ)」となります。薩摩狂句だからこそこのように使って残してゆきたいものです。

「もっと鹿児島らしさを」・・・兼題「恋」

今回も解説の中で何度かお話ししましたが、薩摩の狂句ですからもっと鹿児島らしさが欲しいところです。珍しい鹿児島弁の掘り起こし、地域独特の風俗・祭り・行事など課題に絡ませて使えば句がぐんと光ってきます。この言葉は鹿児島弁では何というのかなと、推敲の際に振り返ってみてはいかがでしょう。

「無理な縮めかたをしない」・・・兼題「気合い」

鹿児島弁は縮めた言い方が多いですが、言葉によっては全部が全部とは限りません。今回の投句に「気合い→気合(きえ)」、「試合→試合(しえ)」、「応援→応援(おえん)」という音数合わせのための無理な縮め方が見られました。日常会話で使っているとおりに表現しましょう。

「字数の数え方」・・・兼題「買物(けもん)」

よう音は2字で1字 (きゃ・きゅ・きょ)など
・促音は1字    (小さく書く「っ」)
はつ音は1字    (ん)
・長音は1字    (ボートなどの「―」)

「投句には句の説明は書かない」・・・兼題「赤(あ)け」

投句の中に句の説明を書いている方がみられます。説明を書かなければ選者にわかってもらえない句は推敲不足と言えましょう。あくまでも5・7・5の17音字だけで勝負しましょう。

「実際に寝た句をつくる」・・・兼題「寝(ね)っ」

投句の中には「寝た真似」「寝たふり」「寝る間も惜しんで勉強」「嘘寝」など、題意に反する、寝ていない句がありました。詠み込みではなく、「寝る」そのもので作りましょう。それともう一つ、投句には句の説明書きは要りません。あくまで5・7・5だけで勝負しましょう。

「素材の幅を広げよう」・・・兼題「二人(ふたい)」

今回は夫婦二人の句が多いでしたが、例えば「相合傘」「フォークダンス・チークダンス」「デュエット」などなど、課題の言葉を入れずに面白い句が出来そうな素材がたくさんあります。今後の句づくりに取り入れてみましょう。

「着想5割 推敲5割」・・・兼題「加勢(かせ)」

苦心した課題こそ、素材が見つかればほっとして、半ば出来上がったような気持ちになりがちです。しかしそれからが大事なところです。意味が分かってもらえるか(独りよがりの句ではないか)、狂句味がなく単なる説明句ではないか、などしばらく寝かせてから読み返してみるのも必要です。

「余韻を残す」・・・兼題「スマホ」

わずか17音字で余韻を残すには理屈や説明の句では無理があって、句としては死んでしまうことにもなります。これでもか、これでもかと説明するのではなく、読者を信用して削るだけ削って後は想像させましょう。

「論よりも証拠の方が引き付ける」・・・兼題「がっつい」

読み手を引き付けるのは頭の中で考えた作りごとより、作者の経験、体験を基にした句です。しかしそんな素材はいつでもは持ち合わせておりません。そこで大事なのが、他から見たり聞いたりしたことを自分のものとすること、いわゆる感情移入だといわれます。そのように考えると素材は沢山転がっているはずです。

「自選をしっかりと」・・・兼題「自由吟」

投句の数が2句までに限定されました。作った句の中から絞り込まなくてはなりませんから自選力が問われます。無難な句か、目立つ句か、同じような句はないだろうか、などの判断が大事になります。

「もっと言葉を選ぶ」・・・兼題「包(つつ)ん」

投句の中で、下5を「女房(かか)」で終わる句がとても多かったです。郷土文芸と言うけれどこんなものかと思われてしまいそうです。上5・中7の言葉をもっと選んで、表現を工夫すれば安易に「女房(かか)」を使わずとも意味の通じる句になるはずです。

「意味の重なりはもったいない」・・・兼題「奪合(ば)こ」

今月紹介した中に「銭失い」と「後悔」がありましたが、他には「競(せ)ろ奪合(ば)こっ(競って奪い合う)」とか「子供の親権」という表現が見られました。どちらも似たような意味ですので、そこに別な言葉を使えばもっと句に広がりが出来ます。わずか17音字です。大事に使いましょう。

「祭り・行事・風物を取り込む」・・・兼題「寒(さ)み」

薩摩狂句の大先輩の句に、「カメラ」という課題で「弥五郎(やごろ)どん どもこもカメれ 入(い)いきらじ」という名句がありました。鹿児島にはいろいろな祭り・行事・風物があります。今月の入選句もこれを取り込んだ句が沢山ありました。「焼酎」や「女房(かか)」を詠んだ句が多い中で、郷土のことは新鮮に映ります。

「読みがなと送りがなに留意を」・・・兼題「忙(せわ)し」

・誰(だい)も敵(かの)わん走(はし)くらご
・誰(だ)いも敵(かの)わん走(はし)くらご
 前の句は「誰もかなわないほど足の速い子」、後の句は「誰にもかなわない足の遅い子」という意味になります。
後の句の送ってある「い」は「誰にも」の「れに」に当たる働きもします。助詞の送り一つでこのように全く正反対の意味になります。薩摩狂句独特の表現方法です。

「ユーモア句にもチャレンジを」・・・兼題「握(にぎ)っ」

薩摩狂句の一番は何といっても滑稽味に尽きます。真面目な、利口な句よりも一段引き付けられます。現実的句よりもある面難しいだろうと思います。わざとらしさのない屈託なく笑える句にも挑戦して、自分の幅を広げてみましょう。

「決まり文句は飽きられる」・・・兼題「精一杯(せっぺ)」

投句の中には「可愛ぜ孫」とか「敷かれ亭主」という言葉がよく出てきます。使ってもいいのですが、その前後の言葉をよっぽど工夫しない限り生き残れません。このような常套句を安易に使わずに別の素材も探してみましょう。

「無理な言葉を使わない」・・・兼題「踵(どげん)」

投句の中には字余りを避けようとして、無理な言葉が見られます。絵日記が「種切れっ」とか、暑さで「夏ばてっ」というような使い方です。一部市民権を得ている言葉もありますが、基本的にはこのような動詞の使い方はありません。名詞を動詞として使う場合、辞書には「○○する」と載っております。それぞれ「種切れいなっ・種切れをしっ」「夏ばてをしっ」となるわけです。

「動かない言葉を使う」・・・兼題「夏休(なっじゃす)ん」

句の中で例えば「お中元」のところを「お歳暮」としても成り立つ、あるいは「兄」のところを「弟」としても句が成り立つようであれば「動く句」ということになる。今回も「冬休み」と置き換えても使える句があった。ここにはこれしかない、という材料、あるいは言葉を探すことが必要である。

「言葉を使い分ける」・・・兼題「気兼(きが)ね」

ありきたりの言葉では訴える力は弱いです。例えば「感動する」をそのまま使っても、自分がどれだけ感動したのかは伝えられません。「びびびっとくる」「くらくらする」「ジーンとくる」「胸を突かれる」「言葉を失う」「鳥肌が立つ」「しびれる」などの似たような意味の言葉があります。人と違った表現で読み手を引き付けましょう。

「言葉を使い分ける」・・・兼題「物好(ものずっ)」

例えば、「沢山(たくさん)」という鹿児島弁では「あばてんね、あばてんねしこ、あばてんの、いっぺ、うごっ、ずばっ、ずんばい、どっさい、どしこでん」等とそれこそ「沢山」有ります。言葉を使い分けることによって17音字にしっかり収めましょう。

「説明句は避けましょう」・・・兼題「自由吟」

作者の気持ちや情景を説明しただけでは、読み手に感動を与えることはできません。
読み手が「ハッ」とするような意外性を加えましょう。ただし、これもほどほどが肝心です。

「第一発想は捨てましょう」・・・兼題「恥っ(はっ)」

今回の投句に、参観日、レジ前、不倫騒動、遺産騒動、相撲界、宿題の間違い、服の着間違い、人(ひと)間違(まちが)い等、似た様な発想の句が沢山寄せられました。いい句だったのに採られなかったという方は、そのためと考えて下さい。皆考えることは同じです。共倒れになってしまいます。入選句を参考に人と違った発想を心掛けることと、表現に工夫を凝らしましょう。

「薩摩狂句は人間不在ではいけない」・・・兼題「飛っ(つっ)」

薩摩狂句は人を詠むのが原則です。今月の投句に「鶴が飛んだ」だけの句が沢山有りました。人間以外を詠む場合は「人のように見立てて詠む・・擬人化」の方法と、「人間との関わり合いを持たせる」方法があります。句の題材を決めた時に、この二つの点を確認してから句作りにかかりましょう。

「辞典などで、細かいところまで調べる」・・・兼題「踊っ(おど)」

今月の課題の「踊る」は、「踊りを踊る、他人にそそのかされて行動する」という意味ですが、飛び上がる、胸がわくわくする」という意味の「躍る」の句が沢山見られました。辞典にはちゃんと分かれて載っています。句を作る前にきちんと調べる癖を付けましょう。

「気の利いた一言でアピールを」・・・兼題「都合(つご)」

選をするにしても読む側にまわっても、気の利いた一言があると、うーん上手いなあとひきつけられます。できるだけ手あかのついていない言葉を見付けて句に彩りを添えましょう。

「できるだけ課題の言葉を中心に置く」・・・「夫婦(みと)」

今月の「夫婦(みと)」の題に「夫婦(みと)喧嘩(げんか)」が沢山有りました。夫婦の事ではありますが、どちらかと言うと「喧嘩」が主役になってしまいますので、できるだけ課題そのもので詠みましょう。

「薩摩狂句に上質な笑いを」・・・兼題「冗談(わやっ)」

「何を笑うか」によってその人の人柄分かるといわれます。作品は人柄そのものです。たかが薩摩狂句であってもただ笑えば良いというものではないと思います。もっと上質な笑いを追及したいものです。

「今日のポイント」・・・兼題「突然(ひょかっ)」

発音と漢字はできるだけ一致させましょう。
大騒動(とろいとろい) → 大騒動(うそど)  
同級生(おなっとっ) → 同級生(どうきゅうせい) または 同(ひと)っ年(とし)(同(おな)っ年(とし))

「狂句作りのポイント」・・・兼題「動っ(いごっ)」

おなじ発音をすることばでも次のように意味が違っている場合があります。ひとつだけ例を挙げますと。
例「きばっ」・・・
①「がんばる」という意味の場合は「頑(き)張(ば)っ」、
②「我慢する」という場合は「我慢(きば)っ」という漢字を当てます。

「課題の捉え方」・・・兼題「夏(なつ)」

私見ですが、「課題吟」は「課題で」詠むのではなく、「課題そのもの」を詠むことだと考えています。芝居や映画で言えば、課題はそれらの「主役」ではないでしょうか。主役が二人も三人もいたのでは、芝居も映画も成り立たないのではないかと思うのです。
例えば、今回の課題「夏」の場合を考えてみましょう。句の中に「夏」と「冬」出てくると、どちらが主役かわかりません。あくまでも「夏そのもの」が句の中心になるように考えるのが、課題吟を詠む場合の基本的な考え方ではないでしょうか。夏という字が入っていても、「甘夏、 夏子」などはまったく別物で、これは完全に課題から外れていると考えるべきでしょう。「夏」という字が入っていればよいというものではないと思います。
狭い考え方かもしれませんが、夏休み、夏祭り、夏草、夏バテ、なども確かに夏のものですから、完全に課題から外れているとは言えないでしょう。しかし、課題そのものを詠むという考え方からすると、完全に課題から外れてはいないにしろ、「夏、大暑、猛暑、冷夏、真夏」などと比べると、課題の中心が少しずれているのではないでしょうか。
例えば「夏休み」は「夏の休み」であって「夏そのもの」とは少しずれがあると思います。「春休み」「冬休み」「春休み」というように、どちらかというと夏よりも「休み」の方に重点が置かれた言い方ではないかと思われます。初心者のうちは、夏休みや夏祭りでも構わないと思いますが、慣れて来たら、夏そのものを詠むようにしたいというのが私の考え方です。句作りの参考にしていただければと思います。

「狂句作りのポイント」・・・兼題「汗(あせ)」

句作りにはいろんな方法がありますが、そのひとつに、「辞典を利用する」と言う事があります。易しい言葉ほど辞典を引いてみましょう。今回の「汗」という兼題で辞典を引いた方は少ないのではないでしょうか。辞典など引かなくても分かっていると考えがちです。
ところが、辞典を引いてみると、思ったより沢山の意味があることに気付きます。そして辞典に載っている例文などが句作りのヒントになることがよくあるのです。例えば、「汗」にもいろんな「汗」がある事が分かります。「脂汗」「大汗」「玉の汗」「血の汗」「一汗」「冷汗」など。これだけでも発想の枠が広がるのではないでしょうか。
兼題が出たら、おっくうがらずに、先ず辞典を引いてみることをお勧めします。

「狂句作りのポイント」・・・兼題「眼鏡(めがね)」

1.一番初めに浮かんだ句(第一想)は捨てる。多くの人が同じような句を考えるので似た様な句が多くなるので共倒れになる。
2.いろんな「眼鏡」を辞典で探す。水中眼鏡、箱眼鏡、鼻眼鏡、虫眼鏡、新しい眼鏡、古い眼鏡、高価な眼鏡、百円眼鏡など。
3.出来るだけ人が狙わないようなユニークな眼鏡を考える。「眼鏡」を句の中の「主役」にする。
なかなか難しいことですが、参考にしていただければと思います。

「狂句作りのポイント 」・・・兼題「祝(ゆえ)」

1.どんな「祝」があるかを考える。(出来るだけ辞典を引く。 お祝、名付け祝、七草祝、前祝、米寿祝、誕生祝、内祝など沢山出てきます)
2.それぞれの祝の場面をできるだけいろいろな角度からイメージ(想像)する。
3.「祝」そのものを句にする。「祝」を句の中の「主役」にする。
なかなか難しいことですが、参考にしていただければと思います。