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初泳 ぎ車 めな親が着膨 れっ鹿児島市 / 西留 やすおかべ さん
(子供の初泳ぎで、着ぶくれた親は車の中だ という意味です)
キャスター:この作品を最優秀作品に選んだ理由はなんですか
寿星 :着想の良さとユーモアを交えた表現の巧みさです。新年トップの行事を課題に絡ませながら、課題の言葉を入れずに「寒い」を忠実に詠んでおります。しかも寒さをダブルで表現しておりまして、両方ともそうだなあと共感させてくれます。
キャスター:難しい言葉もなくてわかりやすいですね。
寿星 :難しい鹿児島弁ももちろん残して使いこなしてゆかなくてはなりませんが、内容によってはこの句のように、普段使いの言葉で楽しい薩摩狂句に仕上がるという見本みたいな句です。初泳 ぎ車 めな親が着膨 れっ<唱> 声どん
掛 けっ加勢 すれば良 て
(外に出て声援でもすれば良いのに という意味です)
親に似なかった子供の気力を褒めてやりましょう -
寒 み櫓 れ ラインダンスん干 し大 根 鹿児島市 / 松下 ジャンボ さん
(やぐらの上で寒風にさらされた干し大根が、ラインダンスのように踊っている という意味です)
寿星 :鹿児島のカレンダーに毎年のように登場するのがこの景色です。この句も目の付けどころが良く、真っ先に目に留まりました。良い句からはこのイラストのように良い絵が立ち上がります。「寒風が吹きさらすやぐら」を「寒(さ)みやぐら」とした言葉の練りがなんともいえません。
キャスター:どのあたりで見られるのですか
寿星 :薩摩半島では開聞岳を望む南九州市の台地で、大隅半島では錦江湾を望む錦江町の台地で組まれるようです。しっかり干し上げてくれる、寒風が吹くところなのですね。風力発電に適している地形からも納得できる場所です。この大根やぐらは鹿児島が発祥の地とも言われているそうです。
キャスター:ラインダンスのたとえが面白いですね。
寿星 :それがこの句の一番のポイントになりました。擬人化がぴたっとはまりました。引き付ける言葉探しもまた句づくりの楽しさではないでしょうか。寒 み櫓 れ ラインダンスん干 し大 根
<唱>
萎 びっきてん そげん言 もすか
(大根が萎びてきてもラインダンスというのですか という意味です)
今年も美味しい漬物を食べられそうです -
寒 み晩の白子鰻 すくい望 む抱 っ薩摩川内市 / 島田 忠司 さん
(寒い晩も、シラスウナギ漁に望みを抱いてすくっている という意味です)
寿星 :150句ぐらいの中から目立たせるには、他人と違った着想が大事です。それが選をする目にも新鮮に飛び込んできます。優秀作品はどれもそのような句でした。参考になるのではないでしょうか。
キャスター:シラスウナギを「のぼいこ」というのですね。
寿星 :私も初めてでした。「上(のぼ)る子」から「のぼいこ」となったようです。漁は12月から3月までだそうですが、それこそ「寒い」そのものでしかも夜間です。近年は不漁続きのようですが、いつかはと望みを抱いてすくっていらっしゃるのではないでしょうか。うなぎをいただくときはそういうご苦労をかみしめながら味わいたいものです。寒 み晩の白子鰻 すくい望 む抱 っ
<唱>
少 とじゃってん楽 しか時間
(成果は少しであっても、同士との語らいがあって楽しい時間だ という意味ですが、これはテレビの中継から、そのような雰囲気が伝わって来ました)
夢よもう一度が叶いますように・・。
今月のポイント「祭り・行事・風物を取り込む」
薩摩狂句の大先輩の句に、「カメラ」という課題で「弥五郎(やごろ)どん どもこもカメれ 入(い)いきらじ」という名句がありました。鹿児島にはいろいろな祭り・行事・風物があります。今月の入選句もこれを取り込んだ句が沢山ありました。「焼酎」や「女房(かか)」を詠んだ句が多い中で、郷土のことは新鮮に映ります。