トップページ  番組情報  情報WAVEかごしま  さつま狂句  2015年8月27日放送分

8月の兼題「夏(なつ)」
(第四回 8月27日放送分)

さつま狂句

試食付っ 夏ちゃデパ地下で 避暑ばしっ
日置市 池上 歌子 さん

解説

(夏はデパ地下で試食付きの避暑をしているという意味の句です。)
キャスター:「避暑ばしっ」は「避暑をしっ」と同じですね。この句の良かったところはどこですか?
黒柱 :試食とデパ地下やスーパーの組み合わせは今までもよく読まれている素材で、試食で腹一杯になったとか一食分もうかったとかというような発想の句は結構あるようです。
この句の面白いところは、試食だけではないのです。デパ地下を食事つきの避暑地だと考えているわけです。もちろん、これも想像の句です。現実にこんなことをする人は滅多にいないでしょう。作者はいわゆる薩摩狂句の想像・空想の世界を楽しんでいるところです。読み手もそこを感じ取って楽しめばよいと思います。
同じようなことですが、その想像の世界(イメージ)を広げてくれるようなものが良い作品だと言われることも以前からお話ししている通りです。想像の世界を広げてみてください。どんなことをイメージしますか?
キャスター:では、唱です。

<唱> 今日も出張っ行た あんだっきゅ面
(あの鉄面皮が今日も出かけて行ったという意味です。)
「だっきゅ」または「だっきょ」はらっきょうのことです。 らっきょうのように皮が厚いところから「面の皮の厚い人」というと辞典にもあります。

※ 「句作りのヒント」

「課題の捉え方」
私見ですが、「課題吟」は「課題で」詠むのではなく、「課題そのもの」を詠むことだと考えています。芝居や映画で言えば、課題はそれらの「主役」ではないでしょうか。主役が二人も三人もいたのでは、芝居も映画も成り立たないのではないかと思うのです。
例えば、今回の課題「夏」の場合を考えてみましょう。句の中に「夏」と「冬」出てくると、どちらが主役かわかりません。あくまでも「夏そのもの」が句の中心になるように考えるのが、課題吟を詠む場合の基本的な考え方ではないでしょうか。夏という字が入っていても、「甘夏、 夏子」などはまったく別物で、これは完全に課題から外れていると考えるべきでしょう。「夏」という字が入っていればよいというものではないと思います。
狭い考え方かもしれませんが、夏休み、夏祭り、夏草、夏バテ、なども確かに夏のものですから、完全に課題から外れているとは言えないでしょう。しかし、課題そのものを詠むという考え方からすると、完全に課題から外れてはいないにしろ、「夏、大暑、猛暑、冷夏、真夏」などと比べると、課題の中心が少しずれているのではないでしょうか。
例えば「夏休み」は「夏の休み」であって「夏そのもの」とは少しずれがあると思います。「春休み」「冬休み」「春休み」というように、どちらかというと夏よりも「休み」の方に重点が置かれた言い方ではないかと思われます。初心者のうちは、夏休みや夏祭りでも構わないと思いますが、慣れて来たら、夏そのものを詠むようにしたいというのが私の考え方です。句作りの参考にしていただければと思います。