4月の兼題
「自由吟(兼題はありません)」
-
減ってきた コロね
花 見 で元気 きなっ薩摩川内市 / 笹原 半秕 さん
(コロナの感染が減って花見が出来たおかげで元気になれたという意味)
寿星 :マスク着用が個人の判断に委ねられたことにかけた句が多かった中でこちらを代表とさせていただきました。誰もが待ちわびた花見が出来る喜びが素直に詠まれております。「元気になれた」は皆さん共通の思いではないでしょうか。
キャスター:まだまだ安心はできませんが嬉しいですよね。「コロね」という表現が珍しいですね。
寿星 :「コロナに」という意味ですが、外来語を使う場合のさつま狂句独特の送りです。このように使うことで1音字の削減が出来ることになります。
減ってきた コロね
花 見 で元気 きなっ<唱>
長 ご振 いの事 て ずーず減 い焼酎 (集落の人との久しぶりの歓談で、焼酎の減り方が早い という意味)
-
赤 け紐 で結 ん彼 ん世 ん亭主 し土産鹿児島市 / 藤田 よね子 さん
(先に逝った旦那さんとは今も赤い
紐 で結ばれている という意味)寿星 :よく使われるのは「赤い糸」ですが、こちらはより強い「紐」としたところがこの句のポイントになりました。慣用句を使いながら、さらにそれを発展させたところが良かったです。このコーナーでは初投句の方ですが、おおっと感じさせてくれました。
キャスター:「紐」を「よま」というのですね。
寿星 :辞典では麻をよった「麻のよりひも」からの変化とあります。この句にぴったりのちぎれない強さでしょう。この狂句も土産になるのでしょうか。
赤 け紐 で結 ん彼 ん世 ん亭主 し土産<唱> じかっ
張 っせえ迷 れあせんめ(緩みなくしっかり張っているので道に迷うことはないでしょう という意味)
しかしまだまだ狂句を楽しんでくださいね。
-
言 きらんじ涙 で曇った 金ボタン肝付町 / 高山 しげちゃん さん
(卒業式でも告白できずに学生服が涙にくれた という意味)
キャスター:この句を天に選んだのはどんな点ですか?
寿星 :ごちゃごちゃ述べずにあっさりとした表現が光りました。高校の最後を詠んだのでしょうが、その後どうなったのだろうかという、よけいな事まで想像させてくれます。全部を言わずに余韻をもたせるとはこのような句をいいます。そしてリズムも良く時期的にもぴったりでした。
キャスター:「
言 きらん」という表現が面白いですね。寿星 :動詞について、「出来ない」という意味の独特の鹿児島弁です。このような使い方がさつま狂句に味を添えてくれます。
言 きらんじ涙 で曇った 金ボタン<唱>
二 幕 じゃ笑 顔 で ランデブん匂 (第二幕では恋が成就した匂いが漂ってくる という意味)
これでよかったですかね、しげちゃん。
今月のポイント「常とう句は控えよう」
今回は「サクラサク」などの句がたくさん出てきました。これらの句は今までに何百と詠まれておりましてまた出てきたかという感じです。前後をよっぽど工夫しない限り埋没してしまいます。新しい素材を探して選者の目を開かせましょう。