4月の兼題
「自由吟」
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新 けカバン鏡 の前で にかっしっ鹿児島市/永栄 寿桃 さん
(ランドセル姿の新入学児が鏡の前でにっこりしている という意味)
寿星 :今では言い古された言葉になってしまいましたが、いわゆる「ぴかぴかの一年生」を「新(に)けカバン」とした擬人化が光ります。そして「にかっしっ」という表現に、学校に行くのが楽しくてたまらないという元気な子供が描かれております。両親はもちろん、おじいちゃんおばあちゃんの喜びもこめられている句です。
新 けカバン鏡 の前で にかっしっ
<唱> ぴしっち
決 まっ持 ついこっじゃろ
(ぴしっと決まって、持てることでしょう という意味)
はん転倒(と)けんごっ行ってらっしゃい。 -
輝 ちゃんな笑顔 で手を振 っ 星いなっ鹿児島市/田中 健一郎 さん
(西郷輝彦さんが星になってしまった という意味)
寿星 :狙いどころが良いでした。同じ発想の句が他にもありましたが、「笑顔で手を振る」で決まりました。あの笑顔はとても光っておりました。
キャスター:「輝ちゃん」だけで西郷輝彦さんと分かるのですね。
寿星 :すごい人気でしたからね。昭和のあの頃の人達にはすぐ分かります。鹿児島の後援会に「薩輝会」というのがあったそうですが、西郷輝彦さんは後援会活動を通じて福祉活動にも力を入れていたそうです。お悔やみ申し上げます。輝 ちゃんな笑顔 で手を振 っ 星いなっ
<唱>
若 け歌声は 忘れあせんど
(あなたの若い歌声はいつまでも忘れませんよ という意味)
そちらでフラメンコを教えてください。 -
待 っ付 けっ実家 じゃ誇 らしゅ大 て鯉幟 鹿児島市/永井 手毬 さん
(待ち続けていた子宝に恵まれて、実家で大きなこいのぼりを揚げている という意味)
寿星 :今の時期ならではの風景と、おじいさんおばあさんの喜びが詠まれているところです。「実家で」というところがポイントです。実家に持ってきたところで、山や田畑を背景にしてゆったり泳ぐこいのぼりが浮かんできます。「待ち付けた」の表現が喜びのマックスですね。そして絵になる句でもあります。
キャスター:時期にマッチした句は強いようですね。待 っ付 けっ実家 じゃ誇 らしゅ大 て鯉幟
<唱> ごたまし
孟宗 を弓形 いなけっ
(ひときわ大きなもうそう竹を弓形(ゆみなり)にさせるぐらい元気に泳いでいる という意味)
この時期になりますと、「甍(いらか)の波と雲の波・・」をつい口ずさみたくなります。
今月のポイント「自分の言葉で表現する」
文章に使うような硬い響きの漢字熟語をそのまま使った句があります。17音字に収めるためには便利で飛びつきやすいでしょうが、あまり聞き慣れない熟語の場合は薩摩狂句には馴染まないようです。自分なりにくずして表現してみましょう。