3月の兼題
「習る」
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帰 い道 習 るた九九をば郷 中 い撒 っ鹿児島市 / 松下 ジャンボ さん
(学校からの帰り道に習い初めの九九を集落に響かせている という意味)
寿星 :車もほとんど走らない静かな山あいに元気な声が響いている情景が浮かびます。映像と音の両方が生き生きと描かれました。私が小学生の頃ですがラジオから「
習 るた字を電柱 て書 ったくっ」というさつま狂句が流れてきました。これが私がさつま狂句に触れた最初ではなかったかと思います。こんな面白いことを考える人がいるのかと感心しました。キャスター:
郷 中 という言葉は、鹿児島ではなじみのあることばですよね。寿星 :公民館単位の集落と考えれば良いです。地方の集落だからこそ、この句が成立します。
帰 い道 習 るた九九をば郷 中 い撒 っ<唱>
田 の神様 も下 げちょい目 尻 (田の神様も微笑んでいる という意味)
やまびこも元気に響くことでしょう。
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爺 い習 るた接 木 で旨 め びわ・みかん薩摩川内市 / 湯原 知一 さん
(おじいさんに習った接ぎ木で、びわやみかんを美味しく食べられる という意味)
寿星 :作者の体験がそっくりそのまま句になったのではないでしょうか。 良いところに気づくものだと一巡目で引かれました。
キャスター:それは特にどこですか?
寿星 :接ぎ木ですね。このような細かいところを逃さずに句に仕立て上げたところです。課題への絡ませ方がお見事でした。 難しいと思われる接ぎ木のできる作者の器用なところまで読み取れます。
爺 い習 るた接 木 で旨 め びわ・みかん<唱>
猿 やら鳥 と勝負 もあんそで(猿やら鳥対策も大変でしょう という意味)
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止め
撥 ねを先 生 い習 るっ 字の勉強 鹿児島市 / 有馬 靖雄 さん
(書道教室で
止 めはねを習って稽古を続けている という意味)キャスター:この句を天に選んだのは、特にどんなところがよかったですか?
寿星 :誰も思いつかないような細かいところに焦点を当てながら、しかもさりげなく描いているところです。これが単なる「書道を習う」では、ただそれだけで狂句味はありません。書で大事な「止め」と「はね」にこだわったところで現実味が増しました。ここが一番大事だということと、それがまた難しいところでもあるので、継続して練習しているのだということが読み取れます。
キャスター:寿星さんも書道の経験があるのですか?
寿星 :私にとっては70の手習いで書道教室に通いました。 その中で私もこの「止め・はね」は今でもうまく書けません。
止め
撥 ねを先 生 い習 るっ 字の勉強 <唱>
手 付 く真 似 てん シャープいならじ(師匠の手つきを真似してもシャープな線は出ない という意味)
しかし手習いそのものでありまして、とってもありがたい時間でした。
今月のポイント「具現は強い」
発表された句と自分が投句した句と見比べてどうでしょうか。「いま習ったこともすぐ忘れる」だけではアピールになりません。入選句はいずれも事柄を具体的に、しかも細かいところにこだわっておりまして現実味があります。